今国会での2回目の参議院憲法審査会が4月22日(水)に開かれました。前回(4/15)に引き続きテーマは「参議院議員選挙における一票の較差について」で、具体的には「合区制度の矛盾にどう対応すべきか」というものでした。
私は最初はこのテーマはそれほど重要ではないと軽く思っていましたが、この日の審議で「そうでもない」と考えるようになりました。衆議院憲法審査会で改憲派が大震災などの「緊急時の国会運営の重要性」から入って憲法に緊急事態条項新設をねじこもうとしているように、参議院では違憲状態が問題にされている「合区問題」(選挙制度)から入って憲法の「地方自治」の考え方に手を入れようとしているからです。

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この日は最初から参考人2人から意見表明を受け、その後それぞれの会派の考え方に基づいて質疑応答するという形で進められました。
参考人は下記の2人です。
①上智大の上田健介教授(憲法)
②神戸大大学院の砂原庸介教授(政治学)

参考人発言の簡単な要旨は下記のとおりです。

参院の在り方も議論を 憲法審、合区で参考人質疑
『時事ドットコムニュース(時事通信 政治部)』2026年04月22日

参院憲法審査会は22日、参院選挙区の「合区」の見直しを巡り参考人質疑を行った。参考人からは参院の在り方や、衆院との権限の差別化なども併せて検討する必要があるとの意見が出された。

参院選挙区の基本は都道府県単位だが、「1票の格差」是正のため、人口の少ない隣接県を統合する合区が「鳥取・島根」と「徳島・高知」で導入されている。

上智大の上田健介教授(憲法)は選挙区について「都道府県代表というのが基本的な考え方だが、合区対象の(一方の)県からは選ばれていないという不平等がある」と指摘。参院を各界や地方の代表者と位置付け、立法に関する決定権限を衆院より弱くすれば、最高裁による1票の格差是正の要請を回避できる可能性があるとの見解を示した。

神戸大大学院の砂原庸介教授(政治学)も参院を「地方の利益や意思を反映する機関」とした場合、「人口比例とは異なる代表原理が正当化される可能性がある」と述べた。
*引用、ここまで。

各会派の質疑の要点を的確に押さえた記事を紹介します。

改憲で合区解消「国民理解得やすい」「憲法照らし疑念」 参院憲法審
『朝日新聞デジタル』2026年4月22日

参院憲法審査会は22日、参院選の「一票の格差」をめぐり参考人質疑を行った。「徳島・高知」「鳥取・島根」の「合区」の解消をめぐり、自民党と日本維新の会の与党のほか、国民民主党も改憲を視野に入れる立場をとったのに対し、立憲民主党は改憲に慎重な姿勢を示した。

自民は2018年にまとめた改憲4項目で、合区解消や各都道府県からの議員選出を掲げる。自民の藤井一博氏は改憲による合区解消を念頭に「都道府県という単位は帰属意識を持った共同体として受け継がれてきたものだ」と訴えた。

国民民主の原田秀一氏も「憲法改正が必要であるならば、ためらうべきではない」と述べた。同党の玉木雄一郎代表は21日の会見で、改憲による合区解消について「国民の理解を比較的得やすい分野で、与野党そろって賛同しうるものではないか」と述べた。

一方、立憲の山内佳菜子氏は、憲法が保障する「投票価値の平等」を踏まえて合区解消のための改憲に慎重になるべきだと指摘。改憲論について「憲法の基本原理などに照らして強い疑念を呈さざるを得ない」と強調した。
*引用、ここまで(太字は引用者)。

なぜ、合区解消の改憲なのか?

これは、そもそも自民党が2018年3月に「憲法論議のたたき台素案」の中にあるということです。たたき台素案は、①自衛隊明記、②緊急事態対応、③合区解消・地方公共団体、④教育の充実、の4つです。

「合区選挙区」というのは、参議院選挙で問題とされた憲法第14条「法の下の平等」との関係で「一票の較差」を是正しようとしたもので、都市部の定数を大幅に増やすのではなく地方の定数を減らすということで、人口の少ない県同士を合区にし2013年の参議院選挙から導入されたものです。
しかし、これでも矛盾が解決されずどうするかという問題として出されています。

この日真っ先に発言した自民党の古賀友一議員(審査会幹事)は、「本日、まさに、参議院自民党の憲法改正実現議員連盟が発足しました。」と報告し(後日わかったことは、この議連には90人以上が入会し、「合区」解消を主要な課題とし、月1回の勉強会や全国で国民との対話集会を開くとのこと)、自民党の改憲条文イメージとして47条(選挙制度)、92条(地方自治)について述べました。

「地方自治」改憲も狙われている

その中で、現行憲法第92条の「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める。」を下記のように変えると言いました。
「地方公共団体は、基礎的な地方公共団体及びこれを包括する広域の地方公共団体とすることを基本とし、その種類並びに組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める」
国会の章(第4章)の47条に、人口を基本としつつも、行政区画、地域的な一体性、地勢等を総合的に勘案する旨を明記するとともに、地方自治の章(第8章)において、基礎自治体と広域自治体を明確に位置づけるとしています。

この地方自治の章は、国が起こした侵略戦争に国民が総動員されていったこと、とりわけ地方の役場が国の出先機関として徴兵に関する役割を全面的に担わされたことを反省して、二度とそういうことがないよう「地方の自治」「住民の自治」という大事な考え方を憲法上に明記したものです。
そうした大事なところに、選挙制度との関係からスルっと変更を加えようとする意図が感じられ、ドキッとしました。

合区改憲に関する反対する意見

反対の立ち場からの意見としては、憲法を変えるということではなく、現在参議院の「改革協議会」で論議されていることを丁寧に進めていくことで解決するというものでした。

立憲・無所属 山内佳菜子議員
合区制度の不合理は解消されるべきだが、それは憲法改正の手段にはよらず、まずは参議院が国民のために果たすべき衆議院とは異なる独自の機能や役割の検討を求めるべき。現在、参議院の改革協議会でそうした議論が進んでいる。

共産 山添拓議員
選挙制度と組織の在り方、そして権限、これは相関関係にあるというときに、現行の憲法では、全国民代表、また、衆議院と同等の権限や役割を持たせている。
選挙制度については、参議院では参議院改革協議会が設置され、その場で各党各会派参加のもと合意形成を図っている。本来、この憲法審査会における議題としてはふさわしくない。

維新が「参議院でも緊急事態条項議論を」と提案

この日、一番びっくりしたのは、維新の会の松沢成文議員の発言でした。
ひとつは、この日の審査会でのテーマの論議とは全く無関係に、唐突に「当審査会において最も優先して討論すべきは、緊急事態条項の創設、とりわけ国会議員の任期延長と緊急政令、緊急財政措置の在り方である」「いまだ平時のテーマで足踏みしている状態は極めて遺憾」と言って、「幹事会で、緊急事態条項の優先討議を是非ともご協議ください」と幹事会で取り上げるべきと訴えたことです。
実際にどうなるかわかりませんが、憲法審査会全体を改憲発議へと押し立てる役割を維新の会は担っています。自民・維新の条文起草協議会でこうしたことが打ち合わされているのかもしれないと思いました。

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もう一つは、一週間前の審査会でのれいわの奥田ふみよ議員の「茶番」「自民党は恥を知れ」発言について、国会法を引き出して「無礼な言葉」であるとし、謝罪と取り消しを求めたことです。

これに対しては、奥田議員が自身の発言のところで取り上げ、堂々と跳ね返しました。
「憲法審査会は何より憲法25条を全国民に保障するために徹底議論しなければいけない、そんな思いから茶番という言葉になったまでです」「国会議員になって八か月、国会のしきたりに毎日驚いています。…なぜなら、余りに国会の外の生身の生活者、庶民の暮らしとかけ離れた空間だからです。国会の中に今をまじめに生きる労働者たちや主権者が全然いない。憲法審査会の幹事懇談会でうな重を食べながら次回のテーマを決めるという貴族空間に私はたたきのめされました」と言われ、最後に「自民党と維新はとにかく憲法を守れ。そして野党は全国民の平和を守るために暴走政治と真っ向から真剣に言論で闘え。そして、主権者の皆さん、ますます傍聴席を埋め尽くして、国会議員たちをしっかり憲法で縛るために歯止めをかけてください」と訴えました。
奥田議員の緊張感がひしひしと傍聴席にも伝わり、真剣勝負の意見表明に私も心から拍手を送りました。
この日、奥田議員の事務所を通じて185名の傍聴者がかけつけたそうです。狭い傍聴席は何度も入れ替え協力が呼び掛けられましたが、戦争国会が「見える化」され、とてもいいことだと思いました。(S)