3月23日(水)10時から11時40分過ぎまで、今通常国会で初めての参議院憲法審査会が開催されました。衆院ではすでに2月10日からほぼ毎週憲法審が開かれていますが、参院では従来の慣例に基づき、予算案の成立を待って審議を開始した形です。


この日は、昨年6月9日以来久しぶりの開催だったこともあってか、「憲法に対する考え方について意見交換を行う」ということで、トンデモ論の類いも含め様々な発言がありましたが、インターネットで関連記事を検索すると、多くのメディアが「議員任期の延長」や「合区の解消」に関する議論に注目して報道していました。以下、その一つとして『産経新聞』の記事を転載させていただきます。
議員任期延長の改憲で対立 自民推進、立民は不要
『産経ニュース』2022年3月23 日
参院憲法審査会は23日午前、今国会初の実質討議を実施した。自民党の石井準一氏は党憲法改正案4項目に掲げる緊急事態条項新設のうち、国会議員の任期延長を可能にする改憲を早急に検討する必要があると強調した。推進姿勢を重ねて示した形。一方で立憲民主党の小西洋之氏は「国会法や公選法の改正で解決できる」と述べ、改憲は不要だとの認識を表明した。双方の対立が鮮明となった。
石井氏は隣接県を一つの選挙区にする参院選の合区に関し、解消に向けて議論を進めるべきだと訴えた。自民は合区解消も党改憲案4項目に掲げている。小西氏は改憲ではなく国会法の改正などで対応できるとした上で「議論を深める用意がある」と語った。
参院憲法審での実質討議は昨年6月以来となる。幅広い論議を目指し「憲法に対する考え方」をテーマとした。
*引用、ここまで。
この日は多くの委員がロシアのウクライナ侵攻に言及し、自民党の委員が「自分たちの国は自らが守るという国際社会の常識に基づいて憲法に自衛隊を明記するべきだ」(山田宏氏)、「核シェアリングの議論を避けるべきではない」(片山さつき氏)、「『平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して』と言うが、現実を見ずにイデオロギーだけによってやってはダメだ」(衛藤晟一氏)などと発言した一方で、共産党、社民党の委員は「9条を生かした外交戦略こそ必要だ。日本政府が核兵器禁止条約に参加することを強く求める」(共産・山下芳生氏)、「武力で平和はつくれない。ロシアに国際法を守れと主張するなら、9条の理念である武力の行使をやめるよう求めていくことこそ必要だ」(社民・福島氏)などと主張しました。
(国会中継より)

(国会中継より)

そんな中、異彩を放ったのが西田昌司氏(自民)の発言で、共産党の委員が今回の事態を「プーチン政権の無法」(山下氏)、「蛮行」(吉良よし子氏)を口を極めて非難したのに対して、「力による現状変更は当然否定するが、背景にある歴史的事項を考えずに軽々に発言するものではない」と述べたのです。
これを聞いてオヤッ?と思いましたが、そのあと「大日本帝国憲法下で起きた大東亜戦争は、満州事変も含めて日本にとって自衛の戦争であった」と言うのを聞かされて、ガッカリするのと同時に、「自衛」あるいは「自衛戦争」という言い方、そしてそれを発する人物や勢力には本当に気を付けなければならないとあらためて感じました。

そのほか、この日の審議で多くの時間が費やされたのは、自民党の藤末健三氏と立憲民主党の打越さく良氏、小西洋之氏、熊谷裕人氏とのやりとりでした。その背景にあるのは、藤末氏は2016年に行われた参院選で民進党から比例区で出馬し当選(このときが3選目で、それまでの2回は民主党から比例区で当選)したにもかかわらず、その後民進党に離党届を出して除籍処分を受け、「国民の声」という会派を設立し、現在は「自由民主党・国民の声」という参院の会派に所属して活動していることです。同氏は7月の参院選で自民党公認で比例区から出馬することが内定しており、今年1月には麻生派に入会したそうです(以上、藤末氏の経歴は『ウィキペディア』による)。
これを聞いてオヤッ?と思いましたが、そのあと「大日本帝国憲法下で起きた大東亜戦争は、満州事変も含めて日本にとって自衛の戦争であった」と言うのを聞かされて、ガッカリするのと同時に、「自衛」あるいは「自衛戦争」という言い方、そしてそれを発する人物や勢力には本当に気を付けなければならないとあらためて感じました。

そのほか、この日の審議で多くの時間が費やされたのは、自民党の藤末健三氏と立憲民主党の打越さく良氏、小西洋之氏、熊谷裕人氏とのやりとりでした。その背景にあるのは、藤末氏は2016年に行われた参院選で民進党から比例区で出馬し当選(このときが3選目で、それまでの2回は民主党から比例区で当選)したにもかかわらず、その後民進党に離党届を出して除籍処分を受け、「国民の声」という会派を設立し、現在は「自由民主党・国民の声」という参院の会派に所属して活動していることです。同氏は7月の参院選で自民党公認で比例区から出馬することが内定しており、今年1月には麻生派に入会したそうです(以上、藤末氏の経歴は『ウィキペディア』による)。
あろうことか藤末氏が参院憲法審の幹事を務めていることもあって、立民の各氏は藤末氏の憲法に関する過去の言動と現在の立場との矛盾を突いたというわけですが、議論の内容はここで紹介するに値しないと思いますので省略します。
この日の傍聴者数は30人くらい、記者・カメラマンは10人ほどで最後は5人しか残っていませんでした。委員の出席率は、以前からずっとそうですが衆院と比較してとても高く、この日も全員が出席していました。
『東京新聞』のウェブ版の記事によると、「自民は憲法審に先立つ幹事会で、次回の憲法審を4月6日に開く日程を提案し、立民は保留した」とのことであり、いまのところ衆院と違って毎週開催を強行しようとする動きはないようです。こんなことで喜ぶのは本当はおかしいのですが、ホッとしたことは否めません。
ともあれ、参院の憲法審もしっかりチェックしてきたいと思います。(銀)