◆憲法9条をめぐる議論◆
5月31日(木)朝9時から、衆議院で今国会6回目の憲法審査会が開催され、百万人署名運動では西川事務局長をはじめ6名で傍聴してきました。今回のテーマは憲法の第2章、すなわち改憲勢力が目の敵にしている第9条でした。そのため、この日は過去最高の60人ほどの傍聴者が詰めかけ、多くの方が立ち見を余儀なくされることになりました。
いつも傍聴者の大多数は改憲反対の立場の人たちですが、今回は改憲派の人たちも駆けつけていたのかもしれません。
冒頭、衆議院法制局の幹部から、憲法調査会等での「主な論点」の紹介とあわせて、次のような「憲法9条解釈のポイント」についての説明がありました。
従来の政府解釈によれば、第1項で「放棄する」とされている「戦争」とは「侵略戦争」であって「自衛戦争、制裁戦争は放棄されていない」し、第2項で「保持しない」とされている「戦力」とは「自衛のため必要な最小限度を超えるもの」で、9条の下でも「自衛権を有することは、主権国家である以上、当然」である。しかしながら、「集団的自衛権の行使は」「我が国を防衛するため必要最小限度」の「範囲を超え、許されない」のであって、「憲法解釈の変更により集団的自衛権の行使を認めること」は「政府の憲法解釈の権威を著しく失墜させ」「内閣自体に対する国民の信頼を著しく損なうおそれもある、憲法を頂点とする法秩序の維持という観点から見ましても問題がある」ため、「仮に集団的自衛権の行使を憲法上認めたい」ということであれば「憲法改正という手段を当然とらざるを得ない」ということです。
私たちが9条について考え、論じる際には、その当否は別として政府の解釈がこうしたものであることを事実として承知しておく必要があると思いました。
続いて各会派の代表者からの意見表明がありました。今回もその要旨を『MSN産経ニュース』から引用しておきます。
民主党(逢坂誠二氏):自衛権に関するご都合主義的な憲法解釈を認めず、国際法の枠組みに対応したより厳格な制約された自衛権を明確にすべきだ。平和主義の考え方に徹し、民主的統制の考え方を明確にすることが安全保障に関わる憲法上の原則だ。
自民党(中谷元氏):軍隊の保有は世界の常識で、自衛隊を「国防軍」と位置づけ、集団的自衛権の行使を認めるべきだ。武力行使を伴う国際平和活動に参加できるよう憲法に規定を置くことも必要。在日米軍基地は地元の負担軽減を着実に進めるべきだ。
公明党(赤松正雄氏):9条は明文改憲も加憲も必要なく、今のままでよい。これは主権国家に固有の自衛権までも否定する趣旨ではなく、自衛のための必要最小限の実力は認められる。米軍基地や日米地位協定の存在は独立国家として歯がゆい現状だ。
共産党(笠井亮氏):9条は前文とともに憲法の神髄だが、日米安保条約と在日米軍基地によって蹂躙されている。自衛隊は9条に反して創設され、米軍と一体となった海外派兵態勢がつくられている。9条を踏みにじる現状を徹底検証すべきだ。
新党きづな(渡辺浩一郎氏):国際社会の厳しい現実を直視し、変化に対応するためには憲法解釈をその時々で変更していくことが必要だ。個別的自衛権、集団的自衛権は明記せず、自衛や国際貢献のために軍を置くことだけを明記すればよい。
社民党(照屋寛徳氏):明らかに違憲状態にある自衛隊は国境警備、災害救助、国際協力などの任務別組織に改編し、非武装の日本を目指す。9条の条文はいささかも変更してはいけない。平和外交と非軍事を基本とする国際貢献で平和国家を目指すべきだ。
みんなの党(柿澤未途氏):自衛権のあり方を明確化するため、9条の改正か安全保障基本法の制定か、何らかの立法措置が必要だ。防衛に関する根幹的国家方針の法的正当性の有無が内閣法制局の憲法解釈に基づいているのは好ましいことではない。
上記の要約では省略されていますが、柿澤氏は「96条の改正を先行させたうえで、9条改正の是非は2年間の国民的な議論を経てから国民投票で決めるべきだ」とも述べていました。なお、今回も国民新党の委員は欠席し、意見表明はありませんでした。
続いて自由討議が行われましたが、何度も発言した石破茂氏(自民党)の意見にはビックリするような内容がいくつも含まれていました。
例えば、「近い将来自衛隊はイージス艦から弾道弾を撃ち落とせる能力を持つようになる。そうなると、日本上空を越えてアメリカに向かうミサイルが発射された場合、それを迎撃しないのは同盟国として許されない」と述べていましたが、この人物は本当にそんなことを真面目に考えているのだろうか、アメリカ本土を攻撃すればその何倍もの報復を受けることが確実なのにそんなことをする国があるとはまず考えられないし、ほとんど妄想の域に達しているのではないかと思いました。石破氏のビックリ発言をもう少し紹介すると、「なぜ日本には海兵隊がないのか」「米軍を駐留させるのは日本の義務である」というのもありました。
印象に残った発言としては、辻元清美氏(民主党)の「イギリスではイラク参戦の経緯について検証作業が行われているが、日本でも国会で検証する必要がある」「NGOが民政支援を行う場合、軍隊がいる方が危険である」、笠井亮氏(共産党)の「日米安保に合わせて憲法を変えるのではなく、憲法に照らして日米安保をなくすのが筋だ」「宇宙軍拡や武器禁輸原則の形骸化など憲法を蹂躙する事態が進められており、厳しく検証すべきである」といったものがありました。
今回も民主党の委員の意見の振幅の大きさが目立っていて、辻元氏のほか近藤昭一氏、辻恵氏などが護憲論を展開する一方で、幹事でもある小沢鋭仁氏は集団的自衛権の行使を認めるべきだという見解を表明していました。
この日の出席者は、開会後しばらくは30数名で推移していましたが、途中から30名を割り込み、瞬間的に過半数割れとなることもありました(定数は50人)。いつもと同じく自民党の欠席者が目立ち、始めは13人中7、8人が出席していましたが、終盤には3、4人になっていました。
また、少数会派であるためやむを得なかったのだと思いますが、社民党の照屋寛徳氏が中座してしまったため、各党の委員が沖縄の米軍基地負担等の問題に言及する中で、沖縄県選出の議員の意見が聞けなかったことは残念でした。(G)
5月31日(木)朝9時から、衆議院で今国会6回目の憲法審査会が開催され、百万人署名運動では西川事務局長をはじめ6名で傍聴してきました。今回のテーマは憲法の第2章、すなわち改憲勢力が目の敵にしている第9条でした。そのため、この日は過去最高の60人ほどの傍聴者が詰めかけ、多くの方が立ち見を余儀なくされることになりました。
いつも傍聴者の大多数は改憲反対の立場の人たちですが、今回は改憲派の人たちも駆けつけていたのかもしれません。
冒頭、衆議院法制局の幹部から、憲法調査会等での「主な論点」の紹介とあわせて、次のような「憲法9条解釈のポイント」についての説明がありました。
従来の政府解釈によれば、第1項で「放棄する」とされている「戦争」とは「侵略戦争」であって「自衛戦争、制裁戦争は放棄されていない」し、第2項で「保持しない」とされている「戦力」とは「自衛のため必要な最小限度を超えるもの」で、9条の下でも「自衛権を有することは、主権国家である以上、当然」である。しかしながら、「集団的自衛権の行使は」「我が国を防衛するため必要最小限度」の「範囲を超え、許されない」のであって、「憲法解釈の変更により集団的自衛権の行使を認めること」は「政府の憲法解釈の権威を著しく失墜させ」「内閣自体に対する国民の信頼を著しく損なうおそれもある、憲法を頂点とする法秩序の維持という観点から見ましても問題がある」ため、「仮に集団的自衛権の行使を憲法上認めたい」ということであれば「憲法改正という手段を当然とらざるを得ない」ということです。
私たちが9条について考え、論じる際には、その当否は別として政府の解釈がこうしたものであることを事実として承知しておく必要があると思いました。
続いて各会派の代表者からの意見表明がありました。今回もその要旨を『MSN産経ニュース』から引用しておきます。
民主党(逢坂誠二氏):自衛権に関するご都合主義的な憲法解釈を認めず、国際法の枠組みに対応したより厳格な制約された自衛権を明確にすべきだ。平和主義の考え方に徹し、民主的統制の考え方を明確にすることが安全保障に関わる憲法上の原則だ。
自民党(中谷元氏):軍隊の保有は世界の常識で、自衛隊を「国防軍」と位置づけ、集団的自衛権の行使を認めるべきだ。武力行使を伴う国際平和活動に参加できるよう憲法に規定を置くことも必要。在日米軍基地は地元の負担軽減を着実に進めるべきだ。
公明党(赤松正雄氏):9条は明文改憲も加憲も必要なく、今のままでよい。これは主権国家に固有の自衛権までも否定する趣旨ではなく、自衛のための必要最小限の実力は認められる。米軍基地や日米地位協定の存在は独立国家として歯がゆい現状だ。
共産党(笠井亮氏):9条は前文とともに憲法の神髄だが、日米安保条約と在日米軍基地によって蹂躙されている。自衛隊は9条に反して創設され、米軍と一体となった海外派兵態勢がつくられている。9条を踏みにじる現状を徹底検証すべきだ。
新党きづな(渡辺浩一郎氏):国際社会の厳しい現実を直視し、変化に対応するためには憲法解釈をその時々で変更していくことが必要だ。個別的自衛権、集団的自衛権は明記せず、自衛や国際貢献のために軍を置くことだけを明記すればよい。
社民党(照屋寛徳氏):明らかに違憲状態にある自衛隊は国境警備、災害救助、国際協力などの任務別組織に改編し、非武装の日本を目指す。9条の条文はいささかも変更してはいけない。平和外交と非軍事を基本とする国際貢献で平和国家を目指すべきだ。
みんなの党(柿澤未途氏):自衛権のあり方を明確化するため、9条の改正か安全保障基本法の制定か、何らかの立法措置が必要だ。防衛に関する根幹的国家方針の法的正当性の有無が内閣法制局の憲法解釈に基づいているのは好ましいことではない。
上記の要約では省略されていますが、柿澤氏は「96条の改正を先行させたうえで、9条改正の是非は2年間の国民的な議論を経てから国民投票で決めるべきだ」とも述べていました。なお、今回も国民新党の委員は欠席し、意見表明はありませんでした。
続いて自由討議が行われましたが、何度も発言した石破茂氏(自民党)の意見にはビックリするような内容がいくつも含まれていました。
例えば、「近い将来自衛隊はイージス艦から弾道弾を撃ち落とせる能力を持つようになる。そうなると、日本上空を越えてアメリカに向かうミサイルが発射された場合、それを迎撃しないのは同盟国として許されない」と述べていましたが、この人物は本当にそんなことを真面目に考えているのだろうか、アメリカ本土を攻撃すればその何倍もの報復を受けることが確実なのにそんなことをする国があるとはまず考えられないし、ほとんど妄想の域に達しているのではないかと思いました。石破氏のビックリ発言をもう少し紹介すると、「なぜ日本には海兵隊がないのか」「米軍を駐留させるのは日本の義務である」というのもありました。
印象に残った発言としては、辻元清美氏(民主党)の「イギリスではイラク参戦の経緯について検証作業が行われているが、日本でも国会で検証する必要がある」「NGOが民政支援を行う場合、軍隊がいる方が危険である」、笠井亮氏(共産党)の「日米安保に合わせて憲法を変えるのではなく、憲法に照らして日米安保をなくすのが筋だ」「宇宙軍拡や武器禁輸原則の形骸化など憲法を蹂躙する事態が進められており、厳しく検証すべきである」といったものがありました。
今回も民主党の委員の意見の振幅の大きさが目立っていて、辻元氏のほか近藤昭一氏、辻恵氏などが護憲論を展開する一方で、幹事でもある小沢鋭仁氏は集団的自衛権の行使を認めるべきだという見解を表明していました。
この日の出席者は、開会後しばらくは30数名で推移していましたが、途中から30名を割り込み、瞬間的に過半数割れとなることもありました(定数は50人)。いつもと同じく自民党の欠席者が目立ち、始めは13人中7、8人が出席していましたが、終盤には3、4人になっていました。
また、少数会派であるためやむを得なかったのだと思いますが、社民党の照屋寛徳氏が中座してしまったため、各党の委員が沖縄の米軍基地負担等の問題に言及する中で、沖縄県選出の議員の意見が聞けなかったことは残念でした。(G)
