4月23日(木)10時から、今国会4回目の衆議院憲法審査会が開催されました。
この日は、前回の審査会で与党筆頭幹事の新藤義孝氏(自民)が提案した「緊急事態条項に関する集中的な討議」が行われ、各会派から1人ずつ7名が持ち時間7分間で意見を表明した後、7名の委員が制限時間5分で発言し、11時20分過ぎに散会となりました。なお、前半に意見を述べた玉木雄一郎氏(国民)と和田政宗氏(参政)は、後半にも古屋圭司会長(自民)から「特例」として発言を認められたので、この日の発言者の実数は12名でした。

yurusuna
最初に、各会派代表の発言が全て紹介されていた『NHK ONE』と『日テレNEWS』の記事を一部転載させていただきます。▽は『NHK』、○は『日テレ』の記事です。各会派代表の主張の要点をつかむことができると思います。

▽衆院憲法審査会 緊急事態条項に関する集中的な討議を開催
『NHK ONE』2026年4月23日
▽ 衆議院憲法審査会では、緊急事態条項に関する集中的な討議が行われました。自民党は、具体的なイメージを明らかにして議論を行うことを提案したのに対し、中道改革連合は、国会機能を維持する観点から参議院との関係も意識しながら議論を進めることが重要だと指摘しました。

○衆・憲法審査会「緊急事態条項」集中討議 各党の意見は
『日テレNEWS』2026年4月23日
○ 衆議院では23日、憲法審査会が開かれ、大規模災害などの際に政府の権限を強化することなどを可能にする「緊急事態条項」に関する集中的な討議が行われました。
この日は、「緊急事態条項」の中でも、特に国会の機能維持について議論されました。

(以下、各委員の発言です。)
▽ 自民党の新藤元経済再生担当大臣は「緊急事態条項は大規模自然災害などの事態の発生により、国政選挙の適正な執行が困難になることを想定している。議論をピン留めする意味でも、次回の審査会で具体的なイメージを明らかにしてはどうか」と述べました。
▽ 中道改革連合の国重徹氏は「国会機能維持という問題意識のもと、臨時国会の召集期限や解散権行使のあり方も議論する必要がある。緊急集会の機能拡充などは、参議院との関係も十分に意識しながら議論を進めていくことが重要だ」と述べました。
○ 日本維新の会の西田議員は、参議院の緊急集会は、本来、暫定的かつ限定的な制度で、長期にわたる国政運営を担うことを予定していないと述べ、緊急事態条項に関する憲法改正について具体的な目標となるスケジュールを示す必要性を強調しました。
▽ 国民民主党の玉木代表は「起草委員会を設置し、選挙困難事態での国会機能の維持を可能とする条文案づくりを提案する。災害時の議員任期延長など民主主義の基盤をなす制度に関わる論点は合意が得やすい」と述べました。
○ 参政党は、「議員任期の延長といった各論は、付け焼き刃的改正になるのでは」と懸念を示し、議員任期の延長については、憲法全体を見直す中で必要性を議論すべきだと強調しました。また、緊急事態条項の対象に、「感染症のまん延」が含まれることについては、「人工ウイルスが作られ、緊急事態が演出できるとなれば、人為的に国民の権利を制限することが可能になる」として反対しました。
▽ チームみらいの古川政務調査会長は「緊急事態条項全般について議論を始めると各論点がピン留めされないまま時間が経過してしまう。まずは選挙困難事態における国会機能維持に絞って議論を始めるのが現実的だ」と述べました。
▽ 共産党の畑野君枝氏は「緊急事態条項は国会の権能を奪って内閣に権力を集中させ、人権の制限を可能にする憲法停止条項で歴史の教訓に逆行する。災害時などは参議院の緊急集会で対応すべきだ」と述べました。
* 引用、ここまで。

自民・維新は、次回憲法審で「イメージ案」明らかにと要求

今回の「緊急事態条項に関する集中的な討議」は与党筆頭幹事の新藤義孝氏(自民)の提案を受けて行われたものでしたが、氏はこの日、さらにたたみかけるように「現時点における緊急事態条項の議論をピン止めする意味でも、次回の審査会において何らかの具体的なイメージを明らかにしたらどうか。その内容については、本日の討議を踏まえ、今後筆頭間で協議させていただきたい」と述べました。

 これに対して、維新の会の西田薫氏が「深く賛同する」と応じたのは「さもありなん」というところでしたが、中道改革連合の國重徹氏が「まずは緊急事態条項について集中的に議論を深めていくことには賛同する」と発言したのには本当に失望し、「やっぱりそうなのか」とも思いました。

「緊急政令、緊急財政処分」の内容に踏み込む

さらにこの日、国民民主党の玉木雄一郎氏やチームみらいの古川あおい氏は選挙困難事態時の国会議員の任期延長に絞って議論すべきだと指摘しましたし(玉木氏は条文起草委員会の設置と条文案づくりの着手まで主張しました)、後半の自由討議で発言した河西宏一氏(中道)は「緊急政令、緊急財政処分は議員任期延長とは異なる次元の論点であり、個別発議の原則に照らして別個に検討されるべきだ」と述べていました。

ただ気になったのは、河西氏が「内閣に白紙委任的な緊急政令制定権、緊急財政処分権を認めることは、国の唯一の立法機関たる国会の責任放棄につながりかねず、認めるべきではない」と主張しながら、「仮に憲法に規定するとしても、41条の例外規定ではなく、内閣は、あらかじめ法律の定めるところにより、当該法律で定める事項に係る政令を制定し又は財政上の支出その他処分を行うことができる旨の確認規定にとどめるべきだ」とも述べていたことです。

2830

またこの発言の後、玉木氏も「緊急政令に関して、書き方は2つある。今中道改革連合からもあったけれども、緊急政令を確認事項として書くということと、議会を開くいとまがないときにはとして一般的に書くということ。これもずっと言われてきた議論だ」と言い、「自民党で緊急政令というのであれば、それはどういう場合なのか」と問いました。この質問については、古屋圭司会長が「幹事会で協議の上、対応を決定させていただく」と引き取りました。

その後、事態はさらに悪い方に進んでいます。『NHK ONE』の記事をもうひとつ転載させていただきます。

衆議院憲法審査会 緊急事態条項の具体的なイメージ案作成へ
『NHK ONE』2026年4月28日

衆議院憲法審査会の幹事懇談会が開かれ、緊急事態条項についての議論を深めるため、来月中旬までに衆議院の事務局が条項のイメージ案を作成し、それをもとに討議を進めていくことで与野党が合意しました。
衆議院憲法審査会は28日午前幹事懇談会を開き、先週23日に緊急事態条項に関する集中的な討議を行ったのに続き、今後の討議の進め方について意見を交わしました。
この中で与党側は、議論をさらに深める必要があるとして、衆議院の事務局や法制局に緊急事態条項のイメージ案の作成を求めることを提案しました。
これに対し中道改革連合や国民民主党は「国民への議論の可視化につながる」などとして応じる考えを示しました。
そして、来月12日に開く次の幹事懇談会までに、事務局が条項のイメージ案を作成し、それをもとに審査会で討議を進めていくことで合意しました。
一方、オブザーバーとして参加した共産党は反対しました。
* 引用、ここまで(太字強調は引用者)。

「条項のイメージ案」がどのようなものを意味しているのかわかりませんが、「条項」というからには、これまでの議論を整理しただけの資料ではなく「条文案」に近いものになるのでしょうか。議員任期の延長だけなのか、緊急政令や緊急財政処分も含むのかも気になります。

いずれにせよ、幹事懇談会で反対したのはオブザーバーの共産党だけ(「付け焼き刃的改正」だと言っていた参政党はどういう態度を取ったのでしょうか)という国会内の厳しい現実にしっかり向き合って、「国論を二分するような」改憲阻止の運動を盛り上げていかなければなりません。

なお、立憲民主党の武正公一氏が会長に就いていたときは定例日の木曜日に審査会か幹事懇談会を開くことが多かったのですが、今国会では火曜日に幹事懇談会を開き木曜日に審査会を開くというパターンが定着しつつあるようです。審査会の開催回数が増えるだけでなく幹事懇談会は密室で非公開で行われるという大問題がありますので、これについても反対の声を上げていきたいと思います。

「NHKで中継を」衆院憲法審査会で要望も…かつて示された局側の見解に議員から失笑ザワつき

上記の小見出しは、この日の憲法審査会について報じた『日刊スポーツ』の記事の見出しです。スポーツ紙らしい目の付けどころだと思いました。

会議中に維新の会の馬場伸幸氏や阿部圭史氏が委員席の後方に控えていた橘幸信氏(昨年12月に衆議院法制局長を退任したあと、この1月から同局特別参与に就いています)のところに近づき何やら相談していると思ったら、今度は橘氏が馬場氏とともに新藤氏のもとへ行って打ち合わせするなど怪しい動きをしているなと観察していると、後半の自由討議で阿部氏が橘氏に次のような質問をしたのです。

「(憲法審査会の)NHK中継について提案したい。主要会派は皆賛同している。(かつてNHKに中継を要望した際に)幹事会にはNHKから返答があったと理解しているが、この場でも共有していただきたい」

これに対して、橘氏は次のように答えました。
「2024年12月13日、幹事会で馬場幹事からNHKに中継を申入れるべきとの発言があり、憲法審査会事務局がNHKからヒアリングしたところ」、「NHKとして明確な基準は設けていないが、国会中継には概ね4つの類型がある。①施政方針演説や所信表明演説とそれらに対する代表質問、②予算委員会の基本的質疑の一巡目、③予算委員会の集中審議で特に国民の関心が高いもの、④その他国民の関心が高いテーマで理事会等から全会一致での要請があることなどを総合的に勘案するということ」で、「NHKとしては、現状では憲法審査会に対する国民の関心は通常の番組編成を変更して国会中継を行うほど高くない、という認識が表明され」、「それが幹事懇談会に報告され、当時の枝野幸男会長より、国民の関心が高まるよう憲法審査会で議論を重ねよう、NHKへの要請は改めて幹事会で協議することとしたいという形で収まったものと承知している。」

このやり取りの前には玉木雄一郎氏(国民)が「NHK中継を是非お願いしたい」と言っていましたし、和田政宗氏(参政)もこの後に「NHKのテレビ中継をしっかり求めたい」と述べましたが、玉木、阿部、和田の各氏は、自らの発言がNHKでの中継に値する、そして中継されれば改憲の気運が高まると認識しているのでしょうか。私は自信過剰ではないかと思いますが、最近の選挙運動におけるSNSの利用とその影響などを見ていると、そうとも言い切れないのかいう気もします。

なお、憲法審査会に限らず、国会での審議の様子は、過去の会議も含めて、衆議院、参議院の『インターネット審議中継』で視聴することができますので、がっかりしたり腹が立ったりすることが多いかもしれませんが、一度はご覧になるといいと思います。

この日、議場で取材していた記者は5人ほどでしたが、傍聴者は前回より大幅に多い60人弱が集まりました。改憲への動きに危機感を抱く人々が増えている現れだと思います。(銀)