4月13日(水)13時10分頃から15時5分頃まで、今通常国会3回目の参議院憲法審査会が、2週連続で行われました。衆院と同様に毎週定例日の開催が恒例となることを心配していましたが、参院憲法審のホームページによれば、次回は1週空けて27日に開かれることになっています。

次回のテーマは前回、今回に引き続き「憲法に対する考え方について(特に、憲法第56条第1項の『出席』に関する議論を中心として)」とされ、「総括的な各会派の意見表明」が行われるようですが、以下に報告するように、今のところ(おそらく今後も変わらないでしょうが)このテーマについては論点も議論の内容も全くかみ合っておらず(メディアの常套句を使えば「平行線」で)、拙速に(あるいは強引にと言った方がいいような形で)審議が進められることが懸念されます。
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この日は、最初に参院の憲法審査会事務局長と法制局長から「出席」の論点整理について説明を聴取し、その後委員間の意見交換が行われました。

ところで、憲法審事務局長、法制局長からの説明は、それぞれ資料に沿って「〇ページをご覧ください」というふうに進められましたが、傍聴者には資料が配布されませんでしたので、私たちがその内容を把握するのは困難でした。衆議院憲法審査会での法制局長による「オンライン審議」及び「緊急事態」等に関する説明時には傍聴者にも資料が配布されたことと比べると、参院憲法審事務局の対応は不親切極まりないものであったと苦言を呈しておきたいと思います。
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まず、説明聴取の要旨を、今回も『東京新聞』のウェブサイトに掲載された記事から転載させていただきます。詳細はともかく、「出席」や「オンライン審議」をめぐっては多くの法的な論点や技術的な課題があり、簡単に結論を得てパパっと対応できるような問題ではないということがおわかりいただけると思います。

参院憲法審、オンライン審議は「緊急時」のほか「妊娠・出産」にも適用求める意見
『東京新聞TOKYO Web』2022年4月13日

13日の参院憲法審査会での主な発言の要旨は次の通り。
◆説明聴取

岡崎慎吾参院憲法審査会事務局長
憲法56条1項の「出席」の概念について、語義を厳格に捉える立場は、その場に物理的に存在することと考える。出席の機能的意義に着目し語義を緩やかに解する立場は、物理的出席と同視しうる環境が整えば、議場に現前しなくとも例外的に出席とみなすことを許容する。

オンライン審議を認める場合には、現行憲法との関係が問題となる。語義を厳格に解する立場からは、基本的に現行憲法の見直しが必要になると考える。この立場からも、極めて特殊な状況の下では例外的にオンライン審議を容認することも考えられる。

出席概念を機能的に捉える立場からは、オンライン審議の導入は現行憲法の枠組みの中で行うことができることになる。この立場においても、例外適用の要件は論者によって異なる。

川崎政司参院法制局長 
法制度設計上、オンライン出席に関する主な課題を見ておきたい。
オンライン出席はどのようなもので、どのような条件が必要か。少なくとも物理的出席と同程度の双方向性をどこまで確保できるのかが課題となる。出席議員の本人性、自由な意思決定や表決の真正性を確保することが必須だ。

公開原則との関係から、何らかの形で国民が見聞きできる見せ方や表示の方法を工夫する必要がある。
オンライン出席を認める範囲は、感染症、大規模災害など、どのような事態を想定するのか。その要件や限界、認定の仕方などが問題となる。表決の範囲は選挙や首相指名、動議提出なども認めるのかどうかの検討が必要となる。

物理的な出席とオンライン出席を併用するハイブリッド方式にとどめるのか、完全オンライン審議まで認めるか。閣僚や証人、参考人等の出席の取り扱いも議論となる。

◆各会派の主な意見(略)
*引用、ここまで。

上記の説明聴取は20分ほどで終わりましたので、今回の委員間の意見交換には100分近い時間が費やされ、発言を希望した委員全員(おそらく18人だったと思います)に発言の機会が与えられました。

その中から、まず、この日3回も発言に立った小西洋之氏(立民)の意見を、少し詳しく紹介します。
「オンライン出席の取りまとめのあり方の反面教師とすべきは衆院憲法審の取りまとめの文書だ。この文書ではオンライン出席が法理として読み取れる理由は何も記載されておらず、議院自律権の名の下にいきなりオンライン出席が認められるとされているが、衆参の憲法審に参考人として招いた4人の憲法学者はこの考え方について憲法上問題があるとおっしゃっている。このような文書を多数決で採決し議長や副議長に提出した衆院のあり様は国を誤る行為だとの懸念を表明せざるを得ない。」

「この文書の内容の説明を求めるため、衆院憲法審の新藤筆頭幹事、衆院法制局長等の本日の出席を求めたがかなわなかったことは、参院を軽視する行為だとも申し上げなければいけない。すべての元凶は衆院憲法審の毎週開催であり、参院憲法審では真に必要性がある場合にのみ審査会を開いてしっかり議論する運営に努めたい。」

「衆院憲法審では過去数回国家緊急権について議論しているが、参議院の緊急集会が使えないことを前提にしている。我々はそんなことを議論しておらず、参議院を軽んじる行為であるということを共有したい。」

「山谷えり子氏(自民)が防災担当大臣だったときに行った東日本大震災を踏まえた災害対策基本法や南海トラフ特別法の改正においては、緊急政令は必要ないと結論づけている。その山谷氏が国家緊急権の憲法改正を唱えるのは自己矛盾だと思う。」

また、小西氏は参院法制局長に対して、「臨時国会の召集義務違反」に関連して憲法審の法的な任務について質問し、「憲法違反に関する問題を含む日本国憲法の施行、順守の状況に関する調査は、国会法102条の6に規定されている『日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行う』ことにまさしく含まれる」との答弁を引き出しました。

この点については、山添拓氏(共産)も「国民の生存権が脅かされる中、憲法の明文に反して臨時国会を開こうとしなかったことへの反省もなく、緊急時の国会出席をことさらに論じるのは不可解であり、コロナ危機に乗じて緊急事態条項の創設に向けた改憲の論議を加速する呼び水にしているとの疑いを抱かせる」、福島みずほ氏(社民)も「私たちは憲法53条に基づいて何度も臨時国会の召集を求めてきたが、コロナ禍で国会を開き議論すべきだというときに開かなかったという憲法違反があったにもかかわらず、今、国会が開けなかったらどうするという議論をするのは大変矛盾しているのではないか」と指摘しました。
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山添氏に対しては、第1回の憲法審と同様にこの日も「急迫不正の外国からの侵略に対して国を守っていくために自衛隊または自衛権の存在をきちっと法的に明記していくことが必要だ」と発言した山田宏氏(自民)と堀井巌氏(自民)が、最近の記者会見での志位和夫共産党委員長の「万が一、急迫不正の主権侵害が起きた場合には自衛隊を含むあらゆる手段を行使して、国民の命と日本の主権を守り抜く」との発言に関連して、自衛隊の憲法上の位置づけについての共産党の見解を尋ねました。

他の問題についての山添氏及び吉良よし子氏(共産)の発言とあわせて、『しんぶん赤旗』のウェブサイトに掲載された記事を転載させていただきます。

改憲項目のすり合わせ 山添氏 参院憲法審を批判
『しんぶん赤旗』2022年4月14日

参院憲法審査会は13日、本会議へのオンライン出席の可否をめぐり、憲法56条1項「出席」に関する自由討議を行いました。日本共産党の山添拓議員は、前回の参考人質疑で憲法学者の赤坂幸一・長谷部恭男両参考人の意見は「いずれも『オンライン出席』を必要とする場面は極めて限られるという慎重なものだ」と指摘しました。

吉良よし子議員は、2度の妊娠・出産をした経験をふまえ「産前産後など国会への出席が困難な時、必要なのは、提出された法案などに自分の立場や意見を議事録などに残してもらうことだ」と発言。「これは憲法ではなく、国会法や議院規則を変えることで実現可能だ」と述べました。

一方、自民党の堀井巌議員、山田宏議員は、山添氏に「現行憲法における自衛隊の位置づけは」「違憲か」と質問。山添氏は、憲法9条と自衛隊とは矛盾すると指摘し、党綱領は段階的に自衛隊の解消を図っていく立場だが、これらは国民合意を経て進めるとして、「いますぐ自衛隊をなくすことは考えていない」と語りました。
その上で山添氏は、憲法審が開かれれば新型コロナを理由にオンライン出席が必要だと議論を開始し、さらに緊急事態条項に進み、自民党議員の質問のように9条の議論に踏み込んだとして「次々と改憲項目のすり合わせに向かうことが、今日の審議を通じても明らかになった」と批判。「やはり憲法審は動かすべきではない」と表明しました。

*引用、ここまで(太字は引用者による)。
 
この日の傍聴者は20人ほどで最近になく少なく、記者・カメラマンは10人に満たず、開始1時間後には3人、(前回もそうでしたが)閉会時には1人になっていました。TVカメラも最初1台が入っていましたが、いつの間にか姿を消していました。
いつも委員のほぼ全員が出席している参院の審査会ですが、前回に引き続きこの日も途中から4、5人が席を外していました。(銀)