5月22日10時から、2週間ぶりに今通常国会7回目の衆議院憲法審査会が開かれました。だいぶ遅くなってしまいましたが、報告します。
この日のテーマは、「憲法改正国民投票法を巡る諸問題(ネットの適正利用、特にフェイクニュース対策)」とされ、2人の参考人からの意見聴取と質疑が行われました。
この日のテーマは、「憲法改正国民投票法を巡る諸問題(ネットの適正利用、特にフェイクニュース対策)」とされ、2人の参考人からの意見聴取と質疑が行われました。

不安を覚えた枝野会長の過剰な意気込み
また、それに先だって枝野幸男会長(立民)から、4月17日に「国民投票協議会の具体的なイメージについて会長、会長代理、幹事、オブザーバーによる意見交換会を行ったので、その議論の概要を報告する」として、A4版2枚の資料に基づき、10分間ほどの説明がありました。
今回の「傍聴記」では、まず、この意見交換会について疑問を呈しておきたいと思います。
今回の「傍聴記」では、まず、この意見交換会について疑問を呈しておきたいと思います。
4月17日は木曜日で衆院憲法審の定例日でしたが、審査会本体ではなく意見交換会が開かれました。なぜそういう形を取ったのかについて、幹事である山花郁夫氏(立民)は、自身のホームページで次のように説明しています。
「審査会の形で開催しなかったのはなぜ?
技術的・細目的な問題であること、そもそも何が論点となるかについて認識が共有されていないことなどから、審査会本体で扱っても議論が拡散すると考えられたからです。また、正式な会とすると、会派ごとに発言時間なども均等にしますから、柔軟な運営ができないことも理由です。どこかのタイミングで、議論の要旨については審査会に報告される予定です。」
この説明には到底納得できません。認識が共有されておらず、議論が拡散しているテーマは他にもありますし、会派ごとに発言時間を均等にする「中山方式」を絶賛してきた枝野会長、船田元会長代理(自民)らが、柔軟な運営ができないという理由で憲法審での議論を避けるのは筋が通りません。何よりも傍聴者がおらず、ネットでの審議中継も行われない、つまり私たち有権者の目の届かないところで議論が進められることは、たとえ今回のように後日審査会で報告が行われるとしても、けっして許されないと思います。

肝心の枝野氏による報告も本当にわかりにくいものでした。以下は当日配布された説明資料(衆議院憲法審査会のホームページに掲載されています)の最初と最後の部分ですが、「憲法改正の必要がない以上、広報協議会の議論も不要」、「改憲派の議員が多数となる中で、公平公正を確保できるのか」などの意見が出されているにもかかわらず、今後も「広報協議会の規程等の整備」の議論を、「憲法審本体以外の場」で着実に進めていこうという方向性が明確に打ち出されています。そして、この日は一方的に報告を聞かされるだけで、その内容について質疑が行われなかったことも大問題だと思いました。


肝心の枝野氏による報告も本当にわかりにくいものでした。以下は当日配布された説明資料(衆議院憲法審査会のホームページに掲載されています)の最初と最後の部分ですが、「憲法改正の必要がない以上、広報協議会の議論も不要」、「改憲派の議員が多数となる中で、公平公正を確保できるのか」などの意見が出されているにもかかわらず、今後も「広報協議会の規程等の整備」の議論を、「憲法審本体以外の場」で着実に進めていこうという方向性が明確に打ち出されています。そして、この日は一方的に報告を聞かされるだけで、その内容について質疑が行われなかったことも大問題だと思いました。

~中略~
私は、枝野氏が自ら報告を行ったことからも、会長として何らかの成果を上げたいという氏の並々ならぬ意気込みを感じました。今後の動向に最大限の注意・警戒が必要だと思います。
次に、この日の本題であった「ネットの適正利用、特にフェイクニュース対策」についての参考人(東京大学大学院工学系研究科の鳥海不二夫教授と桜美林大学リベラルアーツ学群の平 和博教授)からの意見聴取と質疑の概要を、『NHK』の記事と山花氏のホームページの報告を転載させていただく形で紹介します。
なお、意見聴取はそれぞれ20分ほど、質疑は8会派から1人ずつ(会長からの言及はありませんでしたが)おそらく各10分の持ち時間で行われ、この日の憲法審は12時10分過ぎに散会となりました。
衆院憲法審 SNS偽情報が国民投票に与える影響めぐり参考人質疑
『NHK NEWS WEB』2025年5月22日
衆議院憲法審査会では、SNS上の偽情報の拡散が憲法改正の国民投票に与える影響などをめぐり、有識者への参考人質疑が行われ、投票期間中などは、SNS事業者への規制を設ける必要性や、情報のファクトチェックを行う重要性などが指摘されました。
このうち、東京大学大学院の鳥海不二夫教授は、SNSでは、利用者が好ましいと思う情報ばかりが表示される「フィルターバブル」などで情報の偏りが発生すると述べました。
そして、対策として、プラットフォーム事業者への規制を挙げ、投票の期間中などに限って事業者に広告の停止を要請するといった措置が必要だと指摘しました。
桜美林大学の平和博教授は、偽情報対策として、情報の真偽を確認するファクトチェックを行うことが重要だと説明しました。
そのうえで、ファクトチェックを担う主体について、独立性の観点から民間主導で進めるべきだと指摘しました。
また、両氏ともに偽情報対策を行うことは、国民の判断の土台となる正確な情報の提供につながるものであり、検閲にはあたらないという認識を示しました。
【憲法審査会】偽誤情報対策について。
『衆議院議員 山花郁夫』2025年5月22日
今日(5/22)の憲法審査会は、東大の鳥海教授、桜美林大の平教授を参考人としてお招きし、意見聴取を行いました。
鳥海教授からは、偽誤情報コミュニティーに陥ると、脱出がほぼ不可能になることや、訂正情報が必ずしも良い結果をもたらすとは限らないことがあること、だからこそ肉体的健康を維持するのと同じように、情報的健康に資する支援が必要であるというお話を伺いました。
平教授からは、偽誤情報に対するファクトチェックの担い手は、非党派性や独立性、透明性などメディアとしての規律が求められるもので、公的機関とは切り分けるべきであること、公的機関は正確でわかりやすい情報を提供するという形で役割が異なるべきというお話を伺いました。
国民投票が行われる場合に、偽誤情報によって投票結果が影響を受けることはゼロにすることはできないかもしれませんが、極小化する必要があると考えられます。その制度設計にあたって、有意義な意見聴取であったと感じました。
* 引用、ここまで。
2人の参考人の意見はそれぞれ興味深いもので、委員による質疑も(いつものようにとんでもない発言をする委員はおらず)まずまずの内容でしたが、そうした中で1つだけ違和感を覚えたことを報告しておきたいと思います。
それは、鳥海教授がいわゆるエコーチェンバー(同じ価値観を持つ人々によって形成されるSNS上のコミュニティ)について、「偽・誤情報をよく拡散する人たちのコミュニティが存在し、その中では特定の偽・誤情報だけでなくそれ以外の偽・誤情報も発信されがちである」ことを指摘した際に、その実例として「ワクチンに関する偽・誤情報」を挙げ、「ここで偽・誤情報と言っているのは国や公的機関が発している正しいと言われている情報ではないもの」だと説明したことです。
これに対して、大石あきこ氏(れいわ)は、「ワクチンの後遺症に関して、例えば厚労省のホームページでは、ワクチンの副反応の死亡例は2件だとずっと表示されていた。でも、実際には医師が報告する副反応疑いの死亡例は2192件あって、その多くは因果関係がわからない中で、死亡との因果関係が否定できない例が2件だった。また、その時点で被害救済の認定件数は500件を超えていたので、それでもホームページで死亡例は2件しかありません、安全ですと言い続けることに不信が高まるのは、私には非常に納得がいくものだった」と述べていました。
福島第一原発の事故で発生した放射能汚染水の海洋放出をめぐる論争も典型例の一つだったと思いますが、政府や公的機関の主張が全て正しいということはあり得ません。過去政府等が嘘をついた事例は山ほどあるし、そもそも世の中には真偽が定かでない問題がたくさんあります。今後、国民投票における偽情報・誤情報対策や広報協議会のあり方等の議論が進められていく際には、このことを忘れずに批判・対抗していく必要があると思います。
参考人に失礼な欠席者の多さ
最後に指摘しておかなければならないのは、この日の欠席者の多さです。自民は特に甚だしく、参考人の意見聴取の際は4~5人でしたが、質疑に入ると急増し、21人の委員中過半数の11人が席を外している時間帯もありました。立民も同様で、意見聴取のときは2~3人でしたが、少しずつ増えて最後は16人(会長を含む)中8人が欠席となりました。維新も最初は4人全員が出席していましたが、質疑に入ると1~2人が欠席していました。これほど欠席者が多かったのは久しぶりで、参考人に対して本当に失礼だと思いました。
傍聴者は30人弱で今回も少なめでしたが、1時間ぐらい経過したところで20人ほどのグループが入場して50分間ほど質疑に聞き入っていました。記者は始めは2~3人でしたが途中から1人になり、0人になる時間帯もありました。(銀)