3月3日(木)、開始予定時刻の10時をやや過ぎてから11時20分頃まで、今国会4回目の衆議院憲法審査会が4週連続で開催されました。

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今回は「憲法第65条第1項の出席の概念について総括的な討議を行う」いうことで、各会派1名ずつの発言、委員各位による発言が行われ、ここまではいつもと同じ議事の進行でしたが、その後、(事情を知らなかった私たちには)驚きの展開が待っていました。
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森英介会長(自民)が「本件については、幹事会の協議に基づき、議論の概要を衆議院議長に報告したい」と述べ、衆議院憲法審査会事務局長(衆院の職員です)が『憲法第65条第1項の「出席」の概念について(案)』と題した「衆議院憲法審査会」名の文書(A4判1枚の短いものです)を読み上げて、採決に付されたのです。

共産党の赤嶺正賢氏が反対討論を行いましたが、賛成討論に立った委員は1人もなく、にもかかわらず赤嶺氏以外の全委員が起立・賛成して、この文書を森会長が衆議院議長に報告することが決定・承認されました。

この日の憲法審の様子を報じた翌4日の『朝日新聞』朝刊の「オンライン国会 『改憲不要』」という記事には「多数決でとりまとめ 異例」という小見出しが付けられていましたが、予算委員会の審議中の開催強行から始まったこの間の経緯は、「異例」というより「異常」と言った方がいいかもしれません。
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出典:NHK NEWS WEB

ただ1人反対した共産党・赤嶺氏の主張は、下記のようなものでした(『しんぶん赤旗』のウェブサイトに掲載された記事を転載させていただきます)。

衆院憲法審査会 赤嶺議員の発言(要旨)
『しんぶん赤旗』2022年3月5日

憲法審査会において、憲法の個々の条文の解釈を多数で確定させるなどというきわめて乱暴なやり方は断じて認められません。
しかも、多数により結論づけた報告を衆院議長に提出し、憲法審査会があたかも憲法条文の解釈権をもつかのようにふるまうことは越権行為です。憲法審査会で憲法56条1項の解釈を多数で確定させるなどということは断じてやるべきではなく、反対です。

議論のやり方も問題です。前回の参考人の意見陳述ではっきりしたのは、56条1項は国会という権力を統制し、乱用を防ぐための極めて重要な規定だということです。

高橋和之参考人は規定について憲法上の明確なルールであるのと同時に、「少数者を保護し、権力の乱用を防止するために憲法に定めた」もので、「厳格に解釈、適用することが要求される」と述べました。議院の自律権は憲法条文の解釈権を与えたものではないと指摘しています。

只野雅人参考人はオンライン出席で、「公開の原則」や「議決権の一身専属性の確保」などの課題を挙げ、慎重に検討するよう繰り返しました。

参考人が強調したのは、憲法の例外を認めることによる権力乱用の危険性です。高橋参考人は「権力行使の便宜のために統制を外そうというのは、憲法の精神、趣旨に反する」と厳しく批判。コロナ禍や東日本大震災でも国会が定足数を満たせない状況にはなっておらず、立法事実がないと述べ、「極端な事例を出して法律や憲法の改正を行うと、かえって危険の方が大きくなる」と強調しました。只野参考人も「いったん例外を認めると、際限なく広がっていく問題がある」と述べています。

しかし、今日の審査会では参考人の意見陳述などなかったかのように、「例外的にいわゆる『オンラインによる出席』も含まれると解釈することができる」のが「意見の大勢だ」という、結論だけが先行した報告案を示しています。憲法の専門家の意見を無視し、憲法解釈上の重大な疑義を残したまま結論ありきの報告をまとめても、何らの意味も持たないものだと言わざるを得ません。国会議員として恥ずべきものです。

いま「緊急事態」をあげつらって改憲に結び付けようとする議論がされていますが、「緊急事態」を口実に、権力を縛る憲法の規定を緩め、立憲主義を踏みにじることは許されません。
* 引用、ここまで。
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改憲をせずともオンライン国会の開催は可能だという結論の当否はともかく、憲法の解釈を憲法審査会の多数決で確定させようという「きわめて乱暴な」「越権行為」(上記の記事に紹介されている赤嶺氏の発言)は断じて認められません。この暴挙に共産党を除く全会派が賛成するとは、本当に深刻な事態だと思います。

とくに立憲民主党の対応には失望しました。野党側の筆頭幹事の奥野総一郎氏(立民)は、「本日、総括質疑が行われ、オンライン出席を認める声が多数を占めるに至ったことを歓迎する。会長には、しっかりとこの声を衆議院正副議長、議運委員長に伝えていただきたい」とまで言っていました。党名に「立憲」を掲げているのに情けないことだと思います。

さらに、玉木雄一郎氏(国民)に至っては、「これからも憲法上の論点について一定の考え方を示す機能を憲法審査会が積極的に果たしていくべきだ」「憲法審が準司法的な機能、あるいは準憲法裁判所的機能を果たし得るのではないかと問題提起しておきたい」とのトンデモ論を披露していました。
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話は変わりますが、私にはこの間の議論を聞いていてずっと違和感を覚えていたことがあります。それは、国会議員の3分の1が出席できなくなるような大変な事態がもし起こったとして、そのときはオンラインでの審議もスムーズには行えない可能性が高いのではないかということです。通信網が寸断されるかもしれませんし(そのときは憲法第57条が求める「会議の公開」も実現できないでしょう)、オンラインで参加しようとする議員をサポートする人員(秘書や国会職員、場合によっては通信業者も)の確保も容易ではないと思います。まずは自身の安全を図るなど身の回りのことに精一杯で会議どころではないという議員もいるでしょう。つまり、非常時におけるオンライン国会の議論は「机上の空論」ではないかということです。

ともあれ、改憲勢力は1つのテーマを片付けたということで、衆院憲法審の議論を次の段階に進めようとしています。
その1つは、緊急事態時における議員の任期延長の問題です。この日も自民、維新、公明、国民の各党が足並みをそろえてこのテーマに言及していました。

そしてもう1つは9条の問題で、これについては日本維新の会の委員が率先して火付け役を演じています。この日も三木圭恵氏が、
「ロシアのウクライナ侵攻を目の当たりにして、日本は今のままの憲法で国民の生命と領土と財産を守れるのか、国会は平和ボケしていないか、今一度考えることが重要ではないか」
「ウクライナで行われているロシアの武力侵攻と同様のことが台湾において起こらないと誰が断定できようか、尖閣において起こらないと誰が保証してくれようか」
我が国は自分の国は自分で守るという当たり前の議論を敗戦から今日まで避けてきた。今こそ9条を含む憲法改正の議論を憲法審査会で行うことが求められている
と、ウクライナと台湾と尖閣諸島を並列して論じるという信じがたい発言をしたかと思えば、足立康史氏は、維新が政府に対して核共有や非核三原則の見直しの議論を求める提言(後者はすぐに引っ込めたようですが)をまとめたことに関連して、
持たせず、作らせず、持ち込ませずに加えて考えさせず、語らせずという非核五原則はおかしい。この激動の、動乱の時代に国民の生命と財産を守っていくためにタブーなき議論をしていくことを、日本維新の会は体を張ってやっていくことをお誓いする」
と、核兵器の保持を検討すべしという意見を公然と主張していました。「体を張って」って、どういうことを思い浮かべているのでしょうか。

今回の傍聴者は40人ほど、記者やカメラマンは20人強くらいで、TBSのテレビカメラが入っていました。開会から閉会まで自民党の委員3、4人が欠席していましたが、採決時にはほぼ全員が揃っていました。

これからも衆院憲法審は毎週開催されるのか、次のテーマは何になるのか(それにしても、昨年6月の改憲手続法改正で「3年を目途に……検討を加え、必要な法制上の措置その他の措置を講ずる」とされたCM規制等の問題をいつまで放置しておくのでしょうか)。警戒を緩めることなくフォローしていきたいと思います。(銀)