1月19日(水)、三里塚の「新やぐら裁判」の控訴審第2回が東京高裁でありました。この日は午前・午後と一日がかりの裁判で、市東孝雄さんと3人の学者の証人調べが行われました。
午前中の裁判を傍聴したので報告します。
(裁判前に高裁前でビラまき)
三里塚裁判

今回の裁判は、成田空港会社(NAA)が市東さんの所有地に建てている反対同盟の監視やぐらや大看板などの撤去と土地の明け渡しを求めているものです。そんなことを申し立てるNAAの側の根拠は、市東家が農作業に使っているところが借地であり、そこはすでにNAAが買い取っているところだからというものです。

でも、このこと自身がまったく卑劣なだまし討ちであり、違法なことです。NAA側は1988年に「転用目的」で地主から買い取ったとしていますが、それは、市東家には何も知らされていませんでした。市東さんは15年後の2003年12月の「朝日新聞の記事」で初めて知ったということでした。証言の中で市東さんは「自分たちはずっと農業を続け、地主は何も言わず地代を受け取り続けていた」と言っています。
そして、その後、やぐらや大看板を建てたときも地主は何も言ってこなかったのです。

「地主が小作人に無断で農地を売った」ことや「転用目的が15年も農地のままであった」ことは、農地法では厳しく規制・禁止されており、市東さんは「こんなことは後にも先にもないことだ」と弾劾しました。

市東さんは、「天神峰と南台の農地は親子三代100年にわたって耕されてきた農地であり、どこにでもある土地とは違う」「これらを取り上げるのは農民としての命を奪うものだ」「手足をもぎ取られる思いであり、生きがい、誇り、尊厳が著しく損なわれる」と言われ、「飛行機の排ガス検査などでやぐらも建てた。こうしたものも農地と一体のものだと思っている」と訴えられました。
(監視やぐら)
三里塚3

市東さんの証言に続いて憲法研究者の内藤光博さん(専修大学法学部教授)が証言。
内藤さんは、「生存的財産権」(自らの生存を確保するための基本的な財産)は絶対的に保障されるとし、この中に看板などや有機農法も入ると言われました。

また、憲法ができる以前から、人間は生まれながらに持っている基本的な人権(人体、経済活動、精神活動)に基づく表現の自由を持っていると言われ、看板など「命がけの意見表明」はその中に入ると説きました。

内藤さんはさらに、食料をめぐって戦争にならぬよう農業の保護・農民の保護への国の責務について述べられました。スイスの憲法では農業の重要性を確認し農地の保全を義務付けていおり、また韓国の憲法では耕す者こそが田畑を持つべきであると農民を保護しているとのことでした。

聞いていて、しばし心が洗われるようでした。市東孝雄さんの存在と闘いの正義性が法廷の中をいっぱいにしたのです。

でも、次の瞬間、暗い気持ちになりました。NAAの代理人弁護士は、市東さんと内藤さんの証言に対して、裁判長に問われても一切何も言わず(聞く耳を持たず)、裁判官も何も言わないのでわからず、法廷内に8人もの衛視が立っていて傍聴者が声を発するものなら飛び掛かからんばかりの体制です。法廷の外も衛視でいっぱい。裁判所はもはや、「基本的な人権」とはどういうことなのかさえ分からない人たちでいっぱいになっているようです。

市東孝雄さんと三里塚反対同盟は、市東さんの農地の強制収用がいつ来てもおかしくないという緊迫した情勢の中で、農業をやりながらいくつもの裁判を闘っています。50年を超える三里塚農民の不屈の闘いに連帯し、その闘いに学びましょう。隣りの人にぜひ、市東さん、三里塚の闘いを知らせてください!(S)

三里塚芝山連合空港反対同盟のホームページ
https://www.sanrizuka-doumei.jp/wp/