6月9日(水)13時から、今国会5回目の参議院憲法審査会が開催され、改憲手続法改正案の質疑と討論、採決が行われて、波乱なく可決されました(正確に言うと、後述するように維新の松沢成文氏が提出した修正案が否決された後、原案が可決されました)。
同法案は11日(金)の参議院本会議でも可決され、国会提出から約3年を経て成立することとなりました。
同法案は11日(金)の参議院本会議でも可決され、国会提出から約3年を経て成立することとなりました。
途中10数分の休憩をはさみ、審査会が閉会したのは16時頃でした。

今回は採決が行われる予定でしたので多くのメディア関係者が詰めかけるのではと思っていましたが、開会時に記者席に着いていたのはわずか8人で、明らかに記者だという感じの人は3人だけでした(他にテレビのカメラマンが1人とその助手1人、大きなレンズを付けたカメラを2台ずつぶら下げたカメラマンが2人、よくわからない人が1人いました)。そしてずっとそんな状態が続いていましたが、採決時には(全員が記者かどうかはわかりませんが)いつの間にか15人ほどが記者席に座っていました。
この日も傍聴者はきわめて多く、50人ほどが集まっていたと思います。
ところで、この日は参院憲法審の開会前の12時から、参議院議員会館前で改憲手続法の採決に反対する集会が開かれていて、下の『レイバーネット』の記事にあるとおり、社民党の福島瑞穂氏もあいさつされていました。
福島氏は憲法審の委員として長く活動されてきていて、今回の改正案の内容やその採決には当然反対の立場であったろうと推察しますが、現在社民党は参議院で立憲民主党と統一会派を組んでいますので、今回、立民が賛成している改正案の採決に対してどのように臨まれるのだろうと心配していました。
結局この日の審査会に福島氏は姿を見せず、ちょっと複雑な気持ちになりました。ホッとしたのが半分、ガッカリしたのが半分といったところでしょうか……
改憲手続法(国民投票法)改正案採決強行するな!議員会館前に200人
『レイバーネット』2021年6月9日
「改憲手続法(国民投票法)改正案採決強行するな!審議をつくせ!自民党改憲4項目案反対!」が6月9日12:00、参議院議員会館前で行われた。会期末を迎えた国会は、土地規制法案とともに投票法案が焦点になっている。憲法を改悪する投票法案は、今日にも数の力で採決を構えている。そんな菅政権の傲慢を許すなと参議院議員会館前には200名を超える労働者、市民が集まった。(宮川敏一)
(中略)
【議員挨拶】
(中略)
◆社民党福島瑞穂議員
「憲法を生かそうと皆さんと頑張ってきました。反して菅政権は、憲法を使わず、使わさせない政治です。こんな政治家はいらない。
権力者と市民の使う憲法は違う。
CM規制も緩くお金で何でもできるダメな投票法案です。憲法を生かす社会を守りましょう」。
(後略)
*引用、ここまで。
今回の審査会についての報道は採決の結果のほかはこれまでの経緯や今後の見通しを中心に書かれたものばかりで、この日の審議の内容について詳しく報じた記事は見つけられませんでしたが、そんな中で私もいちばん注目すべきだと感じたやりとりを動画付きで伝えた『日テレNEWS』をご紹介したいと思います(『YAHOO!JAPANニュース』から転載します)。
国民投票法改正案 参院・憲法審査会で可決
『日テレNEWS24』2021年6月9日
『日テレNEWS24』2021年6月9日
憲法改正の手続きを定めた国民投票法の改正案は9日の参議院・憲法審査会で自民党や立憲民主党などの賛成多数で可決されました。11日の参議院本会議で成立する見通しです。
立憲民主党・小西洋之議員「CM規制を法改正でやらなければ国民投票法は発議できない、発議すべきではない、そんな考えでしょうか」
自民党・中谷元議員「私としては個人的に法改正が必要ではないかと考えているところでございます。これからどのような規制が必要なのか、また適当なのか、政党間で真摯な議論を踏まえた上で幅広い合意を形成する必要があると考えているところであります」
改正案は、公職選挙法に合わせて駅の構内などにも投票所が設置できるようにすることなどが盛り込まれていますが、立憲民主党などの反対でおよそ3年にわたって採決が先送りされていました。
しかし先月、「CM規制」などについて「3年以内に検討し、必要な措置を講ずる」とする立憲民主党の修正案を自民党が受け入れ、今の国会での成立で合意していました。
改正案は11日の参議院本会議で成立する見通しです。
*引用、ここまで。
上記の小西氏(参院憲法審の委員)と中谷氏(衆院議員、この日は改正案の提案者として出席していました)の議論のように、この日の(と言うより、今国会の憲法審査会ではずっとそうだったのですが)質疑の焦点は立民の提案により加えられた附則の解釈にありました。具体的には、「『CM規制』などについて『3年以内に検討し、必要な措置を講ずる』」までの間に改憲の議論や発議を行うことが可能なのか、許されるのかということです。
ここに付け込んだのが維新の松沢成文氏で、前々回、前回と全く同じ発言を繰り返し、改正案の附則に「前項の規定は、国会が、同項に規定する措置が講ぜられるまでの間において、日本国憲法の改正案の原案について審議し、日本国憲法の改正の発議をすることを妨げるものと解してはならない」という項目を付け加えることを提案しました。
改正案の採決では、山添拓氏(共産)が改正案、維新修正案の両案に反対、打越さく良氏(立民)と矢田稚子氏(国民)が改正案に賛成、維新修正案に反対、東徹氏(維新)が両案に賛成の立場から討論を行い、維新修正案は維新のみ賛成で否決、改正案は共産のみ反対で可決されました。
今回の審査会の後半は、維新あるいは松沢氏個人の不出来なパフォーマンスを無理やり見せられているようで本当に不愉快でしたので、山添氏が反対討論の中で「維新の修正案は、(改憲手続法の)根本的な欠陥を放置したまま改憲原案の審議や改憲の発議まで行えることを“恥ずかしげもなく”書き込もうとするもので、到底認められない」と強い言葉で維新を批判したときには、胸がすく思いがしました。
立民と維新の板挟みになった(今後の憲法審の運営を考えれば維新の修正案に賛成して立民との合意を反故にすることはできないし、ましてや維新案に反対を表明して改憲の議論と発議に足かせをはめるわけにはいかない)からでしょうか、誰も討論に立たなかった自民党に対しては「ふざけるな!」と記しておきたいと思いますし、この日も自民党の委員たちの発言にはたびたびあきれ返ってしまいました。
その最たるものは質疑の終盤、山添氏の質問に対する逢沢一郎氏(自民党衆院議員、改正案の提案者)の答弁で、氏は「基本の部分では与党、野党の考え方に全く齟齬がないことを改めて本日も確認いただいた」と言ってのけたのです。どこをどう聞いたらそんな認識になるのか、信じられません。
また、この日とくに気になったのは、中谷元氏が発言する際に、衆議院事務局の職員でしょうか、後ろに控えているお役人がたびたび資料を差し出していたことです。馬場伸幸氏(維新の衆院議員、改正案の提案者)も、彼らにしばしば助言を求めている様子でした。
議員立法なのですから、できるだけ自分たちだけで対処してほしいものだと思いました。それができないくらいなら、そんな法案は提出するなと声を大にして言いたいところです。
くやしい思いで憲法審査会が開かれた委員会室を後にすると、外から採決を弾劾するシュプレヒコールが聞こえてきました。「改憲・戦争阻止!大行進」の仲間やいくつかの団体が、この日は最後まで外で「国民投票法の採決をするな!」と抗議の声を挙げ続けていたのです。
11日(金)の参議院本会議での採決に対しても抗議し抜きました。

残念ながら改憲手続法改正案は成立してしまいましたが、改憲案の発議をさせない闘いはこれからが本番です。また、残る重要土地調査規制法案の廃案をめざしましょう。
コロナ禍のもとでオリンピックを強行しようとする菅政権打倒の闘いを継続・強化し、改憲、戦争を絶対に阻止しましょう。(銀)
11日(金)の参議院本会議での採決に対しても抗議し抜きました。

残念ながら改憲手続法改正案は成立してしまいましたが、改憲案の発議をさせない闘いはこれからが本番です。また、残る重要土地調査規制法案の廃案をめざしましょう。
コロナ禍のもとでオリンピックを強行しようとする菅政権打倒の闘いを継続・強化し、改憲、戦争を絶対に阻止しましょう。(銀)