大変遅くなってしまい恐縮ですが、今年の通常国会最後の憲法審査会の報告です。
6月18日(水)13時から、今通常国会6回目の参議院憲法審査会が2週間ぶりに開催されました。
6月18日(水)13時から、今通常国会6回目の参議院憲法審査会が2週間ぶりに開催されました。
この日のテーマは前回と同じく「国民投票法等」とされ、まず各会派を代表して1人ずつ、計8人が7分の持ち時間で発言し、続いて3人の委員が3分以内で意見を表明しました。
最初に中曽根弘文会長(自民)が「全体の所要は1時間5分を目途とする」と述べましたが、8(人)×7(分/人)+3(人)×3(分/人)=65(分)になります。いつもは何人か制限時間を超過する委員がいるのですが、この日の審査会ではタイム・オーバーを知らせるブザーは1度も鳴らされず、予定より3、4分早く14時過ぎに閉会となりました。
個人的な感想ですが、この日が実質審議の行われる通常国会最後の参院憲法審であり、参議院議員選挙を1カ月後に控えている(都議選の4日前でもありました)こともあったからか、議場はやや緊張感に乏しい雰囲気でした。

また、いつもなら産経新聞やNHK、共同通信、時事通信などがウェブサイトで配信する無料で読める記事をこの傍聴記に転載させていただいているのですが、今回はメディアの関心も小さかったようで、ここで紹介できるような記事は見つけられませんでした。
最初に中曽根弘文会長(自民)が「全体の所要は1時間5分を目途とする」と述べましたが、8(人)×7(分/人)+3(人)×3(分/人)=65(分)になります。いつもは何人か制限時間を超過する委員がいるのですが、この日の審査会ではタイム・オーバーを知らせるブザーは1度も鳴らされず、予定より3、4分早く14時過ぎに閉会となりました。
個人的な感想ですが、この日が実質審議の行われる通常国会最後の参院憲法審であり、参議院議員選挙を1カ月後に控えている(都議選の4日前でもありました)こともあったからか、議場はやや緊張感に乏しい雰囲気でした。

また、いつもなら産経新聞やNHK、共同通信、時事通信などがウェブサイトで配信する無料で読める記事をこの傍聴記に転載させていただいているのですが、今回はメディアの関心も小さかったようで、ここで紹介できるような記事は見つけられませんでした。
「国会機能維持条項」骨子案にNO!を突きつけた参院自民党
この日最も注目すべき発言は、いちばん最初に自民党を代表して意見を表明した若林洋平氏が、衆院憲法審の幹事会に提出された「選挙困難事態における国会機能維持条項(という名の国会議員任期延長=居すわり条項)」の骨子案に対して、参議院の自民党会派としては、「自民党憲法改正実現本部で了承されたものではなく、あくまで衆院側の幹事、オブザーバー5名によるものと理解している」と明言したことだったと思います。
ここで5名というのは、骨子案に署名した衆院憲法審幹事会の幹事3名、船田元(自民)、馬場伸幸(維新)、浅野哲(国民)とオブザーバー2名、濱地雅一(公明)、北神圭朗(有志)の各氏を指しています。
ここで5名というのは、骨子案に署名した衆院憲法審幹事会の幹事3名、船田元(自民)、馬場伸幸(維新)、浅野哲(国民)とオブザーバー2名、濱地雅一(公明)、北神圭朗(有志)の各氏を指しています。
続いて発言した熊谷裕人氏(立民)は、「任期延長改憲論が論拠としている参議院の緊急集会が平時の制度であり70日間の限定であり2院制の例外の制約があるという説に関しては、参院では自民、公明の与党も否定的であった」と指摘した上で、「今回の衆院憲法審における4党1会派の骨子案の提出は、参院憲法審での真摯な議論の積み重ねを根底から否定し、参議院の存在も否定することにつながりかねない暴挙と言わざるを得ない」と、強い言葉で非難しました。

(上記写真は参議院憲法審査会の様子)

(上記写真は参議院憲法審査会の様子)
これらは、骨子案の内容というよりそれを提出した会派内でオーソライズされていないことや参院側での緊急集会をめぐる議論を無視していることなどを問題視したり批判するものでしたが、最後に発言した福島みずほ氏(社民)は、なぜ骨子案が認められないのか、その理由を以下のように説明しました。福島氏の公式サイトから転載させていただきます。
2025.6.18 参議院 憲法審査会での発言 福島みずほ公式サイトより
衆議院憲法審査会5会派が憲法改正についての骨子案をこのように提出したことに強く抗議をします。
内閣は、選挙困難事態及びその期間の認定を行い、期間の延長まで行います。
まさに国会議員の居座りであり、内閣が国民の選挙権の行使を禁止し、民主主義の過程を通して国会が、そして内閣が作られることを阻止しようとするものです。独裁にしかなりません
。
まさに国会議員の居座りであり、内閣が国民の選挙権の行使を禁止し、民主主義の過程を通して国会が、そして内閣が作られることを阻止しようとするものです。独裁にしかなりません
。
実際、1941年に衆議院議員の任期が、任期満了前に立法措置により1年間延期されたことがあります。その理由は、「挙国一致防衛国家体制の整備を邁進しようとする決意について、疑いを起こさしめぬとも限らぬので、議会の任期を延長して、今後ほぼ1年間は選挙を行わぬこととした」というものでした。
このように、衆議院議員の任期延長が、戦争遂行の国内体制整備のために実際行われたのです。
ですから、このような骨子案は問題です。
わが参議院会派の憲法を遵守し、法の支配と立憲主義に立脚する議論が、衆議院の各党各会派においても、真摯かつ誠実な姿勢で顧みられ、議論されることを望みます。
* 引用、ここまで。
骨子案については、6月12日の衆院憲法審で、船田元氏(自民、与党筆頭幹事)が「新藤元筆頭幹事の下で2022年12月1日、23年6月15日の2回にわたり論点整理が行われ、さらに24年6月13日には、中谷前筆頭幹事から、自民、公明、維新、国民、有志の5会派の共通認識を整理した骨格メモが示された」、「これを基にさらに議論を深め、5会派の現場の責任者が共同で作成した“選挙困難事態における国会機能維持条項の骨子案とさらに深掘りするべき検討課題”について、本日の幹事会で配布することができた」、「これは衆院憲法審の現場における5会派の幹事、オブザーバーの共通認識を整理し、より条文案に近い形に一歩深掘りしたもので、次のステップに向けた大きな前進と言える」と、いけしゃあしゃあと言い放っています。
確かに「衆院憲法審の現場における5会派」とは述べていますが、参院側の合意を取り付けていないことには一切言及していません。この船田氏の発言はフェイクニュース、偽情報と言えるのではないでしょうか。

確かに「衆院憲法審の現場における5会派」とは述べていますが、参院側の合意を取り付けていないことには一切言及していません。この船田氏の発言はフェイクニュース、偽情報と言えるのではないでしょうか。

参院選の結果にもよっても違ってくるでしょうが、秋の臨時国会で議員任期延長をめぐる改憲の議論が進展するのか頓挫するのか、注視していきたいと思います。
広告規制、フェイクニュース対策、広報協議会の問題
この日、多くの委員が言及したのがテレビ、ネットの広告規制やフェイクニュース対策で、海外勢力からの干渉の危険性を主張する意見もありました。また、これに関連して、国民投票広報協議会の役割を重視する見解とその限界を強調する指摘がありました。
これらの論点については、ほぼ4年前、2021年6月9日に成立した国民投票法(改憲手続法)改正案の附則第4条で「国は、この法律の施行後3年を目途に、次に掲げる事項について検討を加え、必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする」とされている中で、「2 国民投票の公平及び公正を確保するための次に掲げる事項その他必要な事項」として、
イ 国民投票運動等のための広告放送及びインターネット等を利用する方法による有料広告の制限
ロ 国民投票運動等の資金に係る規制
ハ 国民投票に関するインターネット等の適正な利用の確保を図るための方策
の3項目が明記されており、期限を1年も経過してなお検討がほとんど進んでいないことになります。
したがって、この日福島みずほ氏が述べたように、こんな状態で「国民投票を行うわけにはいきません」。再び、福島氏の公式サイトから転載させていただきます。
2025.6.18 参議院 憲法審査会での発言 福島みずほ公式サイトより
国民投票法について述べます。
第一に国民投票法改正法附則第4条の検討事項1号のみならず2号も十分に検討した上でなければ、国民投票を行うわけにはいきません。
十分に検討され解決されなくして行われる国民投票は公平及び公正が担保されておらず、正当性を有しません。
十分に検討され解決されなくして行われる国民投票は公平及び公正が担保されておらず、正当性を有しません。
第二に、資金力の差によって不公平な投票が行われることを規制しなければなりません。
国民投票運動等の支出上限の設定、収支報告書の提出等が必要です。
次に国民投票の14日前までテレビCMが全く自由である事は極めて問題です。
賛否の勧誘のための広告放送は全面禁止すべきですし、意見表明広告については政党も禁止すべきです。
インターネットについても規制が必要です。有料ネット広告の広告主明示義務は必要です。
広報協議会とファクトチェック団体との連携などは必要だと考えます。
ただし、広報協議会は国会の構成の数によって構成され、果たして中立的なファクトチェックと言えるのか、検閲的な効果を生むことがないか問題です。これは今後十分な検討が必要です。
* 引用、ここまで。
なお、前回のこのブログ(6/12衆院憲法審傍聴記)に、「19日に開かれた衆議院憲法審査会の幹事懇談会で枝野審査会長は、与野党の筆頭幹事と協議してまとめた“今後の議論の方向性”という提案を各党に示し……この中では、憲法改正の国民投票が行われる場合に、広報を担うために設置される“広報協議会”が、SNS上の偽情報への対策として正確な情報をどのように発信していくかや、必要な規制を設ける際にどの程度関わるかなど、検討すべき項目が挙げられています。(出典は6月19日付『NHK NEWS WEB』)」と記しましたが、この“今後の議論の方向性”の内容は、福島氏が指摘した「国民投票を行うわけにはいきません」という状況を打開しようとする呼びかけに他なりません。この問題についても、今後の動向を注視していく必要があります。
憲法学者、高良鉄美氏(沖縄の風)最後の発言
7月20日には参議院選挙が行われます。憲法審の委員の中にも改選となる議員がいて、中には引退する議員もいます。高良鉄美氏(沖縄の風)もその一人ですが、氏は長く大学教員を務めた憲法学者であり、これまで憲法に対する誤った主張を繰り返す改憲勢力の面々を(個人的な感想ですが)教え諭すかのように発言してきました。今回の傍聴記では、高良氏が憲法審で表明された意見を少し詳しく紹介したいと思います。『国会会議録検索システム』で公開されている会議録から要約します。
皆さんは憲法保障という言葉を知っていますか。96条、97条、98条、99条は憲法保障の規定であり、国家権力の横暴によって憲法が侵されないように置かれています。96条の両院議院の3分の2という発議の要件が難しいのは、憲法が自らを守っているということであり、国権の最高機関である国会に信頼を置いているわけです。それなのに、各議員が立憲主義のこの理念を一顧だにしないで、とにかく早く改憲案を作れと声高に叫んでいる姿はいかがなものかと思います。
よしんばこの翼賛体制による改正案の発議が国会で通ったとしても、憲法は立憲主義の構造における最終の憲法保障として主権者国民に国民投票を信託しています。この信託の意味をまた同じように一顧だにしないような国民の姿であるとすれば、憲法保障としての国民投票の意義は消えてしまいます。
国民への信託を考える上で、前回フェイクニュースの問題を取り上げたことは意味があったと思います。それは、この信託の重さがあるからこそフェイクニュースには注意をしてくださいという意味です。
国民への信託を考える上で、前回フェイクニュースの問題を取り上げたことは意味があったと思います。それは、この信託の重さがあるからこそフェイクニュースには注意をしてくださいという意味です。
しかしながら、そのベースにある国民投票の仕組みそのものが、改憲手続法、国民投票法でゆがめられ、憲法に反する疑義があります。
まず、改憲手続法制定の立法事実の問題です。国民から改憲の要望が強ければ当然定めなければならないけれども、その必要性、緊急性がないということです。
憲法改正権力を有する国民から具体的な要求がないにもかかわらず、憲法99条で憲法を遵守してくださいと言われている国家権力の担い手である我々国会議員が、改正に関する規定がないのが不備だとして改憲手続法を作りました。
この論理なら、憲法99条の憲法尊重擁護義務違反の権力の担い手に対する罰則がないのは不備だとして、刑法を改正するか特別法を制定して罰則を設けるべきだということになります。
まず、改憲手続法制定の立法事実の問題です。国民から改憲の要望が強ければ当然定めなければならないけれども、その必要性、緊急性がないということです。
憲法改正権力を有する国民から具体的な要求がないにもかかわらず、憲法99条で憲法を遵守してくださいと言われている国家権力の担い手である我々国会議員が、改正に関する規定がないのが不備だとして改憲手続法を作りました。
この論理なら、憲法99条の憲法尊重擁護義務違反の権力の担い手に対する罰則がないのは不備だとして、刑法を改正するか特別法を制定して罰則を設けるべきだということになります。
もう一つは、現行の国民投票法の内容です。憲法改正の発議の要件は各議院の総議員の3分の2で相当難しいわけですけれども、国民投票になると最低投票率の規定もなく、有効投票数の過半数で決めるとして、幾らでも低い投票率で改憲が可能になってしまいます。この有効投票数には、無効あるいは棄権の票が計算されていませんが、発議をする国会議員の方には棄権とか無効は含まれています。だとすると、同じような考えを持たないといけないと思います。
比例原則というものがありますので、国会での発議にそのようなハードルがあれば、国民の方にもハードルがないと、国民投票を憲法保障として置いている意味がないことになります。ほかの国では、国民投票に最低投票率を設けたり、有権者の過半数の賛成を得なければならないという規定を設けているところもあります。この最低投票率の定めがないという問題については、弁護士会や法学者からも随分問題提起がされていて、憲法改正という国家の根幹に関わる決定に対して手続が軽過ぎるんじゃないかということです。
憲法96条の憲法保障の趣旨をしっかり捉えた上で、立憲主義的な解釈や比例原則を考えて、過半数の賛成という単純な文理解釈をすべきではないということを申し上げておきたいと思います。
比例原則というものがありますので、国会での発議にそのようなハードルがあれば、国民の方にもハードルがないと、国民投票を憲法保障として置いている意味がないことになります。ほかの国では、国民投票に最低投票率を設けたり、有権者の過半数の賛成を得なければならないという規定を設けているところもあります。この最低投票率の定めがないという問題については、弁護士会や法学者からも随分問題提起がされていて、憲法改正という国家の根幹に関わる決定に対して手続が軽過ぎるんじゃないかということです。
憲法96条の憲法保障の趣旨をしっかり捉えた上で、立憲主義的な解釈や比例原則を考えて、過半数の賛成という単純な文理解釈をすべきではないということを申し上げておきたいと思います。
憲法を変える問題については、国の根幹に関わることだということで、軽々にこれを叫んではいけないということと、慎重であって何も悪いことはないということで、国民の方から変えてくださいと問題を提起した場合に初めて国民の意思を尊重していることになるんだということを訴えて、私の意見としたいと思います。」

私も多くの反対の声を押し切って強行された改憲国民投票法そのものが大問題であり悪法だと考えています。国会や憲法審査会の現状を見ると、高良氏のこのような正論が顧みられる可能性は皆無に近いと考えざるを得ませんが、私たちの立場こそ正当なのだという確信を持って改憲派のフェイクやデタラメなやり口を暴いていきましょう。参議院選挙の中でも真実をフェイクで塗り替え排外主義をあおるような宣伝が横行しています。毅然と対決し、改憲阻止、戦争反対の運動に取り組んでいきましょう。
傍聴者は始め15人くらいでしたが、少し経ってから入ってきた人もいて最終的に25人ほどになりました。記者は1人でしたがゼロになった時間もありました。
なお、20日(金)には請願の処理等を行うためにもう一回参議院憲法審査会が開催される予定でしたが、ガソリン税の暫定税率を廃止する法案をめぐって衆院で財政金融委員長が解任されるなどしたため参議院の審議日程が混乱し、結局取りやめとなりました。(銀)

