5月30日(木)10時から11時30分過ぎまで、今国会8度目の衆議院憲法審査会が開催されました。実質審議は7回目で、今回は「国民投票広報協議会その他国民投票法の諸問題」をテーマとして討議が行われました。
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まず、審査会の冒頭、橘幸信衆議院法制局長から上記のテーマについて説明がありました。
以下、配布された資料のうち、「資料2:国民投票広報協議会の組織等と事務」と「資料4:国民投票に関する主な論点」を転載しておきます。衆議院憲法審査会ホームページの「会議日誌・会議資料」のコーナーに他の資料もあわせて掲載されていますので、興味のある方はそちらをご覧ください。

国民投票広報協議会.png


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この日は、当然のことですが多くの発言者が「国民投票広報協議会その他国民投票法の諸問題」について意見を表明しました。
以下、中谷元幹事(自民、与党筆頭幹事)と奥野総一郎委員の発言内容を要約した『共同通信』の記事を転載させていただきます。

改憲国民投票、運動規制巡り対立 自民慎重、立民は法改正求める
『共同通信』2024年5月30日

衆院憲法審査会が30日開かれ、憲法改正の国民投票を巡り自由討議を行った。投票運動への制限を巡って議論となり、制限に慎重な自民党と、規制のため早期に国民投票法を改正するよう主張する立憲民主党が対立した。(中略)
中谷氏は討議で「投票運動はできるだけ自由にし、法的な規制は極力避けるべきだ」と強調した。立民の奥野総一郎氏は「運動資金の多寡や、外国政府の介入で投票結果が左右される恐れがある」と主張した。
2021年改正の国民投票法の付則では、政党のCMやインターネット広告の規制を巡り、施行後3年をめどに必要な措置を講じると規定している。衆院法制局の橘幸信局長は「その期限が今年9月に到来する」と説明した。
中谷氏は法改正に関し「事業者の自主的な取り組みを後押しする規定の新設などは、検討に値する」と指摘した。
奥野氏は「国民投票法の見直しこそ、憲法審の優先課題だ」と述べた。
* 引用、ここまで。

改憲勢力の幹事、委員たちの意見を聞いていると、「2021年改正の国民投票法の付則では、政党のCMやインターネット広告の規制を巡り、施行後3年をめどに必要な措置を講じると規定している。……その期限が今年9月に到来する」(上掲の『共同通信』の記事)にもかかわらず、「資料4」で整理されている論点がそれぞれの立場から繰り返されただけで、今後、検討が進展する気配は感じられませんでした。

現在、国会で焦点となっている政治資金規正法改正案にも多くの「附則」が盛り込まれる情勢ですが、国民投票法(改憲手続法)の議論を見ていると、「附則」なるものの無意味さがよくわかります。

ところで、赤嶺政賢委員(共産)は「私たちは国民が改憲を求めていない中で国民投票法を整備する必要はないという立場だ」と述べた上で、下記のように「資料4」には記されていない重要な論点を提起しました。

「現行の国民投票法は、2001年に安倍首相が『私の内閣で憲法改正をめざす』と意欲を示す中で自民党が強行採決して作られたもので、改憲案を通すために都合の良い仕組みになっている。
具体的には、最低投票率の規定がないこと、資金力の高い改憲派に広告が買い占められること、公務員や教育関係者の意見表明や国民投票運動を不当に規制していることであり、広報協議会も改憲案に賛成した会派が圧倒的多数を占めることになる。
この根本的な問題を放置したまま協議会の規程を整備することはとうてい認められない。」

この日の議論のもう一つの焦点は、次に転載させていただく『NHK NEWS WEB』の記事で整理されている「緊急事態をめぐる憲法改正」、中でも議員任期延長の改憲で、改憲勢力の幹事、委員たちがこぞって言及していました。

緊急事態めぐる憲法改正 自民“条文案 賛成の党だけで議論も”
『NHK NEWS WEB』2024年5月30日

衆議院憲法審査会で、自民党は、大規模災害など緊急事態の対応をめぐる憲法改正の条文案の作成に賛成する立場の党だけで議論を進めることも排除しない考えを示しました。これに対し、立憲民主党は改正の手続きを定めた国民投票法の見直しを優先すべきだと主張しました。

30日の衆議院憲法審査会では、憲法改正の手続きを定めた国民投票法や、今後の議論の進め方などをめぐって各党が意見を交わしました。
この中で自民党の中谷・元防衛大臣は、大規模災害などの緊急事態で国会機能を維持するための憲法改正について、「各党から早急に条文の起草作業に入るべきだという意見を多数いただいており、機は熟している。大切なことは、幅広い会派が協議の場に参加することで、反対の会派にもテーブルについてもらいたい」と述べました。

一方、中谷氏は、日本維新の会が、条文案の作成に賛成する立場の党だけで議論を進めるよう提案していることについて「時間的な制約もあり、そうした意見も検討させてもらいたい」と述べ排除しない考えを示しました。

これに対し立憲民主党の奥野総一郎氏は「憲法改正を否定するものではなく、議論がしっかり尽くされれば国民投票法を使う場面もありうると考えている。国民投票法の見直しこそ憲法審査会の最優先の課題だ」と主張しました。
* 引用、ここまで。

上掲の記事では触れられていませんが、この日も特に悪目立ちしていたのは国民民主党の玉木雄一郎委員で、発言の冒頭からこんなことを言い募りました。

「今国会の憲法審査会は今日を除くとあと3回となった。起草委員会を速やかに設置して条文作りに着手しようではないか。(そうしないと)もう間に合わない、絶望的だと思う。せめて要綱形式で議論することを提案する。」

そしてこの日の憲法審のあと、玉木委員は『X』にこんな投稿をしています。
「本日をもって、岸田総理の今年9月の総裁任期中の改憲発議は事実上不可能となりました。危機に対応できる統治機構づくりを急ぐべきとの信念に基づき取り組んできましたが残念です。今日も建設的な議論に努めましたが、時間切れです。自民党にはもっとしっかりやってもらいたい。スケジュールも戦略も曖昧のまま。」

参院憲法審の状況もあわせて考えると、9月の改憲発議が不可能であることはほぼ間違いないところだと思います。ただ、改憲勢力の策動が止むことはけっしてありません。
4回続けて最後に同じことを書きますが、私たちはできることをやり続けるしかありません。改憲は絶対に阻止しなければならないし、それは可能だという確信を持ってこれからも声を上げ続けていきましょう。
この日の傍聴者数は35人ほど、記者は3人でした。
委員の出席状況は、自民党の欠席者は冒頭と終盤は1~2名でしたが、中盤は5人前後が欠席していました。
(銀)