takayama2016
百万人署名運動の呼びかけ人でもある弁護士の高山俊吉さんが、日弁連の会長選挙に立候補されています(投開票は2月5日)。詳しくはtakayama2016.comをご覧ください。
日弁連のHPにも掲載されている高山さんの選挙公報を読んで、感銘を受けましたので全文をご紹介します。(K)
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日弁連を変えるために立候補しました


改憲と戦争の危険が私たちの眼前にあります。このときにこそ日弁連が存在しなければならない。日弁連は改憲阻止と戦争反対の砦になる必要がある。私はそのように考え、微力を尽くす決意をもって今回の日弁連会長選挙に立候補しました。
今ほど弁護士のあり方が問われたときはこの国の歴史にありません。司法制度改革審議会が提起した2001年の方針で、権力と強者に対決しない法律実務家群を作る大きな流れが登場し、これに迎合する弁護士も出てきました。
しかしこの15年間は、この方向を否定して厳しく対決しようとする動きが生まれ育ってきた期間でもありました。2000年以前からの多くの弁護士もそれ以後の若い弁護士も、今や司法審路線の問題性や危険性を強く感じています。
今こそ日弁連が変わらなければならないとき、そして弁護士が変わるときです。

政策の柱は次の4つです

★弁護士つぶしの司法改悪を打ち破る
弁護士の業務を崩壊させ日弁連を解体する司法改悪に反対します。弁護士激増政策にとどめを刺し、「法曹有資格者」構想を断念に追い込み、法科大学院制度を終結させ、弁護士の国家管理組織・司法支援センターを廃止します。刑訴法改悪・共謀罪など人権侵害の刑事捜査法制化にあくまでも反対します。

★99%の人びとと手をつなぎ戦争と改憲を阻止する
緊急事態条項を手始めに構想されている改憲を多くの国民と力を合わせて阻止します。戦争策謀は「自存自衛」などと称し常に正当化の理屈を伴って登場します。「自衛戦争ならよい」などという考えは根本的に間違っています。辺野古新基地建設に反対する沖縄県民と心をひとつにして行動し、戦争反対の旗を高く掲げます。

★核は人類と共存できない。原発廃止の先頭に立つ
核の脅威がまるでないように、そして原発事故がまるでなかったようにいいなす動きに正面から対決し、被曝労働に強く反対します。福島では子どもたちを中心に甲状腺がんの大量発生が報告されています。それにもかかわらず国は高度汚染地への帰還を強く働きかけ、90%を超える人々がこれに抗っている現実があります。伊方・川内・高浜など各地の原発の再稼働に反対し、原子力ムラの奥の院でこの動きの旗を振る司法のあり方を根本から是正します。

★政治権力や社会的強者に対決する立場で助け合う日弁連をつくる
「対決から対話へ」を標榜し、この15年間、日弁連は一路「巨大勢力の代言人組織」へと突き進みました。口先ではいろいろ言っても実際には政治権力・社会的強者を代弁して会員を統制・監督するだけの日弁連は、私たちの組織ではありません。会員が真実誇りに思える「助け合い支え合う日弁連」を再建します。

質問にお答えします

激増にどう向き合い、窮状をどう解決するのか
「司法改革」の中心にすわる弁護士激増政策に徹底的に反対します。大恐慌情勢と激増政策のもとで、弁護士は目を覆うばかりの困窮状況に陥りました。激増政策は司法における新自由主義攻撃の所産です。解決の道筋をつける必須の前提は司法改悪の狙いの暴露、そして司法試験合格者数の決定的な絞り込みです。

法科大学院は存続するのか廃止するのか
廃止します。法科大学院は激増政策の支えとして生まれました。激増がなくなれば法科大学院は無用になります。そうでなくても法科大学院がもうやっていけない状態に落ち込んでいるのはご承知のとおりです。

給費制復活に向けてどう努力するのか
法曹は国の責任として国費支弁による養成をしてきました。この原則が崩れたのは激増政策の登場によります。それがなくなれば国費支弁が当然復活します。激増を承認しながら給費制復活を叫ぶのではなく、激増と対決してその復活を主張するのが正しい筋道です。

借金漬け生活の解決策は
激増が法科大学院の学資借金生活をもたらし、司法修習生を貸与制に追い込み、その結果借金まみれ法曹が発生しました。激増と法科大学院をやめれば、今後このような悲惨な状態が生じなくなり、多くの会員がなんとかやっていける状態に戻ります。

会費値下げに関する考え方と方針を
激増は弁護士会財政を異常に潤沢にしました。一般社会も多くの会員も困窮にあえいでいるときに余裕しゃくしゃくだということ自体がおかしな話です。種々の余裕を残しても2014年度の一般会計収支で約33億円の繰越金が出ています。会館特別会計に至っては2014年度末の次期繰越金がすでに50億円を超えています。たった1600円の減額で会員を黙らせるのではなく、激増による弁護士の窮状の責任を明らかにして大幅に還元(返還)すべきです。

「法曹有資格者」構想とは
政府の審議会が言い出した新しい法曹概念です。「司法試験に合格した者」を言い、弁護士会に登録せずに法律事務を行うことができる者を含みます。司法試験に合格しただけの者、司法研修所を修了しただけの者が主に想定されていますが、この概念は弁護士も包摂し、法務省が統括する有資格者の中に弁護士を含む危険をはらんでいます。「有資格者」構想は「非正規」弁護士というべき存在を認め、強制加入制を基礎として成立している弁護士自治を解体します。

執行部はこの構想にどういう態度をとっているか
「有資格者」構想は3000人合格政策が破綻した結果編み出されたものです。政府が司法試験合格者3000人方針を捨てていないことがわかります。村越現執行部は弁護士を含む「有資格者」構想(=弁護士に対する法務省の統括)の危険性を指摘せず、事実上これを容認する立場に立っています。

弁護士会に自治は必要か
弁護士以外の「士業」はすべて政府の統制下にあります。自身の行動や規律について自身で決着をつけられるのは弁護士会だけです。だから私たちは「政府は憲法を守れ」とか「原発は廃止へ」などと言えるし、だから弁護士会から自治を奪うことが狙われているのです。

3月11日総会に向けた執行部の姿勢をどう考えるか
合格者を1000人にするという意見と1500人にするという執行部案が対決すると言われています。執行部は激増政策の悪質な狙いを言わないどころか、法科大学院の問題性にもまったく触れず、言葉はあれこれ走らせても依然として「激増すりより」の姿勢を改めようとしていません。その欺瞞を強く批判する必要があります。
一言付け加えます。フクシマと心を通わせ、原発政策と闘う決意を新たにする日に総会を開く理由が理解できません。

盗聴拡大・司法取引への対処は。現執行部の態度は
盗聴を全面的に拡大し、他人の犯罪を供述して自分の刑を軽くさせ、匿名で証言できるようにするなどの刑訴法改悪法案が参議院にかかっています。多くの単位会やえん罪被害者らの反対にもかかわらず、村越現執行部は早期成立を望む声明をくりかえして会員を裏切りました。刑事捜査のあり方を根底から変える法案の成立阻止・廃案に向け行動します。

裁判員制度は順調に進んでいるのか
裁判員裁判は刑事裁判を間違った方向に向かわせました。しかし制度はもう破綻しています。名簿登載者4人のうち1人しか出頭せず、出頭しなくても誰も処罰されないという異様な状態で辛くも続いているのです。最高裁長官が直々に参加を呼びかけても事態が変わらない悪制度。一日も早く廃止すべきです。

安保法制で明文改憲は不要になったのでは
安倍首相は年頭の記者会見で憲法改正に論及し、「参院選でしっかり訴え、国民的な議論を深めたい」と述べました。緊急事態条項を突破口に明文改憲が見据えられていると言わねばなりません。「緊急事態」とされればすべての「統制権限」が内閣総理大臣に集約されます。それは他の条項など改める必要もない事実上の憲法停止を意味します。

弁護士会は政治に距離を置くべきではないか
弁護士会は国民の権利を守るために行動します。国民が危険な状況に追い込まれた時には、いかなる障害があっても毅然とその立場に立つのが弁護士・弁護士会です。政治的な意思の表明や行動を慎めと言うことは、形を変えただけで別の政治的な態度表明を求めることにもなり得ます。言うべきを言うのは私たちの重要な責任です。

大派閥は統制・締め付けをしているが
大単位会の大派閥が委任状をかき集めたり誰に投票するかを決めたりする現実があります。一人ひとりの意思を蹂躙する統制がまかり通るというのは、この職にある者として恥ずかしく情けない現実です。この状況を打ち壊せなくてどうして人の権利を守る仕事ができるのでしょうか。

会員間の意見の差をどう埋めてゆくのか
会員の間や単位会の間に意見の差があると思われる問題については、それこそ丁寧に慎重に議論を進めます。この国の宰相のように、また日弁連の現リーダーのように、国民や会員の意見を無視して独走することを決してしません。

弁護士という職業をどう守るのか
弁護士会は弁護士の力量を最大限に強めることを常に考えて行動する組織です。弁護士はそういう弁護士会に守られ、誇りをもって自身の仕事に従事します。弁護士や弁護士会の力が弱いことを強調するような会長を選んではいけません。

(略歴)
1940年出生
1965年東京大学法学部公法コース卒業
1967年同学部私法コース卒業司法修習生(21期)
1969年東京弁護士会登録同会司法制度臨時措置委員会委員
1977年同会刑法改正問題特別委員会委員
1985年青年法律家協会議長
1987年東京大学教養学部非常勤講師
1989年日弁連人権擁護委員会特別委嘱委員
1993年日本民主法律家協会副理事長
1995年東弁司法試験改革問題対策本部委員