4月21日(木)10時から11時30分過ぎまで、衆議院憲法審査会が開かれました。今国会10回目、6週連続の開催です。
この日のテーマは「憲法改正国民投票に係る有料広告について」で、日本民間放送連盟の永原伸専務理事と堀木卓也常務理事を参考人として招いて、意見の聴取と各会派代表1人ずつによる質疑が行われました。

まず、『東京新聞』のウェブサイトに掲載された記事から、参考人の「意見」を転載させていただきます。
国民投票のCM規制、どうする? 衆院憲法審査会での発言要旨(2022年4月21日)
『東京新聞TOKYO Web』2022年4月21日
21日の衆院憲法審査会での主な発言の要旨は次の通り。
◆参考人の意見聴取
永原伸民放連専務理事 (現行の国民投票法では)投票日前の2週間、「ユーチューブ」などの動画広告は規制されず、テレビとラジオの広告は禁止される。時に感情に訴える、扇情的な影響力を持つ動画広告が配信サービスを通じて大量に流れ、交流サイト(SNS)で拡散される状況が、国民が冷静に判断できる投票環境と言えるのか。
主権者たる国民がネットに広告を出すことを規制することが可能か。規制ありきで議論して、刻々と変化するメディア状況に対してやみくもに規制すれば、過剰、的外れな対応となり、言論空間のゆがみを是正するどころか、かえってゆがみを拡大してしまう。
民放連は、テレビとラジオの広告のみを対象に規制強化することには当然反対だが、ネット広告も含めて国民の広告表現を規制することにも、極めて慎重であるべきという立場だ。規制ありきの議論は言論、表現の自由を損ないかねない。
ネット事業者に対して広告規制の自主的取り組みを求めることも、期待される効果は得られないだろう。
国民投票運動の全ての期間において、ネット広告を含めて、言論に対しては言論で対処する「言論の自由市場」で淘汰されることに任せればよい。
◆各会派代表の発言(略)
* 引用、ここまで。
続いて、『NHK』のウェブサイトに掲載された記事から、憲法審の幹事会で与野党の筆頭理事を務めている新藤義孝氏(自民)と奥野総一郎氏(立民)の「質疑」のポイントを転載させていただきます。
憲法改正の国民投票に伴うテレビCMなど 規制強化に反対 民放連
『NHK NEWS WEB』2022年4月21日
衆議院憲法審査会が開かれ、…(略)…衆議院憲法審査会は21日、民放連=日本民間放送連盟の代表者を招致して、参考人質疑を行いました。
この中で、民放連は「テレビとラジオの広告のみを対象に規制強化することは当然反対だが、インターネットも含めて、国民の広告表現を規制することも極めて慎重であるべきだ。規制ありきの議論は言論・表現の自由を毀損しかねない」と述べ、規制の強化に反対する考えを改めて示しました。
これについて自民党の新藤義孝氏は「民放連は、CMの量を考慮するなど、法律で求められた自主規制をすでに準備していると理解している。今後は、広告の『出し手』である、政党の自主的取り組みなどを議論すべきだ」と述べ、理解を示しました。
一方、立憲民主党の奥野総一郎氏は「資金の多寡によって投票結果が左右されることも起こりかねない。運動資金に規制を設けるとともに、CMやインターネット広告への規制も考えていくことが大事だ」と述べ、規制の強化が必要だと訴えました。
* 引用、ここまで。
要するに、民放連はテレビ、ラジオの広告規制の強化に明確に反対し、ネット広告の規制にも慎重な意見を表明したのに対して、自民党はそうした立場に理解を示し、立憲民主党は規制の強化が必要だと主張したということです。
この点についての新藤氏の発言を少し詳しく紹介すると、以下のようでした。
「国民投票のCMに関する公平・公正は、国会に設置される広報協議会、広告の出し手である私たち政党、そして受け手である民放連の3者のバランスをとって、全体で維持する。ということになると、政党の自主的な取組み、広報協議会の全体像といったことをやるべきだということが明確になったと思っている。」
一方、4月22日の『朝日新聞』朝刊の「#政官界ファイル」というコーナーに、「自民、国民投票法改正案を了承」という短い記事がありました。その内容は、下記のとおりです。
「自民党は21日、憲法改正実現本部と選挙制度調査会の合同会議を開き、憲法改正の手続きを定めた国民投票法について、投票立会人の選任要件を緩和することなど公職選挙法に定められた規定を反映する改正案を了承した。今国会への提出を検討する。
改正案は悪天候で離島から投票箱を運べない場合、現地で開票するための規定や、投票立会人の選任要件の緩和など、すでに公職選挙法に盛り込まれた内容を国民投票法に反映するもの。立憲民主党が主張する国民投票運動中のCM規制については、今回の改正案には盛り込まれていない。
自民の新藤義孝・実現本部事務総長は、公選法の規定を国民投票法に反映させることは「極めて重要であり、迅速にやるべき」だと記者団に述べた。」
自民の新藤義孝・実現本部事務総長は、公選法の規定を国民投票法に反映させることは「極めて重要であり、迅速にやるべき」だと記者団に述べた。」
「国民投票法」と「公職選挙法」とはまったく違うものだ!
この日の憲法審の審議の内容と、上記の「自民、国民投票法改正案を了承」、「今国会への提出を検討」という記事を合わせて考えると、今後のシナリオとして、次のような事態が想定されます。
それは、改憲勢力の各党派が、改憲手続法附則第4条(下記参照)の規定のうち、「二」は難しい問題が山積していて対処するのに時間を要しているけれど、「一」は処理して最低限の課題はクリアしたのだから、改憲案の議論を前に進めようじゃないかという主張を強く押し出してくるということです。
第四条 国は、この法律の施行後三年を目途に、次に掲げる事項について検討を加え、必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする。
一 投票人の投票に係る環境を整備するための次に掲げる事項その他必要な事項
イ 天災等の場合において迅速かつ安全な国民投票の開票を行うための開票立会人の選任に係る規定の整備
ロ 投票立会人の選任の要件の緩和
二 国民投票の公平及び公正を確保するための次に掲げる事項その他必要な事項
イ 国民投票運動等のための広告放送及びインターネット等を利用する方法による有料広告の制限
ロ 国民投票運動等の資金に係る規制
ハ 国民投票に関するインターネット等の適正な利用の確保を図るための方策
そもそも改憲手続法である国民投票法を、公職選挙法並みにという一部手直しで済ませるという自民党の改正案なるものは、一刻も早い改憲案発議をするためだけのものです。そのために、今回の日本民間放送連盟の意見聴取を入れたのではないかと思うくらいです。
実は3年前、つまり今回と同じく参院選を目前に控えた2019年5月9日(木)にも、民放連から2人の参考人(うち1人は今回も出席した永原氏でした)を呼んで「憲法改正国民投票に係る有料広告の自主規制の検討状況について」というテーマで衆院憲法審が開かれています。
そのときの衆院審査会は2017年11月30日以来久しぶりの開催であった点が今回と全く異なりますが、当時の民放連の見解を『朝日新聞』から引用すると、
「この日の憲法審で、民放連は法規制に慎重な姿勢を示すとともに、CMの量的自主規制も行わない方針を説明。永原伸専務理事は『国民の表現の自由に制約を課すことは、放送事業者の勝手な判断で行うべきではない』と述べた。」
と、今回と全く同じなのです。
今回、その時の意見を利用して(実際、民放連の意見に最も相づちを打っていたのが新藤義孝氏でした)、それをステップにして自民党の国民投票法改正案への道すじをつけていこうとしたと思われます。姑息な策動を許してはなりません。国民投票法はマスコミを牛耳る政府や、財源豊富な改憲派にとって圧倒的に有利な天下の悪法です。平和憲法が指針の教育労働者や自治体労働者の意見表明は封じるというとんでもないものです。怒りを持って弾劾していきましょう。
今回、その時の意見を利用して(実際、民放連の意見に最も相づちを打っていたのが新藤義孝氏でした)、それをステップにして自民党の国民投票法改正案への道すじをつけていこうとしたと思われます。姑息な策動を許してはなりません。国民投票法はマスコミを牛耳る政府や、財源豊富な改憲派にとって圧倒的に有利な天下の悪法です。平和憲法が指針の教育労働者や自治体労働者の意見表明は封じるというとんでもないものです。怒りを持って弾劾していきましょう。

この日の傍聴者は50人弱で、前々回と同様、立ち見を防ぐために傍聴席の後方に椅子が出されましたが、今回はパイプ椅子ではなく厚いクッションの付いた立派な椅子でした。記者・カメラマンは10人ほどでTVカメラが1台入っていましたが、閉会時にはそれぞれ4人、0台に減っていました。また、開会から閉会までずっと3~10人ほどが欠席しており、そのほとんどが自民の委員でした。(銀)