とめよう戦争への道!百万人署名運動

署名運動をとおして、改憲・戦争への道を許さない闘いを全国的に広げていきます。

2024年05月

5月9日(木)午前10時から11時30分頃まで、今国会5度目の衆議院憲法審査会が開催されました。実質審議は4回目で、この日も自由討議が行われました。

今回の傍聴レポートでは、まず、衆院憲法審の構成が少し変化したことを報告しておきます。それは、4月28日に行われた衆院議員補欠選挙において3つの選挙区すべてで立憲民主党の候補者が当選した結果、憲法審における立民の委員数が10から11に増え、そのあおりで有志の会の委員が0になったことです。ただし、すぐに自民党が委員の枠1つを有志に譲ることにしたため、有志の委員は引き続き憲法審に留まり、自民の委員数が28から27に減ることになりました。
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消滅寸前の岸田の改憲スケジュール

私が、この日の審議でいちばん注目すべきだと思ったのは、表明された意見ではなく表明されなかった意見です。つまり、岸田首相が何度も繰り返してきた「私の自民党総裁任期中に改憲を実現したい」との発言を取り上げて、早く改憲条文案をまとめないと間に合わない、合意している会派だけで作業を進めるべきだと言い募る委員が、今回は1人もいなかったことです。今通常国会の会期末、そして岸田自民党総裁の任期切れが近づく中で、日本維新の会の委員たちも国民民主党の玉木雄一郎氏も、岸田発言に依拠して改憲スケジュールを言い募ることの非現実性をとうとう受け入れざるを得なくなったということでしょう。自民党総裁の任期を改憲のスケジュールに結びつけるくだらない議論を聞かされる苦痛がなくなったのは、とてもうれしいことでした。

次に、審査会前半の各会派代表1人ずつの発言の要旨を報じた『NHK』の記事を転載させていただきます。

衆議院憲法審査会 憲法改正の条文案めぐり議論
『NHK NEWS WEB』2024年5月9日

衆議院憲法審査会が開かれ、大規模災害など緊急事態での国会機能の維持について、自民党が憲法改正の条文案の作成に入るよう重ねて呼びかけたのに対し、立憲民主党は安易に国会議員の任期を延長すべきではないと主張しました。

自民党の中谷元防衛大臣は「緊急事態に国会機能を維持するための条文化について各党間で起草作業を行い、たたき台をもとに論点を深く議論すべきという意見があり、機が熟してきている。大事なのは幅広い会派が協議の場で賛否を含めて国民に論点を明らかにすることだ」と述べました。

立憲民主党の逢坂代表代行は「災害に強い選挙の在り方を十分に検討する必要があり、安易に議員任期の延長を行うのは順序が逆だ。任期を延長する事由などを誰がどう判断するかによって立憲主義を大きく毀損する可能性もある」と述べました。

日本維新の会の三木圭恵氏は「緊急事態における条文案の起草作業に進むべきだという意見に賛成だ。起草委員会を作ること自体に反対するイデオロギーに縛られた政党間の足の引っ張り合いに時間を費やすのは、むだな作業だ」と述べました。

公明党の河西宏一氏は「新型コロナなど大規模な緊急事態に近年直面し、立法府がどう応えていくかが問われている。任期延長の条文案について、たたき台をもとに議論すべき段階を迎えている」と述べました。

共産党の赤嶺政賢氏は「毎週のように憲法審査会が開かれ、改憲議論をあおる主張が繰り返されてきた。9条を変えるべきではないという世論が多数を占める事実を重く受け止めるべきだ」と述べました。

国民民主党の玉木代表は「来週からはすべての会派を入れた起草委員会を設置し、緊急事態における国会機能の維持を可能とする条文案作りに着手することを求めたい」と述べました。
* 引用、ここまで。

玉木氏(国民)の問題発言、古屋氏(自民)の問題外発言

岸田首相の改憲発言への言及こそ影を潜めたものの、上掲の記事にあるように、「地獄行こう」(自・国・維・公)の委員たちが起草委員会を作って議員任期延長の緊急事態条項の条文案を議論しようと口をそろえる状況は変わっていません。

玉木雄一郎委員(国民)に至っては、昨年5月18日の衆院憲法審に参考人として出席した憲法学者の長谷部恭男氏の名前を挙げてこんな失礼なことまで述べているのですから始末に負えません。
「学者と私たち国会議員との間には根本的な違いがある。学者は既存の条文の解釈を出発点として現状を説明する学説を組み立てるのに対して、立法者である国会議員は蓋然性が低くても可能性がある限り国民の生命や権利を守るためあるべき法制度を構築する責任を負っている。
危機に備えるかどうかを決めるのは学者ではなく、国民の生命や権利を守る責任を負った国会議員をおいてほかにない。私たちが決めない限り答えは出せないのだ。」
何をどう考えたらこんな高慢な発想が出てくるのか、本当に腹立たしく思いました。
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続いてもう一人、自民党内での役職の高さと発言内容の程度の低さとの落差に恐ろしさを覚えた人物を紹介しましょう。それは自民党憲法改正実現本部長の古屋圭司氏で、こんなことを言っていました。
「憲法を改正できるのは主権者である国民の皆さんだが、憲法改正に賛成か反対か、国民の皆さんによる判断の場、すなわち国民投票に参加し主体的に意思表示する場を奪っているのが現状だ。これは国会の不作為と言っても過言ではない。」
こんな中身のない意見を堂々と開陳して何か言ったような気分になっている人物が自民党憲法改正実現本部長の座に就いているのです。

根拠のあやふやな「選挙困難事態」

玉木氏が「蓋然性が低くても可能性がある」と言っているのはいわゆる「選挙困難事態」のことですが、本庄知史幹事(立民)は、その根拠が極めて薄弱であると指摘しました。以下、本庄氏のホームページに掲載されている「国会質問アーカイブ」から要約して転載させていただきます。

「『選挙困難事態』について、全国の広範な地域で相当程度長期間選挙が実施困難な事態ということが現実問題としてあり得るのか、あり得るとしてそれはどれぐらいの可能性なのか、未だ説得力ある科学的検証は示されていない。

先ほど中谷元幹事(自民)より、東北ブロックで国政選挙ができなければ『全国で広範な地域での選挙実施困難』に該当する旨の発言があったが、私はそうは考えない。これは判断の問題であり、同じ事例でもそれが『選挙困難事態』か否かで見解を異にしているということだ。

また、『福島で原発事故が起こり、帰還困難で1年も2年も帰れないような地域の選挙は一体どうしたらいいのか』との発言もあったが、繰延投票、不在者投票、避難先での投票など、議員任期の延長によらない対応策はいくらでも考えられるのではないか。

河西宏一委員(公明)からは『東日本大震災では、岩手・宮城・福島の被災3県に加えて、茨城県水戸市の市長選、市議選が延期されている』との指摘があったが、水戸市長選は33日、市議選は29日の延期であり、仮に国政選挙で同様の状況があっても繰延投票等で十分対応できる範囲だ。

中谷幹事からは『自衛隊の出動の国会承認において一刻を争うときに国会が開かれないというのは、まさに緊急事態における対応ができない一つの例だ』との発言もあったが、自衛隊の出動は国会の事後承認でも認められており、不都合は生じない。
このように、各委員の発言を取り上げても、私には議員任期延長の必要性が示されているとは思えない。」

「参政権」を奪う議員任期の延長

本庄氏は、上掲の発言に続いて、議員任期の延長が重大な権利侵害を招くことを主張しました。続けて要約、転載させていただきます。

「日本国憲法の三大原則の一つである国民主権に由来し、憲法第15条で保障される国民の参政権、選挙権は最も重要な基本的人権であり、議会制民主主義の根幹をなすものだ。国会議員の任期延長とはこれを制限することにほかならない。特に、被災地以外の有権者にとっては重大な権利侵害だ。

公共の福祉や安全保障のために、基本的人権や個人の権利が制限されることは当然あり得るが、それは他の取り得る手段を追求した上で、両者を比較衡量した結果導かれるものだ。

しかし、現在の議員任期延長の議論ではその必要性ばかりが強調され、選挙権の制限や議会制民主主義の形骸化、ひいては国民主権の侵害といったデメリットやリスクについて十分な考察や議論がなされているとは言えない。

また、議員任期の延長で国民の参政権、選挙権を制限する前に、災害に強い選挙体制の整備など他に取り得る手段について十分な議論や検討も行われなければならないが、現在の政府や国会でそういった取り組みがなされているとは言えない。」

そして、本庄氏は下記のように議論を締めくくりました。私は、説得力に富んだ指摘だと思いました。

「以上のとおり、議員任期の延長に関する現在の議論は、そのデメリットも代替措置も十分に議論・検討されないまま、もしかしてあるかもしれない極めて小さな可能性にことさらに焦点を当てて、その打開策を議会制民主主義にとって最後の手段とも言える議員任期の延長に安易に委ねている。条文案に基づく議論の段階に達しているとはとても言えず、さらに深掘りした議論をていねいに重ねるべきであると考える。」
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不透明な憲法審の行方

この小見出しは、前々回、前回の表題と同じです。岸田首相の自民党総裁任期中の改憲発議が遠のいたことは喜ばしいのですが、もう少し長いスパンで見れば、自民党を中心とする改憲勢力が体制を立て直して、自衛隊・自衛権の明記、緊急政令・緊急財政処分を可能とする緊急事態条項の新設を推し進めようとしてくることは間違いないでしょう。

この日も、衆院憲法審に4人もいる防衛大臣経験者の一人、岩屋毅氏(自民)は以下のように述べていました(他の3人は石破茂、中谷元、稲田朋美の各氏です)。
「憲法改正の最大の焦点は9条となるだろう。戦後政治の最大の対立軸は9条をめぐってのものだった。それは55年体制が終わったはずの今も続いている。
しかし、まもなく戦後80年になろうとしている。安全保障に関して、観念論ではないリアリズムに立脚した議論を行っていくためにも、私たちはそろそろここを乗り越えていく必要がある。」
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実際の国会は、憲法審査会の委員会室を一歩出れば、憲法違反で戦争法と言える悪法が次々と成立させられているのが現実です。腹立たしい限りですが、私たちはできることをやり続けるしかありません。職場や地域で戦争動員拒否を貫きましょう。9条明文改憲は絶対に阻止しなければならないし、それは可能だという確信を持ってこれからも声を上げ続けていきましょう。

この日の傍聴者数は、前回より増えて約40人でした。記者も開会時には前回より多い8人が記者席に着いていましたが、すぐに4、5人になりました。
委員の出席状況は、自民党は前回より良くなって欠席者が2~4人くらいの時間が長かったです。その他の会派では、立民の委員が1~3人席を外している時間がありました。(銀)


地方自治法改悪案が3月1日に閣議決定で国会に上程されました。5月7日に、衆議院本会議で松本総務大臣が趣旨説明を行い、総務委員会へ付託され、同日の総務委員会で趣旨説明が行われ、現在審議中です。これは地方自治法を改悪して、地方自治を解体する「国の指示制度」を創設するというもので、戦争を想定した「有事における」地方への抑え込み立法に他なりません。こんな憲法違反の戦争法を断じてつくらせてはなりません。
Iボード

5月10日(金)夕方、衆院第二議員会館前での抗議行動に参加しました(主催:東京労組交流センター自治やイブ会/改憲・戦争阻止!大行東京)。
18時30分から、自治体労働者や「大行進」の仲間たちの反対アピールが行われました。
初めに、「戦争のための地方自治法改悪」について、労組交流センター自治体部会の労働者から、今日の戦争情勢についてと地方自治法の改悪案要点について「基調報告」がありました。その上で、闘いの報告、発言がありました。
Image3国会前

自治体労働者たちの発言を紹介します。

神奈川の自治体労働者
4月12日、内閣府は(全国の安全保障上の重要施設の周辺や国境離島を対象とする)重要土地利用規制法に基づく区域指定第4弾として、28都道府県の184カ所を指定し(累計583ケ所)告示しました。そのうち、神奈川県内は12カ所、横浜市は4ケ所です。

私たちは横浜市に対して抗議に行きました。元横浜市議も抗議しましたが、横浜市の職員は「国が決めたことなのでわれわれは関知しない」と言いました。前は「われわれは宮仕えですから」などと言って、地方自治が壊されるのにどこ吹く風の対応でした。

また、2月6日には、「国民保護法に基づく住民の避難訓練」「緊急事態訓練」が横須賀市と横浜市金沢区にまたがって行われました。「横須賀の海岸で、不審船から自動小銃で武装した十数人が上陸したという想定」で行われました。

それらは全て自治体にかかわることで、地方自治法にも絡んできます。戦争と直結している改悪と闘います。

東京の区職の労働者A
今日は「重要経済安保情報の保護・活用法」(経済安保セキュリティ・クリアランス制度)が可決されました。許せません。

地方自治法改悪の審議は進んでいません。立民は「地方自治は国と対等・協力の立場にあるのに、改正案はそれを否定するものだ」と指摘するものの、反対の立場をはっきり言いません。自治労も闘う姿勢を出していません。私たち現場労働者が反対の意見をはっきり出して、闘っていきましょう。

●区職の労働者B
地方自治法改悪は戦争への第一歩です。職場の青年と話しました。話を理解してくれて、「気づかないうちに外堀がどんどん埋められていってしまう」と言いました。

こんなくだらない国会で、自治体労働者の役割りが変えられてしまうことは許せません。自分たちのことは自分たちで決めていく、これが地方自治法の本旨です。働く者の力で粉砕していきましょう。労働組合が団結して闘っていくときです。

●労組交流センター自治労部会
今こそ自治体労働者の誇りにかけてこんな改正案を葬りましょう。自治体労働者の誇りは日々地域住民と接していること。住民が何に困り、何を求めているかを仕事を通じて知っています。どこに住んでいるかも知っています。
災害についてだって、何をしたらいいか、自治体労働者が一番わかっています。国の指示権を使って地方公共団体を飛び越えてやる行政とはどういう内容か。

地方自治制度や自治体労働者の組合も先の戦争の反省から生まれました。 反戦、反原発などの闘いは大切です。地方自治法「改正」を粉砕するまで闘いましょう。

国は国益のためと言うけど国益が地域住民の利益になったことは、これまでありません。真っ向から闘って住民を守ろう。自治体労働者の誇りをこの闘いでとり戻しましょう。

●神奈川労組交流センター
地方自治法改悪は中国侵略戦争推進の大攻撃と一体です。粉々に粉砕しよう。

川崎では、「青年の名簿を自衛隊に提供するな」の署名に取り組みましたが、自治体の組合からも集っています。自治体労働者は自分たちの業務で住民を戦争に動員する先兵になってはいけないと、みんな感じています。住民と結んで、反戦闘争に決起して行きましょう。
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戦争反対!戦争のための地方自治法改悪をさせるな!の声を大きくし法案阻止へ!がんばりましょう(T)。
(百万人署名運動のチラシ)

地方自治法改悪チラシ


5月8日(水)13時から14時30分少し前まで、今国会2回目の参議院憲法審査会が開催されました。1回目の4月10日には幹事の補欠選任が行われただけでしたので、実質的な審議はこの日が初めてとなりました。昨年の通常国会では4月5日に議論がスタートしていましたから、およそ1カ月遅れでの始動ということになります。

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後述するように、昨年の通常国会ではいきなり緊急集会をテーマとして審議が始められたのですが)、今回は「憲法に対する考え方」について意見交換を行うということで、まず各会派1人ずつ7分以内での発言、続いて発言を希望する委員の3分以内での発言がありました。

小西洋之氏が「深い感動にとらわれた」自公幹事の発言

この日最初に発言したのは、今国会から与党側筆頭幹事に就いた佐藤正久氏(自民)でした。この人事で、衆院の中谷元氏とあわせて衆参両院で自衛隊出身者が憲法審の与党側筆頭幹事であるという、(言い過ぎかもしれませんが)異様な体制が敷かれたことになります。

ただ、この日の佐藤氏の発言は、自民党の議員としては極めて穏当なもので、氏は
「首都直下地震や南海トラフ地震等を想定した対応が急がれる中、憲法で参議院に与えられている重要な権能の一つである緊急集会について解釈が分かれている論点に関して、参院としての考えを明確にする必要がある。衆院議員の任期満了時は、総選挙が予定され、一時的な衆院議員の不存在という意味では解散と変わりないことから、内閣の求めに応じて緊急集会を開き得ると申し上げる。

緊急集会で議員が発議できる議案の範囲は、内閣が示した案件に関連し、特別国会の招集を待てない程度の即時に対応すべきものに限られるが、その範囲内で広く認めてはどうかと考える。大規模自然災害等が発生したとき、いかに遅滞なく3分の1の定足数を満たし、内閣から提出された案件を審議できるか等について、あらゆる事態を想定しながらシミュレーションを通して確認する必要がある。緊急時を意識した参議院としてのBCP(事業継続計画)の作成に向けて、論点の洗い出しを行ってはどうかと考える。」(要旨
などと述べていました。

そして佐藤氏以上に注目すべき意見を表明したのが、公明党の参議院会長でもある西田実仁幹事でした。以下、『東京新聞』の記事を転載させていただきます。

公明「緊急時でも参院議員の任期延長は不要」 参院憲法審 衆院での主張とチグハグ 不要な理由とは
『東京新聞TOKYO Web』2024年5月8日

参院憲法審査会は8日、今国会で初の実質的な審議となる自由討議を行った。公明党の西田実仁参院会長は「参院は定数の半数であっても継続性、安定性が現行憲法で確保されており、緊急集会は成立する」と述べ、緊急事態が発生した場合でも参院議員の任期延長は不要と明言した。公明は、衆院憲法審で任期延長に向けた改憲の必要性を主張しており、衆参で党内の意見の不一致が表面化した。

◆「繰り延べ投票ではなぜだめなのか」
西田氏は、選挙の実施が困難な緊急事態時の任期延長に関する議論の充実を求めた上で、「(天災などで期日を延期する)繰り延べ投票ではなぜだめなのか判然としない」と任期延長を疑問視。「民主的な正当性を確保するのには選挙が肝要だ」と指摘した。
4月の衆院憲法審では、公明の北側一雄副代表が「改憲案のたたき台を作成して議論を深めていくべきだ」と発言するなど、任期延長を繰り返し訴えていた。

日本維新の会の片山大介氏は、議論を重ねるために審査会の開催頻度を増やすことを提案した。
立憲民主党の辻元清美氏は、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で参院の政治倫理審査会に出席していない議員が29人いることを踏まえ、「国民の信頼回復なくして憲法論議はない」と強調した。
国民民主党会派の大塚耕平氏は、国際情勢の変化に伴う課題を列挙。共産党やれいわ新選組からは、現行憲法を守ることから始めるべきだとの意見が相次いだ。(三輪喜人)
* 引用、ここまで。

上掲の記事で紹介されている西田氏の発言は、公明党内で衆院側と参院側の意見が食い違っていることを示したものであり、緊急事態時の議員任期延長の改憲条文案を早急にとりまとめて発議にまで持っていこうという衆院憲法審における改憲勢力の思惑を根底から突き崩すものです。なぜなら、参院では公明党抜きで改憲発議に必要な3分の2以上の勢力を確保できないからです。

この日最後の発言者となった小西洋之氏(立民)は、佐藤氏、西田氏の発言について、「両先生の緊急集会に関するご意見を拝聴しながら深い感動にとらわれた」と(おそらくは皮肉を込めて)評していました。

政権と野党第一党に怒りをぶつけた山本太郎氏(れいわ)

この日も異彩を放っていたのが、れいわ新選組の山本太郎氏の怒りに満ち満ちた発言でした。
以下、氏の公式ホームページに掲載されている発言原稿を要約して紹介します。

現在、日本に憲法問題は存在するのか。緊急時に対応できる憲法になっていないと主張する者もいるが、その内容を聞いてみても、俺たちが改憲したと言いたい以外に動機が見当たらない。

既に現行憲法は緊急時も対応できる内容になっている。では、日本に憲法問題は存在しないのか、いや、存在する。災害という緊急事態で苦しむ人々を放置し続け、金と票をくれる者には規制緩和と金を横流し、日本経済を30年衰退させ国民を貧困化、憲法遵守よりも私腹を肥やすことだけに熱心で、その存在自体が憲法違反とも呼べる国会議員たちが訴える薄っぺらな憲法改正を数の力で進めようとする現在こそが日本における憲法問題だ。

自民党の4分の1の議員が裏金問題に関与。自ら辞職することも自首することもなく、知らぬ存ぜぬで逃げ切ろうとする泥棒たちが、今日ものうのうと国権の最高機関で活動する。腐敗、劣化、肥だめ、詐欺師、泥棒、イカサマ、ネコババ、様々形容しても足りないほどの状態である永田町で、この犯罪者集団が法改正や立法にも関わっている。それらを粛々と成立させている現在の国会こそ憲法違反ではないのか。

国会が憲法違反の存在に成り下がったのは、野党側にも問題がある。野党にとって唯一人質に取れるのが予算なのに、なぜ予算成立とバーターで能登半島の補正予算を実現しようとしなかったのか、なぜ安倍派5人衆の首を取ろうとしなかったのか。国民のために勝ち取れるものを取りに行こうともせず、物分かりの良い国会運営に徹する衆議院野党第一党の姿は、自民党に並ぶ憲法違反が疑われる存在に思える。

災害は終わったと切り捨て続けているのが自民党。憲法はもちろん、コミュニティーを守る気もなく、被災者は泣き寝入りするしかない。能登半島にも同じような手口で対応することは、発災から現在までの政府の対応を見れば一目瞭然だ。即座にヘリで視察し、物資空輸と人命救助に自衛隊を大量投入しなければならないのに、発災直後でも経済団体の祝賀パーティーに出席、2週間も現地を視察せず、放置するような政治家が総理で、それに党内で苦言を呈する者もいない。

「災害が」と声をそろえて憲法改正の必要性は訴えるが、彼らの口から今現在災害の中で基本的人権さえも守られていない被災住民の状況はほとんど聞こえてこない。憲法改正を語る前に今の憲法を守れ。
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この発言に対して、佐藤正久氏は「不穏当な言辞があったと思われるので、幹事会で取扱いを協議願いたい」と森英介会長(自民)に申し出ましたが、山本氏に対して不当な「取扱い」が行われないよう、今後の動向に注目していきたいと思います。

憲法学者としての見識を示した高良鉄美氏(沖縄の風)

この通常国会から、沖縄の風の高良鉄美氏が参院憲法審の委員に就任しました。わずか2人の会派ですが、沖縄県選出の議員が(おそらく初めて)参議院の憲法審査会に所属することになってとても良かったと思います。この日の発言も、憲法学者ならではの格調の高いものだと感じました。
以下、その一部を紹介します。

「沖縄が復帰して来週で52年になる。憲法が適用されてからということだが、その憲法はまだ沖縄に適用されていると思わない。まずそれを言いたい。

憲法審査会は『法の支配』の語を誤った理解で使用し続けている。『法の支配』は専断的な国家権力の支配、つまり人の支配を排して、全ての統治権力を憲法で拘束することによって国民の権利を保障することを目的とする立憲主義に基づく原理だ。

現状の憲法審査会の機能や位置づけは、『法の支配』から問題になる点が多くある。まず、憲法の改正を目的に調査・審査をする常任の機関として位置づけられていることが憲法上可能なのかということだ。憲法制定権力は国民にあり、人権保障のために必要な改正点があれば発議をする信託を国民から受けたものであって、元来国会に憲法改正権力があるわけではない。しかも、国民の最終判断が憲法改正権発動の効果を発生させることとなる。したがって、憲法審査会が憲法の上位にあるかのように網羅的に憲法条文の改正を模索することに従事していることは憲法構造上いびつであると言っていいと思う。

『法の支配』のほかにも『適正手続』ということがあり、国民主権に基づく主権者の要望から湧き上がった改憲なのかが問題になる。憲法審査会のあり方自体も問題で、現状の審査会は国家権力による憲法改正事項の発掘をしているように見える。国家権力の担当者が負うのは憲法尊重擁護義務であって、国会議員は憲法改正案を作る義務を負っているわけではない。

最後に、岸田首相が任期中に改憲を行う旨の発言をしたことは『法の支配』になっているのか。人が支配しているのではないか。問題点はまだまだあるが、今の憲法審査会には違憲の問題があると言っておきたいと思う。」
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自民党裏金問題、戦争政策、人権問題などに対する厳しい批判も

上記以外にも様々な意見が表明されましたが、今回は共産党の委員2人の発言を『しんぶん赤旗』から、また、福島みずほ氏(社民)の発言を氏の公式サイトから転載させていただき、紹介しておきたいと思います。

憲法壊す政治改めよ 山添・仁比議員が意見表明 参院憲法審
『しんぶん赤旗』2024年5月9日

参院憲法審査会が8日に開かれ、「憲法に対する考え方」について意見表明・意見交換が行われました。日本共産党の山添拓議員は、改憲案のすり合わせを図る審査会は動かすべきではないと主張。憲法記念日を前にした共同通信の世論調査では、改憲の議論を「急ぐ必要はない」との回答が65%に上ったと強調し、「国民の声に逆行し、国会が改憲ありきで進むことは許されない」と述べました。

山添氏は、衆院3補選で自民党が議席を失うなど裏金事件をめぐる国民の厳しい審判が下されていると指摘。憲法前文は、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動する」としているが、裏金議員の議席は公正な選挙の結果とはいえない可能性が否定できず、「正当に選挙された国会における代表者」に値しないとの批判を免れないとして、「民主政治の土台を揺るがす事態を招いた法律を守れない議員に改憲を語る資格はない」と批判しました。

山添氏は「憲法を変える議論ではなく、憲法とりわけ9条を壊してきた政治を改める議論こそ焦点だ」と主張。岸田文雄首相が日米首脳会談で自衛隊と米軍をシームレスに「統合」し、事実上、米軍の指揮下に自衛隊を置く事態まで容認するなど、70年来の日本の安全保障政策を根底から踏みにじっていると批判し、平和外交に力を尽くすことこそ9条を持つ日本の責任だと強調しました。

日本共産党の仁比聡平議員は「豊かな人権の保障こそ取り組むべき喫緊の憲法問題である」と指摘。同性婚や水俣病、改悪入管法の問題をあげ、「こんな人権後進国のままでいいはずがないとの声を受け止め、憲法の実現に力を尽くすべきだ」と主張しました。
* 引用、ここまで。

2024.5.8 参議院 憲法審査会での発言
『福島みずほ公式サイト』2024年5月9日

第一に、憲法から見た自民党裏金問題について述べます。
政治資金収支報告書に不記載だった裏金の使途はほとんど不明のままです。安倍派だけでも5年間で6億円超になります。有権者の買収、有権者への違法な寄附、違法な選挙費用、公職選挙法194条、公職選挙法施行令127条の支出制限違反等として使われた可能性が否定できません。自民党で適切な根拠に基づいて否定できない限り、残念ながら、裏金によって選挙犯罪が行われたことを想定せざるを得ない状況ではないでしょうか。

政治資金規正法や公職選挙法は、正当な選挙という憲法の要請に基づいています。公職選挙法1条は、日本国憲法の精神にのっとりとなっています。裏金の使途が適法と証明できない限り、裏金議員の議席は公正な選挙の結果によるものと言えるのでしょうか。
憲法改正発議における各議院の総議員の3分の2以上の賛成、96条も当然正当に選挙された国会である必要があり、これに反する憲法改正は排除されます。裏金議員を除くと、衆参いずれも総議員の3分の2を下回ります。現在の国会は憲法改正を発議できるような正当に選挙された国会とは言えません。そもそも、裏金問題で法律を守らない自民党の裏金議員の人たちに憲法を変える資格はありません。

第二に、政府・与党が行っている憲法の破壊があります。
日本は、憲法9条の平和主義に基づいて、専守防衛、海外に武器を売らない、軍事研究はしないなどの政策を持っていました。それがことごとく破壊されていっています。憲法を守らず、憲法を破壊しながら、どのように憲法を変えるというのでしょうか。この意味でも、憲法を変える資格はありません。

第三に、札幌高裁は同性婚を認めないことは憲法24条、14条に違反するとし、最高裁は生殖能力を奪う性同一性障害特例法は憲法違反だと断じました。
憲法違反をなくすことこそ必要です。憲法審査会で取り上げるよう、会長にお計らいをお願いいたします。

第四に、緊急事態条項は大問題です。
政府が地方自治体に指示できるとすることは、憲法の地方自治の本旨を侵害しています。政府は、法律と同じ効力を持つ政令を作ることができるとすることは、憲法41条に明確に反しています。

衆議院議員の居座り、任期延長は、国民の選挙権を侵害します。とりわけ、裏金議員の居座りを許してはいけません。唯一の立法機関である国会は、緊急事態条項に反対しなければなりません。
憲法違反をなくし、憲法を生かしていくことこそ、憲法審査会でやるべきであるということを申し上げ、意見表明を終わります。
※本議事録は未定稿です。
* 引用、ここまで。

今回の審査会終了後すぐに、『参議院憲法審査会』のホームページに下掲の「開会予定」が告知されました。
令和6年5月15日(水)午後1時00分 第41委員会室(分館4階)
○日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査
(憲法に対する考え方について(参議院の緊急集会について))
・説明聴取
・委員間の意見交換
テーマは昨年の通常国会の第1回、第2回参院憲法審と全く同じですが、今国会ではより具体的な議論が行われることになるのでしょうか。
ひとまず緊急事態時の議員任期延長の改憲はやや遠のいた感じですが、警戒を緩めることはできません。引き続き改憲・戦争反対の声を上げていきましょう。

参議院の憲法審査会は、衆議院とは異なり、自民党も含めて欠席する委員はほとんどいません。今回も、短時間席を外す者はいましたが、全員が出席していました。
傍聴者は25人ほどで衆院より少なめで、記者は最初4人いましたが閉会時は2人になっていました。冒頭、TVカメラが3台も入っていたので驚きましたが、気がつくと13時40分頃にはゼロになっていました。
(銀)

すでにお手元に届いている方も多いと思いますが、まだの方にぜひ購読をお願いしたく、『百万人署名運動全国通信』の紙面の紹介をさせていただきます。

4.10日米首脳会談ー共同声明では、中国を名指しで非難し日米の対処力の強化、南西諸島の戦闘態勢の強化を表明しており、アメリカの対中国戦争に日本が積極的に参戦していくというものです。多くの人々にとってにわかには信じられないことですが、いま岸田政権は日本の戦争国家化へ向けて大転換を進めています。

1面は、そうした情勢の中での沖縄からの訴えです。
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2面は、日米共同声明の核心「指揮権の一本化」について
3面は、戦争に向けた衆院憲法審査会の報告です。
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4-5-6面は、イスラエルによるパレスチナ人民へのジェノサイドの問題です。アメリカを先頭にG7主要国はイスラエルを支援し続けており、背景に米欧帝国主義による石油支配のための中東侵略戦争があり、それが今も続いていることを示しています。
「10.7は帝国主義の植民地支配へのパレスチナ民族解放戦争だ」と訴えられている藤田進さん(東京外語大名誉教授)にお話をお聞きました。
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4月25日(木)10時から11時40分頃まで、今国会4度目の衆議院憲法審査会が開催されました。実質審議は3回目で、前々回、前回に続いて自由討議が行われました。

前々回は10人強、前回は6、7人の記者が取材に来ていましたが、今回は3、4人でした。それに比例するように報道量も減少し、当ブログでしばしば記事を転載させていただいている『東京新聞』のウェブサイトにもこの日の憲法審開催を報じた記事は見当たりませんでした。

今国会の衆院憲法審での自由討議も今回で3回目となります。今のところ改憲情勢に大きな変化は見られませんが、私たちは引き続き改憲絶対反対の立場から傍聴を続けて憲法審の動向を注視し報告していきます。
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与党の幹事がそろって広報協議会規程制定の必要性を主張

衆院憲法審での自由討議は、まず各会派を代表して1人ずつが持ち時間7分で発言し、続いて会長の指名を受けた委員が1人5分以内で意見を表明するというふうに進められるのですが、この日の各会派代表の発言では、与党の寺田稔幹事(自民)、北側一雄幹事(公明)が示し合わせたかのように国民投票広報協議会(以下、「広報協」と記します)の規程を早期に制定すべきだと強調しました。

寺田氏は「改憲の発議が行われるまでにクリアすべき重要な課題として、両院の議長が協議して定める広報協規程の制定がある。これなくして国民投票は実施できない」と指摘し、「今国会の会期中にも、広報協規程の条文化作業など広報協の権限や役割についての議論を加速させるべきだ」と述べました。
北側氏はさらに前のめりに、「この国会中に衆院憲法審として広報協規程、事務局規程、広報実施規程などの案を取りまとめ、参院憲法審に提案できるようにすべきだ」と主張しました。

なお、玉木雄一郎氏(国民)も、会派代表としての発言の最後に、「森英介会長(自民)に広報協の規程の整備を具体的に進めていただくようお願いする」と(この一言だけでしたが)述べたことを付記しておきます。
ぎもん

議員任期延長の緊急事態条項など改憲条文案の議論が停滞する中で、与党は今国会中の憲法審の到達目標を改憲の発議ではなくそれに備えた広報協規程の作成に置くこととしたのでしょうか。自由討議後半の自公の委員たちの発言を聞くとてんでんばらばらでそこまでの意思統一ができているようには見えませんでしたが、今後の動向に注目していく必要があると思います。

さて、現時点で衆院憲法審での議論の最大の焦点となっている改憲原案の起草委員会については、次に転載させていただく『産経新聞』の記事で報じられているように、設置の目処が立っていないようです。

自民求める改憲原案起草委、設置メド立たず 本気度に疑問の声も
『産経新聞』2024年4月25日

衆院憲法審査会は25日、自由討議を行った。自民党などが憲法改正原案を協議する起草委員会の早期設置を重ねて要求。しかし、立憲民主党は改憲に否定的な主張に終始した。立民抜きの起草委設置には踏み切らない自民の姿勢も背景にあり、実現は見通せていない。

「なぜ改正が必要かという話を繰り返すのではなく、どう改正するのかを具体的な条文で審議すべく、速やかに改正原案作成の起草委をスタートさせ、憲法審に提示いただきたい」
自民の山田賢司氏は憲法審で、大規模災害など選挙困難時に国会議員の任期延長を可能にする改憲原案作りを急ぐべきだと訴えた。任期延長の改憲には公明党や日本維新の会、国民民主党も理解を示している。

だが、党内や支持層に護憲派を抱える立民は反対論を展開し、膠着状態が続いている。
野党筆頭幹事の逢坂誠二氏(立民)は「(任期延長の)議論は非常に安易だ。とにかく何でもいいから憲法を変えればよいという議論に思われて仕方がない」と強調。過去の災害で選挙が困難となった実例に乏しいとして、改憲の必要性そのものに疑義を唱えた。

起草委を巡っては与党筆頭幹事の中谷元氏(自民)が重ねて設置を訴えているが、実現の目途は立っていない。憲法審終了後、中谷氏は記者団に「(立民から)全く答えがないという状況だ」と述べるにとどめた。

維新の小野泰輔氏は憲法審で「改憲をしないことが目的化している」と立民を批判。同時に、自民に対しても「(改憲を)本気でやるつもりがないならば、国民にはっきりと言うべきだ」と矛先を向けた。(末崎慎太郎)
* 引用、ここまで。

続いて『産経新聞』からもう1本、憲法審の翌日、26日に開かれた自民党憲法改正実現本部の会合について報じた記事を転載させていただきます。

憲法記念日前に自民が改憲意欲もベテランは「愛想がつきた」 膠着状態に党内から不満
『産経新聞』2024年4月26日

自民党の憲法改正実現本部(古屋圭司本部長)は26日の会合で、改憲実現へ精力的に取り組む方針を改めて確認した。ただ、主戦場となる衆参両院の憲法審査会では改憲原案作成の見通しすら立っていない。改憲論を主導すべき立場の自民に対しては他党に加え、足元からも不満が表面化しつつある。

「いよいよ大型連休明けには(国会発議に向けた)取り組みをしっかりしなければいけない」。古屋氏は会合冒頭、岸田文雄首相が今年秋までの自民総裁任期中の改憲を目指していることを念頭にこう述べた。
一方、5月3日の憲法記念日を前に方針を共有する好機だったにも関わらず、この日の会合では空席が目立った。幹部が報道陣に「(国会の委員会の影響で)あまり集まっていないが、憲法改正の熱意が急になくなったということではない」と〝釈明〟する場面もあった。

会合では改憲の機運が高まっているなどと報告された。しかし、野党第一党の立憲民主党は党内や支持層に護憲派を抱える。立民の参加にこだわる自民の意向もあり、改憲原案について協議する起草委員会の設置も決まっていない。
古屋氏は会合後、記者団に「丁寧にやっても参画しないならば(立民抜きの起草委設置を)決断せざるを得ない時期が来るかもしれない」との見方を示した。だが、古屋氏自身は憲法審の運営に影響を及ぼす立場にはない。

党内では膠着状態への危機感が広がっている。「憲法改正を速やかに実現する中堅・若手の会」の共同代表を務める和田政宗参院議員は16日の会合で、「(われわれが)推進力となって行動していく」と強調。議連幹部は「先輩方の苦労は分かるが、立民に及び腰な態度では改憲に理解を示す他党との歩調が乱れる」と懸念を口にする。

不満の声はベテランからも上がる。党や政府の要職を歴任した重鎮は、憲法審が個人の意見開陳にとどまり、起草委の設置も期待できないとして、「もうこんな自民党には愛想をつかした。やる気がないのだろう。いまの自民総裁のもとではダメだということだ」と吐き捨てた。(末崎慎太郎)
* 引用、ここまで。

完全には否定しきれない?強行突破の可能性

『産経新聞』も含めて改憲勢力の苛立ちをよく伝えているこれらの記事ですが(2本目の記事の最後、「吐き捨てた」という表現はなかなか見られないのではないでしょうか)、自民党総裁再選の目が消えつつある岸田首相が、次期総選挙で3分の2の勢力を割り込み改憲発議が遠のくことを恐れる自民党を中心とする改憲派の支持を取り付けて、改憲発議に向けて一か八かの強行突破を図ってくる可能性がないとは言い切れないと思います。

この日も小野泰輔氏(維新)は、「多くの会派が合意した改憲の内容を具体的な条文の形で提案すらできないのは異常としか言えない。改憲が必要だ、必要ないという溝が埋まらない以上、必要とする会派が提案する項目について議論を尽くし、決められた手続きに従って進めなければ永遠にこのようなことを繰り返すことになる」、「この問題を打開するには自民党が腹を決める以外にない。本気でやるつもりがないなら、国民に向けてそれをはっきり言うべきだ」と自民党に迫っていました。
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今国会から憲法審の委員となった牧義夫氏(立民)は、「私は、岸田首相の発言は自民党支持層に向けてのリップサービスだと理解している」と述べていましたが、警戒を怠ることはできません。

くすぶり続ける9条改憲論

この日の審査会でも、自民党の委員(山田賢司氏、山下貴史氏)は9条や自衛隊、自衛権をめぐる改憲論を開陳していました。党として毎回必ずこの問題に言及することを決めていて、その日の発言者に「今日はあなたの番ですよ」とでも申し渡しているのでしょうか。憲法審の現状を見るとこのテーマで強行突破を図ってくる可能性はほぼないと思いますが、自民党の党是であるだけにそれは杞憂だと切り捨てることもできないかもしれません。

また、赤嶺政賢氏(共産)はこの問題を地方自治のあり方とからませて意見を述べ、「辺野古新基地建設の強行は国に逆らう自治体は徹底的に排除するという強権政治そのものだ」、「安保3文書に基づき、地方自治体が政府との間で自衛隊が優先利用できる確認書を交わすことを条件として空港や港湾を整備する仕組みをつくったことは、地域振興のためにインフラ整備を求める自治体の要望につけ込む卑劣なやり方だ」、「政府が今国会に地方自治法改定案を提出し、国民の安全に重大な影響を及ぼすと判断すれば個別法に規定がなくても自治体に指示できる仕組みを導入しようとしていることは断じて容認できない」と批判しました。毎回沖縄の状況を引きながら重要な問題を提起し続けていることには敬意を表したいと思いますが、何分にも多勢に無勢でいつも言いっぱなしになってしまっているのは残念です。

最後にもう一度、牧氏(立民)の発言を紹介しておきたいと思います。
「防衛力の増強こそ抑止力の強化につながるという意見もあるが、私は現行の9条1項、2項の存在が何よりも戦争の抑止につながっていると思っている」、「自らは戦争をしないと謳っている国に武力攻撃を仕掛ければ国際社会で相応の非難、制裁を覚悟しなければならない。今回の敵基地攻撃能力の保持で、その抑止力の一部が損なわれることを大変危惧している」、「ロシアのウクライナ侵攻は大いに非難されるべきと考えるが、NATOの東方拡大とウクライナのNATO加盟の意思表示、つまりロシアに対する挑発がなければ未然に防ぐことも可能だったとの見方もある
特にウクライナ戦争に対する指摘には、(私は基本的に同意しますが)驚かされました。ほとんどの会派、議員がロシア非難に凝り固まっている国会で、立民の議員からこんな意見が聞けるとは思ってもいませんでしたので。
なるほどマーク

この日の傍聴者は前回より少し減って、30人強でした。委員の出席状況は前回より少しマシで、自民党は前半は4、5人、途中から5~6人くらいが欠席していました。他の会派の委員は一時的に席を外すことはありましたが、全員が出席でした。

今回の記事の表題は最初に「相変わらず」を付けただけで、前回と同じです。最後の一文も前回と同じく、「改憲は絶対に阻止しなければならないし、それは可能だという確信を持ってこれからも声を上げ続けていきましょう」とさせていただきます。(銀)


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