許すな!憲法審査会

「とめよう戦争への道!百万人署名運動」ブログを改めて、改憲の憲法審査会動向をお伝えしていきます。百万人署名運動は、「改憲・戦争阻止!大行進」運動に合流しました。

2021年06月

6月9日(水)午後1時からの参院憲法審査会では、3時30分ごろ国民投票法案の問題点の審議が尽くされないまま、会長が「これで審議は終結」と宣言。休憩後、維新の会から修正案が提案され、改正案への賛成・反対意見表明などのあと、「維新修正案」の採決(否決)、「国民投票法改正案」の採決(可決)が行われた。いとも簡単で、機械的な儀式のようだった。

傍聴者は「こんな採決は認められない!」「恥を知れ!」と叫んだ。
国会の外では、「採決弾劾!」のシュプレヒコールが何度も叩きつけられた。
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それにしても、この日の憲法審査会は、傍聴していて本当にいやになるようなものだった。「国民投票法改正案」の発議者(自民・公明・維新・国民の衆議院議員8人ほど)と「修正案」発議者(立憲の衆議院議員2人)らが手前にズラリと並び、「なんだろう」と思っていたら、前回(6/2)の参考人質疑を踏まえて再度発議者らに疑問点を聞くというものであった。しかし、主要には立憲の修正案についての自公・維新らの「懸念」を払拭するためにのみ行われたような陰険なものだった。

具体的には、「広告規制などについて施行後3年をめどに法制上の措置を講じる」と付則に盛り込んだ立憲の修正案について、その審議と並行して「憲法本体の議論や憲法改正案の発議は可能である」ということを確定せよ!という維新の会のしつこい追及(休憩後にはその修正案を出す)であった。さらに維新はメディア規制等については「小委員会を設置せよ」と求めた。改憲案審議を促進するためだ。しかし何と、それらに対し、立憲が全面的に認めるという姿を私たちは目の当たりにした。
前半の審議の中では、小西洋之議員(立憲)が奮闘したが、最後は共産党以外はみんな修正された国民投票法改正案に賛成した。

こんな国会に、私たちの未来を渡してはならない。
私たちは、この怒りを忘れてはならない。(S)
      ◆    ◆    ◆
前日8日の午前中、私たち百万人署名運動は参議院議長と参院憲法審査会会長あての<憲法に「自衛隊」明記と「緊急事態」新設に反対します>という請願署名1万9155筆の提出行動に立った。
1-署名用紙

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東京の連絡会を中心に、立憲・社民の参院憲法審査会委員の部屋を訪ね、請願署名の紹介議員依頼と憲法審査会で改憲案づくりに入らなよう要請した。

憲法審委員では、小西洋之議員(立憲)、石川大我議員(立憲)、福島みずほ議員(社民)が紹介議員を引き受けてくれた。その他に、伊波洋一議員(沖縄の風)、高良鉄美議員(沖縄の風)も快く引き受けてくださった。
(石川大我議員の秘書さんへ)
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(福島みずほ議員の秘書さんへ)
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(伊波洋一議員へ、なんと、この日唯一の議員本人に受け取っていただきました!)
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下記は、この日に届けた「要請書」です。
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6月6日(日)午後1時から新宿駅東口アルタ前で「改憲とめよう!菅たおそう!」とリレーアピールがありました。改憲・戦争阻止!大行進の主催です。2時からは約300名で都庁に向かって「東京五輪中止!いのちを守れ!」のデモへ。
アルタ前では、小雨がパラつく中でしたが、駆けつけた労働者・学生・市民の訴えに、多くの通行人が耳を傾けていました。
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リレートークからいくつか紹介します。
最初に「大行進」呼びかけ人の高山俊吉弁護士から。
「菅政権は国民の命とか健康は爪の先ほども考えていない。彼らが考えているのは一部の人たちの儲け話だ。そういう政治をやっている。彼らは無為無策ではない。"改憲国民投票法改正"を強行し改憲をしようしている。台湾海峡の戦争を始めようとしている。そこを見抜く力が私たちにはどうしても必要だ。菅自公政権のデタラメさ。野党も"落としどころ"を決めた翼賛政治をやっている。私たちが主人公なのだ。改憲と戦争を許さない私たちは各地で、世界で心を一つにして、一緒に行動しよう。」

続いて入管法改悪反対を闘っている方から。
「1982年の入管法成立以来、悪法はどんどん改悪されてきた。難民認定は昨年1%を越えたがわずかに44人。日本はスリランカ女性のウィシュマさんを殺した。この日本を変えるための行動が求められている。私たちも黙っていては殺される。入管法改悪反対行動に高校生や大学生、女性たちも参加した。ビルマの青年たちは立ち上がっている。社会を変えるために一人一人が主人公になって行動を開始しよう。」

労働組合として「大行進」運動を呼びかけている動労千葉からも発言。
「JR東日本は5月に現業機関における柔軟な働き方なるものを提案してきた。"業務の融合、柔軟な働き方、フレキシブルな職場"なんて言って、鉄道業務の分社化攻撃を強めている。JRは『1日目に駅業務、2日目に企画業務、3日目は乗務業務、4日目は訓練と除草や除雪業務、5日目は駅業務と生活サービス』ということを打ち出している。駅業務だって、運転業務だつて、清掃だって、仕事して奥が深い労働だ。労働者として団結して闘うことだ。」
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さらに医療労働者の女性から。
「オリンピック反対を医療現場から訴える。私の務める病院でもクラスターが発生した。しかしPCR検査はしない。それをやってもっと陽性者が出たら大変と言っている。私は労働組合の委員長として、PCR検査を病院労働者全員にやることを訴えた。オリンピック選手には毎日PCR検査をやるから安心安全の大会になると言っているが医療崩壊は放置だ。医療職場で働く労働者は団結して職場を守ることが必要。オリンピック強行は反対!」と怒りの発言。

教育労働者は、「都教委に対して、オリンピックに子どもたちを観戦動員することは許されないと要請した。観戦で確実にコロナ感染の危険が高まる。真夏の暑いなかで熱中症も起こる。都教委は年間35時間のオリパラ教育をやりその集大成としてオリンピック観戦を教育課程にくみこむことを強制してきた。オリンピックは国威発揚の場だ。都教委は教育を利用している。かつての学徒動員と同じだ。地域からも反対の声を届けてほしい」と。

市民からも。
「暮らしや命がおびやかされいていて腹が立つ。人間としての尊厳、労働者としての誇りが奪われている。政治が腐敗し、悪法が次々と成立していく。労働者の40%が非正規だなんてとんでもないこと。パソナの利益はなんなんだ。憲法27条はどこに行った。社会を変えなければいけない。」

宗教者からも飛び入り発言。
「私の主張はいたって簡単、怒っています!!。なぜか、いのちを粗末にするからです!」
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広島大学の学生から。
「広島では先日若者たちが原爆と戦争と平和について討論会をした。若者たちはふあっとした平和では納得しない。広島では『黒い雨』判決に対してを県と市が控訴した、これのどこが平和なんだ。コロナの中でオリンピックを強行する、これのどこが平和なんだ。コロナで学生も収入が激減して苦しい。このどこが平和なのか。そんな平和はいらない!」

「大行進」呼びかけ人の森川弁護士から。
「5月31日、東京地裁で<全学連大会を暴力で阻止しようと襲撃してきた警視庁公安刑事の行為を違法と認め、損害賠償せよ>という判決をかちとった。報道では"いい裁判官に当たっていい判決が出た"かのように書いてあるがそんなことはない。ああいう判決は私たちが裁判官をして書かせるんだ。裁判所が勝手に書くわけはない。
 裁判所に判決を任せられないように、政府に政治を任せることができない。入管法改悪を阻止したのはみんなの力だ。それなのにデジタル庁とか土地規制法で私たちを監視しようとしている。私たちの未来を彼らに任すわけにはいかない。私たちが政治をやるべきだしやれる!」
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まだまだアピールは続きました……。

すっかり、雨も上がって、いよいよ新宿デモへ出発です。
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区役所通りに出ると、右翼の街宣車が5~6台くらいも道路に滞留していて、大音響でオリンピックをやめろとはなんだとか、わめいていました。

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デモ隊は右翼の大音響に負けじと、オリンピック反対、オリンピック費用を医療にまわせ、都立病院をまもれ。独法化させるなどのシュプレヒコールをあげて、デモをやり抜きました。 
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都庁前では、小池都知事に届けと、ひと際大きく「オリンピックは中止だ、中止!」と。(T)

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6月2日(水)13時3分頃から、今国会4回目の参議院憲法審査会が開催されました(13時開会の予定でしたが、審査会の前に開かれた幹事会の議論が長引いたようです)。ちょうど開始されたとき、外での抗議のシュプレヒコールが聞こえました。

今回は、まず4人の参考人が改憲手続法改正案について15分ずつ意見を陳述し、その後各会派の委員1人ずつ計7人が質疑を行いました。質疑の持ち時間も15分だったようですが少しずつ超過して、意見陳述と質疑が終了したのは16時頃でした。

参考人が退席した後さらに委員間で日本国憲法および改憲手続法をめぐる諸課題について意見交換が行われ、持ち時間3分で15人が発言して、審査会は16時47分頃散会となりました。
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自民と立民の幹事長間で改憲手続法改正案と修正案を今国会で成立させるとの合意がなされて、衆院で可決され参議院に送られて以降メディアの関心は急速に薄れたようで、この日開会時に記者席に着いていたのはわずか5人、テレビカメラは1台だけと、前回よりもさらに少なくなっていました。ただし、傍聴者は前回を上回る40~50人が集まりました。この日も年配の女性が多く、皆さんの熱意には頭が下がります。

この日の審議の内容について、今回も『東京新聞』のウェブサイトに掲載された記事(写真も)を転載させていただきます。多くのメディアが報道量を減らしている中で、丁寧な記事を無料で配信し続けていることに敬意を表したいと思います。

緊急事態条項創設「合理的な理由ない」 参院憲法審査会で識者ら議論
『東京新聞TOKYO Web』2021年6月2日
 
 参院憲法審査会は2日、改憲手続きを定めた国民投票法改正案を巡る参考人質疑と自由討議を行った。憲法に詳しい大学教授と弁護士の計4人が参考人として出席し、うち2人は自民党が新型コロナウイルス禍を契機に創設を強く主張し始めた緊急事態条項に異議を唱えた。

立憲民主党が推薦した名古屋学院大の飯島滋明教授は「ドイツやフランスには緊急事態条項があるが危険だとして使わず、法律で対応している」と紹介。日本では緊急事態宣言に伴う休業要請などで事実上私権が制限されているとした上で「緊急事態条項によってさらに私権が制限されることに果たして国民が納得するのか」と疑問を呈した。

共産党が推した福田護弁護士は、私権制限を規定する災害対策基本法などが既に整備されているとして、「政府にさらに権力を付与する緊急事態条項が必要だという合理的な理由はない」と否定した。
自民推薦の近畿大の上田健介教授と、日本維新の会が推薦した大東文化大の浅野善治教授は緊急事態条項に関する意見を表明をしなかった。
一方、議員による自由討議で自民の山田宏氏は「今回のようなパンデミック(世界的大流行)に対し、政府がスイッチを入れて全法令が非常事態のルールに変われば、速やかに国民の生命や生活を守る手だてが講じられたはずだ」と緊急事態条項の重要性を訴えた。

自民、立民両党は今国会での改正案成立で合意しており、自民は9日の審査会で審議を終えた後、採決する方針。(山口哲人)
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2日に参院憲法審査会で行われた参考人質疑の要旨は次の通り。
【参考人意見陳述】
上田健介・近畿大教授 憲法改正国民投票では、有権者が投票しやすい環境を整備することが望ましい。地方公共団体の立場からも、国政選挙の場合とできるだけ平仄を合わせることは、事務の混乱を防ぐために合理的だ。憲法改正権者は国民であり、国会は発議を行うにすぎない。国会議員は国民の分断をあおるようなやり方ではなく、国民が憲法を巡る諸論点について冷静に熟議することを可能とするよう、できるだけ良質な情報を提供する責務がある。

飯島滋明・名古屋学院大教授 人を選ぶ選挙と憲法改正の是非を問う国民投票には制度的、趣旨に根本的違いがある。単純に同じ投票ということで横並びにしては、投票環境や利便性の悪化をもたらす可能性がある。洋上投票や不在者投票に関しては、投票できない人がそのままになっている可能性がある。そうであれば最高裁の判例に照らしても、憲法違反状態が放置されている状況での国民投票は憲法違反になる可能性もある。改正案には問題が多すぎる。

浅野善治・大東文化大教授 立憲主義とは、権力者の権力行使を憲法に従わせることで国民の自由を守ると説明されるが、現在の国民がその意思に従って今の憲法を検証し、改正が必要なら、常に改正できるようにしておくことが極めて重要だ。憲法は国会に唯一の立法機関の地位を与えているが、憲法改正の発議は立法活動とは全く違った機能だ。改正案の審議と憲法改正の実質的な審議とは全く性格が異なる。そこは分離をして、国会が憲法改正の審議をすることが重要だ。

福田護弁護士 現行の憲法改正手続法は、根本的な部分に欠陥があり、その対処がなされない限りは公平公正な国民投票が保障されず、実際に適用されるべきものではない。特に国民に極めて影響力の大きいテレビ・ラジオCMも含む有料広告は賛成派、反対派の間で、その量などに圧倒的な格差が生じる極めて不平等な事態が現出する。選挙の投票率が大きく低下している現状では、根本規範である憲法改正の正当性を基礎づけるに足る賛成票がないままに改正される恐れも感じる。

【質疑】
古川俊治氏(自民) 私は自民党だが、自民党の改憲原案がそれほど良いとは思っていない。もっと使いやすい憲法のほうが良いと思うが、いかがか。
浅野氏 日本国憲法が七十数年改正されていないということがあるが、国民の使い勝手が良い憲法である必要はある。ただ、憲法はその時の政治情勢でころころ変わることは避けなければならない。
福田氏 私自身は、憲法が日常生活で意識をされずに、社会生活が送られている状況はむしろ望ましい状態だと思う。

江崎孝氏(立民) 国民投票法改正案は憲法違反の疑いが強い。このままで憲法審議や発議が可能か。
飯島氏 投票ができない国民がいることは、最高裁の判例に照らしても憲法違反。こんな状況で改憲発議をした段階で憲法違反になる可能性が否定できない。
江崎氏 衆参で改正案に関する熟議がされていると考えるか。
上田氏 熟議にはなっていないのではないか。ただ、憲法本体の議論と手続きの在り方についての議論は次元が違う。改正案はテクニカルな話なので、そんなに問題はない。
伊藤孝江氏(公明) 英国の憲法と日本の憲法で1番違うのは、成文化されているかどうか。英国は判例や慣習を含めて憲法として捉えられている。
上田氏 英国は成文はないが、大事な価値観が共有されているように外部からは見える。日本は(成文の)憲法があるが、その奥にあるような基本的価値観が共有されているのだろうかというところは、逆に心配なところもある。

浅田均氏(維新) 制定権力者である国民の評価をまだ1度も得ていない現行憲法をどう評価するか。
上田氏 (衆参両院の)3分の2の発議で国民投票が1度も行われていないのは、要件が厳格であることもあるが、結果として国民が(現行憲法を)認めてきているのではないか。
浅野氏 今の国民は今の憲法を受け入れていると基本的には思う。ただ、緊急事態条項が必要だというような議論が起きてくることは、憲法的に見ても「こう考えた方がいいのではないか」という国民の声が上がってきているとは思う。

浜野喜史氏(国民) 改正案付則の広告規制に関しては、なるべく自由にという考えと、一方で規制が必要という考えがあるが、合意できる一致点があるとすれば。
飯島氏 外国政府の影響が生じるようなことはまずい、というあたりは(各会派で)合意できないのか。

吉良佳子氏(共産) 自民党は、新型コロナウイルス対策の失政を憲法のせいにして、緊急事態宣言とは別物の緊急事態条項をちらつかせ、改憲と一体で国民投票法改正案の議論を進めている。この状況をどう思うか。
飯島氏 ドイツやフランスは緊急事態条項があるが、危険だとして使わず、あえて法律で対応している。(日本で)これ以上、私権の制限をすることに国民が果たして納得するのか。
福田氏 緊急事態宣言も国民の権利侵害の危険が指摘されている中で、緊急事態条項がさらに必要だという議論に進むだけの合理的な理由がない。災害対策基本法などで、政府が国民を義務づける体制が整備されているのに、さらに憲法上の緊急事態条項が必要だとは思わない。

渡辺喜美氏(みんな) 改憲原案の提案には衆院100人以上、参院50人以上(の賛成)という要件がある。原案提案は党議拘束を廃止してもいいのではないか。
浅野氏 人数制限を設けることには反対だ。憲法改正案の審議は政治のルールと切り離されたところで議論すべきだ。
*引用、ここまで。

この日の参考人の意見陳述と質疑は約3時間にわたって行われましたが、上掲の記事では重要な論点がよく押さえられています。ただ、引用だけで済ませるのは申し訳ありませんので、1点だけいい意味で気になった発言を紹介したいと思います。

それは、吉良佳子氏(共産)の「投票機会の縮小を止めることこそ重要で、現在の公職選挙法並びの改正で本当にいいのかが問われている」という質問に対する福田護氏の回答中の下記のような指摘です。

「刑務所における受刑者の国民投票権と選挙権が現在は違う制度になっているが、受刑者に選挙権がなくて本当にいいのか、今回の議論からさらに進んでもう一度考え直してみる機会にしてもよろしいのではないかと思う。」

なお、蛇足ですが、今回の参考人のうち上田健介氏と浅野善治氏は、2015年に安保法制の制定が強行される過程で『朝日新聞』が憲法学者ら209人にアンケートを行った際、下図のような回答を寄せており(「https://www.asahi.com/topics/word/安保法案学者アンケート.html」より転載しました)、(とくに浅野氏は)憲法問題について学会の通説とはかなり異なる見解をお持ちであることを付記しておきたいと思います。

質問1


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質問3

参考人の意見陳述と質疑の後行われた委員間の意見交換では、松沢成文氏(維新)が前回と全く同じ議論(維新として立民が提出した修正案の附則第4条の修正案の提出を考えている。憲法審査会に小委員会を設置して憲法本体の改正の議論と改憲手続法の審議を同時進行で進めるべきだ。)を繰り返したこと、この日自民から発言した4人から愚にもつかない話(北朝鮮による拉致被害者に対する人権侵害は今も続いている=歴代最長の在任期間を誇った安倍前首相は何もできなかったではないか=、憲法が70年以上にわたり全く改正されていないのは極めて不自然だ、人権は重要だが個人の権利ばかり強調されすぎることには違和感を感じる等々)を聞かされたことに、つくづくうんざりさせられました。

ただ、最後に発言した石川大我氏(立民)が、おそらく自民党への皮肉を込めてでしょう、「憲法を尊重するのであれば、LGBT差別解消法をつくることこそ大切だ」と述べてこの日の審査会を締めくくる形になったことで、少しですが気を取り直すことができました。

この日、審査会に先立って行われた幹事会で、「与党側は、来週9日に審査会を開いて、改正案の質疑を行ったあと採決したいと提案し…野党側は、質疑には応じる一方で、採決の提案は持ち帰って検討したいという考えを伝え、引き続き協議することになりました」と報じられています(『NHK NEWS WEB』)が、16日の会期末を目前にして、与党側が譲歩することはありえないと思います。

前回の傍聴記と同じことを繰り返すことになりますが、引き続き改憲手続法改正反対の声を上げていきましょう。仮に法案が通ったとしても、いま粘り強く運動を続け共闘を広げていくことが、その後の改憲絶対阻止の闘いに結びついていくはずです。(銀)

とめよう戦争への道!百万人署名運動の「全国通信」283号(6月1日発行)の紹介です。

コロナ感染拡大に対し、政府は補償もないまま緊急事態宣言を繰り返し、労働者市民に命の危険を強いながら「オリンピックはやる」と言い張り、猛然とワクチン接種に突き進んでいます。
他方、国会ではデジタル監視独裁法案や重要土地規制法案など人権侵害・戦争体制づくりの悪法が次々と強行されています。コロナ禍で問題を解決できないのは国のいうことを国民が聞かないからだと言わんばかりに、憲法審査会で「憲法に緊急事態条項を入れるべき」と言う自民党ら議員のなんと多いことか!?
こうしたコロナ禍に乗じた反動の強まりの中でこそ、「五輪中止、改憲反対」を貫いて声を上げていきましょう!

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2-3面は、今年の5.15沖縄闘争の報告です。

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4-5面は、こうした改憲・戦争情勢の背景にある「日米安保問題」です。
4月の日米首脳会談・共同声明で「台湾海峡の平和と安定の重要性」が強調されました。このことは何を意味するのか、軍事問題に詳しい半田滋さんにお聞きしました。

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★「全国通信」購読のお願い

『百万人署名運動全国通信』は、毎月1回発行されていています。
改憲・戦争反対の運動に役立つようにと毎回4-5面で特別企画(インタビュー記事)に取り組んでいます。A4で8頁、100円の小さな通信ですが、ぜひ定期購読をお願いします。

購読料は、カンパも含めて年間3000円/1口の賛同金としてお願いしています。
「とめよう戦争への道!百万人署名運動」はこの賛同金で運動を継続しています。ご理解いただきご協力をよろしくお願いいたします。

●賛同金の振込先(郵便振替)
   口座番号  00150-1-410561
   加入者名  百万人署名運動
 *備考欄に「賛同金として」とお書きください。

★なお、ご希望の方には、宣伝紙をお送りします。
このホームページの右枠内の「メッセージ」欄より、送り先をご連絡ください。


5月26日(水)13時から今国会3回目の参議院憲法審査会が開催され、冒頭で「参考人の出席を求め、その意見を聴取する」ことが決定された後、前回19日に趣旨説明のみ行われた改憲手続法改正案とその修正案について質疑が交わされました。なお、参考人の意見陳述とそれに対する質疑は、次回6月2日の憲法審で実施される予定となっています。
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この日の質疑は、各会派から1人ずつ、計7人の委員が順次発言し、改正案の提出者6名と修正案の提出者2名(以上、衆議院議員)に加え、政府参考人として出席した総務省自治行政局選挙部長の計9名が回答するという形で進められました。委員全員がそれぞれの持ち時間20分を使い切りましたので、質疑が終了するまで140分強を要し、15時25分ごろ閉会となりました。

今国会での成立が確実視されているためかメディアの関心は低かったようで、開会時に記者席に着いていたのはわずか6~7人、テレビカメラは2台だけでした。ただし、傍聴者はこの日も30人以上が詰めかけました。(この段落の文章は前回の傍聴記と一字一句同じです。)
5.26憲法審

この日の審議の内容について、今回も『東京新聞』のウェブサイトに掲載された記事を転載させていただきます。

改憲発議可否巡り自民・立民が対立 CM規制付則が焦点に…参院憲法審
『東京新聞TOKYO Web』2021年5月27日
 
国民投票法改正案に関する質疑が行われた参院憲法審査会=国会で
 参院憲法審査会は26日、改憲手続きを定めた国民投票法改正案の審議を本格化させた。法施行後3年をめどにCMや運動資金の規制についての検討を行うと明記された付則を巡り、自民党などは結論が出る前でも改憲案発議は可能だと主張した。一方、立憲民主党は改正案が成立しても国民投票運動の公平性が担保されないため、発議は事実上できないとの見解を示し、認識の違いが浮き彫りとなった。

◆立民「公正な手続きを」
 衆院憲法審査会で採決した際、付則を盛り込む修正案を提出した立民の衆院議員、奥野総一郎氏は改憲発議に関して「民意がきちんと表れる公平、公正な手続きをしなければならないのが憲法上の要請だ」と強調。CM規制などの扱いを検討している間は発議できないと指摘した。

◆自民「原案審議も発議も可能」
 これに対して、同じく提出者として答弁した自民の衆院議員、中谷元氏は「法律的に全く言及されておらず、改憲原案の審議も発議も可能だ」と述べた。公明党や日本維新の会も同調した。
 維新の参院議員、松沢成文氏は質疑で、付則の措置が講じられるまでの間、発議が可能かどうか統一見解を、次回の会合までに示すよう求めた。
 自民、立民両党は6月16日が会期末の今国会中に改正案を成立させることで合意しており、自民は6月9日に採決する意向だ。(山口哲人)

◆参院憲法審の要旨
 26日の参院憲法審査会での国民投票法改正案に関する質疑の要旨は次の通り。

磯崎仁彦氏(自民)修正案は(CM、運動資金の規制などに関して)法施行後3年をめどに検討する条項を(付則に)加えた。3年とした理由は。
中谷元・衆院議員(法案提出者・自民)あくまでもめどで、可及的速やかに一定の結論を出すことが求められている。
山花郁夫衆院議員(修正案提出者・立民)速やかにとの思いは一緒だが、CMについて議論しようと話があってから既に3年が経過している。慎重に審議するという意味で現実的な期間ではないか。
那谷屋正義氏(立民)修正案の付則の解釈に隔たりがあり、国民に混乱をもたらしている。付則の意味は。
奥野総一郎衆院議員(修正案提出者・立民)CM規制をはじめ国民投票法にかかる憲法上の要請が放置され、憲法本体議論だけが進むことを危惧している。本体議論を妨げるものではないが、まず付則に定める措置をきちんと議論して結論を出すべきだ。
北側一雄衆院議員(法案提出者・公明)検討条項を設けることに全く異論はない。3年と言わず速やかに議論を進めたい。本体論議も進めていくべきだ。
西田実仁氏(公明)選挙で新型コロナウイルス感染症の療養者の郵便投票を認める特例法の議論がされている。国民投票法でも改正が必要ではないか。
逢沢一郎衆院議員(法案提出者・自民)コロナ禍での投票機会の確保は憲法上の権利保障のための喫緊の課題だ。特殊事情を踏まえた特措法を用意していると理解している。すぐに想定される選挙が念頭で、国民投票に導入するかどうかは別途の議論が必要だ。
松沢成文氏(維新)付則の措置が講ぜられるまでの間、国会は憲法改正原案の審議と改正の発議はできるのか、できないのか。
中谷氏 法律的にはいずれも可能だ。
山花氏 法制上はいま(中谷氏の)答弁があった通りだが、ルールの公正性が担保されていない。実際に発議してもその結果に対する信頼性は揺らぐので政治的には難しいのではないか。
松沢氏 修正部分の解釈が一本化されていないと審議できない。統一見解を持ってきてほしい。
林芳正・参院憲法審会長 幹事会で協議する。
矢田稚子氏(国民)最低投票率の導入には賛否両論があるが、今回見送った理由は。
船田元・衆院議員(法案提出者・自民)国民投票法制定時の議論では、憲法96条が許容する以上の過重要件となる疑義がある、ボイコット運動誘発の恐れがあるなどの観点から採用しないことで決着がついたと記憶する。
山添拓氏(共産)菅義偉首相は国民投票法を改憲議論の「最初の一歩」とした。改憲論議を進める呼び水としてこの法案を提出したのか。
中谷氏 そうではない。より多くの国民が参加して、できるだけ幅広く合意が得られるような手続きをということで、この憲法改正の手続き法を審議してきたということ。第一歩というが、さまざまな項目についていま憲法で議論しなければいけない。緊急事態(条項)も課題の一つだ。
渡辺喜美氏(みんな)この3年間で世の中は激変した。デジタル庁もスタートする。ネット投票解禁の議論はなかったのか。解禁できない理由は。
船田氏 ネット投票は今回の検討対象にならなかった。場所、時間を問わず投票できるということで投票環境の飛躍的な向上が期待できる一方で、セキュリティーの脆弱性、本人確認、なりすましなど、投票の公平性、公正性を確保する点でまだ課題が多い。
*引用、ここまで。

この日の質疑のポイントは上掲の記事のタイトルにあるとおり、「改憲発議可否巡り自民・立民が対立 CM規制付則が焦点に」ということで、その内容はこの記事に簡潔に整理されていますが、以下、例によってとくに気になった発言をいくつか紹介していきたいと思います。

まず、このところ改憲派の急先鋒として自民党の委員ですら呆気にとられるような主張を繰り返している日本維新の会所属で参議院憲法審査会幹事の松沢成文氏の発言から。

「日本維新の会は修正案の提出を考えている。それは(立民が提案した)修正案の付則に2項を設け、『前項の規定は、国会が同項に規定する措置が講ぜられるまでの間において日本国憲法の改正原案について審議し、改憲を発議することを妨げるものと解してはならない』という規定を追加するものだ。」

「憲法審査会における審議を充実し、加速させるため、憲法審査会規定の第7条(『憲法審査会は、小委員会を設けることができる。』)にある小委員会を設置し、今回の国民投票法改正後のさらなる審議は小委員会に委任すべきだ。これによってCM規制などの審議と憲法審査会全体による憲法改正に向けての審議が同時並行で分業的に進められる。」

愛知県知事リコール運動における署名偽造で次期衆院選の立候補予定者が逮捕されたり、場当たり的なコロナ対応で大阪の医療体制を崩壊させたりと、維新勢力の不祥事や政策能力の欠如を示す事例は枚挙にいとまがありませんが、その維新が率先して改憲派を牽引する役割を担おうとしているのです。橋下徹、松井一郎と安倍晋三、菅義偉の各氏がしばしば会食してきたことからもわかるように、権力にすり寄ってその先兵役を務めようとする維新勢力の動向には最大限の警戒と徹底的な批判が必要だと思います。
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次に、国民民主党所属でやはり憲法審査会幹事の矢田稚子(わかこ)氏の発言です。氏は、上掲の記事で紹介されているように最低投票率の問題を提起した後、CM規制に触れ、さらに電子投票の導入促進について質問しました。

「国民投票において、利便性の向上による投票率の向上、在外の日本人や単身赴任者、学生らの投票の便宜の向上、迅速な集計や投票所の設置・運営コストの削減等、電子投票のメリットは大きい。」

「インターネット投票を進めていくべきだと思うが、国民投票は、一般の投票で地域の代表を選ぶのと違って、住んでいる地域、住民票のある地域と連動しなくても、日本全国どこで投票しても齟齬のない投票であり、まずは国民投票で考えるのが先決ではないか。」

「デジタル関連法案が成立したいまこそ、マイナンバーに紐付けされた全国共通の投票入場券を配布することによってどこでも投票できるような仕組みができないか。マイナンバーカードを活用すれば、どこの投票所に行っても投票ができるはずだと思う。」

ここまで無邪気にマイナンバー(カード)を持ち出すとは、本当に驚きました。こういった認識には、権力の凶暴さや新たな技術のはらむ危険性などに対する警戒感を持たない国民民主党の体質、あるいは弱点が、如実に表れていると思います。ちなみに、今国会で国民民主党はデジタル改革関連法案にも重要土地規制法案にも賛成しており、矢田稚子氏はデジタル法案の参院本会議採決時に賛成討論を行っています。衆議院における山尾志桜里氏と同じように、参議院では矢田氏が改憲論議に積極的に関わっていくことになるのか、要警戒だと感じました。

もう一人、最初に質疑に立った立憲民主党の那谷屋(なたにや)正義氏の発言、と言うより警句と言った方がいいかもしれませんが…を紹介しておきましょう。氏は参議院憲法審査会の野党側筆頭幹事で会長代理でもあります。

「憲法改正というのは、そんなに可及的速やかに行うものかどうなのかということも議論が必要なのではないかと思っている。」

「これは私ではなく世論が言っている部分だが、憲法を守らない国会議員が憲法改正の発議をする権利があるのかという指摘がある。」

当たり前のことを述べただけかもしれませんが、読者の皆さんにとってちょっとした口直しにはなったでしょうか。
なるほどマーク
改憲手続法改正案・修正案については自民・立民の幹事長間で今国会中に成立させるとの合意が交わされており、参議院憲法審査会では坦々と審議が進められています。前述のとおり6月2日には参考人質疑が行われることが決まっていて、与党は9日の採決を提案していると報じられています。ただ、会期末までの日程に余裕がないことも確かであり、今後何らかの事情で国会が混乱し憲法審、あるいは本会議での採決が流れることが絶対にないとは言えません。

引き続き改憲手続法改正反対の声を上げていきましょう。仮に法案が通ったとしても、いま粘り強く運動を続け共闘を広げていくことが、その後の改憲絶対阻止の闘いに結びついていくはずです。(銀)


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