とめよう戦争への道!百万人署名運動

署名運動をとおして、改憲・戦争への道を許さない闘いを全国的に広げていきます。

2022年06月

6月4日(土)に、沖縄では久しぶりに辺野古のキャンプシュワブゲート前での「県民大行動」(オール沖縄会議主催)が行われました。
(6月5日付け琉球新報より)

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これに連帯して、東京でも新宿駅東口アルタ前での集会と新宿デモが行われました(呼びかけ:辺野古の海を土砂で埋めるな!首都圏連絡会議)。
170名ほどが参加し、新宿の街を行き交う人々に、「沖縄県知事が辺野古新基地建設の大幅設計変更申請を不承認としていること」、「これに対して防衛局が私人に成りすまして、国民の権利救済を目的とする『行政不服審査』を身内である国土交通相に請求したこと」、「そして、国土交通相が不承認を取り消すという茶番を演じて、知事に承認を迫っていること」、「知事はこれを拒否し、現在も辺野古工事は承認されていないままであること」、「ところが、防衛局は"承認されていない"辺野古工事を強行していること」などを訴えました。

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沖縄で辺野古新基地反対の県民投票の会の代表だった元山仁士郎さんも駆けつけてアピール。「政府は沖縄の声を聴こうとしていない。台湾有事をあおって軍事要塞化を進めている」と訴えました。
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「沖縄を再び戦場にするな!」
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参加者からのリレーアピールと、同時刻に開催されていた辺野古ゲート前県民集会の現場から、一坪反戦地主会の下地さんからの電話での報告などがありました。

集会後、新宿駅西口~南口へと、暑い日射しの中、新宿の街をデモ行進しました。
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一人でいろいろな楽器を鳴らしている人も!
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「国民の声を聴く」と言いながら、沖縄県民の声をまったく聴こうとせず、辺野古基地建設を強行し、南西諸島への自衛隊基地建設・ミサイル基地化を強行し続ける岸田首相は、5.23日米首脳会談で公然と日米軍事同盟の強化、核についても「拡大抑止」で対処すると宣言しました。アメリカの日本への核ミサイル配備計画に対し日本も積極的に対応するというのです。とんでもないことです。怒りがわきます。

ただ、この「怒り」が、「世論」になっていない現実があります。政府の情報が一方的に流され、これに対する反論が小さく、多くの人々に聞こえていないのだと思います。労働や生活が苦しい中で、いろいろな怒りの中に人々はいるのだけれど、そうした怒りと戦争反対の声がなかなか結び付かない現状があります。「知らない」「知らされない」現実が多すぎるのか。議論する場がなくなっているからか。

まずは、デモも、街宣も、派手派手にやっていきましょう!(S)



6月2日(木)10時から11時45分頃まで、今国会15回目の衆議院憲法審査会が開催されました。こどもの日を挟んで、定例日の開催が11週も続いています。
この日のテーマは「国民投票とインターネットの関わり」とされ、2名の参考人を招いて意見聴取と会派1人ずつの質疑が行われました。
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今国会では、これまで自民党の新藤義孝氏(与党側筆頭幹事)が取り仕切る形で、緊急事態下でのオンライン国会(憲法56条1項の「出席」の解釈)、緊急事態条項(国会議員の任期延長、緊急政令等)、安全保障(国防規定=自衛権・自衛隊の明記等)等について審議が行われ、9条の改定と緊急事態条項の新設が改憲勢力、とりわけ自民と維新にとっての本丸であることが明白になりました。前回は新藤氏が地方分権(参院選における合区解消)と教育の充実についても発言し、自民党の改憲案たたき台の4項目がひととおり議論の俎上に載せられました。

そして、その合間に、改憲手続法附則4条の「(昨年6月の)施行後3年を目途に……検討を加え、必要な法制上の措置その他の措置を講ずる」とされた事項のうち、「二」の「国民投票の公平及び公正を確保するための……事項」のごく一部にすぎないCM規制の議論だけが行われたかと思うと(しかも、その内容は民放連から参考人を招いての意見聴取と質疑で、3年前の5月の繰り返しでした)、「一」の公職選挙法並びの「投票に係る環境を整備するための……事項」のみを内容とする改憲手続法改正案が突然提出され、趣旨説明が強行されて審議入りするということがありました。参議院も考えれば今国会で成立する見込みがないにもかかわらず、改憲派に「やってる感」をアピールするためでしょう。

こうした経過を考えると、この日の「国民投票とインターネットの関わり」についての審議は、今国会での「国民投票の公平及び公正を確保するための……事項」の審議がCM規制の問題だけで3年前から少しも進んでいないということでは、目前に迫った参院選の世論対策上もさすがにマズいだろうという新藤氏らの判断で、この日を含み残された開催日があと2回だけという段階になって押し込んだものだと思われます。
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さて、この日の審議の内容ですが、今回も、憲法審の審議内容を毎回詳しく報じている『東京新聞』のウェブサイトに掲載された記事を転載させていただきます。

憲法改正の国民投票、ネットの偽情報どうする? 衆院憲法審で議論
『東京新聞TOKYO Web』2022年6月2日

 衆院憲法審査会は2日、改憲の是非を問う国民投票を行う際のインターネット上の情報発信のあり方を巡り、参考人質疑を行った。参考人は、フェイクニュースへの対策や、ファクトチェック(事実確認)活動を強化する必要性を訴えた。
 IT事業者らでつくる「セーファーインターネット協会」の吉田奨専務理事は、「世界的に民主主義の脅威となるようなフェイクニュースの横行が報告される中、日本も社会を構成する各機関が協力して偽情報に強い社会の実現を図っていく必要に迫られている」と指摘した。
 NPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」の楊井人文事務局長は国内のファクトチェックについて「量的にもまだまだ不十分」と説明。「国民投票までに、信頼できるファクトチェック専門メディア・団体が複数活動している状態が望ましい」と訴えた。(佐藤裕介)

◆発言要旨
2日の衆院憲法審査会での主な発言の要旨は次の通り。
【説明聴取】
吉田奨セーファーインターネット協会専務理事
 インターネットの出現は、マスメディアに限られていた言論公表の場を個人にもたらした。民主主義にとって非常に良いこと。ただ、表現の自由を大前提としつつ、他の法益との調整を要する場合がある。近年、民主主義の脅威となるようなフェイクニュースの横行が報告され、日本も偽情報に強い社会実現の必要に迫られている。国民投票や憲法改正の正確な情報(発信のため)の対策は民間事業者の自主的判断。一つの担い手や一つの策で、副作用なく問題だけを解決する手法はない。
楊井人文ファクトチェック・イニシアティブ事務局長
 国民投票がなされる場合、事実に基づいた議論ができるかどうかにおいて、ファクトチェックは重要な役割を果たせるのではないか。日本の活動もコロナ禍を契機に拡大傾向にあるが、諸外国のように専業で行う方はいない。量的にも不十分というのが実情だ。資金不足、人材不足というところがある。十分な経験や体制を持った組織が準備していなければ、いざとなったときに迅速かつ有効な検証活動は行えない。独立性を担保した上で、何らかの公的な支援の枠組みの検討も必要かもしれない。 
【各会派の主な意見】
新藤義孝氏(自民)
最近、AI(人工知能)を使ったプロファイリングやフェイクニュースの問題も出ている。憲法改正の国民投票の際、投票者が的確な判断を行えるよう、公平、公正かつ多様な情報が提供され、自由に取得できる環境を整えることが大切だ。
道下大樹氏(立憲民主)
EU(欧州連合)ではインターネット利用者の権利の保障や、健全なインターネット空間の環境整備などが非常に先駆的に進んでいるが、日本では追いついていない。国民投票とインターネットについてはまだまだ議論が必要だ。
足立康史氏(維新)
憲法改正国民投票について(インターネット)環境整備するというのはナンセンス。国民投票だけ先行させる類のものではない。大阪都構想の住民投票時は行政が作った偽情報を政党が拡散した。非常に日本のメディアのあり方は深刻だ。
国重徹氏(公明)
一般にネット空間の世界観は自由、放任、混沌と多様性こそが本質。国民投票でもインターネットを活用した投票運動が行われる。国民投票で生じる問題に適切に対応するためには、国内外のプラットフォーム事業者の協力が欠かせない。
玉木雄一郎氏(国民民主)
昔は言論、思想の自由市場という中で、できるだけ情報があればいいということだったが、今は情報があふれている。多様な情報にバランスよく接する機会をどう確保するかという観点が、情報過多時代には特に必要ではないか。
赤嶺政賢氏(共産)
国民が事実に基づく議論を行うためにも、政府が必要な情報を出すことが重要。森友問題では国有地売却の文書を改ざん、隠蔽し、国土交通省では基幹的な統計データが長期に不正算定されていた。改ざんや不正は民主主義の根幹を揺るがす。
北神圭朗氏(有志)
スマートフォンが普及すると、偽情報の整理が重要になる。審査会でも、規制に非常に慎重(な意見が多い)。偽情報の怖さにピンときていないのでは。欧米などでも民主主義の過程で偽情報が相当影響を及ぼしていることが散見される。
* 引用、ここまで。

この日の審議でまず指摘しなければならないのは、参考人の2人がインターネット上のフェイクニュース対策やファクトチェックに取り組んでいる民間団体(一般社団法人とNPO)の方であったために、インターネットCM等についての質疑がほとんど行われなかったことです。

この点については、道下大樹氏(立民)や國重徹氏(公明)が、それぞれの質疑の最後に、インターネット広告に関して知見を有している参考人を呼んで議論を深めてほしいと発言しましたが、そのとおりだと思いました。
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もちろん、この日の質疑で浮き彫りになった課題についても、なお検討を進める必要があります。例えば、ファクトチェックを担う組織に対して公的な支援が必要なのか否か、必要だとすればどのような形でそれを行うべきか等について、楊井参考人は「海外の事例等も研究しながら、ファクトチェックを行う団体の独立性が担保されることを前提として、仕組みづくりを検討していただきたい」と述べていました。

ただし、私はこのように書くことにジレンマを感じています。それは、こうした問題は憲法本体の議論とは別に分科会を作って検討すべきだという改憲勢力の主張を補強しかねないからです。しかし、万が一国民投票が行われる場合には、私たちの改憲反対の運動が不利にならない条件が確保されていなければなりません。
現在の国会の勢力図を考えれば、また7月の参議院選の結果次第では参議院も含めて憲法審査会の暴走が危惧されます。参議院選過程でも憲法審査会の現状を多くの人々に知らせていきましょう。そして今後も、事態の推移を的確に把握するように努めて運動を構築していくしかないと思いますが、大いに意見を交わして、ともにがんばっていきましょう。

この日はいつもより多い50人近くの傍聴者が集まり、記者も前回より多く5人ぐらい、カメラマンも最初は5人ほどいました。なお、今回もTVカメラは入っていませんでした。
議事が始まって25分ほど経つと、最初空席が目立っていた自民党も含めて欠席者がゼロになり、参考人を呼び出しているのだからこれが当然だろうなと思っていたところ、それもつかの間、すぐに自民党の委員が席を外すようになり、いつもと同じように常時5人前後が欠席という状態になりました。(銀)

衆議院議員面会所前(ここから入って荷物チェックを受けて迷路を通って、憲法審査会の委員会室に行きます。)
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今号の1-2面は、「戦時下の憲法審査会斬る」という事務局座談会の内容を掲載しました。「戦時下」と称したのは、変貌する憲法審査会が戦争に向かって突き進んでいるという現場で感じた傍聴者の危機感そのものを表わしています。
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アジア太平洋戦争後、日本は悲惨な戦争を再びくり返さないために、憲法9条に「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と書き込み、また、独裁政権をつくる「緊急事態条項」を憲法に書き込みませんでした。

ウクライナ戦争下で、また「台湾有事」という危機を使って、岸田政権はいまこれを強引に書き変えようとしています。戦争をやる軍隊と戦争をやる国家体制をつくるためです。それを「国民の生命と財産を守るため」「攻められないための国防」というウソで糊塗しています。
進められている自国の戦争準備に反対することこそ、戦争反対の大きな課題だと思います。
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4-5面は、「ウクライナ戦争に反対する世界の労働組合の闘いに学ぶ」ということで、世界各地の労働組合の声明や闘い肉薄してみました。
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ここでも、日本では少ないけれども、自国の戦争に反対する階級的な視点を持った「戦争」のとらえ方に接しました。

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『百万人署名運動全国通信』は、毎月1回発行されていています。
改憲・戦争反対の運動に役立つようにと毎回4-5面で特別企画(インタビュー記事)に取り組んでいます。A4で8頁、100円の小さな通信ですが、ぜひ定期購読をお願いします。

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このホームページの右枠内の「メッセージ」欄より、送り先をご連絡ください。


5月26日(木)10時から11時40分頃まで、今国会14回目の衆議院憲法審査会が開催されました。こどもの日を挟み、10週連続で定例日の開催が続いています。
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予算委員会と同時開催という異常な事態

まず、指摘しなければならないのは、この日は午前9時少し前から衆議院予算委員会が開かれ、補正予算案の審議が行われていたことです。予算委と憲法審が同時刻に開催されるという異常な(と私は考えますが)事態が生じたのは、2月10日、17日に続いて3回目でした。

これについて、国民の玉木雄一郎氏は、審査会前半の各会派代表としての発言の冒頭に、あろうことか「今日も予算委が開かれている中で憲法審が開かれているのは画期的であり、関係者の調整に心から感謝申し上げたい」と言ってのけたのです。しかもそれに続いて、「今日は地方自治について述べるが、論点がだんだん分散している気がする。一つ一つ論点を詰めて、具体的な結論を得て次に進むという運営をお願いしたい」とまで言い募りました。あの維新でさえ反対した今年度予算案に賛成して物議を醸し、27日の衆院予算委でも自公とともに補正予算案に賛成した党の代表の発言ですからいまさら驚きはしませんが、残念と言うだけでは済まされない、きつい言葉を使えば無惨(仏教の用語で、「戒律を破って心に少しも恥じることのないこと」)なことだと思いました。

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自民党の船田中氏も、後半の自由発言のやはり冒頭で、「予算委開会中にも憲法審が開かれたことはきわめて大事なことだと思う」と発言し、「中山太郎元会長が、憲法に関する議論は政局に左右されることなく落ち着いてやるべきだという理念を提示されていたが、ようやくそういう方向になってきた」と述べました。「今の憲法審の議論は政局に左右されまくっていて、ちっとも落ち着いていないんですけど、あなたは別世界にいるのですか」と言ってやりたいと思いました。

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そんな中で、この事態を明確に批判したのは、立民の吉田はるみ氏だけでした。氏は自由発言の冒頭で、「4月28日の憲法審で国民投票改正案が付託された際の強引なやり方に抗議する」と述べたのに続いて、「本日、予算委と同時間帯に開かれることはまことに遺憾であり、強く抗議する」と発言しました。これを聞いてその場では意を強くしましたが、よく考えてみると、これを指摘したのは吉田氏だけで、本当は心もとなく感じるべき情勢なのだなと思い直しています。

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なお、衆議院のホームページに掲載されている「委員名簿」を見ると、憲法審(2月10日現在)と予算委(4月26日現在)の委員は自民8人、立民1人、維新1人の計10人が重複しています。

この日のテーマは「地方自治その他の論点」とされ、「その他の論点」について述べる委員が少なくありませんでした。
今回も『東京新聞』のウェブサイトに掲載された記事を転載させていただきます。

衆院憲法審の要旨 自民「参院選で合区は解消する」 立民「権限見直す議論を」
『東京新聞TOKYO Web』2022年5月26日

衆院憲法審査会が26日に開かれ、参院選の「合区」問題などについて議論した。各会派代表による意見表明の要旨は次の通り。

新藤義孝氏(自民)
国民の代表を選ぶ選挙区の設定は、投票価値の平等の追求と、地域の民意の反映とのバランスを考慮することが必要だ。自民党の(改憲4項目の)たたき台素案では、基礎的な地方公共団体と、これを包括する広域の地方公共団体を明確に位置付ける。参院選で広域の地方公共団体の区域を選挙区とする場合、改選ごとに少なくとも1人を選挙すべきとし、(隣接県を1つの選挙区とする)合区は解消する。選挙区の設定は総合的に勘案し、人口のみに偏らないことにしている。
奥野総一郎氏(立憲民主)
自民党改憲案が成立すると、合区はなくなるが(投票価値の平等を追求するため)定数を増やす憲法上の義務が生じる。
定数を増やさずに、都道府県単位の選挙区を残して合区を解消することはできない。参院の性格を明確にし、権限を見直す議論が必要になってくる。合区の解消は必要だ。そして、地方の声を積極的に国会に送るべきだと考える。だが、一票の格差を無視するべきではない。合区見直しを本当にやろうとするのであれば、統治機構の改革が論点になる。
小野泰輔氏(維新)
わが党の憲法改正原案では、基礎自治体を包括する広域自治体として道州制を明記している。地域主権を掲げ、現行憲法に記されていない、「地方自治の本旨」の内容として、(地方行政を住民の意思に基づいて行う)住民自治と(国から独立して地方行政を行う)団体自治も明記している。法律で道州が所管すると定めた事項については、道州が定める条例が国の法律に優先する旨規定している。
吉田宣弘氏(公明)
憲法改正における国民投票は、
国民の自由な意思に基づかなければならない。現代情報化社会では、意図的に流されたフェイクニュースの存在、人工知能(AI)の登場で、国民の自由意思の前提たる人権が侵害されかねない。政治的に利用された場合、選挙や国民投票の公正性が脅かされ、民主主義に悪影響を及ぼす恐れがある。人権保障の観点から、ネット広告は無制約というわけにはいかない。
玉木雄一郎氏(国民民主)
わが党は地方自治に関する改正案の素案をまとめている。現行92条の「地方自治の本旨」から導かれる概念、住民自治と団体自治を明文で規定する。(首長と議会議員を選挙で選ぶ)二元代表制を一律に強制するのではなく、自治体が多様な組織形態を採用できるようにする。自治体が課税自主権を有することを特記し、地方債などの固有財源、国の財政調整制度も明記している。
赤嶺政賢氏(共産)
日米安保体制の下、自衛隊は米軍の軍事戦略を補完するために存在している。敵基地攻撃能力保有の検討も米国との調整の下で進められている。ウクライナ危機に乗じて、9条改憲が議論されているが、主権国家として自衛隊を明記し統制するというのは幻想にすぎない。米軍の存在を抜きに、憲法に自衛隊を明記するだけで自衛権の範囲や防衛力の質は変わらないなどという議論は成り立たない。
北神圭朗氏(有志の会)
国と自治体の役割を憲法上明らかにすることも必要だ。
国は外交、国防、マクロ経済運営、社会保障などを担当し、地方は都市計画など公共財提供を担当するなどだ。仕分けの順序として、小さい自治体からできることは任せ、できないことをより大きな自治体、それでもできない仕事を国が担う方法が地方自治の理念に沿っている。この「補完性の原理」は憲法に明示することが求められる。
* 引用、ここまで(太字は引用者)。

自民の「たたき台」4項目が議論の俎上に

この日、新藤義孝氏(自民、与党側筆頭幹事)は、最初に「今国会の憲法審では、緊急事態時における憲法56条1項の『出席』概念に始まり、緊急事態条項、国民投票法改正、安全保障・9条など様々な論点について討議してきた。本日は自民党が提案している合区解消・地方公共団体及び教育の充実について、私の意見を申し上げたい」と述べました。
つまり、毎週のように憲法審が開かれるうちに、今回の新藤氏の発言で、自民党の改憲4項目「たたき台」がすべて議論の俎上に載せられる形になってしまったということです。自民党としては、参院選後の情勢を踏まえて改憲の議論をいかようにも展開していける素地を作ったということであり、今後、いくら警戒しても警戒しすぎということにはならないと思います。

もう一つの与党、公明党は、吉田宣弘氏が「地方自治」ではなく、上掲の記事で紹介されている発言のほか「国民投票の課題であるCM規制、特にインターネット広告の問題」などについて意見を表明し、「インターネット事業者を国会に招いて意見を聞く機会を設けてほしい」と要請しました。
また、後半の自由討論で発言した北側一雄氏は、まず、最高裁が全員一致で在外国民に最高裁裁判官の国民審査について審査権の行使を認めていないのは違憲だとした判決を取り上げ、憲法審で議論すべきだと主張しました。続いて合区解消の問題にも触れましたが、「一票の価値の問題も重要だ」と強調することで、暗に自民党の議論に簡単には乗れないという立場を示唆していたように感じられました。

ところで、「教育の充実」については、各会派代表の発言の中で新藤氏と小野泰輔氏(維新)が取り上げましたが、上掲の『東京新聞』の記事では全く触れられていません。それは、議論の水準があまりにも低かったからです。
例えば、後半の自由発言の中で、教育族として知られる下村博文氏(自民)は、「OECDの調査では、日本の総教育支出のGDP比は38カ国中30位で、先進国の中で下位にある」と述べ、「憲法26条に教育の無償化を明記することで、国が人への投資を行う意思を示す象徴的なものとなり、スピード感を持って改革を進めることが重要であるということだ」と述べましたが、ほとんどの国民は「教育費が低水準なのは長く政権を担ってきたあんたらの責任だろ、改憲なんて悠長なことを言ってないでサッサと予算を増やせよ」と思うのではないでしょうか。
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今回の報告の最後に、おそらく憲法審で初めて発言の機会を得た本庄知史氏(立民)の意見を紹介したいと思います。氏は、「その他の論点として『安全保障』について発言する」として、
安保法制、とりわけ集団的自衛権の行使は、第一に長年にわたって積み重ねられ確立した憲法解釈を、政府・与党内の閉じられたプロセスのみで議論し、国会で説明することなく180度転換したこと、第二に限定的とされた集団的自衛権が実際は限定的でなく、地球の裏側でも経済的な理由でもグアムに飛んでいくミサイルでも行使可能というのが政府解釈であることから、憲法違反の可能性が高い」
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「自民党の9条改正案の解釈は、新藤幹事と石破委員の見解が食い違っているし、新藤氏は自民党案で自衛隊の法的な位置づけは現在の憲法解釈と全く同じで必要最小限度の自衛力行使という解釈は引き継ぐと言いながら、安全保障は本質的に相対的なもので必要最小限度の自衛力はわが国に対する脅威の内容によって変わると述べるなど、矛盾に満ちている」
「ウクライナと日本を同列に論じるのは間違いであり、安全保障も憲法改正も事実に基づく緻密で冷静な議論を行うべきだ」
などと述べました。
昨年10月31日の総選挙で初当選した議員ですが、今後の発言に注目していきたいと思います。
 
この日の傍聴者は40人ほどで前回よりやや少なく、記者は2、3人、カメラマンも2、3人で、今回もTVカメラは入っていませんでした。
いつもと同じで自民党の委員の空席が目立ち、最初のうちは5人前後だった欠席者が、終盤では10人以上に増えていました(銀)


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