7月16日(木)10時から、今国会13回目の衆議院憲法審査会が開催されました。衆院ではこの日が事実上今特別国会最後の審査会で(この後24日に14回目の審査会が開かれ、所要時間約1分30秒で事務的な案件が処理されました)、いつもとは違って各会派の代表7名が10分ずつの持ち時間で「総括的な討議」を行い、11時10分頃閉会となりました。
いつもと異なる点はもうひとつありました。それは、古屋圭司会長(自民)の発言によれば、「国民の皆様に憲法審査会の審査過程をご理解いただくため」に初めてNHKによる中継が行われたことです。普段なら開会時間ギリギリに入室する幹事たちが5分前には着席していたり、欠席する委員や審議中に議場を出入りする委員が少なかったり、隣席の委員と私語を交わしたり居眠りする委員がほとんどいなかったりしましたが、私が一番驚いたのは、畑野君枝氏(共産)が発言を始めるとき、3人ほどだったでしょうか、自民党の委員が拍手したことで、大げさに言えば空前絶後の出来事でした(発言を終えたときには拍手はありませんでした)。

今回も、まず、各会派代表の意見を簡潔に報じた『NHK』の記事を転載させていただきます。
衆院憲法審査会 今国会の審議振り返る総括的な討議
『NHK ONE』2026年7月16日(https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015178131000)
衆議院憲法審査会では、今国会の審議を振り返るとともに、今後、議論すべきテーマなどについて与野党が総括的な討議を行いました。
自民党の新藤義孝・元経済再生担当大臣は「一貫しているのは、憲法の未完成部分の完成を目指すことであり、国の基礎を強固にする改正を今こそ実現しなければならない。一刻も早い国民投票の実現に向け、最大限のスピード感で条文案づくりに取り組む」と述べました。
中道改革連合の国重徹氏は「立憲主義を政治の土台とし、権力の乱用を防ぎ、国民の権利を守ることに尽きる。憲法施行時に想定されていなかった課題が明らかとなり、改正が必要と認められる場合には真摯に検討していく」と述べました。
日本維新の会の馬場伸幸前代表は「わが国の手足を縛ってきた憲法の課題は明確だ。緊急事態条項の創設と9条改正をセットで優先し、速やかに意見集約を図って、改正条文案の作成に入ることが不可欠だ」と述べました。
国民民主党の玉木雄一郎代表は「大規模災害時の議員任期の延長などと、参議院の『合区』の解消は民主主義の基盤整備に関するものであり、優先的に取り組むべきだ。国会の閉会中も審査会を開催する必要がある」と述べました。
参政党の和田政宗国会対策委員長は「憲法は占領下に制定されたもので、国民の自由な意思に基づいてつくられたものではないので、根本的に、前文からもう一度、国民がつくり直す必要がある」と述べました。
チームみらいの古川あおい政務調査会長は「憲法の三大原理を堅持した上で、時代の変化に合わせて検討することには前向きだ。改正のメリットとデメリットを比較し、議論を進めることが重要だ」と述べました。
共産党の畑野君枝氏は「憲法は戦争につながる一切を否定していて、その核心が9条だ。国民の多くは改憲を求めておらず、9条の精神に立脚した外交と政治が求められている」と述べました。
* 引用、ここまで。
この日は今国会の衆院憲法審を振り返っての「総括的な討議」でしたので新たな論点が提示されることはありませんでしたが、委員たちはNHK総合の中継放送を意識して、張り切って発言しているように見えました。それにしても、上掲の記事でも紹介されていますが、玉木雄一郎氏(国民)が発言の最初と最後に「夏休み返上で憲法審を開催することを求める」と述べたのには驚きました。個人的な感想ですが、ほとんど実現する可能性のないことを述べる、そのあざとさというか、ずる賢さというか、抜け目のなさというか、本当にあきれました。
以下、与党の幹事の発言について、少し詳しく報告したいと思います。
支離滅裂の改憲必要論を振りかざした自民・新藤氏
与党筆頭幹事の自民党、新藤義孝氏は、「今国会、衆院憲法審では様々な論点についてテーマを絞って充実した討議を行ってきた」、「審査会として初めてとなるテレビ中継を通じて国民の皆様に私たちの議論をお届けし、憲法改正のご理解がさらに深まればと願っている」と述べた後、自民党が掲げている改憲項目である緊急事態条項の創設、国防・安全保障(9条改憲)、合区解消と地方自治、教育充実に関する改正の狙いと内容を説明し、「自民党が提案している4項目にわたる憲法改正案は、いずれも国の根幹に関わる重要事項であり、一貫しているのは、日本国憲法の未完成部分の完成を目指すことだ」と強調しました。最近の新藤氏はこの“憲法の未完成部分を完成させる”という論法を多用していますが、この後新藤氏は次のように続けました。
「今、日本の国家的課題は人口減少、少子高齢化の克服だが、働く人が少なくなっても経済を成長させ、全国どこでも安全、安心に生活できる日本を作らなければならない。そのためには大胆で徹底した構造改革による新しい国づくりが必要であり、国の形を整えて国の基礎を強固にする憲法改正は今こそ何としても実現しなければならないと考えている。」
いったい何を言いたいのか、人口減少と少子高齢化と緊急事態条項創設、9条改憲にどんな関係があるのか、論理が飛躍しすぎていてさっぱり理解できませんでした。こんな説明で「国民の皆様」の「憲法改正のご理解が深まれば」などとよく言えたものだ、私たちを愚弄するのもいい加減にしろと思いました。
2項削除の9条改憲論が受け入れられず八つ当たりした維新・馬場氏
もうひとつの与党、維新の会の馬場伸幸も、これまで発表してきた改憲原案の項目と内容を説明した上で、「今国会の議論を振り返ると、火急のテーマである緊急事態条項創設と9条改正をめぐる議論が着実に前進していると受け止めている」との認識を示し、緊急事態条項について「直ちに審査会に条文起草委員会を常設し、改正条文案の作成に着手することを強く求める」と主張しました。
その後馬場氏は国民民主党の玉木雄一郎氏の主張を取り上げ、改憲のテーマとして緊急事態における議員任期延長等と合区の解消を優先し、9条については先送りするのが現実的であるという玉木氏を「議論もせずに白旗を掲げたも同然だ。悠長に構えすぎていると言わざるを得ない」と非難しました。
そしてさらに「9条改正に対し、一部の勢力は日本が戦争する国になるといった常套句を用い激しく抵抗するが、全くお門違いだ。他国から武力攻撃されない国、日本を戦争に巻き込まれない国にするための抑止力の強化・整備に(9条改正が)不可欠なのだ」と言い募りましたが、私から見れば、馬場氏の主張こそ「常套句」にほかなりません。
そしてさらに「9条改正に対し、一部の勢力は日本が戦争する国になるといった常套句を用い激しく抵抗するが、全くお門違いだ。他国から武力攻撃されない国、日本を戦争に巻き込まれない国にするための抑止力の強化・整備に(9条改正が)不可欠なのだ」と言い募りましたが、私から見れば、馬場氏の主張こそ「常套句」にほかなりません。
この日はTV中継があったためか馬場氏の話しぶりはいつもより穏やかだったと感じましたが、それでも他会派に対する批判は聞き苦しく、不快極まりないものでした。
新藤氏も馬場氏も今国会の衆院憲法審では改憲に向けて充実した討議が行われ、議論が着実に前進したと自画自賛していましたが、以下に写真を含めて転載させていただく『産経新聞』のウェブサイトに掲載された記事の見出しは「改憲政党間の主張に隔たり顕著」となっています。
衆院の憲法審では、与党絶対多数の状況下で緊急事態条項のイメージ案が条文案に近い形で提示され、改憲手続法が附則4条2項に示された広告・資金・インターネット規制についての「必要な法制上の措置その他の措置」を置き去りにしたまま可決されてしまいましたが、参院もあわせて、まだまだ改憲を阻止する道は残されています。改憲勢力が次にどんな手を打ってくるかわかりませんが、条文案の作成、発議を許さない闘いを続けていきましょう。
憲法審査会、事実上最後の討議 改憲政党間の主張に隔たり顕著
『産経新聞』2026年7月16日
(https://www.sankei.com/article/20260716-JF7PESIOXVMB3FK4PTHUAGNNLM/)
衆院憲法審査会は16日、今国会会期末を前に憲法論議の総括を行った。この日が事実上、最後の討議となる可能性が高い。高市早苗首相(自民党総裁)が4月の党大会で憲法改正の発議に意欲を示したことを受け、今国会ではほぼ毎週の定例日に討議が行われた。だが、重視する改憲テーマは依然、与党内でも隔たりがあり、ゴールに向けて足並みがそろったとはいえない状況だ。
16日の討議は、憲法審の審議が始まった平成23年11月以来、初めてテレビ中継で放送される中、与野党が改憲への考えを改めて表明した。
与党筆頭幹事の新藤義孝氏(自民)は、自民が30年にまとめた自衛隊の明記▽緊急事態条項創設▽参院の「合区」解消▽教育の拡充-の改憲4項目に言及し「最大限のスピード感で条文案作りに取り組む」と改めて強調した。馬場伸幸氏(日本維新の会)は5月の憲法審で示された緊急事態条項の条文案のイメージに触れ、「ゴールが視界に入る位置にたどり着いた」と評価した。
ただ、改憲の方向性を巡る与党内の見解は完全には一致していない。今国会の憲法論議で維新は「戦力」の保持を禁止する9条2項の削除を主張し、国防軍の創設を訴えてきた。維新関係者は「9条という改憲の『本丸』で発議しなければ国民の賛同は得られない」と説明するが、現在は「自衛隊の明記」の主張にとどまる自民の理解は得られていない。
与党の現状を目の当たりにした玉木雄一郎氏(国民民主党)は、「テーマが拡散し、改憲項目も絞りこめていない」と苦言。すでに議論が煮詰まっている緊急時の国会議員任期延長や、参院選で隣接県を一つの選挙区とする「合区」解消に向けた改憲を優先すべきだと強調した。
新藤氏は16日の憲法審後、改憲に向けて議論が「劇的に進んだ」と記者団に強調した。ただ、今国会では議論の積み重ねは認められつつ、具体的な改憲条文起草の着手までには至っていない。憲法事情に詳しい自民ベテランは「改憲項目を絞って議論しなければ、いくら回数を重ねても結論は得られない」と懸念を示す。
テレビ中継には憲法改正の機運醸成への期待も込められたが、意見集約に向けた道のりの険しさも映し出したといえる。(大島悠亮、末崎慎太郎)
* 引用、ここまで。
この日の傍聴者は50人強、記者は3人ほどで、いつもより少なめでした。そしてNHKのTVカメラが複数入っていました。(銀)

