3月24日(木)、今国会6回目の衆議院憲法審査会が10時から11時30分まで行われました。先々週まで4週連続開催の後、1回休んで一息つけたのもつかの間、再び2週連続の開催です。前日は参議院でも憲法審査会が開かれたので、2日連続の憲法審となりました。
それもあってか傍聴者は約25人、記者やカメラマンは10人ほどで、今国会の憲法審では一番少なかったと思います。委員の出席率もいつもより低く、自民党はだいたい4、5人が、立憲民主党も1人が欠席していました。
この日の審議は、冒頭、森英介会長(自民)が「緊急事態条項を中心に集中討議を行う」と述べて始まりました。
まず、前半の各会派1名ずつの意見表明の概要を、NHKのウェブサイトから転載させていただきます。
緊急事態発生時の対応 憲法に規定必要か 衆院憲法審で集中討議
『NHK NEWS WEB』2022年3月24日
衆議院憲法審査会は、緊急事態への対応について集中的な討議を行い、緊急事態発生時に、政府に一定の権限を集中させたり、国会議員の任期を延長したりすることを、憲法に規定する必要があるかどうかをめぐり、各党が意見を交わしました。
自民党の新藤義孝氏は「緊急事態が発生した際に、国民の生命や財産を保護するため、政府に一定の権限を集中させ、迅速かつ適切な行動をとれるようにしておく必要がある。国会機能の維持という観点では、国会議員の任期延長が必須だ」と述べました。
立憲民主党の中川正春氏は「総理大臣に権力を集中することを目的に議論を進めることは間違っており、いかに基本的人権を保障し、権力の暴走や乱用を防ぐかを主眼に進めていくべきだ。憲法の条文ではなく、関係法令をブラッシュアップしていくべきだ」と述べました。
日本維新の会の足立康史氏は「緊急事態にかかる論点のうち、議員任期の延長については、おおむね認識は一致しているのだから、憲法審査会として直ちに結論を取りまとめて、次の論点である内閣が、国会の審議を経ずに法律と同じ効力を持つ政令を定めることができる『緊急政令』の議論を深めていくべきだ」と述べました。
公明党の北側一雄氏は「緊急事態だからといって、白紙委任的な『緊急政令』の制度を設けることは、国会の責任放棄につながる。参議院の緊急集会があることを理由に議員任期の延長は必要ないという意見には賛成できず、延長には憲法改正が必要だ」と述べました。
国民民主党の玉木雄一郎氏は「緊急事態条項がない中、あいまいなルールのもとで、行政府による恣意的な権力行使で憲法上の権利が制限されうる状態こそが危ない。議員任期の議論を急ぎ、特例延長の規定を創設すべきだ」と述べました。
共産党の赤嶺政賢氏は「コロナ禍で憲法を変えなければいけない事態は起きておらず、改憲の議論を進めることは反対だ。内閣による『緊急政令』などは国会の機能を奪い、権力乱用を防ぐ三権分立を停止するものであり、容認できない」と述べました。
* 引用、ここまで。
もう1人、有志の会の北神圭朗氏が会派を代表して意見を述べた後、委員各位による発言が行われました。
以下、この日の審議で私が注目すべきだと感じたポイントを2つ紹介したいと思います。
まず、立民の2人の委員が「施行後3年を目途に…必要な法制上の措置その他の措置を講ずる」とされている附則第4条の議論を優先させるべきだと指摘したことです(附則第4条の施行日は昨年6月18日ですから、もう9か月以上が経過しています)。
中川正春氏は、上記のNHKの記事で紹介されている発言の前に、CM規制とインターネットに関連する課題を最優先で議論すべきであり、立民は当該法案のたたき台を用意していると述べました。また、奥野総一郎氏は、「附則第4条で、現行の国民投票法では公平性、公正性が確保できないという疑義が呈されているのだから、それが解決されるまでは憲法改正の発議はできないと理解している」と主張し、「ウクライナで今ネットの情報戦が戦われている」が、「今の国民投票法ではこういう事態は想定されていない」ので、「仮に憲法改正が発議されたとして、外国政府の干渉等があった場合にどうするのかを考えておかなければならない」。「SNSやメディアを使ったフェイクニュースや世論への働きかけを各国でどう規制しているのか、わが国ではどうすべきかを、有識者を呼んでこの場で議論していただきたい」などと提案しました。
中川正春氏は、上記のNHKの記事で紹介されている発言の前に、CM規制とインターネットに関連する課題を最優先で議論すべきであり、立民は当該法案のたたき台を用意していると述べました。また、奥野総一郎氏は、「附則第4条で、現行の国民投票法では公平性、公正性が確保できないという疑義が呈されているのだから、それが解決されるまでは憲法改正の発議はできないと理解している」と主張し、「ウクライナで今ネットの情報戦が戦われている」が、「今の国民投票法ではこういう事態は想定されていない」ので、「仮に憲法改正が発議されたとして、外国政府の干渉等があった場合にどうするのかを考えておかなければならない」。「SNSやメディアを使ったフェイクニュースや世論への働きかけを各国でどう規制しているのか、わが国ではどうすべきかを、有識者を呼んでこの場で議論していただきたい」などと提案しました。
次に、憲法に緊急事態条項を設けることについて、そもそも立法事実があるのか否かという問題です。上記のNHKの記事で紹介されているように赤嶺政賢氏(共産)は「コロナ禍で憲法を変えなければ対応できないという問題は起きていない」と指摘しましたし、北側一雄氏(公明)は「ウクライナの国会は今も厳然と機能し、その活動を連日発信している」と述べました。
また、新垣邦夫氏(社民)は「現在のわが国の情勢において緊急事態条項の創設に具体的な立法事実は存在しない」として、以下のように詳細な主張を展開しました。
また、新垣邦夫氏(社民)は「現在のわが国の情勢において緊急事態条項の創設に具体的な立法事実は存在しない」として、以下のように詳細な主張を展開しました。
「現行法では、災害対策基本法等々によって、自然災害を想定して一定の要件で国への権力の集中と財産権の制限等が認められており、災害関連の法制度は十分に整備されている。2015年に日弁連が東日本大震災の被災自治体の首長に対して実施した調査では、市町村が国への権力集中を求めていないことが明らかになり、憲法が災害対策の障害にならなかったという回答も96%に達していて、市町村は災害を理由にした憲法改正の必要性を認めていない。」
「フランス、ドイツ、イギリス、アメリカの4カ国のうち災害やテロを理由に国家緊急権を定めているのはドイツだけで、コロナ対策でもフランスやドイツは憲法の緊急事態条項は危険だとして法律で対応している。」
「衆議院の任期満了後に大規模な自然災害などが発生した場合でも参議院の緊急集会は開催できるとする憲法学者は多く、開催できないという学説もあるがそれは任期満了の期日までに必要な措置(解散)を講ずることが法律上可能だからという主張だ(注:憲法第54条の「衆議院が解散されたときは……内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めつことができる」との規定を、解散だけでなく任期満了の場合にも適用できるか否かをめぐって、専門家の間でも見解が分かれています)。そもそも任期満了後の総選挙の事例は1976年の三木内閣の1例しかない。」
さて、今回の報告でも、最後に日本維新の会の委員(この日は足立康史氏)のトンデモ論、それも憲法審とは関係のない発言を紹介しないわけにはいきません。
「ウクライナのゼレンスキー大統領は、昨夕の演説で日本企業のロシア市場からの撤退を求めた。日本はサハリン2から撤退し、原発の再稼働に舵を切るべきだ。」
「日本維新の会は、3月15日に高浜1号、2号、美浜3号の再稼働を萩生田経産相に提言した。シェルをはじめ英国の企業は1か月前に撤退する方針を表明しており、三井物産、三菱商事にも撤退を促し、内閣主導で原発を再稼働すべきだ。」
「日本維新の会は、3月15日に高浜1号、2号、美浜3号の再稼働を萩生田経産相に提言した。シェルをはじめ英国の企業は1か月前に撤退する方針を表明しており、三井物産、三菱商事にも撤退を促し、内閣主導で原発を再稼働すべきだ。」
ロシアのウクライナ侵攻で原発の危険性があらためて注目され、今秋退任する原子力規制委員会の更田豊志委員長も原発へのミサイル攻撃の被害想定について「審査の中で検討も議論もしていない。仮定すらしていない」と述べているというのに、いったい何を考えているのでしょうか。
仮に今後も毎週定例日の開催が続くとするとあと10回もの審議が行われることになりますから、衆院の憲法審ではテーマを絞って議論を深めようという流れになっていくと思います。
私たち百万人署名運動は、改憲反対の署名用紙をバージョンアップしました。改憲勢力の目論見を打ち砕くため、ともに闘っていきましょう。(銀)
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