7月22日(水)、今国会8回目の参議院憲法審査会が開催され、衆議院から提出された「日本国憲法の改正手続きに関する法律の一部を改正する法律案」(改憲手続法改正案)に対する「質疑」「討論」「採決」。さらに「附帯決議」の「提案」「採決」が行われました。約1時間ほどでしたが、議員の発言中に他の議員からヤジ(抗議?)が何度も飛んだり、最後は傍聴席からも抗議の声が上がり、それに鈴木宗男議員(自民)が大声で「バカもの!」と声を浴びせるなど、激しい展開になりました。

いつもは10時の開会時刻どおりに開始されるのですが、この日は事前の幹事会が長引いて10時10分開始となりました。10時には改憲手続法改正案の提出者9名(衆議院憲法審査会の幹事中心)も会長席と対面する位置にずらりと座っており、この日に「採決」ということが明確だったので、議場も傍聴席も緊張感がただよい10分が長く感じました。
参院憲法審

この日の全体報告として『YAHOO JAPAN ! ニュース』に掲載された『朝日新聞』の記事を紹介します。

国民投票法改正案、参院憲法審で可決 ネット規制は「必要な措置を」
 
憲法改正の手続きを定めた国民投票法の改正案が22日、参院憲法審査会で与野党の賛成多数で可決された。公職選挙法に定められた投票環境整備の規定を反映する内容。24日に予定される参院本会議で可決、成立する見通し。

改正案は選挙立会人の要件緩和やFM放送でも憲法改正案に関する広報の放送を可能とすることなどを盛り込んだ。自民、日本維新の会、国民民主、参政の4党が共同提出し、採決では立憲民主、公明の両党も賛成した。共産党とれいわ新選組は「改憲も改憲手続き法の整備も必要ない」などと反対した。

課題となっていたインターネット広告などの規制のあり方については、付帯決議で「法改正を始めとする必要な措置を講じる」とした。立憲の小西洋之氏は賛成の立場ながら「これで国民投票法が完成するわけでは全くない」と述べ、付帯決議に基づくさらなる法改正が必要と訴えた。
7.22ヤフー
参院憲法審査会で憲法改正の手続きを定めた国民投票法の改正案が可決された=2026年7月22日午前10時55分、岩下毅撮影


*引用、ここまで。


のらりくらりの改正案提出者たち

改正案の提出者への質問には立憲・公明・共産・れいわの4人が立ちました。提出者たちは具体的な質問に誠実に答えるわけでもなく、抽象的な言葉を繰り返しはぐらかしているという印象でした。いくつか印象に残ったものを紹介します。

小西洋之議員(立憲民主党)
各級選挙ですらネット対策などの法改正を行うのであれば、最高法規憲法を定める国民投票法においても当然に法改正が必要であるが、どうお考えか?
鈴木英敬議員(自民党)
各党各会派で合意が調った際には、必要な法制上の措置その他の措置が講ぜられると承知している。

原田大二郎議員(公明党)
附則第4条第2号の検討の中で、必要な法制上その他の措置の要否判断をどのような工程で進めるのか?憲法改正の発議との前後関係を含め明確に答えてほしい。
浅野哲議員(国民民主党)
附則第4条においては憲法本体の論議や憲法改正の発議についての言及はなく、必ず法制上の措置が講じられるべきとされているわけではない。
原田大二郎議員(公明党)
広報協議会の具体的な運用・役割についてどう考えるか。
髙階恵美子
(自民党)
予断を持って判断できることではなく、しかるべき形で情報を収集しながら、審査会において議論を重ねていく。

山添拓議員(日本共産党)
附帯決議で積み残されてきた課題は投票結果を左右しうる重要な課題だとの認識をもっているか?
新藤義孝議員(自民党)
積み残しの課題ではなくて、検討して、検討できたところから整備していくもの。その時の最善、最適な状況で投票を準備する。

奥田ふみよ議員(れいわ新撰組)
3年の期間が過ぎたら、CM規制などの措置を求める附則の定義は無効になるという考え方もあり得るのか?
新藤義孝議員(自民党)
そういう見方があるというのは当然のことだと思う。だけど、私たちは検討すると。そもそもこの附則というのは検討条項なんだ。


反対の討論をした共産党とれいわ

(反対理由要旨)
日本共産党(山添拓議員)
①議員などの選挙と改憲の賛否を問う国民投票では内容が違い、投票環境の整備の在り方はおのずから異なる。公選法並びであればよしとするかのような改定自体が問題だ。
②現行法が抱える根本的な欠陥を置き去りにしている。
③いま多くの国民は改憲を政治の優先課題として求めていない。

れいわ新撰組(奥田ふみよ議員)
①国民投票法が抱える附則4条2号を全く審議しないまま、体裁だけ整え、準備は整ったと改憲発議を強行するためのものでしかない。
②現行法は、お金のある側がテレビ、CM、ネット広告を垂れ流し、組織的な拡散を行って世論操作をもくろむことが可能。最低投票率の定めもないため、少数の賛同しかなくても改憲が成立してしまう。
③法律の条文である附則に書かれたことすら無視する与野党。附則、附帯決議なんか守るはずがない。


賛成討論に立った立憲民主党

(賛成理由要旨)
立憲民主党(小西洋之議員)
①改正案の内容は公選法の改正に倣うもので、何ら問題はない。これで国民投票法が完成するものではない。
②我が会派が提出した附帯決議案に、与党のみならず、国民民主党、公明党、参政党も提出会派として賛同し、その中で、附帯決議4条2号に関し法改正を始めとする必要な措置を講じると踏み込んだ文言が明記された。
③公選法、情報プラットフォーム法改正と広報協議会の役割に関わる法制度など、今後国民投票法は新たに3つの法改正事項が必須のものと確認された。

しかし、さすがに小西議員が「私は、本法案に賛成の立場から討論をいたします」と発した時には、傍聴席にどよめきの声が流れました。


改憲阻止! 何が、違うのか?

小西議員からすると、悪い条件の中でも改憲を阻止するために戦略を立てて、画期的な「附帯決議」をほとんどの会派を取り込んで実現した、これで「より良い改憲手続法」が作れる、時間が取れるというわけです。小西議員は「論憲の力で誤った改憲論を打破する」と言っていました。
けれども、憲法を変えようとする側、高市政権はすでに待ったなしの戦争体制に突入しているのです。この「自国防衛」の名で進められている戦争体制を立憲民主党は基本的に認めながら、戦争体制に不可欠な改憲攻撃を「憲法論争」で阻止するということはできないのではないかと思います。

発言の中で、れいわの奥田議員は「主権者の皆さん、戦争をやるために、あなたから主権を取り上げ、総力戦の戦時体制を築いていく、この法整備が今まさにこの瞬間も着々と進んでいる、そこに気付いてほしい」「附帯決議を付けて賛成とか、いいかげんにやめろ、そう怒ってください」と議場から国会の外に向かって必死に訴えていました。財界と一体となった与野党なれ合いの翼賛国会を打ち破らなければ戦争はとめられないとの危機感は伝わりました。

共産党の山添拓議員は反対討論の中で「多くの国民は改憲を政治の優先課題として求めていない。暮らしと平和をめぐる深刻な政治の行き詰まりをよそに改憲を急ぐなど、政治の役割を何重にも履き違えている」と言っていました。
でも、「共産党」という看板を掲げる政党が、その「深刻な政治の行き詰まり」の根底にある問題、帝国主義段階の日本の資本主義経済の行き詰まりと破綻、その打開をかけて高市政権が米トランプ政権の中国侵略戦争体制に主体的に参戦していることをなぜ民衆に明らかにしていかないのでしょうか?

7月16日、NHKが衆議院憲法審査会を初めて中継しました。改憲派はこれまでも憲法審査会のNHK中継報道を求めてきましたが、「関心度合いが低い」ということで断られていたそうです。それが今回はあっという間に「受けた」ということは高市政権の圧力でしょうが、改憲派は今後マスコミも使って改憲国民投票に向けた9条改憲・緊急事態条項新設賛成の世論喚起に力を入れていくと思います。

憲法審査会の傍聴記は、基本的に今回でしばらくの間「お休み」となりますが、戦争情勢・改憲情勢は激しく進みます。猛暑の夏ですが、それぞれの場で、改憲・戦争阻止!の取り組みを強めましょう!(S)