6月23日(木)夜、東京・豊島公会堂で、朝鮮学校への「高校無償化」を適用せよ!と求める集会が開かれました。朝鮮高校の生徒や朝鮮大学の学生をはじめ、若い人たちも大勢参加し、1000余人で公会堂は埋めつくされました。
 民主党菅政権の下で、朝鮮高校への無償化はついに年度内に適用されず、高校3年生たちと保護者たちは悔しい思いの中で卒業せざるを得ませんでした。その責任は私たち日本人にあります。主催団体の「『高校無償化』からの朝鮮学校排除に反対する連絡会」は、ねばり強く文科省や内閣府に要請や抗議行動を続けてきましたが、4月以降、新たに自治体の補助金の停止なども起きています。この理不尽なやり方にも抗議して集会はもたれました。
 集会は、韓国からのビデオメッセージ、市民団体からの連帯アピール、朝鮮高校生、保護者、校長先生からの発言、提訴に向けたパネルディスカッションなど多彩で、意義あるものとなりました。今後、署名運動の継続とともに、裁判への提訴に向けて闘っていくことも確認されました。(T)

画像

 以下、皆さんの切実な訴えの一部要旨を紹介します。
■映画「ウリハッキョ」のキム・ミョンジュン(金明俊)監督
 韓国でも高校無償化や東日本大震災の被災者救援をやっている。高校無償化政策は朝鮮学校の人々にうれしい知らせだった。しかし、31校の外国人学校を認める一方で朝鮮学校のみ排除、その理由が朝鮮半島で起きた天安号事件やヨンピョンド砲撃事件などの政治的事件であったことに失望した。また東京、大阪、埼玉、千葉、宮城などで行われた教育補助金停止問題に到っては絶望感さえ持った。世界有数の経済大国である日本、第二位の軍事力を持っている日本が、子どもたちを相手にして政治をするとは卑怯なことだ。
 私たちは、この国に生まれたとかこの親から生まれたとかにかかわらず、全ての子どもは教育を受ける権利を持っていることを学んだ。それは食べる権利、生きる権利と同じ重さを持っている。自分のアイデンティティーを維持して生きる権利は本来の権利だ。在日朝鮮人として日本の地に住みながら、アイデンティティーを維持していくための教育機関は朝鮮学校しかない。子どもたちがこの地で朝鮮人として生きていくためのものだ。
 これ以上日本政府が子どもたちを人質にして政治をやらないよう闘ってほしい。朝鮮学校無償化問題の責任は私たち大人たち全員の責任だ。
■朝鮮高校の生徒さん
 朝鮮学校に通わせるのは親にとっては経済的に大変、でも立派な朝鮮サラムとして育てたいという一心で通わせてきたと思う。この気持ちに応え、それを引き継いでいきたい。自分の民族の人をよく知り、好きになるということは違う民族の人たちへの思いやりになると私は思っている。
 私たちを応援してくれる日本人たちは「自分たちは同情からでなくよりよい日本社会のために声をあげている。これは自分たち日本人自身の問題なんだ」と言ってくれた。全ての人たちが認めあい心から応援しあえる社会にしたいと私は強く思った。高校無償化はそのような明るい未来につながる問題だと考えている。
■保護者(東京朝鮮学校オモニ会)
 高校無償化のために闘ってきたこれまでのことを思うと胸が熱くなる。私たちが望むのは平和と平等。子どもたちに平穏な学校生活を取りもどしてあげたい。子どもたちは日本政府、日本社会に対して疑問と矛盾と不信を抱いたままだ。一部の政治家のエゴで子どもたちの尊厳は踏みにじられたままになっている。この状況をおき去りにしている日本政府に対して怒りで震えがとまらない。
 政府に高校無償化停止の即刻解除を求める声をあげ続けよう。今日はだめでもこの壁を壊すその日まで闘い続けよう。
■東京朝鮮学校の校長先生
 私は高校無償化問題を考えるとき、怒り、悲しみ、憤りで胸がいっぱいになる。3月に行われた卒業式の時も、高校無償化の恩恵を受けることなく卒業していく生徒の姿を見て声が出なかった。民族教育とは何か。奪われた文字と言葉を取りもどすことが在日朝鮮人の民族教育だと私は思う。朝鮮学校は植民地時代に奪われた文字と言葉を取りもどすために一世が始めた民族教育なのだ。高校無償化の問題を考えるとき、また再び日本政府はこの日本の地で生きる在日朝鮮人たちの民族の言葉を奪おうとしているのではないかと思う。
 私は日本人たちに訴えたい。もしこのようなことが続くならば、過去の歴史の反省が21世紀のこの時点でも、われわれの大事な財産である朝鮮学校と民族の言葉を奪う共犯者になることになるのではないか。今日この集会の始まる前に、子どもたちが「これが朝鮮学校だ」という歌を歌った。その詩は十条の高校でも教鞭をとられた許南麒先生が、朝鮮学校閉鎖令が出た1948年4月に京橋公会堂で、朝鮮学校を守る決意を込めて読んだ詩と聞いた。その時、先生は「いまはこんなに貧しいけれど朝鮮学校は君たちの故郷であり、祖国なんだ」と言われた。
 みなさん、朝鮮学校に学ぶ生徒に、日本の真の良心を高校無償化実現でしめしていただきたい。本日も文科省に行き、専門部会が示した基準にもとづいて即時審査を開始して、無償化を実現して欲しいと申し入れてきた。これからも応援をお願いしたい。