6月18日(木)10時から、今国会10回目の衆議院憲法審査会が開催されました。

最初に前回の審査会で審議入りし30分で質疑を終えた改憲手続法(以下、「国民投票法」と記します)一部改正案が採決され、反対討論を行った畑野君枝氏(共産党)を除く6会派の賛成で可決されました。続いて、6会派が共同提案した附帯決議案の趣旨説明と採決が行われ、同じく共産党を除く賛成多数で可決されました。
この間、開会からわずか5分ほどで、会長と畑野氏を除く全員が起立するという異様な(個人的な感想です)光景が2度にわたり繰り返されました(写真下)。結果、前回の審議とあわせてたった35分で国民投票法改正案は衆院憲法審を通過したことになります。
以下、この日の国民投票法改正についてこれまでの経緯と今後の見通しもあわせてていねいに報じていた『NHK』の記事とともに、國重徹氏(中道)が趣旨説明に代えて読み上げた附帯決議案のコピーを転載します。
国民投票法改正案 衆院憲法審査会で賛成多数で可決
『NHK ONE』2026年6月18日(https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015153261000)
憲法改正の手続きを定めた国民投票法について、投票環境を整備するための改正案は衆議院憲法審査会で採決され、自民・維新両党と中道改革連合などの賛成多数で可決されました。
自民・維新両党と国民民主党、参政党の4党が提出した国民投票法の改正案は18日の衆議院憲法審査会で討論・採決が行われました。
改正案は、現在の公職選挙法に合わせて投票の立会人の要件を緩和するなど投票環境を整備するためのもので、採決の結果、自民・維新両党と中道改革連合、国民民主党、参政党、チームみらいの賛成多数で可決されました。共産党は反対しました。
また、国民投票を行う際の広告の規制やインターネット利用のあり方について速やかに検討し、必要な措置を講じるとした付帯決議が賛成多数で可決されました。
改正案は19日の衆議院本会議で可決され、参議院に送られる見通しです。
改正案は19日の衆議院本会議で可決され、参議院に送られる見通しです。
参院 24日から審議入りへ 自民・立民が合意
自民党の磯崎参議院国会対策委員長と、参議院で野党第1党の立憲民主党の斎藤国会対策委員長が国会内で会談し、改正案の取り扱いを協議しました。
その結果、改正案が19日に衆議院を通過し参議院に送られれば、来週24日に憲法審査会を開いて審議入りすることで合意しました。また磯崎氏は来月1日に審査会を開いて質疑と採決を行いたいと提案し、引き続き協議することになりました。
付帯決議 これまでの経緯
国民投票法の改正案は、現在の公職選挙法に合わせて投票環境の整備などを行うためのものです。
4年前に自民党、公明党、日本維新の会などが同様の法案を提出しましたが、衆議院の解散に伴い廃案となったため、今月5日、自民・維新両党と国民民主党、参政党の4党が改めて共同で提出しました。
先週11日に衆議院憲法審査会で審議入りし、自民党は投票の立会人のなり手不足が指摘される中で、選任の要件を緩和するなどの内容だとして早期の可決に理解を求めました。
これに対し、中道改革連合やチームみらいは、今の国民投票法の付則には国民投票を行う際の広告のあり方などを検討することが盛り込まれているものの、手付かずのままだと指摘し対応を求めました。
このため自民党と中道改革連合を中心に協議を進めた結果、広告や資金の規制、インターネット利用のあり方について速やかに検討し、必要な法制上の措置を講じるなどとした付帯決議を可決させることで合意し、中道やみらいも改正案に賛成することとなりました。
与党側筆頭幹事“非常に円満な結果でよかった”
与党側の筆頭幹事を務める自民党の新藤 元経済再生担当大臣は記者団に対し「7会派のうちの6会派が合意し、付帯決議を採決できたことは非常に円満な結果でよかった。速やかに衆議院で手続きをとり、参議院で審議が進むことを期待している」と述べました。
野党側筆頭幹事“国会の意思を明確にできた”
野党側の筆頭幹事を務める中道改革連合の国重徹氏は記者団に対し「公職選挙法に合わせるための項目には異論はなかったが、広告規制などについて速やかに検討する必要があるので付帯決議案を提出した。6党の合意を得て国会の意思として明確にすることができた」と述べました。
* 引用、ここまで。
附帯決議案の「二」は、2021年の国民投票改正時の附則第4条の「二」を一字一句違わず引き写したものでした。つまり、法律の一部である附則に「施行後3年を目途」として「検討を加え、必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする」と明記されていながらこれまで放置されてきた事項が、スケジュールに関する文言を削られた上で法的効力を有しないとされる附帯決議に格下げされたわけです。2007年の国民投票法制定時の最低投票率に関する附帯決議が今日まで無視されてきたことからみても、その実効性には大きな疑問があると言わざるを得ません。

『NHK』の記事によれば、これを「国会の意思として明確にすることができた」と自画自賛して賛成に回ってしまった中道改革連合の対応は自己満足に過ぎず、(予想していたとは言え)本当にがっかりさせられました。

『NHK』の記事によれば、これを「国会の意思として明確にすることができた」と自画自賛して賛成に回ってしまった中道改革連合の対応は自己満足に過ぎず、(予想していたとは言え)本当にがっかりさせられました。
畑野氏は反対討論で議員や首長を選ぶ選挙と改憲の賛否を問う国民投票は全く異なるものであること、現行の国民投票法には最低投票率の規定の欠如、公務員や教員の国民投票運動の不当な制限など根本的な欠陥があることを指摘し、「公選法並びの改正を重ねて国民投票法の形を整えたように装い、改憲の準備が進んでいるかのように見せる姑息なやり方はやめるべきだ」と述べましたが、こうした議論を展開する委員が50人中1人だけという衆院憲法審の現状を2度の起立採決で文字どおり目の当たりにさせられました。
不快なものを無理矢理見聞きさせられるという、大げさに言えば拷問のような時間でしたが、それでも私たちは改憲阻止の声を上げ続けなければなりません。
不快なものを無理矢理見聞きさせられるという、大げさに言えば拷問のような時間でしたが、それでも私たちは改憲阻止の声を上げ続けなければなりません。
なお、上掲の『NHK』の記事にあるとおり、国民投票法改正案は翌19日に衆議院本会議で可決されて参議院に送付され、24日に開かれた参議院憲法審査会で審議入りしました。
憲法9条改憲論議に踏み込む
このようにして国民投票法改正案がサッサと処理された後、この日の憲法審では、「9条に関する集中的な討議」が行われ、いつものように各会派代表1人・7分ずつの発言と6人の委員の5分ずつの意見表明があり、11時25分頃閉会となりました。
以下、審議の内容が簡潔に整理・紹介されている『時事通信』の記事を転載させていただきます。
9条改正巡る論点整理提案 自民、議論加速狙う―衆院憲法審
『時事ドットコムニュース(時事通信 政治部)』2026年6月18日
(https://www.jiji.com/jc/article?k=2026061801025&g=pol)
衆院憲法審査会は18日、戦争放棄を定めた憲法9条に関する集中討議を行った。9条に特化した議論は今国会で初めて。自民党は衆院として意見集約を進めるため、9条改正に関する「論点整理」を行うことを提案。中道改革連合などは慎重な姿勢を示し、折り合わなかった。
自民は今国会で、緊急事態条項創設のたたき台「イメージ案」を衆院憲法審事務局などにまとめさせ、議論の進展を図っている。自民としては9条を重視する日本維新の会の主張を踏まえ、9条改正の議論も加速させたい考えとみられる。
自民の新藤義孝氏は討議で「9条改正は安全保障法制の完成をもたらす」と主張し、「論点整理を行いながら、結論を出せるよう集約したい」と提起。田野瀬太道氏も「論点整理を行うなど議論のピン留めをお願いしたい」と呼び掛けた。
これに対し、中道の国重徹氏は「わが国の防衛のために必要な法整備は既になされている」と9条改正の必要性を疑問視。「9条は平和国家としての歩みそのもの。国論を二分しないよう十分な慎重さと丁寧さが求められる」とくぎを刺した。
討議では自民と維新の意見の隔たりが改めて鮮明になった。新藤氏は現行の9条1項、2項を維持した上で、自衛隊保持を記した9条の2を追記する案を主張。これに対し、維新の阿部圭史氏は戦力不保持を定めた2項を削除し、集団的自衛権行使を全面容認するよう訴えた。
国民民主党の玉木雄一郎代表は「与党と野党のやりとりかと思った」と皮肉交じりに指摘。高市早苗首相が来年春までに改憲の国会発議にめどを付けたいとしていることに触れ、「与党間でさえ議論の分かれる話を今から始めても間に合わない」と自民を批判した。
参政党は9条の「根本的改正」、チームみらいは丁寧な議論、共産党は改正反対を訴えた。
* 引用、ここまで。
この記事では「9条に特化した議論は今国会で初めて」と書かれていますが、実際にはテーマを絞らないで開かれたり今後何をテーマとすべきかが議論されたりした際に、また緊急事態条項など別のテーマのときにも9条や自衛隊、自衛権の議論はたびたび行われてきましたので、今回、特に目新しい論点や意見が提起されたわけではありません。
自民党の9条改憲案のペテン性
この日一番目立ったのは、上掲の記事にあるように9条改憲に関する自民と維新の見解の不一致でしたが、だからといって安心しているわけにはいきません。
というのも、新藤義孝氏(自民)はこんな見解を述べていたからです。少し長くなりますが、大事な点だと思いますので紹介します。
「私たち自民党は、いかなるときも国と国民を守り抜くための国防のあり方を規定し、その担い手である自衛隊を明記する憲法9条の改正を提案している。1項、2項をそのまま残しているのは平和主義の原理を尊重する姿勢の表れであり、憲法上の自衛隊の位置づけを変えようとは考えていない。
他方、自衛隊の活動内容と機能は安保環境の変化や軍事技術の革新など我が国を取り巻く安全保障上の脅威に対応するものでなければならず、状況に応じた安全保障法制の検討と速やかな整備は必須である。9条を改正することは安全保障法制の完成をもたらし、国防体制の強化につながると考えている。」
他方、自衛隊の活動内容と機能は安保環境の変化や軍事技術の革新など我が国を取り巻く安全保障上の脅威に対応するものでなければならず、状況に応じた安全保障法制の検討と速やかな整備は必須である。9条を改正することは安全保障法制の完成をもたらし、国防体制の強化につながると考えている。」
「2015年の平和安全法制の整備では、限定的な集団的自衛権を定める存立危機事態や重要影響事態における活動が位置づけられ、在外邦人等の保護措置など国民を守るため必要な措置も整備された。国の存立と国民の生命・財産を守るために必要な切れ目のない措置が実施可能となり、自衛隊による我が国防衛のための活動は現状において必要かつ十分に行えるようになった。
しかし、今後も自衛隊に求められる機能は安保環境などに応じて変化させていかなければならず、現在検討されている防衛3文書の整備・改定などはその具体例と言える。我が国を守るための自衛隊の運用は、憲法上の位置づけの明確化とあわせて安全保障法制の整備を行う総合的な検討により常に最適な状態にしておく必要がある。」
しかし、今後も自衛隊に求められる機能は安保環境などに応じて変化させていかなければならず、現在検討されている防衛3文書の整備・改定などはその具体例と言える。我が国を守るための自衛隊の運用は、憲法上の位置づけの明確化とあわせて安全保障法制の整備を行う総合的な検討により常に最適な状態にしておく必要がある。」
「このように自衛隊は国と国民を守るために必要かつ十分な行動を取ることができるが、諸外国の軍隊と異なる点もある。その一つは、他国を占領したり占領行政を敷くことは行わないこと、もう一つは自国防衛と直接関係のない純粋な国際協力の場面で武力行使を行うことはしないことだ。」
「現行憲法には誰がどのような手段を用いどのように国を守るかという国家の最重要任務である国防の観点が規定されていない。憲法に国防規定を創設し、その担い手となる自衛隊を明記することにより憲法の未完成部分を埋めようとするのが自由民主党の提案であることをご理解いただきたい」
「現行憲法には誰がどのような手段を用いどのように国を守るかという国家の最重要任務である国防の観点が規定されていない。憲法に国防規定を創設し、その担い手となる自衛隊を明記することにより憲法の未完成部分を埋めようとするのが自由民主党の提案であることをご理解いただきたい」
要するに新藤氏は、2015年に安保法制(彼らの言葉では「平和安全法制」)が整備されたことによって、今の憲法9条の下でも自衛隊による我が国を防衛するための活動は必要かつ十分に行えるようになっている(他国を占領する以外はなんでもできる)が、我が国を取り巻く安全保障上の脅威に対応するためには、憲法に国防規定を創設して自衛隊の憲法上の位置づけを明確化する必要があると主張しているわけです。
まず、自民党を中心に9条違反の安保法制を強行しておいて、さらに、それを基にした安保3文書を勝手に決定しておいて、今度はその安保3文書をいつでも改定して自衛隊の規模・活動内容をいくらでも「必要十分に」できるのだと居直っていることに、本当に許せない!と憤りを感じます。
また、「国防規定の創設」も危険です。帝国主義の侵略戦争は基本的に「国防」「自衛」の名で行われています。自民党案は9条1項、2項をそのままにして9条の2を加え、①9条の規定は「必要な自衛の措置」をとることを妨げず、②そのための「実力組織としての自衛隊を保持する」ことを明記するというものですが、これでは9条、特に2項の戦力の不保持、交戦権の否認は事実上否定され、空文化してしまいます。(法律には新規定が優先されるという原則があります)。
自民党の9条改憲案は、「国民」の反戦意識を警戒し、欺いて9条改憲を突破してしまおうというやり方に他なりません。
絶対に反対していきましょう!
絶対に反対していきましょう!
この日の傍聴者は前回より少し増えて60人ほどで、参議院憲法審査会で奮闘している奥田ふみよ氏(れいわ)も来ていました。議場にいた記者は2~3人で、採決の様子を撮るためか、最初TVカメラが2台入っていました。(銀)




