5か月ぶりの憲法審査会報告となります。
今臨時国会では短期間ですが、改憲動向をしっかり報告していきたいと思います。
ぜひ、参考にしてください。

* * * * * * * *

11月20日10時から、今臨時国会2回目の衆議院憲法審査会が開かれました。国会初日の10月21日の第1回憲法審では会長、幹事の選任が行われただけでしたので、今回が事実上今国会初の開催となりました。
なお、第1回憲法審では武正公一氏(立憲民主党)が会長に互選されています。これは、立憲民主党の人事で予算委員長だった安住淳氏が党幹事長に就いたことに伴い、憲法審査会長だった枝野幸男氏が予算委員長となり、憲法審の野党側筆頭幹事だった武正氏がその後任となったものです。
yurusuna

自民・維新の連立で改憲情勢は?

ところで、通常国会の後、自民党の総裁が石破茂氏から高市早苗氏に交代し、自民党の連立相手が公明党から日本維新の会に代わって、高市氏が首相に選出されました。このことは今後の改憲情勢にも少なからず影響を及ぼしていくでしょう。
そこで、まず、国会開幕の前日、10月20日に発表された自民・維新の『連立政権合意書』の憲法に関する部分を確認しておきたいと思います。なお、①から④の番号は私が便宜的に振ったものです。

①日本維新の会の提言『21世紀の国防構想と憲法改正』を踏まえ、憲法9条改正に関する両党の条文起草協議会を設置する。設置時期は、令和7年臨時国会中とする。
②緊急事態条項(国会機能維持及び緊急政令)について憲法改正を実現すべく、令和7年臨時国会中に両党の条文起草協議会を設置し、令和8年度中に条文案の国会提出を目指す。
③可及的速やかに、衆参両院の憲法審査会に条文起草委員会を常設する。
④憲法改正の発議のために整備が必要な制度(例:国民投票広報協議会の組織及び所掌事務等に係る組織法並びにCM規制及びネット規制等に係る作用法等)について、制度設計を行う。

合意書

①にある維新の提言『21世紀の国防構想と憲法改正』には「憲法9条改正と国防条項の充実」という節があり、「憲法9条2項削除による集団的自衛権行使の全面容認」、「自衛権の明記」、「国防軍及び軍人の地位の明記」、「文民統制の明記」、「軍事裁判所の明記」の5点に関する憲法改正を行うとされています。

現在自民党が掲げている4項目の『条文イメージ(たたき台素案)』の1つ「自衛隊明記」では、現行の9条1項、2項は維持したうえで新たに9条の2を設けて自衛隊を明記するとともに自衛の措置(自衛権)にも言及するとされており、この維新の提言とは相容れないようにも思われますが、2012年、自民党が下野していた際に発表した『日本国憲法改正草案』の9条改憲案とは相通じており、この合意は、連立の組み替えを機に自民党の本音が前面に表われてきたことを意味しているのではないでしょうか。

②の緊急事態条項については、6月12日、通常国会最後の憲法審査会に先だって開催された幹事会で改憲5会派が議員任期延長の改憲骨子案を提示し、続く審査会では船田元氏(自民)がその内容を詳しく説明するというとんだ茶番があったわけですが、今回、自民・維新の両党は「緊急政令」も含めて来年度中に条文案の国会提出を目指すとしています。これは自民党の4項目の『条文イメージ(たたき台素案)』の1つ「緊急事態対応」でも提示されている内容ですが、条文提出の目標時期を明示したこととあわせて、積極的な推進姿勢をアピールした格好です。

そしてこの合意書①、②に記載されているとおり、11月13日には自民・維新による「条文起草協議会」の初会合が開かれています。以下、『産経新聞』のウェブサイトの記事を転載させていただきます。

自民・維新、改憲へ条文起草協議会 馬場前代表「ワンステップ上がった」
『産経新聞』2025年11月13 日

自民党と日本維新の会は13日、連立政権合意書に明記された「憲法改正条文起草協議会」の初会合を国会内で開き、9条改正や「緊急事態条項」新設について議論を深めていく方針を確認した。
初会合の冒頭、自民の新藤義孝元総務相が「目的は共有している。議論を前に進めていきたい」と訴えた。維新の馬場伸幸前代表も「憲法改正に向けてワンステップ上がった。素晴らしい結果が残るように成案を得たい」と強調した。

新藤氏は終了後の記者会見で、9条改正について「できるだけ速やかに内容を詰めたうえで起草案を作りたい」と語った。

これに先立ち、今国会初の衆院憲法審査会幹事懇談会が開かれ、審査会を20日に開く日程で合意した。偽情報やフェイクニュース対策などに関する与野党メンバーの海外調査報告や関連する質疑を行う見通し。

船田元・与党筆頭幹事(自民)は記者団に、27日に予定する幹事懇で条文起草委員会の設置を提起したいとの考えを示した。「メンバーをどうするか、どういう形にするかは維新との話し合いが十分にできていない。その時までにある程度、原案を作っておきたい」と述べた。

条文起草委の常設も連立政権合意書に盛り込まれているが、改憲に反対する野党の同意を得られるかは不透明だ。
* 引用、ここまで。(太字は筆者)

上掲の記事では、同じ11月13日、衆院憲法審の幹事懇談会が開かれ、与党側筆頭幹事の船田元氏(自民)が27日の幹事懇で、自民・維新の連立政権合意書の③にある「条文起草委員会の設置を提起したいとの考えを示した」と記されています。

記事の最後に「野党の同意を得られるかは不透明だ」とあるように、この提案がすんなりと受け入れられるとは思いませんが、自民・維新の前のめりの姿勢がうかがえます。また、憲法審査会本体ではなく、幹事懇談会で、すなわち傍聴者がおらずネット中継もなく議事録も公表されない場で、改憲をめぐる議論が行われることが常態化しつつあることに強く抗議したいと思います。

臨時国会初の衆院憲法審:坦々と進んだ中で維新の委員は起草委の早期設置を主張

さて、こうした中で迎えた今臨時国会初の衆議院憲法審査会でしたが、この日の議題は「衆議院英国・EU・ドイツ憲法及び国民投票制度調査議員団の調査の概要」とされ、9月14日から21日まで「国民投票における偽情報対策及び外国勢力による介入への対応、政治広告規制」を中心的な調査テーマとして欧州を訪問した議員団のメンバー3名から報告を聴取し、それに対して各会派1名ずつの委員が質問をしたり意見を述べるという形で進められました(今回はなぜか有志の会の北神圭朗氏の発言はありませんでした)。議事は坦々と進行し、11時10分頃には散会となりました。

なお、議員団のメンバーは枝野幸男(当時の会長)、船田元(会長代理、与党筆頭理事)、武正公一(現会長、当時は野党筆頭幹事)の各氏で、過去に欧州を訪問した議員団と比較すると小規模なものでした(例えば2019年7月に欧州を訪問した議員団は7名で公明、共産、維新の委員も参加していました)。
この日の審議の冒頭で枝野氏が20分ほどかけて読み上げた「団長報告」は衆議院憲法審査会のホームページに掲載されていますので、興味と時間のある方はご覧になってください。

私は、最後の「団長所見」に記されているように、「偽情報対策に対する強力な規制は表現の自由との関係で非常に難しく、現状では明確な答えは出ていない」、「外国勢力からの介入を早期段階で捕捉して排除する手法は簡単に答えが出るものではなく、未だ悩んでいる状態だ」とすれば、今、改憲の国民投票を行うのはあまりにも無謀で危険であり、条文起草委員会の設置などとうてい許されないと考えます。

以下、この日の審議の概要が簡潔にまとめられている『時事通信』のウェブサイトに掲載された記事を転載させていただきます。

SNS事業者の規制論相次ぐ 偽情報対策巡り討議―衆院憲法審
『時事ドットコムニュース』2025年11月20日

衆院憲法審査会は20日、高市政権で初となる討議を行い、偽情報対策や外国勢力介入対策について議論した。偽情報などが選挙や憲法改正国民投票に影響を与えるのを防ぐため、SNSなどを運営するプラットフォーム事業者に対する規制強化が必要だとの声が与野党から相次いだ。

審査会では立憲民主党の枝野幸男前審査会長が、英国やドイツなどを9月に訪問した結果を報告。欧州の対策の現状について「『表現の自由』との関係で非常に難しいとの共通認識があり、明確な答えが出ていない」とした上で、プラットフォーム事業者に対処義務を課す欧州連合(EU)の取り組みに触れ、「『表現の自由』との兼ね合いをしっかり見据えたものと評価できる」と語った。

自民党の山口壮氏も、EUの規制の在り方に関し「制裁金を含め、日本の参考になる」と指摘。立民の大串博志氏は「プラットフォームビジネスへの規制強化は不可避ではないか」と訴えた。

日本維新の会の和田有一朗氏は「既存メディアが果たす役割は重要だ」と強調。国民民主党の浅野哲氏は国会議員とプラットフォーム事業者が継続的に意見交換する場を設けるよう求めた。

公明党の河西宏一氏は「外国勢力の介入を未然に防ぐ体制整備が急務だ」と力説。共産党の赤嶺政賢氏は「多様な情報に接することが情報の吟味につながる」と立会演説会復活などを提唱した。

審査会後、自民の船田元・与党筆頭幹事は憲法改正に向け、維新との連立政権合意書に明記した条文起草委員会の設置を、27日の幹事懇談会で提案する考えを改めて記者団に強調した。
* 引用、ここまで。

記事の最後に紹介されている自民党の船田氏が審査会後に記者団に強調したという考えは、前掲の『産経』の記事にあった13日の発言を繰り返したものです。
また、この記事では触れられていませんが、維新の和田氏はこの日「最後に一点だけ」として、「早く憲法審査会に条文起草委員会を作って、早急に憲法改正を図るために進めるべきだ」と述べています。
つまり、自民・維新は一致して条文起草委員会の設置をゴリ押ししようとしているということです。

怒りカット4.png

自民・維新は11月13日から開始した「条文起草協議会」を2週に1回のペースで開いて緊急事態条項新設や9条改悪の条文案をつくり、改憲への世論を喚起しようと策動しています。
これに抗して、私たちは、憲法審査会への「条文起草委員会」設置反対の声を強めると同時に、9条破壊・国家緊急権創設は日本が再び侵略戦争をやるためだと広く訴えていく必要があると思います。「自衛・防衛のため」と称して高市政権が進める大軍拡、戦争経済、排外主義政治と全力で対決していく力、アジアの人々と連帯する反戦運動の大きなうねりをつくり出していくことが9条改憲を止める道ではないでしょうか。
戦争・改憲情勢は、世論を二分する激しい情勢にならざるを得ません。がんばりましょう!

この日の委員の出席状況は、自民は3~4人、立民は1~2人が欠席している時間が長く、他の会派はときどき席を外す委員はいましたが全員が出席していました。
傍聴者は25人ほどで、今国会初の開催であったことを考えるともう少し来てほしかったなと感じました。記者席には3~4人が着いていました。

この日の憲法審査会の最後に、武正会長が次回は12月4日に開催すると述べました。臨時国会の会期は12月17日までですので、今国会中に改憲に向けた大きな動きがある可能性はほとんどないでしょうが、連立の組み替えによって、改憲情勢が緊迫の度を増していることは否定できません。緊張感を持って今後の展開に備えていきましょう。(銀)