4月18日(木)10時から11時35分頃まで、今国会3度目の衆議院憲法審査会が開催されました。実質審議は2回目で、前回に続いて自由討議が行われました。
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前回は10人強の記者が詰めかけていましたが、この日はほぼ半減して6、7人となり、報道量も減少しました(私が購読している『朝日新聞』はこの日の衆院憲法審を全く報じませんでした)。そんな中から、今回も短い記事ながら審議のポイントを的確に伝えていた『東京新聞』の記事を転載させていただきます。

改憲を急かす党派に立民が待った「数年単位かけるべき」 維新「今日にでも条文化作業を」 衆院憲法審査会
『東京新聞TOKYO Web』2024年4月18日

衆院憲法審査会は18日、今国会2回目の自由討議を行った。日本維新の会、国民民主党、衆院会派「有志の会」の3党派は、岸田文雄首相(自民党総裁)が9月の総裁任期までの改憲実現に意欲を示していることを引き合いに、条文案作成を急ぐよう訴えた。一方、立憲民主党は議論すべき論点が多岐にわたるとして、「数年単位の時間をかけ、憲法全般を見渡した議論が必要だ」と反論した。

自民の加藤勝信氏は、大規模災害で選挙の実施が困難になった場合に国会議員任期を延長する緊急事態条項の必要性について、前国会までの憲法審で「共通理解が形成されてきている」と述べた。公明党の国重徹氏も「論点は既に出尽くした感がある」と同調した。

これに対して、立民の奥野総一郎氏は「任期延長された議員は選挙を経ておらず、民主的正当性に疑問が残る」と問題点を指摘。腰を据えた憲法論議の重要性を強調した。共産党の赤嶺政賢氏は改憲に反対した。

維新など3党派は、首相が期限を区切った改憲実現を掲げながら、自民が条文作りを主導しないとして追及。維新の青柳仁士氏は「このままでは首相が約束した総裁任期中の改憲は不可能だ」とし、「今日にでも条文化作業に入るべきだ」と自民に投げかけた。

国民の玉木雄一郎代表も「首相の総裁任期中に改憲発議するのであれば、選択肢は一つしかない」と、緊急事態条項に絞った起草委員会の設置を求めた。有志の会の北神圭朗氏も同様の主張を展開した。(三輪喜人)
* 引用、ここまで。

憲法審の運営にいちゃもんを付け、傍聴人にも八つ当たりした維新の委員たち

前回の傍聴記では馬場伸幸代表の「暴論」を紹介した日本維新の会ですが、この日の憲法審での青柳仁士、三木圭恵両氏の発言も文字どおりの「暴論」でした。

まず、青柳氏は、「昨年まで理事を務めていた予算委員会で総理秘書官の件で理事会が紛糾した際に、全野党が反対する中で委員長職権で与党のみで予算委が開催されたことがあり、その理不尽さに悔しさをかみしめたことを覚えている」と述べた上で、「いまはなぜ自民党が憲法審で同じことをやらないのかと疑問に思う」と、とんでもないことを言い出しました。
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また、青柳氏は、「先週、共産党の発言の際に(傍聴席から)“そうだそうだ”という声が聞こえてきた。わが党の馬場幹事の発言の際にはヤジが聞こえてきた」として、なぜか森英介会長ではなく与党筆頭幹事の中谷元氏(自民)に対し、「この議場で特定の政党を応援する行為は許されるのか許されない発言が繰り返された場合にそれを放置するのは適切なのか」と質問しました。

確かに私たちに配布される傍聴券の裏面には、『傍聴人心得』として「委員会の言論に対して賛否を表明し、又は拍手をしないこと」、「静粛を旨とし議事の妨害になるような行為をしないこと」などと記されていますが、私は10年以上憲法審の傍聴を続けてきて、傍聴者の行為によって議事進行に支障が出るような事態には一度も遭遇していませんし、議場で大声でヤジを飛ばすことがいちばん多いのは維新の委員たちです。これは私の邪推かもしれませんが、維新の面々にはヤジや拍手より彼らの発言の際にしばしば沸き起こる傍聴者たちの失笑が気に入らないのではないでしょうか。

次に三木氏は、中谷氏に対して「議員の任期延長については議論が出つくしているので、民主主義に則って多数決を行うのかどうかを度胸を決めてやっていただくことをお願いしたいと述べました。維新の会では多数決こそ民主主義の基本だというおそろしく単純な認識が共有されているようですが、それにしても言うに事欠いて「度胸」とはなんなんでしょうか。私の隣に座っていた方が「国会議員の発言じゃない」とつぶやいていましたが、全面的に同意します。
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また、三木氏は、野党側筆頭幹事の逢坂誠二氏(立民)に対して、「維新の会は野党だが、立憲民主党の委員会運営にはとてもついていけないので、今後“野党筆頭”だという言い方はしないでほしい」といちゃもんを付け、逢坂氏が「失礼だ」と叫ぶと(冷静沈着な印象のある逢坂氏がかなりの大声を出したので、びっくりしました)、「失礼ではないと思う。強く申し上げておきたい」と開き直っていました。

そして、この日の維新の会の委員たちの「暴論」のオンパレードは、憲法審の場だけでは終わりませんでした。以下、『共同通信』の記事を転載させていただきます。

馬場氏「立民、たたきつぶす」 維新、痛烈に批判
『共同通信』2024年4月18日

日本維新の会の馬場伸幸代表は18日の記者会見で、衆院憲法審査会の開催を巡る立憲民主党の消極的姿勢や、審査会での立民議員の発言を念頭に「立民はたたきつぶす必要がある」と痛烈に批判した。(後略)
* 引用、ここまで。

言うまでもなく、公党を「たたきつぶす」など、絶対に許されない発言です。こんな人物が党の代表で憲法審の幹事に就いているのですから、維新の会こそ「たたきつぶす必要がある」と言いたくなります。それにしても「痛烈に批判」という見出しはいただけませんね。

自民党、公明党の本気度は?

この日、自民党からは会派を代表して幹事の加藤勝信氏、他会派の委員からの質問に答える形で筆頭幹事の中谷元氏、そして稲田朋美氏と石破茂氏の4名が発言しました。

このうち加藤氏は、緊急事態条項をめぐって議員任期の延長を中心にしながら緊急政令にも言及し、国民投票広報協議会の規程についても早急に議論を開始すべきだと述べました。このうち前者に関連して、氏は審査会の前日に愛媛県、高知県で震度6弱の地震が発生したことに触れましたが、震源に近い伊方原発の危険性については何も語りませんでした。ご都合主義もいいところです。

私が注目すべきだと感じたのは、議員任期の延長について、氏が「前回の審査会で公明党の大口善徳委員が問題提起したように、まずは選挙期日を延期し、その上で議員任期を延長するという論理構成が素直だと思う」と述べたことです。この線で自公が一致すれば、維新、国民、有志の3会派を含めて、改憲条文案の調整が進んでいくと思われるからです。

一方、稲田氏は一票の格差、石破氏は最高裁判所裁判官の国民審査と憲法53条に規定されている臨時国会の開催要求などの問題を取り上げ、緊急事態条項については申し訳程度に言及しただけでした。

警戒を緩めることはできませんが、こういう議論を聞いていると、自民党が一丸となって議員任期延長の改憲に取り組もうとしているようにはなかなか感じられないのです。もしかすると岸田首相・自民党総裁の不人気と自民党の支持率低迷でいまは改憲どころではないということなのかもしれません。

それはともかく気になったのは、自民党が紛れもない裏金議員である稲田氏に意見表明の機会を与えたこと、そして石破氏が1人5分という制限時間を大幅に突破して9分近く発言を続けても森会長が注意しなかったことです。

(4.18衆院憲法審、国会中継より)
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もう一つの与党、公明党からは國重徹氏と北側一雄幹事が意見を表明しましたが、國重氏の発言には驚かされました。と言うのも、自民党の稲田氏、石破氏と同じく緊急事態条項についての言及は申し訳程度で済ませ、同性婚の問題についてとうとうと持論を開陳したからです。「先月14日に札幌高裁で同性婚を認めていない民法等の規定が違憲であるとの判決が下された」ことを受けて、「国会は不利益を受けている方々の状況について理解を深めながら、最高裁の判決を待たずに真摯な議論と具体的な対策を進める必要がある」という真っ当な主張でしたが、これまでの参院憲法審での審議の様子も考え合わせると、私はこの日も議員任期延長の議論の必要性を力説していた北側氏の立場は公明党内で必ずしも多数派となっていないのではないかという疑問を覚えました。

國重氏は「立法政策は他の委員会の所掌だが、憲法論についてはこの審査会で発言し問題提起することも許されると思う」と前置きした上で同性婚問題を取り上げましたが、憲法審で憲法論を闘わせるべき現下の最重要課題は、岸田首相が訪米してバイデン米大統領と会談し、日米関係を「グローバル・パートナーシップ」とする共同声明を発表して、自衛隊と米軍との指揮統制の連携の強化などを打ち出したことではないでしょうか。

この日、共産党の赤嶺政賢氏は、割り当てられた発言時間のすべてをこの問題に割いて、下記の主張を展開しました。『しんぶん赤旗』の記事を転載させていただきます。

自衛隊 米軍指揮下に 日米共同声明を赤嶺氏批判 衆院憲法審査会
『しんぶん赤旗』2024年4月19日

衆院憲法審査会は18日、自由討議を行いました。日本共産党の赤嶺政賢議員は、10日の日米首脳共同声明が米軍と自衛隊の「作戦及び能力のシームレスな統合を可能」にするため、「指揮統制のかつてない連携強化に踏み込んだことは極めて重大だ」と指摘。岸田政権が敵基地攻撃能力の効果的な運用のために米軍との協力を深化させるとしていることを挙げ、「日米が一体となって敵基地攻撃を行うためのものだ」と強調しました。

また、エマニュエル米駐日大使が、連携強化は台湾有事を念頭にしたものだと明言していると指摘。日米が台湾有事を想定して策定した共同作戦計画の原案では、日本が安保法制に基づく集団的自衛権を発動し、南西地域で米軍と一体になり中国と戦うと報じられていることを挙げ、「集団的自衛権の行使を具体化し、沖縄が戦場になることを想定し、日米がともに戦う態勢を強化するものであり憲法違反は明白だ」と厳しく批判しました。

さらに、自衛隊は発足以来、日米安保体制のもとで米軍を補完する役割を担ってきており、「指揮権はその中核をなすものだ」と強調。今回、日米の指揮統制のさらなる連携強化を公然と打ち出したことは、「自衛隊を米軍指揮下に一層深く組み込み、米軍の手足となって、海外で戦争することを宣言したものだ」と主張しました。
* 引用、ここまで。

なお、赤嶺氏はこの発言の後すぐに退出してしまいましたが、『衆議院インターネット審議中継』のサイトを確認すると、9時に始まっていた安全保障委員会に駆けつけて質疑を行っていたことがわかりました。また、有志の会の北神圭朗氏が、同じく9時開始の農林水産委員会で質疑を行った後で憲法審に途中から出席し、意見を表明したこともわかりました(北神氏が到着するまでの間は代理の委員が席に着いていました)。

これまでも少数会派の委員が憲法審の審議に参加できない事態はたびたび起こっており、少数会派を排除してまで憲法審の毎週定例日の開催を強行することに強く抗議したいと思います。
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期待していい? 立憲民主党・本庄氏の発言

立憲民主党からは、奥野総一郎、逢坂誠二、本庄知史の3氏が発言しましたが、今回は逢坂氏とともに今国会で新たに幹事に選任された本庄氏の意見を紹介します。

以下、氏のホームページに掲載されている「議事録」を要約したものです。

「先週の審査会で、自民党の中谷筆頭幹事より、“これまでの議論の到達点”として①緊急事態条項、特に国会機能の維持、②憲法における自衛隊の明記、③教育の充実について言及があったが、①をめぐっては、議論は盛んだが肝心の立法事実について認識が共有されているとは思えない。中谷氏は国政選挙の実施が全国の広範な地域で困難であり、かつ、それが相当程度長期間に及ぶ場合と述べているが、それは一体どういう状況なのか。過去の事例も踏まえた上で、具体的にご説明いただきたい。

②についても立法事実が示されていない。現在、自衛隊が憲法に明記されていないことによる法的・政策的な支障は見当たらず(私は支障が見当たらないのは政府の誤った憲法解釈によるものだと考えますので、この見解には同意できません)、違憲論争に終止符を打つためであれば、仮に自衛隊を明記しても行使する自衛権の内容などをめぐって違憲か合憲かといった議論は今後も続くので、改正の意味をなさない。

③に至っては、無償化も含め憲法問題ですらない。憲法が義務教育以外の教育の充実や無償化を禁じたものでないことは文言上明らかであり、むしろ意欲と能力がありながら経済的な理由で義務教育以上の教育を受けられない子どもたちは、憲法第26条に規定されている“その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利”を侵害されていると解することさえできる。

憲法改正を主張される方々の意見を聞いていると、何とかもっともらしい改正の理由を見つけようと“改憲の青い鳥”を探しているようで、そのために本審査会を毎週開催する意味がどれほどあるのかはなはだ疑問だ。それでもなお、開催することに意義があるとすれば、それは現行憲法の遵守状況、とりわけ合憲性・違憲性が問われている立法について積極的に議論することだと考える。

たとえば、先ほど國重委員も取り上げた同性婚のほか、昨年10月に最高裁が違憲判決を下した手術要件を伴う戸籍上の性別変更、“国会で議論し判断すべき事柄”として最高裁からボールを投げられたまま長年放置されている選択的夫婦別姓などが挙げられる。こういった現実的な憲法課題について積極的に議論し、国会における立法をリードしていくことも本審査会の重要な役割である。」

期限を限った改憲を主張してきた安倍元首相や岸田現首相、それに便乗してスケジュールありきの改憲を言い募っている維新や国民に対して、よく整理された説得力のある反論になっていると思いましたし、「改憲の青い鳥」という比喩には感心しました。

起草委員会は始動するのか?

今国会の衆院憲法審の焦点となっている「起草委員会」の設置については、中谷氏から「すでに提案している。まだ合意に至っていないが、今後毎週火曜日に幹事懇談会を開催したいと思っている」という発言がありました。しかし、前回の傍聴記でも書いたように、岸田政権も自民党も低支持率にあえいでおり、改憲派にとって参院憲法審での合意形成のハードルはけっして低くありません。また、改憲勢力は一枚岩ではなく、自民党、公明党の党内でも結束して議員任期延長の改憲に邁進しようという態勢はできていないように見えます。維新の代表である馬場氏の「立民をたたきつぶす」という暴言は、停滞している改憲情勢に対するいらだちの現れだと思います。

改憲は絶対に阻止しなければならないし、それは可能だという確信を持ってこれからも声を上げ続けていきましょう。

この日の傍聴者は前回より10人ほど少なく、35人くらいでした。委員の欠席者は前回を上回り、自民党は5~7人くらいの時間帯が長く、公明党は前半に1人、維新の会と共産党は後半に1人が欠席していました。(銀)