許すな!憲法審査会

「とめよう戦争への道!百万人署名運動」ブログを改めて、改憲の憲法審査会動向をお伝えしていきます。百万人署名運動は、「改憲・戦争阻止!大行進」運動に合流しました。

2020年12月

2017年12月7日、沖縄の緑ヶ丘保育園に米軍ヘリの部品が落ちてきました。幸い屋根の一部にあたって怪我人はありませんでしたが、あと50センチずれていたら子どもたちにあたっていたかもしれず、背筋の凍るような出来事でした。

その事故から3年目の今年の12月7日、東京・文京区民センターで緑ヶ丘保育園のみなさんとの交流集会が開かれ、90名が参加しました。緑ヶ丘保育園のお母さんたちの活動を広く知らせようと「チーム緑ヶ丘1207」活動報告DVDの販売拡大に取り組んできた改憲・戦争阻止!大行進実行委「チーム緑ヶ丘1207」支援プロジェクト(百万人署名運動も参加)の主催です。
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コロナ感染が広がる中でオンライン映像での交流会となり、支援プロジェクトのメンバーにとっては初めての試みでしたのでどうなるか不安でしたが、何とか沖縄と映像がつながり有意義な交流集会となりました。

集会では、最初に緑ヶ丘DVDを短くまとめた「チーム緑ヶ丘1207のあゆみ」が上映され、その後、緑ヶ丘保育園と映像を繋げて、神谷園長やお母さん方からのお話をお聞きしました。
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上の「なんでおそらからおちてくるの?」というのは事故当時に子どもたちが発した言葉だそうです。雨しか落ちてこないはずの空から怖いものが落ちてきたのです。神谷園長は私たちに、これに私たち大人はどう答えることができるでしょうかと問いかけました。そして、パワーポイントを使いながら、3年前の12月7日の部品落下事故のこと、目の前の普天間基地のこと、お母さんたちの活動のことなど詳しく説明してくださり、雨以外に何も落ちてこない平和な空にするために、一緒に声を上げて行動を起こしていきましょうと呼びかけました。
(下の写真は、12月8日の琉球新報記事より。緑ヶ丘保育園側にて)
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神谷園長やお母さんたちのお話の中で、印象的だったことをいくつか紹介します。

ドーンという衝撃音、屋根の上で跳ね上がる物体を何人もの人が目撃、同時刻に園上空をヘリが飛んでいる写真もある、近くの収音機にも音が収まっている。それなのに、米軍は翌日の8日に、落下物はCH53の部品だと認めましたが、部品は全部回収しており飛行中の機体からは落としていないと言い張りました。政府も「ああ、そうですか」と言わんばかりの状況。これには大変驚かれ、おかしいと思われたそうです。

そうした中、神谷園長とお母さんたちは動き出します。子どもたちに怪我がなかったからよかったではすまされない、だんだんワジワジしてきたさーって声が上がり、3日後の緊急父母会で、全会一致で嘆願書作成、署名活動が始まっていきました。嘆願書の要望は、事故の原因究明及び再発防止、原因究明までの飛行禁止、米軍ヘリの保育園上空の飛行禁止の3つです。
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事故から6日後に、今度は保育園から1キロほどにある普天間第二小学校の校庭に7.7キロのもの(ヘリの窓枠)が落ちました。事故当時、下の娘さんが緑ヶ丘保育園に通い、息子さんが普天間第二小学校に通っていたお母さんは「怒りともどかしさと言いようのない感情の涙があふれて止まらなかったです。私たちはすぐに子どもたちを守りたいって声を上げました。回れるところをすべて回って要請して、保育園上空を飛ばないでとお願いしました」と語りました。
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神谷園長は、つらい体験として、保育園に誹謗中傷のメールが次々に送られたり、朝早くから嫌がらせの電話がかかってきたことを話されました。内容は、自作自演だろうとか、保育園は基地がつくられる前からあったのかとか、好き好んでそこに住んでいるんだろうとか、ひどいものばかりでしたが、神谷園長はその言葉に、普天間基地がどのようにつくられたか知らない人たちだと思うと言われ、普天間基地の歴史について触れられました。

神谷園長が示された1944年9月の米軍が上空から撮影した写真には普天間基地はなく、美しい琉球松の並木道が写っていました。1945年4月1日、米軍が沖縄島に上陸。まもなく米軍は琉球松を伐採していきます。そして、滑走路がつくられていくわけです。戦争が終わって、収容所から解放され、疎開先から沖縄に帰ってきた宜野湾の人が戻ってきたらそこは滑走路になっていたのです。しかたなくみんな自分の土地の近くに住むしかなく、滑走路を中心に宜野湾復興がなされていったのです。神谷園長もこの宜野湾市に生まれ育ってこられました。

現在は約10万人の宜野湾市です。
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ちなみに、普天間基地は東京ドームの約103個分の大きさとのこと。宜野湾市の1/4を占めています。

神谷園長は、「米軍は何のために1700メートル級の滑走路をつくったのか、沖縄戦の後に本土決戦を考えていたわけでしょう、そのために居座ったわけでしょ。でも、普天間飛行場は使われず、1962年までほとんど使われてなかったんです。普天間飛行場が使われていくのは復帰後です。復帰後に岩国や岐阜など大和から基地や海兵隊が来ていろいろ活発になっていったのです。」と言われました。私たちはこうした事実についてもっと知っていかなければならないと思いました。

もう一つ、飛行ルートのこともデタラメさも衝撃でした。
2004年1月に普天間基地のすぐ近くにある沖縄国際大学に大型ヘリの墜落事故がありましたが、その後、普天間飛行場の飛行ルートが新たに整備されて公表されるようになったそうです。その中では、緑ヶ丘保育園の上空も普天間第二小学校の上空も飛行ルートではないのです。しかし、米軍の飛行ルートを観測している沖縄防衛局のデーターでは、あたかも飛行ルートであるかのようにこれらの上空を飛んでいるのです。現実にはこの飛行ルートがまったく守られてないということです。

神谷園長、お母さんたちが口を揃えて言われていたことは、「事故から3年たったけれども、状況は何も変わっていません」ということでした。むしろ、外来機が多くなったり、騒音がひどくなったりで状況はひどくなっているそうです。
この集会当日も保育園の上空をF15ジェット機が2機続けて飛んで行ったそうで、その映像も流されました。保育園の建物の中でも耳をふさがないと痛くてたまらないほどの轟音と、怖いよという声が聞こえました。
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現在、小学校4年生の息子さんと6歳の娘さんがいるお母さんは、「チーム緑ヶ丘1207」の活動でこの3年間子どもたちに寂しい思いをたくさんさせてしまったという思いを語りながら、「国が動かないから、子どもたちとの時間を削って私たちが動かないといけない。3年たった現在でも、子どもたちは毎日毎日危険にさらされています。なので、私たちも立ち止まることはできません。」と言われました。その思いが胸に突き刺さりました。

神谷園長は、嘆願書をもってお母さんたちと沖縄防衛局、宜野湾市長、宜野湾市議会、外務省沖縄事務所、米国領事館、沖縄県庁に要請に行き、さらに東京の政府にも要請に行ったことを報告されました。しかし、いまだ保育園の上空を米軍機が飛び続け、いつ、なにが落ちてくるかわからない状況です。
神谷園長は「県知事選、県民投票、沖縄で何度民意を表しても解決しないということは、これは沖縄の問題ではないということです。これは大和の問題です」と言われました。そして、「皆さんの立っている場所から声を上げ行動を起こしてほしい」と訴えられました。

東京の参加者からも、羽田低空飛行に反対している皆さんや、横田基地に反対して上映会運動に取り組む方などから連帯の発言があり、最後に神奈川大行進呼びかけ人の野本三吉さんが「チーム緑ヶ丘1207」の皆さんの思いを受け止め、一緒に声を上げていくことを伝えました。
交流集会おわりに、東京と沖縄でエールの交換!
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●緑ヶ丘保育園のお母さんたちから、事故から3年目を迎えるにあたってユーチューブで講演会を配信しているとのお知らせがありました。ユーチューブの「チーム緑ヶ丘1207更新中」というチャンネルで検索してください。12月12日の20時からは、このチャンネルで「ことりフェス2020」をオンラインで開催するそうです。ぜひ、ご覧ください。(S)


12月3日(木)、先々週、先週に引き続き衆議院憲法審査会が開催され、傍聴してきました。1国会で3回開催されたのは昨年11月以来(このときは海外調査の報告とそれを受けた質疑が行われました)、3週連続して開催されたのは2017年5~6月以来(このときは地方自治、新しい人権、憲法第1章「天皇」をテーマとして4週連続で開催され、国会全体では他のテーマを含めて7回の審議が行われました)のことでした。
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■今回も遅れた開催の告知

前回と同じく今回も日程の決定が前日2日の夕方にずれ込み、あわてて傍聴券取得の手続きをすることになりました(傍聴には衆議院議員の紹介が必要で、審査会当日、秘書の方が議員面会所まで傍聴券を届けてくださいます)。

前回の傍聴記(12月1日付)で「次の定例日、12月3日(木)の開催をめぐっても、また同じことが繰り返されるのではないでしょうか。『もういい加減にしてくれ!』と、声を大にして言いたいと思います。」と書きましたが、残念ながらそのとおりになってしまいました。
ただ、この日は前回、前々回とは違って、検温や手荷物検査などが早めに始められたため、開会予定時刻前に委員室に入ることができました。また、前回はコロナ対策のため1席ずつ間隔を空けるように促されたのですが、なぜか今回はそうした規制はなく、ほとんどの傍聴者が席に着くことができました。国会傍聴のあり方をめぐってもコロナへの対応は迷走しています。

■維新、改憲手続法(国民投票法)の質疑を行わず

この日のテーマは前回と全く同じでした(それぞれの審議時間まで前回とほぼ同じでした)が、どういうわけか順番が入れ替わり、まず、「日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案」の審議が30数分行われ、次に「日本国憲法及び憲法改正国民投票法を巡る諸問題」についての自由討議が60分ほどありました。

まず、前半の改憲手続法(国民投票法)の審議ですが、各会派1名ずつの委員と議員立法の提案者である中谷元、船田元、逢沢一郎(以上自民)、井上一徳(国民、改正案提出時は希望の党)、北側一雄(公明)、馬場伸幸(維新)の各氏との間で質疑が行われました。
なお、日本維新の会は、すでに議論が尽くされ残された論点はないとの立場からでしょうか、質疑を行わず、質問がなかった馬場氏にも発言の機会はありませんでした。

審議の内容については、以下、『東京新聞』の記事を転載させていただきます。

【国民投票法改正案 与党は来年1月採決を主張 衆院憲法審査会】
衆院憲法審査会は3日、改憲手続きを定める国民投票法改正案の質疑を行った。実質審議は先月26日に続いて2回目。駅や商業施設に「共通投票所」を設けることなど7項目の見直しに関し、与党は各党におおむね異論がない内容だとして、来年1月召集の通常国会での採決を主張。立憲民主党は期日前投票の時間を短縮できる規定など問題点を挙げて慎重審議を求めた。

立民の本多平直氏は、改正案で期日前投票所の開始時刻の繰り下げや終了時刻の繰り上げを認めていることについて、同様の規定がある一般の選挙では「投票時間が短くなる事例もある」と指摘。改憲の是非を問う重要な国民投票で、民意を示す機会を制限できるのは不適切と強調した。共産党は「一方的に与党が採決することは認められない」と訴えた。

これに対し、採決を容認している国民民主党の山尾志桜里氏は「住民の生活実態を一番知っている自治体が柔軟に時間を設定することで投票しやすくなる」と反論。与党は「質疑はほぼ尽きている」と速やかに結論を出すよう求めた。

この日は質疑の後、自由討議も行われた。前回の審議で日本維新の会が提出した質疑打ち切りと採決を求める動議の扱いは、幹事会で引き続き協議することになった。(川田篤志)
* 引用ここまで。

■自由討議は多くの発言希望者を残して時間切れ

後半の自由討議ですが、冒頭、細田博之会長(自民)が「発言を希望される委員はネームプレートをお立てください」と呼びかけると同時に、20数人の委員がそれに応じました。
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多くの委員がネームプレートを立てています(山花郁夫氏のホームページから転載)

以下、意見表明の機会を与えられた委員の発言内容を要約した『東京新聞』の記事を転載させていただきます。

【衆院憲法審査会 各党の自由討議詳報】
 衆院憲法審査会で3日行われた各党による自由討議の要旨は次の通り。
大串博志氏(立憲民主)日本学術会議における首相の会員任命拒否の根拠として、憲法15条1項の公務員選定における国民の権利という規定を利用して政府から語られた。どこをどう読めば任命拒否できるという解釈に至れるのか理解できない。このような乱暴な憲法の利用、悪用自体が大問題だ。
石破茂氏(自民)審査会を小委員会に分けて、47都道府県、できれば全小選挙区で議論すべきだ。運営について幹事で議論し、合意を得て、とにかく国会が最高法規である憲法の改正に真摯に臨んでいる姿勢を見せることが何より必要だ。
大口善徳氏(公明)国民投票法についてはCM規制のほか、投票日当日の運動の可否などさまざまな論点が提起されている。論点ごとにかみ合った議論をして結論を出していくには、幹事会の下に検討会を設置して議論を集約してから審査会の審議に反映させていくことも検討に値する。
足立康史氏(維新)国民投票法改正案について日本維新の会は先週の審査会で、ただちに採決するよう動議で訴えた。(年明けに)通常国会が開会されれば遅滞なく採決すべきだ。
山田賢司氏(自民)憲法56条は(本会議の定足数について)総議員の3分の1の出席を求めている。「出席」は現行では(議場に)存在すること。感染症が広がった時、国会が機能しない状態になってはいけない。憲法の文言を変える必要があるのか審査会で整理していく必要がある。
山花郁夫氏(立民)(与野党の)筆頭幹事間の協議で(投票の利便性向上など改正案の)7項目の質疑はちゃんとしたいと言ってきた。きょうの(法案審議での)質疑はかみ合っていないと感じた。引き続き議論が必要だ。
本村伸子氏(共産)国民投票は国民誰もが自由に意思を表明し、運動が自由にできることが原則でなければならない。現行法は公務員や大学教員から幼稚園の先生まで、教育に携わる全ての人の国民投票運動を禁止している。主権者である国民の意思を最大限くみ尽くすことに反する。
山尾志桜里氏(国民民主)憲法で緊急事態の時に行政権の強化を認める場合は、国会の関与方法や期間、延長の可否、司法救済などの手続きやルールを事前に決めておくのが肝だ。
中谷元氏(自民)平和安全法制が成立して5年。あれだけ真剣に集団的自衛権や自衛隊の対応を議論した。野党のあの時の熱気と憲法への問題意識はどこにいったのか。憲法9条は多く変遷を遂げて現在に至っている。審査会で9条も含めてしっかり議論すべきだ。
奥野総一郎氏(立民)(9条を含む自民党の改憲)4項目を前提に議論を急ぐ姿勢は審査会の創設理念に反する。今は一致団結してコロナ禍に対処すべきだ。国民投票法改正案を採決したら、ただちに4項目提案に移ることはないと、はっきりさせてほしい。
新藤義孝氏(自民)法案審査をしようというものはその手続きを進め、次の議論については論点整理をして新たに法案を出せるように審査会をやる。一方で憲法本体の議論は粛々とやっていく。
* 引用ここまで。
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一読しておわかりいただけると思いますが、論点は本当に多岐にわたっています。しかも審査会の閉会時にはまだ20人ほどの委員が発言を希望してネームプレートを立てていました。自公、維新、国民の委員たちは具体的な改憲案の議論に入るべきだと主張しますが、改憲派の立場から見ても、まだまだその段階に至っていないことは明らかだと思います。

なお、上記の記事で紹介されているのは(紙幅に限りがあるので当然ですが)各委員の発言の一部です。たとえば『NHK NEWS WEB』では、大串博志氏(立憲)の発言として「結論を得る大前提は、静かな環境の中で議論をすることであり、そのためにはCM規制の議論も並行して行われることが必須だ」という部分を紹介していました。もう1人例を挙げれば、足立康史氏(維新)は上記の発言の後、今回も大阪都構想(大阪市廃止構想)の住民投票をめぐって暴言を吐いていました。

今回私がいちばん驚いたのは中谷元氏(自民)の発言で、これは上記の記事に紹介されています。「平和安全法制」と名付けた戦争法を強行成立させた後、憲法53条に基づいて野党が要求した臨時国会の召集を黙殺しつづけたのはあなた方ではないか、それなのに「野党のあの時の熱気と憲法への問題意識はどこにいったのか」と言ってのけるとは、厚顔無恥もはなはだしいと言わなければなりません。
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■国会外での改憲勢力の動き

さて、前回のブログ記事で紹介した改憲派のイベントですが、『時事ドットコム』に以下のように報じられていました。注目すべきは、国民民主党・山尾志桜里氏の参加です。

【改憲論議求め保守派集会 与党と維新・国民が参加】
憲法改正を目指す民間団体「美しい日本の憲法をつくる国民の会」は2日、東京都内で集会を開き、衆参両院の憲法審査会で活発な議論を求める決議をまとめた。改憲に積極的だった安倍晋三前首相の退任後も機運を維持するのが狙い。自民、公明、日本維新の会、国民民主の与野党4党の国会議員約40人が参加した。

自民党の衛藤征士郎憲法改正推進本部長は、国民投票法改正案の早期成立を目指す考えを強調。改憲については「議論が煮詰まった暁には国民に提案し、その意思を問うことは当然だ」と訴えた
国民民主党の山尾志桜里憲法調査会長も「現在の国際情勢に合う形で、憲法9条の規範力を回復する改正を検討すべきだ」と表明。「憲法を政局から切り離したい」とも語った。
* 引用ここまで。

 また、上記集会での衛藤氏の発言については、『朝日新聞』にも次の記事がありました。

【自民改憲本部長「ちゅうちょする政党あっても改憲提案」】
自民党の衛藤征士郎・党憲法改正推進本部長は2日、憲法改正の国会発議について「たとえ一部にちゅうちょする政党があったとしても、信念をもって憲法改正を提案し、意思を問うことは成熟した民主主義国家のあり方として当然だ」と述べた。

衛藤氏の発言は、憲法改正を数の力で進めようとするものと受け取られかねず、改憲に慎重な野党側の反発を招く可能性がある。保守系団体「日本会議」が主導する改憲団体「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の会合で語った。
* 引用ここまで。
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過去何回かの国会では、安倍政権下で続発した不祥事のため、そして改憲派の不用意な発言のために憲法審査会が動かないことが繰り返されてきましたが、今後も似たような事態が続く可能性は低くないかもしれません。
とは言え、私たちは敵失に頼るわけにはいきません。改憲反対の論理をしっかり構築して運動を拡大していきましょう。

■日本維新の会の暴走

最後に、臨時国会の閉幕に当たって、12月4日に開催された衆参両院での最後の憲法審査会について報告しておきます。いずれも『インターネット審議中継』で視聴しました。

まず、衆議院憲法審査会では、3分足らずの審議時間で、改憲手続法(国民投票法)を継続審議にするための閉会中審査の手続きなどが行われました。
一方、参議院憲法審査会では、日本維新の会が提出した林芳正会長(自民)の不信任決議案について、松沢成文氏(維新)の趣旨説明と藤末健三氏(自民)の賛成討論、東徹氏(維新)の賛成討論が行われ、否決されました。審議時間は2分30秒ほどの中断(下の『産経新聞』記事を参照)を含めて15分でした。

【林氏の不信任動議を否決 参院憲法審査会】
参院憲法審査会は4日、日本維新の会が提出していた林芳正会長(自民)の不信任動議を否決した。維新は提案理由として、今国会で実質審議が行われないのが林氏の指導力と決断力の欠如が原因だと訴えていた。
4日の憲法審では、維新の松沢成文参院議員が動議の趣旨を説明した際に「審議拒否する会派」と述べたことに野党議員らが反発し、審議が一時中断する場面もあった。
* 引用ここまで。

参院の憲法審では、今年6月、通常国会でも維新が林会長の不信任案を提出し、否決されるということがありました。全く同じ茶番劇が繰り返されたわけです。また、前回の衆院憲法審では、維新の馬場氏が当日に審議入りしたばかりの改憲手続法(国民投票法)改正案の質疑の終局と採決を求める動議を提出しました。
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こうした維新の暴走は今のところ存在感をアピールするためのパフォーマンスだと受け止められていると思いますが、国民民主党までもが改憲推進の立場を明確にしたいま、「安倍政権の退陣により、これまでの論法にすがって反対を続けることには世論の理解を得にくくなっていく。次の国会では、特に立民の立ち居振る舞いが注目される」(12月2日付『西日本新聞』)と指摘されているとおり、立憲民主党や共産党も安閑としてはいられないでしょう。

いまのところ不発に終わっていますが、コロナ禍を緊急事態条項の改憲に結びつける議論が盛んに行われています。「自衛隊員の子どもがかわいそう」という安倍の9条改憲論は広がりませんでしたが、国際情勢の推移によってはいつ風向きが変わるかわかりません。
繰り返しになりますが、改憲反対の論理をしっかり構築して運動を拡大していきましょう。(銀)


12月3日(木)正午から、星野文昭さんを獄死させた法務省の責任を追及するデモが呼びかけられ、参加しました。約100人が駆け付け、日比谷公園霞門から星野さんの遺影を掲げてデモに出発。
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霞門を出てすぐに右折してまっすぐ進むと、まもなく法務省前です。
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「星野文昭さんを殺したのは法務省だ!」「法務省は虐殺の責任を取れ!」と弾劾のシュプレヒコールを叩きつけました。
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この日の午前中に、東京地裁で国賠訴訟の第3回口頭弁論が行われました。
星野文昭さんがなぜ獄死することになったのか真実を解明し、徳島刑務所と東日本成人矯正医療センターの責任を追及するために、お連れ合いの暁子さんと文昭さんのご兄弟が今年の2月に提訴した国家賠償請求訴訟です。

昨年5月30日、東日本成人矯正医療センターで肝臓がんの切除手術を受けて2日後に星野文昭さんは帰らぬ人となりました。予期せぬ最悪の事態に誰もが言葉を失いました。
そして、その後明らかになったことは、医療センターでの星野さんの手術体制があまりに無責任であったことです。切除腫瘍が14㎝×11㎝×9㎝ 、重さ1700gもあった大変な手術なのに、手術後担当医は帰宅してしまい異変が生じた星野さんが放置され続けたこと、そもそもこうした大手術ができる施設ではなかったのではないかということです。さらに、徳島刑務所で星野さんが体調不良を訴えていたにもかかわらずきちんとした治療がなされなかったことなどもあります。

しかし、こうしたことに国側は居直っているとのことです。許せません。法務省に対し、「受刑者の命を守れ!」「受刑者に医療を保障しろ!」と訴えました。

また、星野文昭さんと共に闘い、でっち上げ逮捕されている大坂正明さんはすでに3年以上も勾留されています。その中で、ぜんそくや持病、特に鼻ポリープで鼻呼吸ができず苦しんでいるそうです。さらに「大坂さんは無実だ!」「鼻の手術をさせろ!」と訴えました。

デモ解散地で、全国再審連絡会議共同代表の狩野満男さんは、「法務省を徹底的に弾劾し責任を取らせよう」「一人ひとりが星野となろう、星野さんの遺志を引き継いで職場・地域で闘っていこう!」と力強く呼びかけました。国家権力の横暴、犯罪を暴き、人間が人間らしく生きられる社会をめざして闘っていきましょう。(S)
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11月26日(木)、先週に引き続き衆議院憲法審査会が開催され(2週連続して開催されたのは、昨年11月以来のことでした)、傍聴してきました。今回は、時間軸に沿ってレポートしたいと思います。
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前日夜にずれ込んだ開催の告知

先週、今国会初の審査会が開催された時点でこの日の開催も合意されていたはずですが、最終的な日程の決定は前日、25日の夕方にずれ込みました。
野党側の筆頭幹事である山花郁夫氏(立憲)のホームページによれば、それは、
「議題としては、国民投票法をめぐる諸問題ということで、前回の討議の続きということだったんですけれども、実は先週末から与党提出の7項目案について質疑採決をという提案がありましたので、このセットまで随分と時間がかかりました。最終的には法案の質疑だけ短い時間行うけれども、採決は行わないという形で決着がついたものです。」
という事情があったからです。

私は、ネットで①衆議院憲法審査会の「今後の開会予定」、②衆議院の「委員会開会情報(衆議院公報)」、③衆議院インターネット審議中継の「明日の中継予定」の項目を30分ごとにチェックしていましたが、20時になってようやく③に翌日10時の開催が告知されました。
①と②には21時になっても情報が更新されず、それ以降はバカバカしくなってチェックするのをやめてしまいました。
次の定例日、12月3日(木)の開催をめぐっても、また同じことが繰り返されるのではないでしょうか。「もういい加減にしてくれ!」と、声を大にして言いたいと思います。
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10人以上の自民党委員が遅刻、開会が遅れる

この日も傍聴前の検温などの手続きに時間がかかり、私たちが委員室に入れたのは10時2分頃でしたが、審議はまだ始まっておらず、立憲民主党の委員たちが盛んにヤジを飛ばしていました。
『東京新聞』の記事を転載させていただくと、そのわけはこういうことでした。

「26日の衆院憲法審査会は、自民党議員の遅刻者が相次いで開会が遅れた。野党側から「やる気がないのか」「与党の姿勢が問われる」などと批判の声が上がった。
憲法審は50人で構成され、自民会派への割り当ては30人。開会時間の午前10時を過ぎても自民の10人ほどが姿を見せなかった。半数以上が出席し、審査会を開くのに必要な「定足数」は満たしていたが、細田博之会長はしばらく開始を見合わせ、予定より6分遅れで審議を始めた。」

30人もいるんだから自分1人ぐらいサボっても大丈夫だろうと思った委員が多かったのでしょうか。
なお、この日から傍聴席の数が事実上半減しました。コロナ対策のため、1つずつ間隔を空けて着席するように促されたためですが、おかげで多くの方が立ち見を余儀なくされました(私もずっと立ち通しでした)。何もしないよりはいいのかもしれませんが、もともと傍聴席、記者席は前後左右の間隔が小さいですし、後方のスペースも狭くて立ち見の傍聴者と動き回るカメラマンで「密」になっていましたので、感染防止の効果には疑問を抱かざるを得ません(写真参照)。
「不急不要の審査会を開くな!」と書いておきます。
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(出典:『時事ドットコムニュース』11月27日配信)

自公、維新、国民の委員が口を揃えて憲法審の毎週開催を主張

この日の審査会では、まず「日本国憲法及び憲法改正国民投票法を巡る諸問題」についての自由討議が60分ほどかけて行われ、続いて「日本国憲法の改正手続に関する法律(改憲手続法、いわゆる国民投票法)の一部を改正する法律案」の審議が始まりました。こちらの所要時間は30数分でした。
前半の自由討議のテーマは前回の11月19日と同様でしたが(通常国会の5月28日も同じでした)、この日は憲法審査会の審議のあり方について言及する委員が多かったことが気になりました。

まず、発言した委員10人のうち7人、自民4人、公明、維新、国民各1人の全員が、憲法審査会を定例日(木曜日)に毎週開催すべきだと主張しました。
これに対して、辻元清美氏(立憲)は、「一般の委員会では法案の審査が終わってしまえばそれ以上の質疑を求めても与党は拒否し、定例日が決められていても委員会は開かれない」と指摘していましたが、とくに自民党の委員には、野党が憲法53条に基づいて国会の召集を要求しても内閣がそれを無視してきたこと、今国会でも答弁に不安のある菅義偉首相をできるだけ審議の場に立たせないように画策し会期を延長せず逃げ切ろうとしていること等を棚に上げて何を言っているんだ、「恥を知れ!」と言っておきたいと思います。

また、國重徹氏(公明)は現在の審査会は議論が拡散して「放談会」になってしまっているので、「会長、幹事会の下に特別の検討委員会を設けて論点の整理、深掘りを行い、それを審査会にフィードバックして議論をまとめていく仕組みを検討すべきだ」と提案しました。
そんなことをされたら憲法をめぐる議論が密室で秘密裏に進められることになってしまいます。思いついたことをそのまま口に出しただけなのかもしれませんが、この発言こそ「放談」そのものではないでしょうか。
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そして、いつものことですが、「放談」というより「暴言」を吐いたのが馬場伸幸氏(維新)です。氏は「閉会中でも(審査会を開いて)議論しようではないか」と呼びかけ、「ここ数年を振り返れば、多額の税金が費やされる海外調査には児童が修学旅行を楽しむように喜々として向かうのに、審査会の扉は固く閉ざされてきた。国民投票法の改正には一部野党が壁になり、ご法度である政局と絡めたりして子どものように駄々をこねてきた」などと言ってのけたのです。

ちなみに、海外調査には維新の足立康史氏も参加したことがあったはずですし、「そもそも国民主権を掲げる憲法が一度も国民投票を経ていないのは大いなる矛盾です」などという没論理の与太話を持ち出すのはいい加減にやめてもらいたいものです(絶対にやめないでしょうけれど)。

改憲手続法(国民投票法)改正案が審議入り、維新が採決を求めるも不発に

まだ発言を希望していた委員が何人か残されていましたが、開会から1時間ほどが経過した後、審査会は次の議題、改憲手続法(国民投票法)改正案の審議に入りました。2018年6月に提出されて以来7回にわたり継続審議となっていた改正案が、ようやく審議入りしたことになります。

議員立法の提案者である中谷元、船田元、逢沢一郎(以上自民)、井上一徳(国民、改正案提出時は希望の党)、北側一雄(公明)の各氏が答弁者として会長席の向かい側に着席し、審議が始まりました。なお、通常なら行われるはずの「趣旨説明」は、18年の通常国会で実施済ということで省略されました(当時趣旨説明を行ったのは細田博之会長でした)。
審議の内容については、以下、『毎日新聞』の記事を転載させていただきます。

憲法審が国民投票法改正案を初の実質審査 通常国会での成立に向け衆院採決が焦点に
衆院憲法審査会は26日、憲法改正国民投票法改正案の審査を行った。法案提出から約2年半が経過する中で、実質審議を行うのは初めて。日本維新の会が採決を求める動議を提出したが採決には至らず、12月5日の会期末までの成立は困難となった。与党側は来年の通常国会での成立を確実にするため、衆院での採決の可能性を探っている。

「(改正案の内容の)趣旨説明を聴取してから2年半、(憲法審の)幹事懇談会のメンバーが採決に合意してから1年半。本日質疑できることを歓迎したい」。質疑のトップバッターとなった自民党の新藤義孝・与党筆頭幹事は、待ち望んだ審議の進展への喜びをかみしめるように語った。

改正案は、国民投票法の成立後に改正された公職選挙法に内容をそろえるもので、駅や商業施設への共通投票所の設置、洋上投票の対象拡大など7項目。2018年6月に自民、公明の与党と維新などが共同提出し、同7月には趣旨説明が行われた。だが、野党が「安倍政権下での改憲に反対」との姿勢から慎重な対応を続け、7回にわたって継続審議となり、「8国会」をまたぐ法案となっている。

質疑では新藤氏のほか、公明の大口善徳氏も改正案の速やかな採決を主張。自民、公明、維新の答弁者がこれに同調した。一方、立憲民主党の奥野総一郎氏は、CM規制やインターネット広告規制、外国人寄付禁止などの課題を取り上げ、「7項目だけでなく抜本改正が必要」と指摘。改正案との並行審議を求めた。

審査の際には、維新の馬場伸幸氏は質疑の「終局」と採決を求める動議を提出。採決すれば人数で圧倒する与党と維新の賛成で可決される。しかし、事前調整のない突然の行動だったため、新藤氏と立憲の山花郁夫・野党筆頭幹事が議場内で話し合い、与野党が日程を協議する憲法審の「幹事会」で取り扱いを検討することで引き取った。

その後の協議では、与党側が、採決に反対する立憲などの野党に配慮。動議の扱いの結論を出さなかった。ただ、早期採決を求めてきた与党側にとって動議の扱いを間違えれば自己矛盾が生じることになる。自民党内からは「あのまま採決してしまえば良かったのに」(閣僚経験者)との声も漏れた。

与党内では、来年の通常国会に向けて少しでも状況を進展させるため、審査会の質疑を終局させる案や委員会採決まで行う案、衆院を通過させて参院で継続審議とする案などが浮上している。【遠藤修平、飼手勇介、水脇友輔】
* 引用、ここまで

ここでも、馬場伸幸氏(維新)が思いがけないパフォーマンスに打って出たわけですが、このことについて何かコメントしているのではないかと思い、氏のホームページとツイッターを確認してみました(12月1日15時現在)。期待?に反して何も見つからなかったのですが、ツイッターでこんな告知を見つけて仰天しました(下図参照)。
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と言うのも、櫻井よしこ氏が共同代表を務める『美しい日本の憲法をつくる国民の会』のイベントに、馬場氏や衛藤征士郎氏(自民党憲法改正推進本部長)、古屋圭司氏(自民、日本会議国会議員懇談会長)はともかく、濱地雅一氏(公明)や山尾志桜里氏(国民)までもが参加するようだからです。

残念ながら改憲手続法(国民投票法)改正案の成立が近づいています。そして改憲勢力は勢力の拡大に努めています。私たちも気を引き締めて闘っていきましょう。(銀)

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