1年5か月ぶりの開催
11月17日(木)9時から、前日の参議院に続いて、衆議院でも今国会初の憲法審査会が開かれました。
衆院では昨年6月11日以来実に1年5か月ぶりの開催で、今回のテーマは「憲法制定経緯と憲法公布70年を振り返って」でした。
この日は委員の出席率が高く、ずっと40人以上が在席していました(定数は50)。
前日の参院と同様に多くのメディアが集まり、25人ほどの記者と10人以上のスチルカメラマンが詰めかけ、開会後しばらくの間はテレビカメラ6台(NHKと民放キー局すべて)が勢ぞろいしていました。
傍聴者は30人以上いたと思われ、多くの方が立ち見を余儀なくされました(傍聴希望者はあらかじめ紹介議員を通じて氏名などを届け出ており、衆院の事務局は傍聴席の数が足りないことを把握できているはずなのですから、折り畳みの椅子くらい用意しておくべきではないでしょうか?)。
百万人署名運動の仲間は5名で傍聴してきました。
審議は「所要2時間30分程度」とされていましたが、少し超過して11時40分ころ散会しました。
衆院では昨年6月11日以来実に1年5か月ぶりの開催で、今回のテーマは「憲法制定経緯と憲法公布70年を振り返って」でした。
この日は委員の出席率が高く、ずっと40人以上が在席していました(定数は50)。
前日の参院と同様に多くのメディアが集まり、25人ほどの記者と10人以上のスチルカメラマンが詰めかけ、開会後しばらくの間はテレビカメラ6台(NHKと民放キー局すべて)が勢ぞろいしていました。
傍聴者は30人以上いたと思われ、多くの方が立ち見を余儀なくされました(傍聴希望者はあらかじめ紹介議員を通じて氏名などを届け出ており、衆院の事務局は傍聴席の数が足りないことを把握できているはずなのですから、折り畳みの椅子くらい用意しておくべきではないでしょうか?)。
百万人署名運動の仲間は5名で傍聴してきました。
審議は「所要2時間30分程度」とされていましたが、少し超過して11時40分ころ散会しました。
隠しきれない改憲派の本音
この日も、最初に各会派代表の意見表明があり、その後自由討議が行われました。まず、各党の委員の主張を整理した『東京新聞』所載の表を掲げておきます(以下、引用はすべてネット上の記事から)。

さて、この2日間の衆参両院での審査会を、メディアは「改憲勢力に温度差」(16日の参院憲法審について『毎日新聞』)、「自民、合意重視強調」(17日の衆院憲法審について『朝日新聞』)といったトーンで報じました。
しかし、「衆院憲法審で自民党は、中谷元氏が改憲の必要性を説明する中で『自衛隊の認知』を例示。山田賢司氏も『9条を変えようと言うと誤解を招くが、自衛隊の存在を憲法に明記しなくていいのか』などと訴え」ましたし、「参院憲法審でも、同党の中川雅治氏が『現行憲法の9条は自衛隊の位置づけが明確でなく、自衛権の否定ともとられかねない』と指摘」するなど、「2日間で計6人(衆院2人、参院4人)の自民党議員が9条改憲を訴え」ました(『東京新聞』)。
また、「自民は、草案を党の歴史的な『公式文書』と位置づけ、撤回しない方針を決めてい」ますし(『朝日新聞』)、「押しつけ論」を主張する委員も後を絶ちませんでした。
新たな改憲のテーマも浮上
前日の参院憲法審で「自民は…香川、佐賀、富山、福井、長崎、高知、鳥取の各県選出議員が次々と、参院議員の位置づけを変えるための憲法改正を行う必要性を訴えた」(『朝日新聞』)のに続いて、この日は天皇の退位問題にからめて改憲を主張した自民党の委員がいました。『朝日新聞』の記事を引用します。
自民党の安藤裕衆院議員は17日の衆院憲法審査会で、天皇陛下の退位をめぐる皇室典範のあり方について「旧憲法(明治憲法)のように国会の議決を経ずに、皇室の方々でお決め頂き、国民はそれに従うという風に決めた方が日本の古来の知恵だ」と述べ、憲法改正を主張した。
旧皇室典範は明治憲法と並ぶものと位置づけられ、制定や改正に帝国議会の関与はなかった。一方、現行憲法では天皇の地位は「主権の存する日本国民の総意に基づく」として、皇室典範は国会で定めるとしている。安藤氏は「天皇の地位は日本書紀における『天壌無窮の神勅』に由来するものだ。日本最高の権威が国会の下に置かれている」と述べた。
旧皇室典範は明治憲法と並ぶものと位置づけられ、制定や改正に帝国議会の関与はなかった。一方、現行憲法では天皇の地位は「主権の存する日本国民の総意に基づく」として、皇室典範は国会で定めるとしている。安藤氏は「天皇の地位は日本書紀における『天壌無窮の神勅』に由来するものだ。日本最高の権威が国会の下に置かれている」と述べた。
あまりの暴論、トンデモ論に議場にいたほぼ全員があっけにとられていましたが、この発言を受けて枝野幸男氏(民進)は、今、皇位継承の問題について恣意的に選ばれた少数の「有識者」だけが議論しているのはおかしいと指摘し、国民の代表である国会で、何よりも憲法に密接に関連する基本法制について調査検討する憲法審査会において議論する場を早急に持ってほしいと述べていました。
私たちは、この問題が今後憲法審査会でどのように議論されるのか、あるいはされないのか、注視していく必要があると思います(それにしても、櫻井よしこ氏が「有識者」というのは悪い冗談としか思えません)。
沖縄は「憲法番外地」
そんな中、沖縄選出の2人の委員が「沖縄に憲法はないのか」、「沖縄は憲法番外地にある」と指摘したことが強く心に残りました。衆院の憲法審査会事務局がまとめている『憲法審査会ニュース』から、詳しく引用したいと思います。
<共産・赤嶺政賢氏>
安倍政権の憲法無視の政治について2点述べる。……
二つ目は、沖縄と米軍基地の問題である。
沖縄は、来年で復帰45年を迎える。
アメリカの直接統治下の1971年に琉球政府の屋良主席が日本政府に向けて策定した建議書には、「県民が最終的に到達した復帰の在り方は、平和憲法の下で日本国民としての諸権利を完全に回復することであり、即時無条件かつ全面返還である」と記されている。
復帰の原点は、日本国憲法の下での基地のない平和な沖縄であった。
しかし、実際には、憲法の上に安保が置かれ、米軍優先で苦しめられている。70年経っても占領当時と変わらない、基地あるがゆえの苦しみが続いている。
沖縄において負担軽減の名で行われる基地の返還は、いつも移設条件付きで、新たな基地強化につながってきた。その典型が辺野古新基地建設という一大軍事拠点の新設だ。
もともと沖縄の基地は、住民の土地に勝手に造られたものだ。さらに、サンフランシスコ平和条約締結後、銃剣とブルドーザーで土地を強奪し、国際法に違反して構築された。危険な普天間基地は直ちに閉鎖し、無条件撤去されるべきだ。
高江のオスプレイ着陸帯の建設も同様である。使用していない訓練場の過半を返還する代わりに、既に15個もあるところに新たな着陸帯を建設することがどうして負担軽減になるのか。高江の住民の暮らしを破壊し、貴重な自然を破壊することは、到底認められない。
新基地建設反対は、県民の強固な思いである。 しかし、政府は、民意を尊重するどころか、権力総動員で基地建設を強権的に推し進めており、民主主義や地方自治は踏みにじられ、沖縄に憲法はないのかというのが現実である。
沖縄の現状を放置することは、9条蹂躙の違憲状態を日本全体に広げることになる。
沖縄に配備されたオスプレイは、全国に訓練を展開し、横田基地にも配備されようとしている。
岩国基地に配備されるF35は、海外に展開するものだ。
沖縄の米軍基地強化は、全国各地の基地強化と一体となって、アメリカの世界戦略に基づく一大拠点を構築することになる。
9条を蹂躙するこの実態は、米国から求められるままに日本の再軍備を行い、日米安保の下、違憲の海外派兵に道を開いてきた米国追随政治の到達点だ。私たちは、国民とともに、9条蹂躙・改悪を許さない戦いを進めていく。

<社民・照屋寛徳氏>
憲法公布70年の歴史において、憲法と沖縄の関係を忘れてはならない。
沖縄では、悲惨な大戦で尊い命が奪われ、終戦後もアメリカの直接軍事支配下に置かれ、憲法が全く適用されない「無憲法」下にあった。国民主権、平和主義、立憲主義を謳った日本国憲法を制定する帝国議会に沖縄代表を送ることすら許されなかったことを忘れてはならない。
1972年5月15日に復帰が実現し、沖縄にも待望の憲法が適用された。しかし、同時に日米安保条約も適用され、沖縄は、憲法法体系よりも安保法体系が優先する「反憲法」下の日常を強いられている。不平等、不公平な日米地位協定の全面的、抜本的改正なしに、日本は主権国家、独立国家たり得ない。
沖縄は復帰前も復帰後の今日でも「憲法番外地」であり、沖縄県民には、憲法前文に定める平和的生存権及び13条の幸福追求権、14条の法の下の平等も保障されず、県民は憲法上の諸権利を有する国民とすら扱われていない。憲法11条が侵すことのできない永久の権利として国民に与えた基本的人権も、十全に保障されていない。
沖縄の戦後史と日米安保体制下の沖縄の現実を真剣に考えることこそが、憲法99条で憲法尊重擁護義務を負う者の責務である。
安倍政権の憲法無視の政治について2点述べる。……
二つ目は、沖縄と米軍基地の問題である。
沖縄は、来年で復帰45年を迎える。
アメリカの直接統治下の1971年に琉球政府の屋良主席が日本政府に向けて策定した建議書には、「県民が最終的に到達した復帰の在り方は、平和憲法の下で日本国民としての諸権利を完全に回復することであり、即時無条件かつ全面返還である」と記されている。
復帰の原点は、日本国憲法の下での基地のない平和な沖縄であった。
しかし、実際には、憲法の上に安保が置かれ、米軍優先で苦しめられている。70年経っても占領当時と変わらない、基地あるがゆえの苦しみが続いている。
沖縄において負担軽減の名で行われる基地の返還は、いつも移設条件付きで、新たな基地強化につながってきた。その典型が辺野古新基地建設という一大軍事拠点の新設だ。
もともと沖縄の基地は、住民の土地に勝手に造られたものだ。さらに、サンフランシスコ平和条約締結後、銃剣とブルドーザーで土地を強奪し、国際法に違反して構築された。危険な普天間基地は直ちに閉鎖し、無条件撤去されるべきだ。
高江のオスプレイ着陸帯の建設も同様である。使用していない訓練場の過半を返還する代わりに、既に15個もあるところに新たな着陸帯を建設することがどうして負担軽減になるのか。高江の住民の暮らしを破壊し、貴重な自然を破壊することは、到底認められない。
新基地建設反対は、県民の強固な思いである。 しかし、政府は、民意を尊重するどころか、権力総動員で基地建設を強権的に推し進めており、民主主義や地方自治は踏みにじられ、沖縄に憲法はないのかというのが現実である。
沖縄の現状を放置することは、9条蹂躙の違憲状態を日本全体に広げることになる。
沖縄に配備されたオスプレイは、全国に訓練を展開し、横田基地にも配備されようとしている。
岩国基地に配備されるF35は、海外に展開するものだ。
沖縄の米軍基地強化は、全国各地の基地強化と一体となって、アメリカの世界戦略に基づく一大拠点を構築することになる。
9条を蹂躙するこの実態は、米国から求められるままに日本の再軍備を行い、日米安保の下、違憲の海外派兵に道を開いてきた米国追随政治の到達点だ。私たちは、国民とともに、9条蹂躙・改悪を許さない戦いを進めていく。

<社民・照屋寛徳氏>
憲法公布70年の歴史において、憲法と沖縄の関係を忘れてはならない。
沖縄では、悲惨な大戦で尊い命が奪われ、終戦後もアメリカの直接軍事支配下に置かれ、憲法が全く適用されない「無憲法」下にあった。国民主権、平和主義、立憲主義を謳った日本国憲法を制定する帝国議会に沖縄代表を送ることすら許されなかったことを忘れてはならない。
1972年5月15日に復帰が実現し、沖縄にも待望の憲法が適用された。しかし、同時に日米安保条約も適用され、沖縄は、憲法法体系よりも安保法体系が優先する「反憲法」下の日常を強いられている。不平等、不公平な日米地位協定の全面的、抜本的改正なしに、日本は主権国家、独立国家たり得ない。
沖縄は復帰前も復帰後の今日でも「憲法番外地」であり、沖縄県民には、憲法前文に定める平和的生存権及び13条の幸福追求権、14条の法の下の平等も保障されず、県民は憲法上の諸権利を有する国民とすら扱われていない。憲法11条が侵すことのできない永久の権利として国民に与えた基本的人権も、十全に保障されていない。
沖縄の戦後史と日米安保体制下の沖縄の現実を真剣に考えることこそが、憲法99条で憲法尊重擁護義務を負う者の責務である。
前日の駆けつけ警護と翌日のトランプ詣で
両院の憲法審開催日を挟んで、15日には南スーダンに派遣される自衛隊部隊に駆けつけ警護等の新任務を付与することが閣議決定され、18日(日本時間)には安倍首相とトランプ米次期大統領の初会談が行われました。まさに今、日本国憲法が直面している深刻な危機を象徴する連日の出来事だったと思います。
今後、米新政権が戦争法、そして日米ガイドラインを根拠として日本に様々な軍事的な支援や肩代わりを求めてくることは大いにありえますし、戦争法の枠内でそれに応えられないとなれば9条改憲を迫ってくるかもしれません。安倍政権はそれに抵抗できるでしょうか。むしろこれ幸いと便乗して明文改憲に突進するのではないでしょうか。
私たちは、転変著しい内外の情勢を注視しつつ、「戦争法発動反対」、「憲法改悪阻止」の旗を掲げ、韓国の労働者民衆の闘いに学びながら、「安倍打倒」に邁進していきましょう。(G)
両院の憲法審開催日を挟んで、15日には南スーダンに派遣される自衛隊部隊に駆けつけ警護等の新任務を付与することが閣議決定され、18日(日本時間)には安倍首相とトランプ米次期大統領の初会談が行われました。まさに今、日本国憲法が直面している深刻な危機を象徴する連日の出来事だったと思います。
今後、米新政権が戦争法、そして日米ガイドラインを根拠として日本に様々な軍事的な支援や肩代わりを求めてくることは大いにありえますし、戦争法の枠内でそれに応えられないとなれば9条改憲を迫ってくるかもしれません。安倍政権はそれに抵抗できるでしょうか。むしろこれ幸いと便乗して明文改憲に突進するのではないでしょうか。
私たちは、転変著しい内外の情勢を注視しつつ、「戦争法発動反対」、「憲法改悪阻止」の旗を掲げ、韓国の労働者民衆の闘いに学びながら、「安倍打倒」に邁進していきましょう。(G)