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カテゴリ: 憲法

5月30日(木)10時から11時30分過ぎまで、今国会8度目の衆議院憲法審査会が開催されました。実質審議は7回目で、今回は「国民投票広報協議会その他国民投票法の諸問題」をテーマとして討議が行われました。
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まず、審査会の冒頭、橘幸信衆議院法制局長から上記のテーマについて説明がありました。
以下、配布された資料のうち、「資料2:国民投票広報協議会の組織等と事務」と「資料4:国民投票に関する主な論点」を転載しておきます。衆議院憲法審査会ホームページの「会議日誌・会議資料」のコーナーに他の資料もあわせて掲載されていますので、興味のある方はそちらをご覧ください。

国民投票広報協議会.png


国民投票法の論点.png


この日は、当然のことですが多くの発言者が「国民投票広報協議会その他国民投票法の諸問題」について意見を表明しました。
以下、中谷元幹事(自民、与党筆頭幹事)と奥野総一郎委員の発言内容を要約した『共同通信』の記事を転載させていただきます。

改憲国民投票、運動規制巡り対立 自民慎重、立民は法改正求める
『共同通信』2024年5月30日

衆院憲法審査会が30日開かれ、憲法改正の国民投票を巡り自由討議を行った。投票運動への制限を巡って議論となり、制限に慎重な自民党と、規制のため早期に国民投票法を改正するよう主張する立憲民主党が対立した。(中略)
中谷氏は討議で「投票運動はできるだけ自由にし、法的な規制は極力避けるべきだ」と強調した。立民の奥野総一郎氏は「運動資金の多寡や、外国政府の介入で投票結果が左右される恐れがある」と主張した。
2021年改正の国民投票法の付則では、政党のCMやインターネット広告の規制を巡り、施行後3年をめどに必要な措置を講じると規定している。衆院法制局の橘幸信局長は「その期限が今年9月に到来する」と説明した。
中谷氏は法改正に関し「事業者の自主的な取り組みを後押しする規定の新設などは、検討に値する」と指摘した。
奥野氏は「国民投票法の見直しこそ、憲法審の優先課題だ」と述べた。
* 引用、ここまで。

改憲勢力の幹事、委員たちの意見を聞いていると、「2021年改正の国民投票法の付則では、政党のCMやインターネット広告の規制を巡り、施行後3年をめどに必要な措置を講じると規定している。……その期限が今年9月に到来する」(上掲の『共同通信』の記事)にもかかわらず、「資料4」で整理されている論点がそれぞれの立場から繰り返されただけで、今後、検討が進展する気配は感じられませんでした。

現在、国会で焦点となっている政治資金規正法改正案にも多くの「附則」が盛り込まれる情勢ですが、国民投票法(改憲手続法)の議論を見ていると、「附則」なるものの無意味さがよくわかります。

ところで、赤嶺政賢委員(共産)は「私たちは国民が改憲を求めていない中で国民投票法を整備する必要はないという立場だ」と述べた上で、下記のように「資料4」には記されていない重要な論点を提起しました。

「現行の国民投票法は、2001年に安倍首相が『私の内閣で憲法改正をめざす』と意欲を示す中で自民党が強行採決して作られたもので、改憲案を通すために都合の良い仕組みになっている。
具体的には、最低投票率の規定がないこと、資金力の高い改憲派に広告が買い占められること、公務員や教育関係者の意見表明や国民投票運動を不当に規制していることであり、広報協議会も改憲案に賛成した会派が圧倒的多数を占めることになる。
この根本的な問題を放置したまま協議会の規程を整備することはとうてい認められない。」

この日の議論のもう一つの焦点は、次に転載させていただく『NHK NEWS WEB』の記事で整理されている「緊急事態をめぐる憲法改正」、中でも議員任期延長の改憲で、改憲勢力の幹事、委員たちがこぞって言及していました。

緊急事態めぐる憲法改正 自民“条文案 賛成の党だけで議論も”
『NHK NEWS WEB』2024年5月30日

衆議院憲法審査会で、自民党は、大規模災害など緊急事態の対応をめぐる憲法改正の条文案の作成に賛成する立場の党だけで議論を進めることも排除しない考えを示しました。これに対し、立憲民主党は改正の手続きを定めた国民投票法の見直しを優先すべきだと主張しました。

30日の衆議院憲法審査会では、憲法改正の手続きを定めた国民投票法や、今後の議論の進め方などをめぐって各党が意見を交わしました。
この中で自民党の中谷・元防衛大臣は、大規模災害などの緊急事態で国会機能を維持するための憲法改正について、「各党から早急に条文の起草作業に入るべきだという意見を多数いただいており、機は熟している。大切なことは、幅広い会派が協議の場に参加することで、反対の会派にもテーブルについてもらいたい」と述べました。

一方、中谷氏は、日本維新の会が、条文案の作成に賛成する立場の党だけで議論を進めるよう提案していることについて「時間的な制約もあり、そうした意見も検討させてもらいたい」と述べ排除しない考えを示しました。

これに対し立憲民主党の奥野総一郎氏は「憲法改正を否定するものではなく、議論がしっかり尽くされれば国民投票法を使う場面もありうると考えている。国民投票法の見直しこそ憲法審査会の最優先の課題だ」と主張しました。
* 引用、ここまで。

上掲の記事では触れられていませんが、この日も特に悪目立ちしていたのは国民民主党の玉木雄一郎委員で、発言の冒頭からこんなことを言い募りました。

「今国会の憲法審査会は今日を除くとあと3回となった。起草委員会を速やかに設置して条文作りに着手しようではないか。(そうしないと)もう間に合わない、絶望的だと思う。せめて要綱形式で議論することを提案する。」

そしてこの日の憲法審のあと、玉木委員は『X』にこんな投稿をしています。
「本日をもって、岸田総理の今年9月の総裁任期中の改憲発議は事実上不可能となりました。危機に対応できる統治機構づくりを急ぐべきとの信念に基づき取り組んできましたが残念です。今日も建設的な議論に努めましたが、時間切れです。自民党にはもっとしっかりやってもらいたい。スケジュールも戦略も曖昧のまま。」

参院憲法審の状況もあわせて考えると、9月の改憲発議が不可能であることはほぼ間違いないところだと思います。ただ、改憲勢力の策動が止むことはけっしてありません。
4回続けて最後に同じことを書きますが、私たちはできることをやり続けるしかありません。改憲は絶対に阻止しなければならないし、それは可能だという確信を持ってこれからも声を上げ続けていきましょう。
この日の傍聴者数は35人ほど、記者は3人でした。
委員の出席状況は、自民党の欠席者は冒頭と終盤は1~2名でしたが、中盤は5人前後が欠席していました。
(銀)

5月29日(水)13時30分から15時少し過ぎまで、今国会4回目の参議院憲法審査会が開催され、3度目となる実質的な審議が行われました。この日は15日に開かれた前回の審査会に続いて参院の緊急集会がテーマとされ、参院の川崎政司法制局長から「東日本大震災に関連した立法措置等」について、内閣府の高橋謙司政策統括官から「首都直下地震対策の概要」についてそれぞれ説明を聴取した後、委員間の意見交換が進められました。

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意見交換は、各会派の代表1名ずつの発言、続いて他の委員からの発言という順序で行われましたが、驚いたのは上記の2名の説明者が説明を終えるとすぐに退席を促され、委員たちからの質疑の機会が設けられなかったことです。わざわざ参議院と内閣府の幹部を迎えたのは何のためだったのだろうかと思いました。

自公幹事の穏当な意見表明

前回、15日の審査会でもそうだったのですが、この日も会派を代表して発言した自公の幹事は参議院の緊急集会を積極的に位置づける意見を表明していました。
以下、その一部を紹介します。

佐藤正久幹事(自民、与党側筆頭幹事):まず、参院の緊急集会の開催が平時、有事を問わず衆院の不存在時のための制度であることを申し上げ、本審査会では、衆院議員の任期満了時でも内閣は参院の緊急集会の開催を求め得るとの見解に異なる意見を持つ会派はなかったことを確認したい。
仮に首都直下地震等が衆院解散時等に発生した場合、参院の緊急集会の審議の対象となる法案や予算を制限し緊急の対応が停滞すれば、民主政治を徹底して国民の権利を十分に擁護するという憲法の趣旨に反し、したがって、こうした場合に緊急集会の審議対象となる法案や予算の範囲には、緊急の必要がある限り制限はないと考える。とすれば、緊急集会で議員が発議できる議案の範囲についても、内閣総理大臣から示された案件に関連するものという国会法の規定を幅広く解釈し、緊急の必要がある限り発議できると考える。

西田実仁幹事(公明):大規模災害への対応のために参院の緊急集会において補正予算を処理することは当然に認められると考える。本予算を議決しないまま衆院が解散されるケースは想定しにくいが、仮にそうなった場合には、まずは暫定予算により必要な措置を講じ、長期に及ぶ場合は暫定予算の補正によって対応することになると思われる。こうした措置は暫定的なものだが、大災害によって総選挙や衆院の構成ができない場合も国民生活のための国会運営はなされなければならず、内閣の専断を抑制し民主的な統制を及ぼすためには、本予算についても全国民の代表である参院の緊急集会で決めていかざるを得ないと考える。
可能な範囲で総選挙を実施し早期に民主的正当性を備えた二院制に復帰することが必要であり、災害に強い選挙制度を整えるため、選挙人名簿のバックアップや郵便投票の拡大、ネット選挙の導入等によってできるだけ速やかに選挙が実施できるよう検討していくことが重要だ。中でも現行の法令では明示的に義務づけられていない選挙人名簿のバックアップの必要性は大きく、住民票のある市町村の庁舎が被災しても選挙人名簿の滅失を防ぎ、被災地に戻らなくても避難先の最寄りの市町村役場で投票できるようにする仕組みも検討すべきだ。

前回に続き、この日も最後の発言者となった小西洋之幹事(立民)は、佐藤、西田両氏の意見に対して「心から敬意を表する」と述べ、2人の見解は衆議院で改憲勢力が議員任期延長改憲の根拠としている「参議院の緊急集会が70日の限定であって、かつ平時の制度あるいは二院制の単純な例外であるという主張を事実上否定するものだと思う」と評価していました。

野党委員の辛辣な衆院憲法審批判

この日目立ったのは、立民、共産、れいわ、社民、沖縄の風の委員たちから衆院憲法審での改憲勢力の主張に対する批判が相次いで表明されたことです。
以下、何人かの発言を紹介しますが、それぞれ改憲派が展開している議論の矛盾を鋭く指摘していました。

辻元清美幹事(立民、野党側筆頭幹事)東日本大震災のとき、全国の大半の地域では普通に選挙が行われた。このとき自民党は野党だったが、まだ福島第一原発の事故処理で緊迫していた時期に内閣不信任案を提出した。また、コロナのパンデミック真っ最中の危機の中で、大阪維新の会は大阪都構想の住民投票を強行し、その後感染者が増加した。
危機の中で衆院の解散につながりかねない不信任案を提出したり住民投票を強行したりした政党が、今度は危機の中では選挙ができないから衆院議員の任期延長が必要だと主張するのは、やっていることと言っていることが矛盾するのではないか。

山添拓幹事(共産)昨日、衆院総務委員会で地方自治法改定案が可決されたが、緊急時における国会機能の維持が必要だと主張する会派が国会の役割を否定する地方法自治法改定を押し通そうとするのは矛盾と言うほかない。

山本太郎委員(れいわ)衆院憲法審で、維新や国民の委員が議員任期延長改憲の条文案を作成する起草委員会を賛成の党派だけで粛々と進めることを提案するなどという暴言を吐くのは許されない。参議院として怒らなければならない場面だ。(中曽根弘文)会長は、参院の軽視を明確に批判する声明を出してほしい。

福島みずほ委員(社民)私たち野党は、2021年のデルタ株の感染爆発時をはじめ何度も臨時国会の開催を求めてきた。これに応じなかった与党などが、今度は国会がないと大変だとして議員任期延長を主張することは笑止千万だ。国会議員の長期居すわり、選挙の停止を図る衆院憲法審の改憲条文案の起草委員会の設置と要綱づくりは参議院の否定で憲法破壊であり許されない。
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こんな人だったの?と思った猪瀬委員(維新)の暴論

続いて、改憲勢力の急先鋒、維新と国民の委員たちの発言を見ていきましょう。
まず、会派を代表して発言した2人の幹事はそれぞれ次のように述べていて、もちろん同意はできませんが、衆院憲法審での両会派の委員たちと比べると意見表明の内容も口調もソフトな印象を受けました。

片山大介幹事(維新)緊急事態として衆院選が困難な上に参院議員も任期を迎えて半分しかいなくなることも想定しておくべきだ。衆参合わせて定数713名のうち参院議員124名しか存在していない緊急集会で国の存亡に関わる緊急事態を乗り切っていくのか、任期延長で衆参両院が機能している国会で乗り越えていくべきかを比べると、後者の方が立憲主義、国民主権にかなうと思う。

大塚耕平幹事(国民)衆院解散後に発生した緊急事態時に衆院の任期延長が制度として確立していない前提で考えると、参院の緊急集会で解散した衆院の前議員を当分の間復帰させることを認める特別法を制定できるか否か、首相や内閣・政府に緊急事態への対応に必要な特別な権能を認めることを決め得るか否かなど、緊急事態における緊急集会の決定事項に関する民主的統制の枠組みを議論しておくべきだと考える。
 
そんな中、しんそこからうんざりさせられたのが猪瀬直樹氏の以下のような発言です。

猪瀬直樹委員(維新)日本維新の会はすでに5項目の改憲条文案を示しており、必ずしも本意ではないが今国会では緊急事態に関連する事項に絞って議論すべきとの方針で、各党の意向を尊重して議論を進めてきた。しかし、今のやり方で今国会の会期末までに結論が出せるのかはなはだ疑問に思う。衆院側は起草委員会をつくって条文を起案する方向でまとまりつつあるが、参院ではどうするつもりなのか。今の参院憲法審は周回遅れどころか3周遅れぐらいになっている。
立憲民主党が野党の代表であるかのように振る舞い自民党の筆頭幹事との間で憲法審の進め方を決め、会長はリーダーシップを執ろうとしない。こんな慣習で進めている限り議論は深まらず時間と費用の浪費が続いてしまう。憲法審の審議時間を十分に取ること、開催回数を増やすこと、国会の閉会後も開催することによって、岸田首相の言う総裁任期中の9月末までに結論を得て審査会としての責任を果たすよう中曽根会長に強く求めたい。

現状認識はデタラメだし、今回までの参院憲法審での審議の内容を全く理解していないトンデモ論を興奮した様子でまくし立てる様子を見て、「猪瀬氏ってこんな人だったの」とあきれました。そもそも岸田首相の自民党総裁任期に合わせて改憲の結論を得なければならないという主張だけ見ても、論理は破綻しています。猪瀬氏の比喩を用いれば、私は参院憲法審が周回遅れあるいは3周遅れなのではなく、衆院憲法審がコースを外れてあらぬ方向に突っ走っているのだと言いたいです。
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中曽根弘文会長(自民)のとんでもない議事運営

この日の審議で、中曽根弘文会長が1回だけ委員の発言中に「時間を過ぎているのでまとめるように」と注意する場面がありました。そう言われたのは福島みずほ氏ですが、前回の憲法審でも全く同じことがありました。なぜ福島氏にだけ5分の持ち時間が超過するや否やこうした妨害を行うのか、とうてい看過できません。
というわけで、今回も前回と同じ小見出しを立てて、典型的なミソジニストである中曽根氏を弾劾したいと思います。

委員の出席状況は、短時間席を外す者はいましたが、この日も全員が出席していました。
傍聴者は30人ほどで、途中10人強の見学者が入ってきて傍聴席がほぼ埋まった時間帯もありましたが、20分ほどで元に戻りました。記者は最初4人いましたが、途中から2人となりました。

会期末が迫る中、最後に転載させていただく『産経新聞』の記事にあるように、改憲勢力にとって「与党や立民で構成される『参院の壁』は高くて厚い」のが現状ですが、警戒を怠ることなく傍聴を続け、改憲・戦争絶対反対の声を上げ続けていきたいと思います。(銀)

自公、改憲への「壁」 衆参で足並みそろわず、迫る総裁任期のリミット
『産経新聞』2024年5月29日

通常国会の会期末が6月23日に迫る中、衆参両院の憲法審査会の議論はいまだ足踏みを続けている。実現性が高いとされる緊急時に国会議員の任期延長を可能にする改憲ですら、衆院と参院で与党の足並みがそろわない。岸田文雄首相が目標に掲げる今年秋までの自民党総裁任期中の改憲は正念場を迎えている。

29日開かれた参院憲法審で、野党筆頭幹事を務める辻元清美氏(立憲民主党)は西田実仁氏(公明党)の意見に賛意を示した。「議員任期延長は時の政府の延命に使われる可能性がある。西田氏も言ったように繰延投票、あるいは選挙期日延長の特例法の制定を緊急集会で行うことで対処すべきだ」と述べた。緊急集会を巡り「(自民の佐藤正久与党筆頭幹事と)全く同じ意見」と述べる場面もあった。

衆院の自公両党や日本維新の会などは任期延長の必要性を強く訴えているが、参院では与党を含めて現行憲法に規定されている「参院の緊急集会」で対応可能との声が少なくない。党派を超えて参院の存在感が失われることへの危機感を共有している節もある。自公の足元を見るかのような辻元氏の言動からは、参院の総意として任期延長論を牽制する狙いも透ける。

実際、自公には衆参間で溝がある。16日の衆院憲法審では維新の岩谷良平氏が参院の西田氏の見解に触れた上で、「衆参で発言が矛盾しているのではないか」と公明をただす場面があった。また、衆院自民は改憲原案を協議する起草委員会の設置を訴えているのに対し、参院自民は慎重姿勢を崩していない。
「公明の山口那津男代表や西田氏を丸め込んでからの話だ。衆院だけ勝手に進められても困る」。参院自民関係者は自民が単独で過半数に届かない現状、衆院公明に比べて護憲色が濃い参院公明への配慮が必要だと示唆する。

「こんなやり方、進め方で会期末までに結論が出せるのか甚だ疑問だ。中曽根弘文会長の手腕と指導力が求められる」
堂々巡りが続く中、29日の参院憲法審で維新の猪瀬直樹氏はこう不満を爆発させたが、与党や立民で構成される「参院の壁」は高くて厚い。(永井大輔、末崎慎太郎)
* 引用、ここまで。


5月23日(木)10時から11時30分過ぎまで、今国会7度目の衆議院憲法審査会が開催されました。実質審議は6回目になります。この日も「自由討議」が行われました。
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まず、審査会の前半に行われた各会派1名ずつの発言の内容が簡潔に整理された『NHK NEWS WEB』の記事を転載させていただきます。

衆院憲法審査会 自民“要綱作成し議論を” 立民“時期尚早”
『NHK NEWS WEB』2024年5月23日

衆議院憲法審査会が開かれ、大規模災害など緊急事態での国会機能の維持をめぐり、自民党が憲法改正に向けた条文案のもとになる要綱を作成して議論を進めるよう重ねて求めたのに対し、立憲民主党は時期尚早だと主張しました。

自民 “審査会に具体的な要綱案の提示を”
 自民党の小林前経済安全保障担当大臣は「『選挙困難事態』における国会機能の維持については、制度設計の枠組みの大部分が固まっており、いつでも条文化に入れる段階だ。制度設計の詳細にわたる議論を建設的に進めるため、審査会に具体的な要綱案を提示することを希望する」と述べました。

立民 “今の段階では早い 慎重なうえにも慎重に”
 立憲民主党の逢坂代表代行は「災害に強い選挙の検討など八方手を尽くして、なお穴がある時に初めて憲法改正の立法事実が出てくる。そこまでいっていない中で条文案を考えるのは今の段階では早いのではないか。慎重なうえにも慎重にすべきだ」と述べました。

維新 “憲法改正原案の作成作業 進めることを要望”
 日本維新の会の小野泰輔氏は「『選挙困難事態』に備えることは政治の責任で、議論はかなり尽くされている。条文案の起草委員会を立ち上げ、憲法改正原案の作成作業を進めることを要望する」と述べました。

公明 “巨大地震が国政選挙と重なると 期日延期が必要”
 公明党の国重徹氏は「南海トラフ巨大地震が国政選挙と重なった場合、広範な地域で『選挙困難事態』に陥る蓋然性が極めて高く、選挙期日の延期が必要になる」と述べました。

共産 “日米地位協定の改定にこそ正面から取り組むべき”
 共産党の赤嶺政賢氏は「アメリカ軍が事件や事故を起こしても基地内に立ち入って調査できない。国会は日米地位協定の改定にこそ正面から取り組むべきだ」と述べました。

国民 “起草委員会を設置 条文案作りに着手を”
 国民民主党の玉木代表は「もはや論点は出尽くしており、起草委員会を速やかに設置して条文案作りに着手することを改めて求めたい」と述べました。
* 引用、ここまで。

自民、維新、公明の発言者は前回と異なっていましたが(自民は6人の幹事が審査会前半の会派代表の発言を順番に行うことにしているようで、今回で一巡しました)、各会派の意見表明の内容は前回とほぼ同じでした。

続けてもう1本、『産経新聞』の記事を転載させていただきます。

「責任政党」の姿勢を疑問視、改憲後ろ向きの立憲民主へ指摘相次ぐ 衆院憲法審
『産経新聞』2024年5月23 日

与野党は23日の衆院憲法審査会で、大震災などで選挙が困難となる事態への対処を目的とした国会議員の任期延長を可能にする憲法改正について改めて議論した。この日も後ろ向きな態度に終始した立憲民主党に対し、他党からは責任政党としての姿勢を疑問視する指摘が相次いだ。

「長い友人関係だが、あえて申し上げるが、もう逃げられないところまで来ている」。自民党の細野豪志氏は憲法審で、野党筆頭幹事を務める立民の逢坂誠二氏に対し、東日本大震災発生時に衆院が解散されていた場合、政治家としてどのような判断を下していたかと尋ねた。

民主党時代の同僚で、「現行憲法下で最大限の対策を講ずる」などと繰り返す逢坂氏に具体策を示すよう迫った形だ。もっとも逢坂氏は「危機を煽って、緊急時対応が過大になり過ぎて、悲惨なことを招いた歴史がある。緊急時の対応は慎重の上にも慎重さを持ってやるべきだ」と述べるにとどめた。

4月末の衆院3補欠選挙を制して勢いに乗る立民は政権奪取への自信を深めている。しかし、この日は任期延長の改憲を支持する自民以外の政党からも野党第一党の認識の甘さを指摘する声が上がった。

公明党の国重徹氏は「南海トラフ巨大地震が国政選挙と重なった場合、広範な地域で選挙困難事態に陥る蓋然性が極めて高く、選出されない国会議員は15%を大きく上回るであろうことは明白」と強調した。
これは、前回16日の憲法審で立民の本庄知史氏が示した「繰り延べ投票と(現行憲法に規定されている)『参院の緊急集会』でも対応できないような、選挙困難事態というのは一体いかなる状況なのか」という疑問への答えだ。

国民民主党の玉木雄一郎氏は「起草委員会を速やかに設置して条文案作りに着手することを改めて求める」と強調。その上で民主党時代の同僚が数多く所属する立民に対し、「政権与党を目指すのであれば(危機対処の)意思と能力を備えていることを示した方が得策だ」と足並みを揃えるよう助言した。(内藤慎二)
* 引用、ここまで。

この記事では、改憲勢力に与する『産経』のバイアスが強くかかってはいますが、議場の雰囲気がよく伝えられていると思います。

たんぽぽ

この日は、立民の2人の幹事のうち本庄知史氏が欠席していたこともあって、逢坂誠二氏が改憲勢力の委員たちから「集中砲火」を浴びる格好になりました。本庄氏が姿を見せなかったのは、同時刻に開かれていた政治改革特別委員会に出席していたからのようですが、それなら他の委員が援護すればいいものを、この日発言の機会を得た大島敦氏は、「私の意見であり会派を代表しての意見ではない」と前置きして「首相の解散権を限定して衆議院自らが解散権を持つ制度を導入すべきだ」と主張していました。その当否はともかくとして、私は「今、それを言うの?」という違和感を持ちました。

また、共産党の赤嶺政賢委員の意見表明は、「前回に続いて、沖縄と憲法について意見を述べる」と始めて、「国会は日米地位協定の改定にこそ取り組むべきだ。憲法と矛盾する日米安保体制を根本から問い直すべきことを指摘して発言を終わる」と締めくくるというもので、議員任期延長の改憲論には一言も触れませんでした。前回の報告にも書きましたが、とてももどかしく感じました。

逢坂氏は、自身のブログで次のように記して「悩み」を吐露していますが、これからも野党側筆頭幹事として信念を貫いてほしいと思います。

現行憲法下で八方手を尽くす
『おおさか誠二ブログ』2024年5月25日

(前略)昨日の憲法審査会で、議員任期の延長について条文化の作業を進めるべきとの声がありました。私は、議員任期の延長に関する立法事実をクリアにするためには、現行憲法下で、次の作業を八方手を尽くして行うことが必要だと考えています。

*1:災害に強い選挙について対策を講ずる
*2:震災などによって国会機能が失われた場合の対策(いわゆるBCP)
*3:緊急集会の機能強化

現行憲法のもとで、これらについて具体的に議論し、必死になって対策を講ずることが必要です。
それらの具体化の先に、議員任期延長の必要性(立法事実)が見えてくるのです。
今の憲法のもとでやれることをやっていない中では、議員任期延長の条文化作業の段階には達していないのです。
なぜこれが理解できないのか、悩みは尽きません。(後略)
* 引用、ここまで。

ということで、衆院憲法審では緊急事態下の選挙困難事態における議員任期延長を可能とする改憲の議論が盛んに行われています。この日の玉木雄一郎氏(国民)の発言によれば、次回の審査会では国民投票広報協議会の規程について議論するということであり、改憲の発議、国民投票に向けた条件整備も進んでいくことが見込まれます。

以下、前々回、前回と同じことを書きますが、私たちはできることをやり続けるしかありません。改憲は絶対に阻止しなければならないし、それは可能だという確信を持ってこれからも声を上げ続けていきましょう。
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この日の傍聴者数は前回より少し増えて30人ほど、記者は2~4人でした。
委員の出席状況は、審査会の前半30分くらいは自民党の欠席者が少なく、全員が出席している時間もありました。途中からはいつものように3~4人が欠席という状態になりましたが、本当に珍しいことでした。他の会派では、上述のとおり立民の本庄知史幹事がずっと姿を見せませんでした。

今回は、付録として5月27日に開催された改憲派の集会「新しい憲法を制定する推進大会」について報じている2つの記事を転載させていただきたいと思います。

緊急事態条項新設などを訴え 新しい憲法制定推進大会で櫻井よしこ氏と島田元防衛次官講演
『産経新聞』2024年5月27日

中曽根康弘元首相が率いた超党派「新憲法制定議員同盟」は27日、東京都内で「新しい憲法を制定する推進大会」を開いた。憲法改正実現を目指すジャーナリストの櫻井よしこ氏や元防衛事務次官の島田和久氏のほか、政党幹部らが集い、憲法への自衛隊明記や緊急事態条項新設などの必要性を改めて訴えた。

岸田文雄首相(自民党総裁)はビデオメッセージで「国会の発議を見据えた議論をしていかなければ、いつまでも憲法改正を実現することはできない」と述べた。また、自民の麻生太郎副総裁もビデオメッセージで「日本国憲法は日本人自身の歴史観、国家観に基づいて、自らの手で不断の見直しを行っていくべきものだ」と語った。

櫻井氏は「立憲民主党は憲法改正をする気がない。相手にしてもしかたがない」と強調し、自衛隊明記の必要性を訴えた。緊急時に国会議員の任期延長を可能にする改憲にも触れた上で「(政治家の任期を伸ばすだけの)いいかげんな内容だったら、先頭に立って『そんな憲法改正はいらない』という運動をするかもしれない」と述べた。
* 引用、ここまで。

【速報】「国会会期内に改憲要綱案提出を」公明・北側副代表が憲法改正めぐり訴え
『TBS NEWS DIG』2024年5月27日

公明党の北側副代表は27日、今の国会会期内に憲法改正の要綱案を衆議院・憲法審査会に提出すべきとの考えを示しました。

公明党 北側一雄副代表
「この残された通常国会の会期内にね、具体的な要綱案を、ちゃんと審査会で提出して、それをもとにさらに建設的な議論をしていく、もうそういうステージになっている」 
公明党の北側副代表は、超党派の国会議員で構成される「新しい憲法を制定する推進大会」でこのように話し、「いつでも改正条項案をつくれる状況に、いまの憲法審査会はなっている」と強調しました。 
ただ、公明党は、党内でも衆議院と参議院の議員間で温度差があり、山口代表は「参院では十分に議論が進んでいない」と指摘するなど、性急な憲法改正には慎重な姿勢を示しています。
* 引用、ここまで。

『産経新聞』の記事で紹介されている櫻井よしこ氏の「自衛隊明記の必要性を訴え」、「議員任期延長の改憲がいい加減な内容だったらそんな憲法改正はいらないという運動をするかもしれない」という発言が改憲派の本音なのだろうと思います。
(銀)

5月16日(木)10時から11時30分過ぎまで、今国会6度目の衆議院憲法審査会が開催されました。実質審議は5回目になります。この日も「自由討議」が行われました。
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まず、審査会の前半に行われた各会派1名ずつの発言の内容が簡潔に整理された『NHK NEWS WEB』の記事を転載させていただきます。

大規模災害など緊急事態での国会機能維持めぐり各党が意見
『NHK NEWS WEB』2024年5月16日

衆議院憲法審査会が開かれ、大規模災害など緊急事態での国会機能の維持をめぐり、自民党が条文案のもとになる要綱を作成し議論することを提案したのに対し、立憲民主党は、今の憲法で対応するための方策を検討すべきだと主張しました。

自民 “具体的な要綱形式の資料を審査会に提示し議論を”
自民党の船田元経済企画庁長官は「緊急事態における国会機能の維持、議員任期の延長については、これまでの憲法審査会でかなり議論が煮詰まってきた。各党の考え方も収れんしてきており、具体的な要綱形式の資料を審査会に提示し議論を進めるべきだ」と述べました。

立民 “現行憲法下で方策を検討すべき”
立憲民主党の逢坂代表代行は「議員任期の延長論は選挙の原則を変更するもので、慎重の上にも慎重に議論すべきだ。他方、立法府の機能維持は極めて大事で、現行憲法下でどうやって最大限維持できるのか手を尽くして方策を検討すべきだ」と述べました。

維新 “せめて改正案の要綱を作成すべきだ”
日本維新の会の岩谷良平氏は「条文案の起草委員会に国会機能維持の憲法改正に反対する党を入れるのは生産的ではなく、賛成の党派だけで実務的に進めることを提案する。委員会が開かれなくても、せめて改正案の要綱を作成すべきだ」と述べました。

公明 “具体的な条文案のイメージ示した要綱提示を”
公明党の大口元国会対策委員長は「国会機能の維持のための憲法改正について、さらにかみ合った議論を展開できるよう、具体的な条文案のイメージを示した要綱を審査会に提示することを提案する」と述べました。

共産 “アメリカ軍基地を強化している現実の議論を”
共産党の赤嶺政賢氏は「政府が沖縄県民の願いを踏みにじり、アメリカ軍基地を強化している現実を議論し、憲法の原則が適用されない沖縄の実態を変えることこそ政治家の責任だ」と述べました。

国民 “憲法改正の条文案づくり着手提案 要綱形式で議論を”
国民民主党の玉木代表は「緊急事態における国会機能維持を可能とする憲法改正の条文案づくりに着手することを改めて提案する。審査会で要綱形式で議論したい」と述べました。
* 引用、ここまで。

続けてもう1本、『産経新聞』の記事を転載させていただきます。この記事では、審査会後半に行われた委員たちの発言も含めて、改憲勢力に与する『産経』の立場からではありますが、この日の議論の様子がうまく押さえられていると思います。

大規模災害時の議員任期延長、改憲巡り溝埋まらず 「立民排除論」も 衆院審査会
『産経新聞』2024年5月16日

与野党は16日の衆院憲法審査会で、大規模自然災害などによる選挙困難事態への対処を目的とした国会議員任期延長を可能にする憲法改正について議論した。党内や支持層に護憲派を抱える立憲民主党がこの日も必要性を疑問視する中、自民党や日本維新の会など改憲勢力からは「立民抜き」の改憲案作りに踏み込むべきとの意見が上がった。

国民民主党の玉木雄一郎氏は憲法審で、「国会機能を適切に維持するためには憲法を改正し、選挙期日の延期と、その間の議員任期の延長に関する規定を創設することが必要だ」と改めて訴えた。
一方、立民の本庄知史氏は「長期間投票できる環境にないという被災地の有権者の視点を強調する意見もあるが、被災地以外の大多数の有権者が選挙権を行使できなくなる」と任期延長論を牽制。「緊急事態にかこつけた政治家の延命としか受け取られない」とも断じた。

かねて任期延長の必要性を提唱してきた公明党の北側一雄氏は、発災後に想定される復旧・復興に向けた議員立法や予算審議などを念頭に「被災地選出の議員がいない状況が長期間続くのは良いとはとても思えない」と強調した。
しかし、野党筆頭幹事の逢坂誠二氏(立民)は選挙困難事態の基準などが「曖昧」との見方を示し、「期日、任期を最大限に守ることが民主主義の大前提だ」と語った。

立民の抵抗を横目に改憲勢力はこの日、憲法改正の条文要綱案を踏まえた議論の必要性を共有した。条文案作りに関しては「(反対を主張する政党を含めた作業は)非現実的」(自民・山田賢司氏)、「反対会派を入れると、そもそも論が繰り返され生産的ではない」(維新・岩谷良平氏)などの意見も相次いだ。(末崎慎太郎)
* 引用、ここまで。

2つの記事をあわせ読むと、この日の衆院憲法審のポイントは、船田元幹事(自民)の「緊急事態における国会機能の維持、議員任期の延長について、具体的な要綱形式の資料を審査会に提示し議論を進めるべきだ」という意見に改憲勢力の全会派がはっきりと同調したことだと言えると思います。「要綱」というのは、法案の「条文化において中心となる骨格を固め、論理構成に従った体系に組み立て、整序した文書」(参議院法制局『議員立法の立案プロセス』)で、条文案の一歩手前となる資料です。
また、岩谷良平委員(維新)や山田賢司委員(自民)が改憲条文案の検討・作成の作業に反対の会派が参加することは生産的ではない、非現実的だなどという暴論を堂々と開陳したことも見逃せません。

防戦一方の立憲民主党、超然として論戦に加わらない共産党

こうした改憲勢力の攻勢に対して、立民の委員は防戦一方に追い込まれている印象が否めませんでした。
この日も本庄知史幹事は下記のように述べて孤軍奮闘していましたが、まさに「多勢に無勢」という言葉がぴったり当てはまるような議場の雰囲気でした。(引用は本庄氏のウェブサイトに掲載された記事を要約したものです。)

繰延投票は、要件を満たせば地域的な範囲や繰延期間に制限はありません。再繰延べも法律上は可能です。短期間、限定的な延期しかできないとの一部委員の意見は、単に過去の事例を踏襲しているだけで根拠がありません。
その上で、私は、繰延投票と参議院の緊急集会でも対応できないような全国の広範な地域で相当程度長期間選挙が実施できない事態というのは一体いかなる事態なのか、いまだ説得力ある科学的検証は示されていないし、他にも多くの基本的な論点が積み残されていると繰り返し申し上げています。
【被災地選出議員の不在】
「被災地選出の国会議員が国会にいなくてよいのか」との発言が、中谷筆頭幹事はじめ何人かの委員からありました。しかし、憲法上国会議員は特定の選挙区の代表ではなく全国民の代表です。また、衆議院議員が存在しなくても参議院議員は存在するでしょう。
さらに、補欠選挙は半年に一度であり、制度的には最長で7カ月強国会議員の欠員が生じる可能性があります。したがって、公選法が違憲立法でない限り憲法上も7カ月、あるいはそれ以上の欠員を許容していると考えるべきであり、被災地の国会議員が不在でいいのかとの批判は憲法上は当らないと考えます。
【被災地以外の有権者の参政権】
昨年、本審査会事務局が作成した、東日本大震災後の地方議員選挙と首長選挙の実施状況を前回衆議院総選挙に当てはめた場合の試算があります。
この試算によると、本来の期日に選挙が実施できず選出されない議員の数は69名、定数の15%です。15%が「全国の広範な範囲」に合致するかはさて置き、残りの85%は選挙が実施可能ということです。さらに千葉県や茨城県でも繰延投票が実施されれば、1カ月程度で95%まで投票可能となります。
公明党の北側幹事のように「長期間投票できる環境にないという被災地の有権者の視点」を強調する意見もありますが、選挙困難事態を理由に全国で選挙を実施せず、議員任期を延長すれば、こういった被災地以外の大多数の有権者が、本来行使できる選挙権を行使できなくなります。
議員任期延長論の中で、この点について十分な比較衡量はなされているのか、私は疑問です。
【選挙の一体性】
中谷筆頭幹事他何名かの委員からあった「繰延投票では選挙の一体性が損なわれる」との意見について、確かに、選挙は期日、地域いずれも一体的に実施されることが望ましい。しかし、選挙の一体性は、国民の基本的人権である参政権、選挙権を制限してまでも優先される憲法上の要請なのでしょうか。この点についても、未だ明確な説明はありません。
【緊急事態における国会機能維持のあるべき議論】
緊急事態における国会機能の維持は、国会議員の任期中、任期切れに関わらない課題ですが、可能性や優先順位から言えば、任期中の対応こそまず議論すべきです。しかし、政府でも国会でもこの種の議論は皆無です。にもかかわらず、任期切れの場合のみを殊更に取り上げて議論していることに、私は強い違和感を覚えています。
議員任期の延長は、裏金問題で地に落ちた今の政治状況に鑑みれば、「緊急事態にかこつけた政治家の延命」としか国民には受け取られないでしょう。

立民ではもう1人、野党側筆頭幹事である逢坂誠二氏も粘り腰を発揮して(とは書いたものの、実際に与党側の中谷元氏とどのようなやりとりが行われているのかはわかりませんが)これまで起草委員会の設置を許していません。ただ、他に9人いる立憲民主党の憲法審メンバーは、議員任期延長の改憲問題についてほとんど意見表明を行っていません。もともと立民は「挙党一致」感の乏しい党派で、そこには悪い面ばかりでなくいい点もあるのでしょうが、もう少し団結した対応を取ってほしいものだと思います。

そして私が立民以上にもどかしく感じるのが、共産党・赤嶺政賢委員です。沖縄県選出の氏は、歴史的な視野に立って沖縄や日米軍事同盟の問題を取り上げ、論理的であるだけでなく感動的な議論を展開していて、大いに敬意を表するところですが、改憲勢力の議員任期延長改憲論のゴリ押しにはこれまでのところだんまりを決め込んでいます。くだらない改憲議論には加わらないという考え方もあるのかもしれませんが、はたしてそれでいいのでしょうか。
ぎもん

鍵を握る公明党の党内調整の行方

この日の衆院憲法審では日本維新の会の岩谷良平、小野泰輔の両委員から、北側一雄幹事(公明)に対して、参院側の公明党との意見の不一致を突く質問がありましたが、北側氏は「参院側からすると緊急集会の権限が制約されるのではないかという気持ちがある。選挙困難事態が乱用されることも懸念している。そういう中でいろいろな意見があるのはむしろ当たり前だ」と開き直ったような言い訳をした上で、「私はできると思っているけれど、党内でしっかり合意が形成できるよう努めていきたい」と答えるしかありませんでした。
参院では公明党抜きでは改憲派の勢力は3分の2に達しませんので、いまのところ改憲勢力は衆院のみで見切り発車して暴走しようていると言っても過言ではありません。

ということで、改憲情勢には大きな変化は見られませんが、衆院に限っては緊急事態下の選挙困難事態における議員任期延長を可能とする改憲の動きがじわじわと進んでいるというところでしょうか。以下、前回と同じことを書きますが、私たちはできることをやり続けるしかありません。改憲は絶対に阻止しなければならないし、それは可能だという確信を持ってこれからも声を上げ続けていきましょう。

この日の傍聴者数は前回より少なく30人強、記者も少なく3、4人でした。
委員の出席状況は、自民党の欠席者は3~4人くらいの時間が長く、他の会派では、立民の奥野総一郎氏と公明の河西宏一氏が長い時間席を外していました。(銀)

5月15日(水)13時から14時40分少し前まで、2週連続で今国会3回目の参議院憲法審査会が開催され、2度目となる実質的な審議が行われました。この日のテーマは参議院の緊急集会で、参議院の川崎政司法制局長、加賀屋ちひろ憲法審査会事務局長から説明を聴取した後、委員間の意見交換が進められました。
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「改憲勢力」会派の委員たちの緊急事態対応についての発言

衆議院の憲法審査会では、自民、維新、公明、国民、有志の会の5会派が、緊急事態時の衆院議員の任期延長を可能にする改憲の必要性を言い募り、条文案を作成する起草委員会の設置を声高に主張しています。衆院での改憲派の言い分は、参議院の緊急集会では対応しきれないような緊急事態はあり得るしそれはいつ起こるのかわからないのだから、早急に憲法を改正して議員任期の延長を定めた緊急事態条項を設けることが必要だというものです。
この日の参院憲法審のテーマはほかならぬ参議院の緊急集会でしたが、参院の地獄行こう(自・国・維・公)会派の委員たちはどのような見解を表明したのでしょうか。

まず、自民党を代表して発言した片山さつき幹事は、「あらゆる事態を想定しながら、参議院の緊急集会がしっかり機能するよう、法制面や実効面などから検討すべき事項をすべて洗い出し、シミュレーションを通して確認すべきだ。その上で、これまでの各会派の意見を整理し、参院憲法審としての考えを明確にして、議論を前に進めていく段階にある」などと述べました。「議論を前に進め」た先には議員任期延長の改憲が想定されているのかもしれませんが、この日の片山氏の発言は、その前にもっと検討しておくべきことがあるという趣旨であるように聞こえました。

驚いたのは和田正宗氏の発言で、氏は「現行憲法に緊急事態条項がないことは大きな課題である」と指摘した上で、大災害が発生して選挙の実施が長期間困難になった場合に備えて、「参議院の緊急集会で対応できるよう70日間の制約を取り払い、かつ、フルスペックの国会の機能を行使できる『スーパー緊急集会』を憲法に定めるかどうかを議論していくことが重要だ」と述べたのです。議員任期延長論とは方向性の異なる緊急事態対処のための改憲論です。
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もう一人自民党から発言した田中昌史氏は衆院憲法審の改憲派とほぼ同様の見解を披露していて、3氏の発言にはほとんど共通点がありませんでしたが、党としての方針や問題意識を役割分担して主張するというふうではなく、幹事の片山氏以外の2人はただ単に個人的な考えを述べただけのように感じました。

もう一つの与党、公明党の委員の発言は、前回までと同様に今回も衆院憲法審の同党の委員たちとは大きくニュアンスの異なるものでした。
公明党の発言者は伊藤孝江氏と塩田博昭氏でしたが、塩田氏は、「いわゆる選挙困難事態における国会機能の維持」に関して、「民主的正当性を確保するためには選挙を実施することが肝要であり、参議院の緊急集会と繰延べ投票で対応することを基本とするべきと考えている」と述べ、昨年、衆参両院の憲法審で行われた参考人質疑における長谷部恭男氏の「全国一律の投票を行うべきとの要請は憲法上強いものではない。最高裁の判例を前提として考えれば、選挙は可能になったところから順次速やかに実施すべきである」という意見を「明快、明確で傾聴すべきものだ」と評価していました。
また、こちらは衆院の公明党と共通した見解ですが、塩田氏は「憲法に緊急政令に類する規定を創設するべきとの意見があるが、緊急集会の制度が旧来の緊急勅令制度の代替として規定された経緯や、緊急集会の関与を含めて充実した緊急事態法制がすでに整備されていることを踏まえれば、それら個別法に基づく政令への委任で対応することが可能だと考えている」と指摘して、緊急政令の規定を新設する改憲に反対する立場を明確に表明しました。

日本維新の会の柴田巧氏の発言は、予想どおり衆院憲法審の維新の委員たちと同内容で、最後に「日本国憲法は施行後77年を迎えたが、この間一言一句の改正も行われていない。国民主権を掲げる日本国憲法が一度も国民の審判を仰いでいないのは、まさにブラックジョークだ」と何の意味もないことを恥ずかしげもなく述べたことも含めて、いかにも維新の議員らしかったです。

この発言は、すぐ山添拓氏(共産)に「憲法が制定以来変わることなく機能してきたのは、主権者である国民が変えるべきでないという選択をしてきたからだ」と論破されていました。私はもう一点、「ブラックジョーク」の使い方がおかしいことも付け加えておきたいと思います。この言葉の意味は、「不道徳で悪趣味な冗談。また、風刺的な冗談」(『デジタル大辞泉』による)だからです。

維新のもう一人の発言者、浅田均氏は、自然災害、感染症、武力攻撃、内乱、テロ等に加えて、「電磁パルス攻撃、サイバー攻撃、核弾頭を搭載可能なミサイルの着弾、生成AIを搭載したLAWS(自律型致死兵器システム)の暴走」等のリスクを指摘し、「緊急事態条項にテーマを絞り、審議を進めることを求める」と述べました。「衆議院だけでなく参議院もなくなってしまったら、従前の政府はどの程度の期間正当性を維持できるのか」とも言っていましたが、限りなく妄想に近い(私の感想です)発言で、どう論評していいかわかりません。

ぎもん

国民民主党の礒﨑哲史氏は、緊急事態時に参議院の緊急集会を開くことができる期間や緊急集会に与えられる権能、議員が発議できる議案の範囲等について議論が必要だと主張し、衆院議員の任期延長が必要だとまでは言わなかったものの、改憲派としての立場を明らかにしていました。

改憲に反対または慎重な立場の委員たちの意見

立民、共産、れいわ、沖縄の風、社民の委員たちからは、この日も説得力という点で改憲派の面々を凌駕する発言を聞くことができました。以下、その一部をピックアップして紹介したいと思います。

改憲派の「何があるかわからない」から議員任期延長や緊急政令、緊急財政処分を規定する改憲が必要だという抽象的に危機感をあおろうとするだけの議論に対して、現行の憲法と緊急事態法制にはしっかりとした緊急事態対応の仕組みが整備されているし、そんな改憲を認めてしまえば権力の暴走を許してしまう危険があるのだということが具体的に指摘されていることがおわかりいただけると思います。

打越さく良氏(立民):衆議院の解散から特別国会の召集まで70日と日数を限っているのは、民意を反映していない政府がそのまま政権の座にあり続けることのないようにという要請からであり、参議院の緊急集会の期間が限定されているかのように見えるのは派生的な効果にすぎないという長谷部恭男氏の解釈が妥当だ。

山本太郎氏(れいわ):1946年7月、憲法担当であった金森大臣は参議院の緊急集会がまさに緊急時のための制度だと述べており、実際に武力攻撃事態・存立危機事態対処法9条でも、緊急事態の国会承認のために緊急集会を活用することを規定している。
緊急集会ではフルスペックの国会機能が果たせないので衆院議員の任期延長が必要であるとの意見もあるが、この提案は、国民に選ばれてもいない議会にフルスペックの権限を与えようとする危険なアイデアだ。

高良鉄美氏(沖縄の風):今日は52年前に沖縄が平和憲法の下に復帰した日で、当時沖縄県民は憧れと希望を持っていたが、それは裏切られ、憧れは落胆に、希望は失望に変わった。
参議院の緊急集会の制度は、国家権力の乱用を抑え、緊急時には参院だけでも民主的に国会の権能を行わせる形を取り入れたものであり、人の支配ではなく法の支配でなければならないことを見事に説明している。衆議院の議員任期延長の問題で、権力が目的のために自ら憲法を変えるのは、法の支配にもとるものだ。

福島みずほ(社民):参議院の緊急集会は、一時的、限定的、暫定的制度であるから議員任期の延長が必要だと衆議院で主張されることがあるが、緊急事態に対処する際には、臨時の暫定的措置にとどめることが、緊急事態の恒久化や行政権力の乱用を防ぐために重要だ。例えば、政府が戦争を始めた場合、国民が反対でも政府・与党が間違いを認めず、衆院議員が任期延長で居すわることを許せば、戦争をやめたいという国民の意思は反映されない。
緊急集会と比較した場合、現在主張されている衆院議員の任期延長の憲法改正案は、できる限り早期に総選挙を実施しようとするインセンティブが働きにくい。憲法の基本原理に反し、不必要で危険であり、緊急事態条項を憲法改悪で実現する布石ではないか
緊急政令は憲法41条の国会は唯一の立法機関だという規定を踏みにじり、緊急財政処分も国会の予算の承認権を侵害するものだ。災害時には繰延べ投票が可能であり、憲法を変える必要はない。
なるほどマーク

この日の審議で私が一番感心したのは、川崎参院法制局長に対する質疑を巧みに織り込みながら展開された山添拓氏(共産)の意見表明です。以下、要約して紹介します。

山添:日本国憲法に参議院の緊急集会を導入することについて、憲法制定議会では民主政治を徹底させて国民の権利を十分擁護するためだと説明されている。明治憲法における緊急勅令や緊急財政処分等の政府の専断だけでなく、あらかじめ国会に常設委員会を設置して対応するという案も排除した。
こうした経緯を踏まえると、緊急集会が民主政治の徹底を趣旨とするのは、緊急時であってもその対応は民主的に選ばれた議員によることを要求するものと理解すべきではないか。

川崎政府の側が緊急事態時の対応として民主政治の徹底を強調したのは、ご指摘のとおり憲法の緊急勅令、緊急財政処分等の制度が民主主義の運用上遺憾な結果を生じたという反省に立ったもので、国会をいつでも開き得る体制を整えて対応する必要があることを述べたものと解することができる。そしてそのことが参議院の緊急集会制度の導入の理由ともなったと考えている。

山添:選挙が長期間、広範囲で行えない場合は緊急集会では対応しきれないと指摘されるが、現行法には繰延べ投票の制度がある。阪神・淡路大震災でも東日本大震災でも全国的に選挙が困難となる事態は起きなかった。能登半島地震ではいまだに深刻な被害が続き政府の対応の不十分さが指摘されるが、だからこそ選挙で民意を問うことが重要だ。
最高裁が選挙権の制限はやむを得ないと認められる事由がなければならないとしていることに加えて、緊急集会は民主政治の徹底を趣旨とすることを踏まえると、緊急集会が必要となる事態においてもできるだけ速やかに衆院議員の総選挙を実施して選挙権の行使を可能にすることを要求するのが憲法の趣旨と考えるが、法制局の見解をうかがう。

川崎:憲法54条1項は衆院解散の日から40日以内の総選挙、その選挙の日から30日以内の国会の召集を求めている。これはできるだけ速やかな新しい衆院の構成や国会の成立を求めるものであり、それは選挙が物理的に可能である限り状況の如何を問わないものと解することができる。

山添:総選挙が広範囲で実施できない期間が長く続くことをことさらに想定し、選挙権の制限を正当化する衆院議員の任期延長論は国民主権の基本を踏まえないものだ。総選挙を速やかに実施できるようにする法整備の必要性や内容は議論に値するが、それを改憲の材料にするのは不当であり、必要でもない。

中曽根弘文会長(自民)のとんでもない議事運営

この日の審査会では福島みずほ氏が最後の発言者になりましたが、その終盤でこんなことがありました。
委員の発言時間は1人5分以内とされていましたが、福島氏がそれをほんの少し超過したところで(後で『参議院インターネット審議中継』で確認すると20秒も経っていませんでした)、中曽根弘文会長(自民)が「時間が過ぎているのでまとめてください」と言って発言をさえぎろうとしたのです。しかも、審査会の冒頭、中曽根氏自身がこの日の「所要は1時間40分を目途とする」と述べていましたが、まだその時間にはなっていませんでした。福島氏はこのとき「衆議院憲法審査会の起草委員会の設置は許されないと主張し、意見表明とします」と発言を締めくくろうとしていたので、結果的に妨害とはなりませんでしたが、会長として許されない議事の進行でした。しかも、中曽根氏の野党の委員の発言への邪魔立ては今回が初めてではなく、会長の任にふさわしくないと言わざるを得ません。

この日も短時間席を外す者はいましたが、委員全員が出席していました。
傍聴者は30人弱、記者は最初4人、途中5、6人に増えて、閉会時には3人となっていました。

参院憲法審での議論は、今のところ改憲に向けた具体的な項目や条文の検討に進むような段階ではありません。このことについて、おそらく憲法審閉会直後の取材によるものでしょうが、「参院憲法審の与党筆頭幹事の佐藤正久氏(自民)は『衆参の憲法審ではかなり温度差がある。まずは参院の緊急集会の方が充実すべき論点があるとの方向が大方の意見だ』と記者団に説明した」そうです(『産経新聞』ウェブサイトに掲載された5月15日付の記事による)。
また、もし衆院側から議員任期延長の改憲案が送付されてきても、すぐにそれを受けて参院側で審議が始まるようなことも考えにくいと思います。参院では、公明党抜きで改憲の発議に必要な3分の2の賛成を得ることはできないからです。

しばらく膠着した情勢が続くのか、あるいはそれを一変させるような事態が起こるのか、警戒を怠ることなく傍聴を続け、改憲・戦争絶対反対の声を上げていきたいと思います。
(銀)

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