7月9日(木)10時から、2週間ぶりに今国会12回目の衆議院憲法審査会が開かれました。毎週定例日の開催が定着している衆院憲法審が前週の2日に行われなかったのは、この間、衆院議員の定数削減と「副首都」の整備に関する2法案に全野党が反発し、国会が空転していたためです。

冒頭、古屋圭司会長(自民)は、「本日は合区・地方公共団体を中心とした論点深掘りのための討議を行います」と述べました。「深掘り」というのは「ピン留め」などとともに与党筆頭幹事の新藤義孝氏(自民)が多用している言い方ですが、審査会のテーマにこの言葉が持ち出されたのはおそらく初めてのことでした。憲法審の運営を主導してきた新藤氏の意向によるものだったのでしょうが、私は、図らずも憲法審での議論、特に改憲派によるそれがいかに表面的・皮相的なものであるかを暴露することになったのではないかと思いました。

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この日も通例にしたがいまず各会派の代表が1人ずつ7分以内で、続いて他の委員が5分以内で見解を表明し、前半7名、後半6名の計13名が発言して11時20分過ぎに散会となりました。なお、後半6名の顔ぶれは、このところずっと自民3名と中道、維新、国民各1名となっています。

今回も、まず、前半の各会派代表(中道は会派を代表して見解を述べた國重徹氏ではなく後半に発言した泉健太氏)の意見を簡潔に報じた『NHK』の記事を転載させていただきます。

衆院憲法審査会 「合区」や自治体テーマに2回目の討議
『NHK ONE』2026年7月9日(https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015172671000)

衆議院憲法審査会では、参議院の選挙区で導入されている「合区」や、自治体のあり方をテーマにした2回目の討議が行われました。
この中で、
自民党の新藤義孝元経済再生担当大臣は「市町村と都道府県を憲法に明確に位置づけ、選挙区を設定する際に、民意を適切に反映するエリアの根拠を明確にすべきだ」と述べました。

中道改革連合の泉健太憲法調査会長代理は「『合区』解消は投票価値の平等との両立で難しい課題を抱えている。衆参両院の協議会で丁寧に議論し、一体で結論を得ていくべきだ」と述べました。

▽日本維新の会の西田薫氏は「将来の道州制を見据え、参議院選挙は人口規模や地域の実情を踏まえたブロック制の導入が必要だ。根本的な『合区』の解消こそ望ましい」と述べました。

国民民主党の飯泉嘉門氏は「地方自治に関する憲法の規定の充実が不可欠だ。具体的な成果として『合区』解消を成し遂げることが求められている」と述べました。

参政党の和田正宗国会対策委員長は「地方の声が切り捨てられないことを重視すべきで、『合区』を生じさせないための改正には賛成する」と述べました。

▽チームみらいの古川あおい政務調査会長は「『合区』の扱いは二院制の設計に関わる。参議院に何を期待するのか確認することから始めるべきだ」と述べました。

共産党の畑野君枝氏は「制度を強行的に決めた責任を棚に上げ、『合区』解消を理由に改憲を主張するのは認められない」と述べました。
* 引用、ここまで。

地方自治の課題をめぐる中道・國重氏の意見表明

記事の見出しや最初の段落にあるように、「合区・地方公共団体に関する集中的な討議」が行われた前回に続き、この日は合区や自治体をテーマとする2回目の討議となりました。論点が「深掘り」された印象はほとんどありませんでしたが、そんな中で中道の國重徹氏は、地方自治の課題をめぐってなかなか聞き応えのある意見を表明していました。論点が多岐にわたり簡単に要約することが難しいのですが(NHKの記事で取り上げられなかったのはそのためでしょう)、一部紹介します。

「地方自治を考える上で確認すべき転換点は、国と自治体の関係性を大きく変えた2000年の第1次地方分権改革だ。その核心となったのは機関委任事務の廃止で、国と地方の関係を上意下達から対等協力へと位置づけ直した。当時、これからは地方の時代だと言われ、地方自治の現場には大きな希望が満ちあふれていた。

他方、地方は財政上の課題を抱えており、自治体は多くの仕事を担いながら常に財源が不足し、国の補助金や地方交付税に頼らざるを得ない状況だった。そこで2001年に地方分権推進委員会が取りまとめた最終報告で課題の一つとされた地方財政秩序の再構築について、小泉政権の下で補助金、地方交付税、税源移譲を一体で見直す三位一体改革が行われたが、結果として2004年予算の地方交付税等は約3兆円も削減され、予算が組めなくなるとの衝撃が自治体関係者に広がった。その後人口減少、過疎化、担い手不足も重なり、現在の自治体にはもはや2000年当時のような熱気はなく疲弊を極めている現場は少なくない。

そのような地方の現状に憲法の地方自治に関する規定は十分に対応できているのかという観点から、次のような憲法上の論点が指摘されている。
まず第一に、地方自治の理念である“地方自治の本旨”から導かれる住民自治と団体自治の具体的な内容が憲法に明記されているわけではなく、多くが解釈や法律に委ねられてきたため、これらの内容を憲法上どの程度明確化する必要があるかという論点がある。
第二に、国と自治体の役割分担について、地方自治の本旨の三つ目の内容ともされる補完性の原則、すなわち公的な役割は原則として住民に最も身近な市町村などの自治体が優先的に担い、それだけでは対応が難しいものや広域的、全国的に処理すべきものを都道府県や国が補うという考え方を憲法上規定する必要があるのかどうかが論点になる。
第三に、自治体の組織のあり方で、首長と議会議員の双方を住民が選ぶ二元代表制、また基礎自治体と広域自治体の二層制というあり方を人口減少や都市集中といった現代の課題を踏まえてどう考えるか、これは特別区や特別市の議論とも関わる問題だ。
 第四に、自治体の権能。条例制定権のあり方を再検討する必要があるか、また課税自主権を明記する必要があるかという論点であり、後者については基本的な行政需要を満たすための財政基盤を確保するため自治体間の財政調整制度や国による財政上の措置のあり方なども検討する必要がある。

これらの憲法上の論点について考える前提として重要になるのは、地方自治はどうあるべきか、国と地方の関係をどう設計するのかという視点であり、地方の多様性と全国的な平等性のバランスをどのように考えるのかは国の形に係る大きな議論になる。
その上で、地方自治のあるべき姿を実現するため、これまでと同様に法律改正で対応するのか、憲法改正まで必要なのかを順序立てて検討すべきであり、結論ありきではなく国民生活に直結する問題として真摯に議論することが重要だ。」

まさに「お説ごもっとも」という感じですが、國重氏は課題を指摘するのみで改憲の要否や内容については語っていません。なにより、せっかく戦後憲法に規定された「地方自治の本旨」が、歴代自民党政権によって骨抜きにされてきている現実についてどう考えているのでしょうか。

とりわけ、沖縄県に対して国は、辺野古新基地建設をめぐって「地方自治の本旨」「沖縄県民の民意」を無視した暴挙を次々と行ってきました。特に海底の軟弱地盤を理由とした沖縄防衛局の工事の設計変更申請を沖縄県が「不承認」としたことに関しては、県に代わって国が承認する「代執行」のために沖縄県を提訴することまでやりました。沖縄県民の戦争絶対反対の民意、沖縄県の「平和の地方自治」を守り抜こうという意思を踏みにじる許しがたい行為です。
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この日中道からもう一人発言した泉健太氏は、「地方自治の本旨については、是非、憲法への明記の方向で議論したい」と述べていましたが、自民党をはじめとする改憲勢力がそうした議論に応じる可能性は全くありません。中道が党内で憲法と地方自治の検討を深めることを否定しようとは思いませんが、今の自民党の改憲案にはキッパリと反対すべきだと思います。

ところで、自民党の改憲案「条文イメージ(たたき台素案)」は合区を解消したいがためにひねり出された薄っぺらなもので、國重氏の指摘したような課題について検討された形跡は全くありません。

第47条
 両議院の議員の選挙について、選挙区を設けるときは、人口を基本とし、行政区画、地域的な一体性、地勢等を総合的に勘案して、選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数を定めるものとする。参議院議員の全部又は一部の選挙について、広域の地方公共団体のそれぞれの区域を選挙区とする場合には、改選ごとに各選挙区において少なくとも1人を選挙すべきものとすることができる。
 前項に定めるもののほか、選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。
第92条
 地方公共団体は、基礎的な地方公共団体及びこれを包括する広域の地方公共団体とすることを基本とし、その種類並びに組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める。


自衛隊の活動や権限について説明した自民の委員たちの狙いは?

この日のメインテーマは「合区・地方公共団体」でしたが、改憲派の委員たちはそれを無視して9条の改憲について発言していました。会派代表として意見を述べた新藤義孝氏(自民)と西田薫氏(維新)はそれぞれ持ち時間7分のほぼ半分を自党の9条改憲案の説明に費やし、後半に発言した本田太郎氏と下村博文氏(いずれも自民)は2人とも持ち時間5分全てを使って現行法制下で自衛隊に認められている行動についての彼らの見解を縷々述べていました。

新藤氏と西田氏の発言は、これまでの審査会での玉木雄一郎氏(国民)の質問に答えるものでしたが、本田氏と下村氏は現行法制度の下での自衛隊の活動や権限について詳細な説明を展開しました。私が特に重要だと感じたのは、下村氏の次のような発言でした。
自衛隊は、外国からの武力攻撃があった場合、我が国の存立と国民の生命、財産を守り抜くために必要かつ十分な武力行使は原則として何でも可能であり、できないことは国際法上できないことのみに限られていて、諸外国の軍隊と全く同様の典型的なネガティブリスト方式となっている。このことは大変重要な点なので、憲法審でさらに議論を深めていただくことが必要である。」

これを聞いたときには、なぜ今日の憲法審でこんなことを言いだしたのかと疑問を感じたのですが、その後、これは9条改憲について意見を異にする維新の会に向けた発言だったのではないかと考えるに至りました。
維新は9条2項を削除して集団的自衛権を全面的に容認し、国防軍の保持を明記する改憲案を主張していますが、自民はそこまでする必要はなく、9条の2を新設してそこに9条の規定は必要な自衛の措置を妨げず、そのための実力組織として自衛隊を保持すると明記すれば十分なのだと強調し、維新を説得しようとしているのではないでしょうか。
この見方が当たっているかどうかわかりませんが、いずれにしても自民党が9条の改憲を最優先課題の一つとしていることは間違いありません。

憲法審査会の中で改憲派は「外国からの武力攻撃があった場合」としか言いませんが、現にいま頻繁に行われている米軍と自衛隊の大規模な対中国の軍事訓練は、中国から見れば極めて挑発的な「威嚇」となるのではないでしょうか。高市政権は「攻められたら」ではなく、再び「日本が攻める」戦争を構えていると言えます。すでに戦争への過程が始まっています。始まる前に戦争をとめましょう!
9条改憲を絶対に阻止しましょう。
20260623琉球新報

(6/23付 琉球新報より)

この日の傍聴者は、開催が確定したのが前日の遅い時間になったことが影響したのか、今国会では最も少なく30人弱でした(11時過ぎになって10人ほどのグループが入ってきました)。記者はいつもと同じく3~5人ほどいましたが、大手メディアの報道は少なかったように思います。(銀)