先週に引き続き、6月10日(水)に今国会5回目の参議院憲法審査会が開かれました。今回も審議テーマは「緊急事態対応」についてでした。
最初に憲法学者2人(長谷部恭男・早稲田大学法学学術院教授と只野雅人・専修大学大学院法務研究科教授)から意見陳述してもらい、そのあと8会派からの質疑がありました。
参院憲法審

長谷部教授は、5月14日(木)に衆議院憲法審査会に提出された「緊急事態条項」イメージ案をそのまま資料として配布し、「こうした改正は必要ない」という考えを示しました。また、只野教授も基本的に同様でした。

衆議院憲法審査会では、すでにこのイメージ案を土台に「概ね合意を得られると見なせる“ピン留め”整理」(自民党)が行われ、「条文化を積極的に進めるべき」(日本維新の会)と与党による改憲発議へ向けた審議が進んでいますが、それがいかに異様な事態であるかを浮き彫りにするものでした。

以下、2人の参考人の意見表明の中で、なるほどと思った点を紹介します。

改憲派が主張する「70日上限説」について

憲法54条はその1項で、「衆議院が解散されたときは、解散の日から40日以内に衆議院議員の総選挙を行い、その選挙の日から30日以内に国会を招集しなければならない」と定め、2項でその期間に国に緊急の必要があるときは、「内閣は、参議院の緊急集会を求めることができる」しています。
改憲派はこれの1項を根拠に「参議院の緊急集会で国会の機能を代行できるのは40日プラス30日の70日が上限」とし、それ以上の長期にわたる場合を「選挙困難事態」と認定して議員任期を延長する条項を「新設」すると主張しているのです。

これに対し長谷部教授は、「1項で日限を設けているのは、内閣が衆議院を解散したまま総選挙をいつまでも行わないとか、総選挙を実施したが、その結果が自分たちにとって思わしくないという理由で新たな国会をいつまでたっても召集しない、そういった事態を避けるためである」と指摘し、だから、40日プラス30日は「政府の居座りを許さないための数字であり、緊急集会の機能の時間的な限定を狙いとしているものではない。」と断言しました。

緊急時、議員任期延長の新設について

只野教授は、「一部の地域で選挙ができないというようなことはあるかもしれないが、長期にわたって全国的に選挙の実施ができないということはなかなか想定しがたい。長引くとしても、まずは必要なら緊急集会を開いて、その後70日後までに衆議院をつくり直して、国会として対応に当たっていくということで十分であろう。その先まで考えようとすると例外的な対応を長引かせることになる。」と述べました。

長谷部教授も「総選挙の実施を暫時延期しつつ可及速やかに総選挙の実施に努めることで問題は解決可能なはず」と言われ、逆に「任期が延長された国会議員は一体いつまで議員でいることになるのか」と懸念を呈しました。

緊急政令・緊急財政処分新設について

イメージ案のⅣとして、これまでの憲法審査会でほとんど議論されてこなかった内閣の緊急政令・緊急財政処分の条項案が形になって出されてきました。
これについては長谷部教授がまず「極めて不穏当と考える」と述べて、「国会で法律の制定を待ついとまがないと認めるのは恐らく内閣になろうが、内閣のみの判断で国会での審議と議決を省略し、政令で法律を次々と変更できるということになると、日本という国の在り方自体が根本からゆがめられるリスクがある。」と論じました。

そして、「国会による予算の議決を待ついとまがないという状況については、すでに予見し難い予算の不足に充てるため予備費があり(87条)、それで対応することが可能だし、それでも対応し得ない事態が生じたときには緊急集会等で暫定予算の議決を求めるべき」と指摘しました。

只野教授は「緊急の事態が広がる場合でも緊急集会による対応が許容されるのではないか。」と述べ、「緊急集会に限らず通常とは違う例外的な扱いをする場合、例外を例外にとどめるための対応を国会としてしっかりやっていく必要がある。現に、いろいろな事態が起きるとそれを踏まえて法改正が行われており、緊急事態に関する条項というのはたくさんある。」と述べました。

「緊急事態条項」は必須の制度か?

質疑応答の中で、上記小見出しのような質問に対し、2人の見解は下記のようなものでした。
「現代の日本の憲法には緊急事態条項はあると考えている。それは参議院の緊急集会制度でり、現在のところこれで十分間に合うのではないか。」(長谷部教授)
「日本国憲法の場合には、正面から緊急事態を規定していない。各国の緊急事態条項を見回しても、憲法に詳細な規定を設けている場合もあれば、必ずしもそうじゃない場合もある。しかし、そうじゃない場合というのは対応を考えていないのかというと、通常はそう考えないわけです。日本国憲法の場合も、54条を手掛かりにすると、一定の対応をそこから引き出すことができるんじゃないかと考えます。」(只野教授)


緊急事態条項の新設は必要ないという憲法学者のまっとうな意見を聞いていて、5月14日(木)の衆議院憲法審査会での日本維新の会・馬場伸幸議員の発言を思い出しました。
「憲法学の世界で参議院の緊急集会の役割・機能について諸説あることは承知しているが、ここは学校ではない。立法府に求められているのは、真に国民と国家の利益にかなう制度は何かという観点であり、無意味なイデオロギー闘争や院のメンツは排除されるべきだ」(5/20付け「傍聴記」より)

国会議員にあるまじき憲法蔑視の考え方であり、聞いていて怒りが沸きましたが、それ以上に、こうした暴言が公然となされ、その場にいた議員の誰一人これに断固抗議の声をあげないということに衝撃を受けました。これが衆議院憲法審査会なのです。みんな「国益」優先なのです。これが高市政権と総翼賛の国会の実態なのです。

怒りを持って弾劾し抜きましょう!
始まっている対中国の戦争体制のための改憲マシン=憲法審査会を止めようの声を広げましょう!
怒りの声で国会を包囲しましょう。(S)