4月16日(木)10時から、今国会3回目の衆議院憲法審査会が開催されました。
傍聴の報告に入る前に、12日(日)に開かれた自民党の党大会について触れておきたいと思います。
高市首相「憲法改正、時は来た」 就任後初の党大会、改憲発議に意欲
上の小見出しは、党大会の模様を報じた『朝日新聞デジタル』の記事のタイトルをそのまま借用させていただいたものですが、大会の終盤に行われた『総裁演説』で、高市早苗首相・自民党総裁は、「憲法改正」について次のように述べました。自民党ホームページから該当する部分の全文を転載します。
私たち自民党は、立党から70年、憲法改正の旗を掲げ続けてまいりました。「自主独立の権威の回復」に向けて、日本人の手による自主的な憲法改正は、わが党の党是です。自民党立党直後の所信表明演説で、初代総裁である鳩山一郎総理は次のようにおっしゃいました。「民主政治は断じて力による政治であってはなりません」。民主主義における「議論の重要性」については、論をまちません。一方で、徹底した議論を行った後に、意見の集約を図り、最後は多数決によって決断する。これが民主主義の原則であり、政治の役割であるはずです。
「議論のための議論」であってはなりません。私たち政治家が、国民の皆様の負託に応えるために行うべきなのは、「決断のための議論」なのです。どのような国を創り上げたいのか、その理想の姿を物語るものが憲法です。私たちの物語を、理想の日本国を、文字にして、歴史という書物の新たなページに刻もうではありませんか。そして、その新たなページをめくるべきかどうか、国民の皆様に堂々と問おうではありませんか。
立党から70年。時は来ました。
「憲法改正」に向け、党員・党友の皆様の総力を挙げて、全国各地で国民の皆様への憲法に関する説明を行うとともに、国会においては、「結論のための議論」を進めてまいりましょう。そして、改正の発議について、「なんとか目途が立った」と言える状態で、皆様とともに、来年の党大会を迎えたいと考えています。「幅広い世代」と「多様な経験」と「豊かな専門知識」を持った人材を擁するわが党の強みを、「憲法改正」にも向けて結集していきましょう。もちろんさまざまな政策でみんなの専門知識が、今、もうフル全開、もうすごい状態になっていますけれども、この憲法改正、とっても大切。私たちの党是、何とか進めましょう。
* 引用、ここまで。(太字は引用者)
具体的な改憲の項目にこそ言及していませんが、高市氏は、「最後は多数決によって決断する」のが「民主主義の原則」だ(維新の主張と全く同じです)とか「どのような国を創り上げたいのか、その理想の姿を物語るものが憲法」だとか聞き流すことのできないとんでもない見解を披露した上で、改憲の「時は来た」、発議に「目途が立った状態で来年の党大会を迎えたい」と言い放っています。
また、この大会で発表された『立党70年 自民党の歩みと未来への使命』と題する党の『新ビジョン』では、「日本国憲法の前文には“平和を愛する 諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した”とあるが、現実では国連の安全保障理事国であるロシアが侵略行為を行っていることからも、公正と信義に十分な信頼を置ける状況にはないことは明白である」との現状認識が示され(イランに対して「アメリカが侵略行為を行っている」ことは完全に無視されています)、「戦後の国際秩序が大きな転換点を迎えた今」、「国家存亡の危機に備えるための必要な能力を整える必要がある」として、「立党以来の党是である憲法改正の実現に向けた取り組みを進めていくことが今後30年のわが国の安全保障を考える上でも、これまでになく死活的に求められている」と述べられていることも付け加えておきたいと思います。

16日の衆院憲法審のテーマは、「憲法審査会におけるこれまでの議論を踏まえた今後の議論」でした。各会派から1人ずつ7名が持ち時間7分間で意見を表明した後、6名の委員が制限時間5分で発言し、11時20分頃散会となりました。
最初に、各会派代表の発言のポイントが要領よくまとめられた『FNNプライムオンライン』の記事を転載させていただきます(この記事では発言者の苗字のみ記されていましたので、名前を補いました)。
高市総理の憲法改正「時は来た」発言後、初めての衆院憲法審で与党「緊急事態条項」の集中討議を提案も野党側は賛否分かれる
『FNNプライムオンライン』2026年4月16日
『FNNプライムオンライン』2026年4月16日
衆議院の憲法審査会が16日開催され、与党から、次回審査会での緊急事態条項創設についての集中的な討議が提案され、野党側は賛否の反応が分かれた。
憲法改正を巡っては、高市総理大臣が12日の自民党大会で「時は来ました。改正の発議について、なんとかメドが立ったと言える状態で、来年の党大会を迎えたい」と憲法改正に向けた国会での論議の進展に強い意欲を示していて、与野党の受け止めが注目されていた。
この日の審査会では、各会派の代表者が順に発言した。
自民党の新藤義孝衆院議員は、災害やテロ、感染症のまん延などにより、選挙が困難となった場合に、選挙期日や議員の任期を延長するといった「緊急事態条項」の創設について、「ここまで議論が進んでいることを踏まえれば、さらに論点を深めるためにも、次回の審査会で、このテーマに関する集中的な討議を行ってはいかがか」と述べて、緊急事態条項にテーマを絞って議論を進めたい考えを示した。
日本維新の会の西田薫衆院議員は、「アクセルを踏んで、議論を進めていくべきは、いずれも火急のテーマである緊急事態条項創設と(憲法)9条改正に他ならない。高市総理は、来年の党大会までに憲法改正の国会発議にめどをつけたいとの強い決意を示されたが、私たち日本維新の会は、その実現のため、全身全霊を傾ける所存だ」として、高市総理の発言にも触れて、緊急事態条項についての集中討議に賛同を示した。
また、国民民主党の玉木雄一郎代表も、高市総理の発言を引き合いに、「私もとっくに時は来てると思う。そして、実際、総理の言う結論のための議論にもトライしてきた自負がある」と切り出した。
そして、国会発議に向けて、「今年の秋の臨時国会には原案を取りまとめて、国会法に基づく衆議院100名以上の賛成、参議院50名以上の賛成で国会に提出しないといけない」と述べた上で、参議院での少数与党を念頭に「現在の自民、維新、公明、そして、わが党の少なくとも4党が合意できるテーマで、議論進めない限り両院の3分の2の議員による発議には結び付かない」と、自らの党の協力が不可欠だと強調した。
一方、中道改革連合の国重徹衆院議員は、緊急事態条項を巡る議論について「論点は、ある程度、整理されてきたのかもしれない。しかし、具体的な認定基準などについては、必ずしも共通認識が得られていない」と述べた。
その上で、「憲法審査会においては、これまでの論議の作法にのっとり、少数会派の意見を尊重しながら、議論を進めていっていただきたい。新しく参加した会派や少数会派の意見を置き去りにしたまま、結論ありきで条文化に進むことは、やはり慎重であるべきだ」と述べ、テーマを絞った議論の進め方に慎重な姿勢を示した。
また、参政党の和田政宗衆院議員は、「参政党は、創憲、憲法を一から国民の手で作り直すことを掲げている。憲法改正の議論には積極的に参加していくが、やはり現行憲法の成り立ちについても、根本的な議論がなされるべきだ」と述べた。
緊急事態条項については、「憲法改正において感染症のまん延、パンデミックが含まれる緊急事態条項の創設に反対だ。今後、もし人工でウイルスが作られPCR検査で陽性を増やすということで、パンデミックによる緊急事態が演出できるとなれば、人為的に国民の権利を制限することが可能になる」と述べた。
チームみらいの古川あおい衆院議員は、「テーマを絞って、議論を行うことが重要であるという点については、チームみらいとしても同意する。これまでの議論の整理や各会派の提案をまとめた資料を基に、具体的な論点について議論を深めるなどの運用を行うことが良いのではないか」と投げかけ、チームみらいとして「国民投票法の議論に一定の時間を確保してほしい。昨今の選挙にまつわる環境の変化や、AIの進展なども踏まえて、各会派の意見をうかがいながら、建設的な議論ができるテーマだと考える」と述べた。
共産党の畑野君枝衆院議員は、中東情勢に触れて「戦争と平和が今、鋭く問われている。戦争を終結させることが何よりも必要だ。憲法9条を持つ日本政府は、そのための役割を果たすべきだ」と述べた上で、特にアメリカに対しては、国際法に違反している可能性を指摘し、「日本政府の姿勢が厳しく問われている。戦争を許してはならないという憲法9条の精神に立って、争い事を話し合いで解決するために知恵と力を尽くすことが必要だ」と主張した。
* 引用、ここまで。
この記事にあるように、この日の審査会では、維新の西田氏と国民民主の玉木氏がそろって12日の自民党大会での「改憲の目途が立った状態で来年の党大会を迎えたい」という高市首相の発言を引いて、「全身全霊を傾ける」と言ったり(西田氏)、具体的な進め方を提案したり(玉木氏)しました。
2017年5月3日、安倍晋三元首相が改憲派の集会にビデオメッセージを寄せて「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と述べ、9条への自衛隊明記を挙げたことがありましたが、その後、今国会から再び与党筆頭理事となった新藤義孝氏(自民)が毎週定例日の開催を強行するようになった2022年まで、憲法審査会の議論は停滞が続きました。森友・加計問題等の影響もありましたが、改憲の発議権を有する国会を無視するかのような安倍氏の発言に対する反発が大きかったからだと思います。
そのときに比べて、今回の審査会では、与党の維新・西田氏はともかく一応は野党の国民・玉木氏までが高市発言に迎合する一方で、批判したり苦言を呈する発言者が皆無だったということに、強い危機感を覚えずにはいられません。

緊急政令・緊急財政処分や9条改憲の主張にも注視・警戒を
この日、自民党の委員は新藤氏を含めて4名が意見を表明しました。
まず、前半の会派代表の発言で新藤氏が「選挙困難事態」における議員任期延長を中心に議論を展開した後、後半の自由討議で鬼木誠氏が緊急政令について、和田義明氏が緊急財政処分について述べました(もう1人の発言者は秋葉賢也氏でした)。
このうち鬼木氏の発言を紹介したいと思います。
「想定される事態に関してあらかじめ法律を制定し緊急時に講じることができる措置を整備しておくことは当然であり、現在でも他国からの武力攻撃や大規模な自然災害、感染症の蔓延等に備えてそれぞれの分野で緊急事態対応のための法律が整備されている。災害対策基本法、国民保護法や新型インフル等対策特措法には法律上の緊急政令制度が設けられており、緊急時にはこれらの法律に基づいて内閣が一時的・暫定的な措置を講じられるようになっている。
しかしながらこれらの個別法に基づく緊急政令で取り得る措置は①物資の配給・譲渡制限等、②物価等の統制、③モラトリアム(金銭債務の支払いを一定期間猶予すること)、④海外支援の受け入れという4類型に限定されている。海外支援の受け入れは阪神・淡路大震災の発災によって初めてその必要性が確認され、1995年の法改正により災害対策基本法に追加されたものだ。
もし緊急事態が発生し国会が機能不全に陥った場合に、これらの類型以外の立法措置が必要になったらどうすればよいのか。現行憲法には国会が機能不全に陥るほどの緊急事態が生じた場合に対処するすべは何も定められていないため内閣が超法規的措置を行うほかないが、それでは国会の事後的な承認という民主的統制も働かなくなってしまう。
このような民主的統制の働かない内閣の超法規的措置を認めるのではなく、国会があらかじめ制定した法律の枠組みの下で内閣に一時的・暫定的に立法権を与え事後的に国会が統制するという緊急政令制度を憲法に設けておくことこそが立憲主義にかなうものと考える。
関東大震災などで発出されてきた緊急勅令の内容は現在個別法に基づく緊急政令制度に取り込まれているからこれ以上必要ないという主張もあるが、阪神・淡路大震災において海外支援の受け入れの必要性が発見されたように、どのようなメニューが新たに必要になるかは予測不可能だ。」
(太字は引用者)
私にはこの発言は全く腑に落ちませんでした。「国会が機能不全に陥るほどの緊急事態」とか「国会があらかじめ制定した法律の枠組み」とか言われてもイメージが浮かんできませんし、「超法規的措置」に国会の事後的な承認という民主的な統制が働かないというのはどういう意味でしょうか。そして私が最も違和感を覚えるのは、どんな想定外のことが起こるかわからないから緊急事態条項が必要だと主張する勢力と、ひとたび過酷事故が起こればどんな事態が生じるかが実例としてまざまざと示されたはずの原子力発電の最大限の活用を主張する勢力とピッタリ重なっていることです。これって本当におかしいと思いませんか。
もう1つ、9条改憲をめぐる意見も紹介しておきたいと思います。
この日、維新の委員は発言の機会を得た2人そろって9条の改憲に言及しました。まず、会派を代表して発言した西田薫氏は、「アクセルを踏んで議論を進めていくべきは、いずれも火急のテーマである緊急事態条項の創設と9条の改正にほかならない」、「次回以降の審査会で緊急事態条項及び9条に関する集中討議を順次行っていくことを提案させていただく」と述べ、自由討議で阿部圭史氏は、「単に自衛隊という名称を憲法に明記するだけでは我が国の安全保障にとって不十分であり、自民党の皆様には2012年の憲法改正草案の趣旨を今一度想起していただくことを切に願っている」と発言しました。

また、参政党の和田政宗氏は、「参政党は現行憲法に自衛隊を明記するだけでは不十分であると考えている」、「自衛隊の行動はポジティブリスト方式で制限されており、他国の国防軍のようにネガティブ方式になっていない」、「参政党は真に国家と国民を守れる憲法とすることの議論をまず行うべきと考えており、この根本的な議論をした上でなければ条文案の作成に入ることはまだ早いと考える」との見解を表明しました。

また、参政党の和田政宗氏は、「参政党は現行憲法に自衛隊を明記するだけでは不十分であると考えている」、「自衛隊の行動はポジティブリスト方式で制限されており、他国の国防軍のようにネガティブ方式になっていない」、「参政党は真に国家と国民を守れる憲法とすることの議論をまず行うべきと考えており、この根本的な議論をした上でなければ条文案の作成に入ることはまだ早いと考える」との見解を表明しました。
そして、国民民主党の玉木雄一郎氏は、「来春までに発議の目途を立てるというなら9条改正に安易に手をつけない方がいい」と言いながらも、「自衛隊を9条2項で禁止されている戦力として位置づけるべきであり、9条1項、2項は維持した上で2項の例外として実力組織としての自衛隊と自衛権を位置づけるというのが私たちの考えだ」と踏み込んでいました。
この日は意外にも自民党の委員が9条改憲に触れることはありませんでしたが、翌17日には早速次のような動きがあったことが報じられています。『NHK ONE』の記事を転載させていただきます。
自民・維新 憲法9条改正議論の経緯確認 協議加速で一致
『NHK ONE』2026年4月17日
自民・維新両党は、先の衆議院選挙後では初めて憲法改正に関する協議会の会合を開きました。憲法9条の改正に向けた議論の経緯などを確認し、高市総理大臣の意向も踏まえ与党内の検討を加速させることで一致しました。
自民党と日本維新の会は、17日、先の衆議院選挙後では初めて両党の連立合意に基づく「憲法改正条文起草協議会」の会合を開きました。
この中で、自民党側の会長を務める新藤元経済再生担当大臣は、「9条の改正案について憲法審査会でどのような整理がなされてきたかを踏まえ、まずは実務者でしっかり議論していきたい」と述べました。
維新側の会長を務める馬場前代表は、「高市総理大臣から憲法改正に向けて力強いことばがあった。憲法審査会をさらに動かすためにも与党内での合意形成を早急に図ることが肝要だ」と述べました。
そして、会合では憲法9条の改正に向けた議論の経緯などを確認し、高市総理大臣が来年の自民党大会までに憲法改正の発議にめどをつけたいと強い意欲を示したことも踏まえ、与党内の検討を加速させることで一致しました。
* 引用、ここまで。
やはり9条改憲、すなわち自衛隊または国防軍、集団的自衛権の明記についても警戒を怠ることはできません。
中道改革連合や共産党の委員の発言も紹介すべきかもしれませんが、なかなか前向きのことが書けませんので次回以降に先送りさせてください。
この日、記者は4人ほどで前回から半減していました。傍聴者も減りましたが40人弱が集まりました。平日の開催ということで傍聴者の平均年齢は相当高いのですが、このところ国会外での改憲・戦争反対の行動に若い人々が大勢参加するようになってきていることに希望を感じながら、傍聴を続けたいと思います。(銀)