4月9日(木)11時から、今国会2回目の衆議院憲法審査会が開催されました。2月20日(金)に開かれた初回は会長と幹事の互選と新会長の挨拶があっただけでしたので、今回が事実上今国会初の衆院憲法審となりました。
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様変わりした衆院憲法審

2月8日に行われた衆院選の結果、衆院憲法審の構成は下表のようになり、自民党だけで3分の2強、維新の会を加えると与党で4分3以上を占めることになりました。
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 総選挙前、1月22日現在の構成は下表のとおりでしたので、すっかり様変わりしたことになります。
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 なお、幹事の顔ぶれは下表のとおりです(4月10日現在)。
幹事
 
少し詳しく見ると、まず、自民党ではこれまで長らく審査会に所属し、前国会まで与党側筆頭幹事を務めていた船田元氏が憲法審から外れ、代わって2022年の通常国会以後、強引な運営で衆院憲法審の毎週定例日開催を定着させた新藤義孝氏(自民)が与党筆頭理事に復帰しました。高市首相の側近と言われる古屋圭司氏が会長に就き、船田氏以外の幹事も全員が入れ替わったことなど、今回の人事からは自民党がいよいよ本腰を入れて憲法改正に突き進むぞという姿勢が読み取れるように思います。

中道改革連合では、前国会まで委員を務めていた前立憲民主党の議員は全員が落選しました。野党側筆頭幹事となった國重徹氏は公明出身ですので、幹事会のメンバー全員が改憲派という状況になりました。

そのほか、参政党とチームみらいが初めて委員を出すことになった一方でれいわ(大石晃子氏)が姿を消したこと、赤嶺政賢氏が落選した共産の委員が畑野君枝氏に代わったこと、国民の玉木雄一郎氏が復帰したことなどの変化がありました。

この日のテーマは「憲法審査会の今後の議論について」とされ、各会派から1人ずつ7分以内の意見表明があり、7人の委員の発言が終了した11時50分頃散会となりました。

自民党が衆議院では単独で改憲の発議が可能な3分の2以上の議席を得た総選挙後初めて実質的な審議が行われる憲法審査会であったことから、10人以上の記者が詰めかけ、最後まで記者席に着いていました。傍聴者もいつもよりかなり多く、こうした光景を目にするのは久しぶりでした(カメラマンを含めたくさんの人たちが立ち見状態でしたので、人数は確認できませんでした)。

報道量も最近になく多く、検索するとたくさんの記事がヒットしますが、残念ながら大手メディアの報道で比較的詳しいものはほとんどが有料です。ここでは無料で読める『NHK』の記事を転載させていただきます。

衆院憲法審査会 今国会で初めての討議 各党が意見述べる
『NHK ONE』2026年4月9日

衆議院憲法審査会で今の国会で初めての討議が行われ、各党が意見を述べました。自民党が、憲法改正の論点が整理されれば、速やかに具体的な条文の検討に入るべきだと主張したのに対し、中道改革連合は、落ち着いた環境で議論を深めていくべきだと訴えました。

この中で、自民党の新藤 元経済再生担当大臣は「政局を離れて論議を真摯に進める場でなければならず、定例日には審査会を安定的に開催したい。憲法改正の論点が整理されたテーマは、順次、条文を起草するための検討作業に入っていくことを提案したい」と述べました。

中道改革連合の国重徹氏は「拙速に進めるべきでないのは当然だが、不必要に停滞させるのも望ましくない。落ち着いた環境のもとで議論を深めていくべきで、テーマや進め方の見通しを共有する必要がある」と述べました。

日本維新の会の馬場前代表は「立法府の使命は、自由討議なる堂々めぐりを続けることではない。速やかに条文起草委員会を設置し、改正の成案を得て憲法改正の発議を行い、国民に判断を仰ぐことだ」と述べました。

国民民主党の玉木代表は「テーマを絞り議論をピン留めしながら進めるべきだ。議員任期の特例など、緊急事態における国会機能の維持を中心に、条文づくりに着手することが重要だ」と述べました。

参政党の和田国会対策委員長は「参政党は『創憲』、憲法を一から国民の手でつくり直すことを掲げている。現行憲法が国民の自由な意思でつくられていないからだが、改正議論には積極的に参加する」と述べました。

チームみらいの古川政務調査会長は「憲法の三大原理を堅持した上で、時代の変化に合わせてあり方を検討することには前向きだ。手続きと中身の論点は切り分け、議論を積み上げていくのが重要だ」と述べました。

共産党の畑野君枝氏は「国会が改憲議論をけんでんし機運を高めようとするのは本末転倒だ。起草委員会をつくって議論を強行するのは国民に改憲を押しつけるものだ」と述べました。
* 引用、ここまで。

上掲の記事では各会派の委員の主張が手際よく整理されていますが、7分間の意見表明が100字前後にまとめられ、触れられていないことがありますので、以下、私にとって印象に残った発言を紹介したいと思います。

心もとない中道・國重氏の発言

この日、私が一番注目していたのは、中道改革連合の委員として初めて憲法審査会で発言することとなった國重氏が何を語るかでしたが、氏は
「私たちは改憲自体を目的とする立場には立たない」が、「現行憲法を固定的に捉え、新たな課題に目を閉ざす立場にも与しない」
「中道改革連合は基本政策として時代に対応した憲法改正論議の深化を掲げており、憲法施行時には想定されていなかった課題が明らかとなり改正が必要と認められるときはその内容を真摯に検討していく」
と述べた上で、具体的な改憲のテーマについては、
自衛隊の憲法上の位置づけや緊急時における国会機能の維持については、自衛隊の行為が行き過ぎたり、緊急時における措置が濫用されないよう、民主的統制の観点から議論を深める必要があると考える」
「臨時国会の召集期限の問題も看過できないテーマであり、解散権のあり方も避けては通れないテーマだ」
などと指摘しました。

私は、ここまではだいぶもの足りないけれども公明党出身の委員としては想定内の内容だなと考えながら聞いていましたが、その後本当にがっかりさせられる発言が飛び出しました。それは、
憲法論議は拙速に進めるべきでないことは当然だが、不必要に議論を遅らせ停滞させることも望ましくない
今後も毎週木曜日の定例日に審査会あるいは幹事懇談会を開いて着実に実りある議論を深めていくべきと考える」
というものでした。
「拙速に進めるべきでない」と「毎週定例日の審査会・幹事懇の開催」は明らかに矛盾していると思いますが、野党側の筆頭幹事である國重氏がこんな主張を展開しているのですから、今後の毎週開催は確定したものと覚悟せざるを得ません。

イラン情勢をどう考えるか?

この日、イランをめぐる情勢に言及したのは維新の馬場伸幸氏と共産の畑野君枝氏の2人だけでしたが、その内容は対照的でした。

まず、馬場氏は冒頭で「審査会長の座が自民党の手に戻り、自民党の委員が議場を席巻されている風景を目にして、大変心強い」と述べ、多くの傍聴者をあきれさせました。

イラン情勢については、
「ホルムズ海峡の封鎖によって日本が抱える問題が浮き彫りになった。それは憲法を始め現行の法体系の下では護衛のための艦船の派遣など海外での自衛隊の活動がおぼつかないことだ」
「一部の野党、メディアから憲法9条のおかげで自衛隊の派遣を断れる旨の言説が喜々として発信されているが、『戯れ言』にすぎない」
などと主張し、
「自衛隊を明記しても解決しない憲法上の瑕疵があることは明白であり、自衛隊を名実ともに軍として位置づけ、国際標準の海外での活動に憂いなく道を開く9条の改正議論に真剣に取り組むべきだ
と言い放ちました。さすがに自衛隊をホルムズ海峡に派遣すべきだとまでは言いませんでしたが、毎度ながら論理的に破綻した意見でした。

なお、参政党の和田正宗氏も「参政党は自衛軍を保持することを憲法草案で掲げている」と述べていました。

一方、畑野君枝氏の主張は下記のようなものでした。
「アメリカとイスラエルによるイラン攻撃は深刻な事態をもたらしている。両国は軍事施設だけでなく学校や病院など民間施設への攻撃も繰り返し、これまでに200人以上の子どもを含む2000人以上が犠牲になったと言われている」
「この攻撃に横須賀基地や沖縄などの米軍基地から出撃していることは極めて重大だ」
「日本政府はアメリカの無法な先制攻撃には一切言及せず、攻撃の中止さえ求めていない。あまりにも無責任な対応だ」
「戦争を絶対に許してはならないという憲法9条の精神に立脚した外交と政治が強く求められている」

また、畑野氏は以下のことも指摘しました。
「今、国民から憲法を守れの声が上がっていることに目を向けるべきだ。昨日も全国47都道府県、154箇所で改憲に反対するアクションがあり、3万人を超える市民が国会を包囲した。国民が改憲を求めていないにもかかわらず、国会の側が改憲議論を喧伝するのは本末転倒だ」
「条文案起草のための委員会をつくり議論を強行することは、国民に改憲を押しつけようとするものであり、そのような委員会は設置するべきでない」

この日、最近の改憲反対の集会の盛り上がりに言及したり、憲法審査会の開催、条文起草委員会の設置に反対する意見を表明したのは、共産党の畑野氏だけでした。れいわ新選組の委員が憲法審査会から消えたことが惜しまれます。

私は、今回のアメリカ、イスラエルのイラン攻撃は憲法9条があろうがなかろうが、あるいは国際法がどうあろうが絶対に許されない非人道的な蛮行であり、日本がこれを黙認したりましてや支持したりすることは論外だと思います。そして、いまや「憲法9条を守れ」、「9条に基づく外交を」と叫ぶだけでは十分ではないと考えます。

政府は中国との戦争に備えて軍事費を増大させ、基地の建設・拡充、ミサイルの開発・配備、実戦的な軍事訓練の実施、国民監視法制の整備などをハイピッチで推進しています。日米安保体制の解体を展望しながら、基地の撤去、武器開発・輸出の阻止、軍事訓練の中止、国民監視・外国人敵視政策の転換等を求める運動を組織していくことが必要ではないでしょうか。(銀)