栃木県連絡会からのお便りです。
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 本日(5/18)、大田原市教科書採択協議会の第1回目の会合が開催されました。
 今回から県教育委員会の方針で、県下の各地区採択協議会は「原則公開」になったのですが、「公開」=傍聴を許されたのは、冒頭の採択協議会の構成員の紹介と事務方からの事務連絡・説明だけで、あとは「教科書調査委員の氏名は非公開なので‥」とかいう理由で20名ほどの傍聴者は会場から追い出されてしまいました。
 最後にもう一度「お入りください」と言われて入ったら、「傍聴規則」などというものの説明で、それで会議はおしまいでした。全部で1時間ほどの会議のうち、30分以上は外で待たされていたのです。全くアリバイ的な、いんちきな「公開」です。
 侵略戦争賛美の教科書を、「公平・公正に」採択しようなどというインチキを許さないぞ!

●下記は、「申入書」です。

大田原市教育委員会様

扶桑社版歴史教科書、公民教科書、自由社版歴史教科書の使用を採択しないことを求める申し入れ

 私たちは、有事法制、憲法改悪、海外派兵など、日本の軍事大国化と戦争を許さないために、署名運動を中心に活動を行っている「とめよう戦争への道!百万人署名運動・栃木県連絡会」です。
 2010 年度から大田原市内の中学校で使用される教科書を選定する教科書採択協議会が、5月18日より開催されるという報道がなされました。私たちは大田原市の採択協議会が、扶桑社版の歴史教科書と公民教科書、自由社版の歴史教科書を絶対に採択しないように強く求めます。
 両社が出版する歴史教科書は、侵略戦争を肯定し、民衆の闘いの歴史を真っ向から否定しています。天皇や支配者の心情は細かく述べ、歴史は天皇や支配者がつくったものと描き、民衆が支配者をうち倒し、歴史をつくってきたことは全く書いていません。
 アジア民衆に対する虐殺、沖縄戦、広島・長崎への原爆投下、日本軍軍隊慰安婦など、日本が行った侵略戦争の残忍さにはまったく触れず、他方で「国王を処刑するなどの過激な流血事件に発展」(フランス革命)などと倒された権力の悲惨さだけは強調しています。
 また、扶桑社版の公民教科書は、憲法改悪を前提にしています。領土・拉致・不審船などで排外主義をあおり、自衛隊の海外派兵、国防の意義を煽動しています。戦後の年表には36 項目しかないのに、「電電公社・専売公社民営化」「国鉄分割・民営化」を記載し、「規制緩和」のコラムを設けて、民営化を絶賛しています。
 このように、両社の教科書はきわめて歪んだ内容になっています。じじつ扶桑社はこのことを既に認めています。すなわち同社は07年5月、「全国各地の教育委員の教科書についての評価が低く、内容が右寄り過ぎて採択が得られない」「今後も幅広い推薦をいただける状況にない」とし、このことを扶桑社版の歴史教科書と公民教科書の執筆者が所属する「新しい歴史教科書をつくる会」に伝えてきました。このことは新聞報道もされています。
 じっさい、05年の採択では「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書は歴史が0・4%、公民が0・2%という低採択率でした。現場の社会科教員の多くが「この教科書は使えない」と07年の段階で述べています。
 学校現場からの猛反発の中で、同会はふたつに分裂し、一方が引き続き扶桑社から出版し、もう一方が自由社から出版するという経緯をたどっています。しかし、扶桑社の教科書も自由社の教科書も、上記のように内容的にはまったく同質であり、この2社の教科書だけが、他の出版社発行の教科書と全く違っているのです。
 大田原市教育委員会は、05年7月13日、採択審議を「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書に反対の教育委員が海外に出張中で出席が不可能であることを承知の上で開催しました。そして、残る4人のみで他地域に先がけて早々と扶桑社版の教科書を採択しました。絶対に許されません。しかも大田原市教育委員会は、扶桑社じしんがその後「内容が右寄り過ぎて」と認め、まさに不適格と言うべき教科書が明らかになったあとも、その使用を中止せず、中止申し入れの声も無視して、学校現場で使用し続けたのであります。 
 アジアに対する侵略の歴史を「大東亜戦争」として肯定し、日本の加害責任を隠蔽し、戦争でどれだけ多くの人々が犠牲を被ったのかという歴史的事実を覆い隠す、扶桑社版歴史教科書、公民教科書、および自由社版歴史教科書の使用を採択協議会において決定せぬよう、私たちはあらためて強く申し入れします。

2009年5月18日
とめよう戦争への道!百万人署名運動・栃木県連絡会(代表・田上中、渡辺登)