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4月10日、今通常国会4回目の衆議院憲法審査会が開かれました。春分の日を挟んで、毎週定例日の開催が続いています。
この日は、「ネットの適正利用、特にフェイクニュース対策」をテーマとして自由討議が行われ、衆議院法制局の橘幸信局長から同テーマをめぐるこれまでの議論の概要について、続いて国会図書館の遠藤厚志専門調査員から諸外国のフェイクニュース対策について説明を受けた後、委員からの意見の表明や委員間および委員と遠藤氏との質疑応答がありました。
yurusuna
以下、当日の論議について報じた『NHK』の記事を転載させていただきます。

衆院憲法審 憲法改正是非問う国民投票“偽情報拡散 対応必要”
『NHK NEWS WEB』2025年4月10日

10日開かれた衆議院憲法審査会で、憲法改正の是非を問う国民投票のあり方について意見が交わされ、SNS上での偽情報の拡散が、結果に影響を及ぼすおそれがあるとして何らかの対応が必要だという意見が与野党双方から出されました。

10日の衆議院憲法審査会では、憲法改正の国民投票が行われる際のSNSなどの利用について議論が行われました。
自民党の寺田稔氏は「最近のフェイクニュースの手法は巧妙化している。選挙の際に偽情報が拡散されると民主主義が揺らぐが、国民投票でも罰則規定を備えるべきかが論点になる」と指摘しました。
立憲民主党の岡田悟氏は「最近の選挙ではSNSで虚偽の情報やひぼう中傷が拡散され、選挙結果を左右しているが、単純な規制は表現の自由などを制限しかねず慎重な検討が求められる」と述べました。
日本維新の会や国民民主党などは、SNSを通じた外国勢力の介入に懸念を示し、対処が必要だと主張しました。
また、情報の真偽を確認する「ファクトチェック」については、複数の政党から、公権力の介入を避けるため、民間の機関に委ねるべきだという意見が出されました。
* 引用、ここまで。

外国勢力の介入阻止の方策は? 広報協議会の役割は?

上掲の記事に記されているように、この日は主として改憲勢力の委員たちから「外国勢力の介入に懸念を示し、対処が必要だと主張」する意見が表明されました。

その典型が阿部圭史氏(維新)で、「外国勢力からのフェイクニュースを通じた改憲国民投票プロセスへの介入は断固として防がなければならない」と述べたうえで、「4月8日の衆院本会議で可決された能動的サイバー防御法案の役割は大きい」が、これは「あくまで第一歩で、能動的サイバー防御はまだまだ強化すべき領域」であり、国民投票のプロセスでは「国民投票広報協議会と警察、自衛隊との連携が重要になってくるのではないか」と主張しました。現時点で実施される見込みのない改憲国民投票のフェイクニュース対策にまだ成立していない能動的サイバー防御法が持ち出され、警察や自衛隊との連携にまで言及するとは…… 本当に驚きました。

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もう一つ驚かされたのは、阿部氏ほどの極論ではありませんでしたが、立憲民主党の重徳和彦氏までもが「能動的サイバー防御法案」は「国家安全保障の観点から成立を目指しているもので、外国勢力からの防衛を目的としているものである」ので、「こうした法制も活用していくべきではなかと考えている」と発言したことです。
ただ、重徳氏の「ネット情報の支配力の根源は、SNSサービスを提供する外国資本のデジタルプラットフォーマーにあると言っても過言ではない」、「外国からの干渉が犯罪として規定されているイギリスの2023年のオンライン安全法なども参考に規制について考えていくべきではないかと思う」という指摘はそのとおりだなと感じました。

一方、赤嶺政賢氏(共産)は維新・阿部氏の発言に異を唱え、「国会に設置される広報協議会の委員の大多数は改憲に賛成した会派から選ばれる仕組みであり、改憲に有利な意見がまかり通り、少数派の意見が抑圧される危険性がある。協議会がファクトチェックを行えば、恣意的なものになりかねない」、「国家がネットの書き込みや動画の内容を調べることは、国民の意見表明に対する検閲にほかならない」、「広報協議会の規程作りを進め、ファクトチェックまで担わせることは絶対に認められない」と強調しました。重要な指摘だと思います。

また、意外にも、自民党を代表して最初に発言した憲法審幹事の寺田稔氏が「党としてまだ正式に意見を集約していないが、私は、公権力の表現の自由への介入を極力避ける観点から、ファクトチェックは(広報協議会ではなく)ファクトチェック機関に委ねるべきであると考える」と述べていたことを記しておきたいと思います。

問題は国内発のフェイクであり、とりわけ権力者側からの発信だ

改憲各派の委員たちは、中国やロシアを名指しして外国勢力の介入を阻止する必要性を言い募っていました。いくつかの具体的な事例も挙げられ、彼らの主張にそれなりの根拠があることは否定できないと思いますが、私は外国勢力と言うならいちばん警戒すべきなのはアメリカだろう、そして最近の政治・社会情勢を考えれば国内で発せられ、拡散されるフェイクニュースの方がより深刻な脅威なのではないかと考えながら聞いていました。
この日、その国内の問題をはっきりと指摘したのが、立民の岡田悟氏と米山隆一氏、れいわの大石あきこ氏でした。このうち岡田氏は、自身の『X』で下記のように報告しています。

岡田 悟 衆議院議員 立憲民主党兵庫7区(西宮市・芦屋市)総支部長

4月10日の衆議院憲法審査会で、憲法改正の国民投票におけるフェイクニュース対策について、会派を代表して意見表明を行いました。虚偽情報や誹謗中傷にあふれた昨年の兵庫県知事選挙は、大変残念なことに格好のサンプルとなりました。日本維新の会の責任に言及しています。
ちなみに馬場伸幸氏ら日本維新の会の委員からは、何の反論も説明もなく、米山隆一委員から質問されて初めて「誰が悪いとかどの党が悪いといったことはなく、社会全体の問題」という趣旨の、壊滅的で意味不明な驚きの答弁があったのみでした。反省の色なし。
 * 引用、ここまで。

米山委員の質問は、氏が表明した「今現になされているSNS上での偽情報や誹謗中傷に対して、言論の自由の観点を考慮しつつ諸法令を改正・整備し、適正な言論空間を確立する必要がある」という見解に対して、「先ほど外国勢力からの介入に対しては熱心に対策を訴えられた一方で、先の兵庫県知事選で誹謗中傷の原因となった真偽不明の情報の流布に加担した県議が所属していた維新の会のご意見を伺いたい」というものでした。

これに答えた維新の委員は和田有一朗氏で、発言の最初に「この問題は単純に見えるものではなく、もっと深いものがあるだろうと思う」と述べました。岡田氏が評したとおりの「壊滅的で意味不明な驚きの」内容で、傍聴席から思わず失笑が漏れたのですが、これに対して枝野幸男会長(立民)が(私は和田氏の発言以上にびっくりさせられたのですが)間髪を入れずに「傍聴席はお静かにお願いします」と言ったのです。野次や拍手ならともかく、思わず漏れた失笑に対して条件反射的に反応した枝野氏。「いったいどういう人なんだろう?」と思わずにはいられませんでした(12日にはさいたま市で開かれた支持者との会合で「(党内で消費減税を主張する声が高まっていることに対して)減税ポピュリズムに走りたいなら、別の党を作ってください」と述べたというニュースが流れましたが、それを知ってますますちょっとヤバい強権的な体質の人なんじゃないかとの疑念が強まりました)。
しだれ桜
(この日、国会議員会館前のしだれ桜は満開でした)

続いてもう一人、大石あきこ氏(れいわ)の発言を紹介したいと思います。以下、氏が自身の『X』に投稿した記事を転載します(読みやすくなるよう、適宜改行しました)。なお、これは要約で、氏のブログ(https://www.oishiakiko.net/2025-04-10-kenpoushi-oishi/)には全文が掲載されていますので、興味のある方はそちらもご覧ください。とてもおもしろくためになり(個人的な感想です)、お勧めです。

大石あきこ れいわ新選組 衆議院議員 大阪5区

大石あきこです。フェイクニュースの対策について議論をしておりますが、議論の大前提を間違った時に、全く異なる結果が生まれてしまう。まずフェイクニュースを流す主体というのが、一般国民、国会議員や権力者ではなくて国民側が訳のわからない事実をゆがめた、フェイクニュースをやるんだという前提をしておられると思うんですね。違うんじゃないか。

自民党の寺田委員が本日、「フィンランドの国民の情報リテラシーが高い、しかしながら我が国においては、残念ながら国民の情報リテラシーが追いついていない」。これおかしいんじゃないかと。ここに座っている国会議員のリテラシーはどうなんだ。憲法を遵守するという意識はどうなんだ。事実をゆがめていないか。実際の事例に基づき解像度を上げて検証しなければ、全く間違った結果になる。

オフィシャル側、権力者側が事実ではないことを発信する場合がある。1つは都構想。そしてもう1つは万博ですね。そういった事例で検証するべき。2020年の都構想の住民投票の2日前、毎日新聞が4つの特別区に分割するときに218億円の追加コストがいるという試算を大阪市自身がやったということを、スクープで報道しています。かなりもっともらしい試算でした。これをオフィシャル側、大阪府や大阪市自身が、大問題だと、事実ではないということで大騒ぎしまして、大阪市のその試算を出した人の処分にまで至っています。

やはり、オフィシャルが何がファクトなのかどうかということを、検閲する制度を加えるということの問題は、この審査会でも起きているのではないか。 前回の審査会の後に、枝野審査会長が私を注意したんですね。審査会長室に来るようにということで。キーワードとしては、国賊、チンピラ。失礼だという注意を行われました。これはなぜなのか、維新の方が壊れたテープレコーダーと、改憲を反対する人たちのことを何度も言ってますが、これは失礼ではないのか、注意したのかという、公平性の観点。それから、予見性です。

私の言ったワードっていうのは、単に、あなたはチンピラと言ったわけじゃなくて、なぜそう言ったのか事実に基づいて、事実を念頭に公益性の高い論評として行っておりますので、単なる注意というやり方で萎縮させるのではなくて、明確な基準、公平性と予見可能性という基準で、説明責任を伴うように注意をしてください。
 * 引用、ここまで。

なお、参考として、この日衆議院法制局が配布・説明した資料の一部を掲載しておきます。
憲法審査会資料
大石氏はこれについて次のように指摘していました(上述のブログから転載します)。

「本日の法制局の資料でいいますと10ページと11ページですけれども、広報協議会がファクトチェックを実施すべきではないという見解がありますよね。国家権力による情報統制の危険が生じる可能性があると。
まさにそうでありますし、11ページにおいても、有識者の参考人の意見として、政府自身がファクトチェックをやることが、何がファクトなのかどうかということを政府がやるということは、憲法上、検閲のリスクにもなりますからというふうに言っています。

こういった権力者側の情報統制の危険、憲法上の問題というのに加えて、事実ではないこと、事実をゆがめることをやる権力者側、そういった現状もあるという前提をしかなければ、これは全く違った、外にいる国民があくまでフェイクニュースを流すんだ、じゃ、権力者側が十分権力に注意して検閲にならないようにしましょうねという議論では、これは不足していると考えています。」

この日の傍聴者は35人ほど、記者は4~5人でした。
委員の欠席者は、審査会冒頭の衆院法制局橘氏、国会図書館遠藤氏の説明聴取のときは自民1人、立民1人で珍しいこともあるものだなあと思っていたところ、その後は自民が2~5人、立民が1~3人と、いつもの状態になってしまいました。また、この日は維新の委員が1人、長時間席を外していました。(銀)


4月3日、今通常国会3回目の衆議院憲法審査会が開かれました。春分の日を挟んで、毎週定例日の開催が続いています。
この日は、「放送CM、ネットCM」をテーマとして自由討議が行われ、衆議院法制局の橘幸信局長から同テーマをめぐるこれまでの議論の概要について説明を受けた後、委員からの意見の表明や委員間の質疑応答がありました。

ただ、冒頭の枝野会長(立憲)の発言「事務方に対しての非難、誹謗中傷等はなされないように強く申入れておきたい」、船田委員(自民)の発言「立憲民主党の藤原規眞委員から、衆議院法制局それから憲法審査会事務局に対しまして、学説の捏造であり、改憲派の先生方をミスリードしているというような発言がございました。…これは…礼を失する発言であり…許容し難いものと受け止めている」にあるように、指摘された問題内容について何ら検証せず憲法審査会を進めようとする自民・立憲幹事らの姿勢に、これはおかしい!と思いました。
yurusuna
以下、当日の論議について報じた『NHK』の記事を転載させていただきます。

衆院憲法審査会 憲法改正の国民投票 ネット広告に対策が必要
『NHK NEWS WEB』2025年4月3日

衆議院憲法審査会で、国民投票を行う際の広告のあり方について議論が行われ、与野党から、インターネット広告は有権者の冷静な判断に影響を及ぼすおそれがあるとして、ガイドラインの策定など対策が必要だという指摘が出されました。

3日の衆議院憲法審査会では、憲法改正で国民投票が行われる際の、テレビCMやインターネット広告のあり方について議論が行われました。
この中で、自民党の船田元氏はネット広告について「扇情的な内容や特定の考え方を繰り返し送りつけることによって、冷静な判断が阻害されるおそれがある」と指摘しました。
そのうえで、今の国民投票法では、テレビCMが投票日の2週間前から禁止される一方、ネット広告には制限がないことから「言論空間のバランスを著しく崩す」として、対応が必要だという認識を示しました。
具体的には、プラットフォーマーなどの事業者に、国民投票のCMであるという表示を義務づけることや、国会議員でつくる国民投票の広報協議会でガイドラインを策定することなどを挙げました。

立憲民主党の階猛氏は「ネットCMは受け手の意思を支配する力が強く、放送CMとは別に法規制が必要だ」と述べました。
そのうえで「放送CMと全く同じ規制を課すという趣旨ではなく、広報協議会がガイドラインを定めるなどして適正化を図る」と述べ、表現の自由にも配慮しつつ、対策を講じるべきだと主張しました。

このほか、日本維新の会、国民民主党、公明党なども同様にネット広告の問題点や対策の必要性を指摘しました。
一方、れいわ新選組と共産党は、憲法改正は必要ないという立場から国民投票法の議論自体に否定的な考えを示しました。
* 引用、ここまで。

上掲の記事の見出しや内容に示されているように、この日の議論はテレビCMよりネットCMに焦点を当てたものが多く、改憲勢力の委員たちの外国勢力の介入の危険性を指摘する意見が目立ちましたが、大石あきこ氏(れいわ)は真っ向からこれに異を唱えました。氏の『X』から転載させていただきます。

れいわ・大石氏:問題はテレビCM、ネットCMだけではない

本日の国民投票法の、CM規制に関してなんですけれども、各会派で述べられているような放送CMの規制に対して、ネットがバランスを欠くのだという話、表層でしかないといいますか。既に放送CMも2週間前のCM禁止と言われていますけれども、ザルではないかと。 意見表明CMなら可能ではないんでしょうか。人気タレントとかを使って、憲法を変えるのはいいことなんだと、その人が意見を表明するという限りにおいては、無制限に許されるのではないでしょうか。

これは妄想ではなくて、大阪ですでに行われていることで、吉村知事です。知事は本来タレントではないですけれども、大阪においては、メディアと吉村知事、大阪維新の会との密月がありまして、そのようなことになっているんですよ。本来であれば、吉村知事って政治家でもあるので、政治的中立というのは常に問われるんですけれども、なぜか大阪においては行政の長なんだと、行政のトップとして出ているんだということで、たくさんCM、番組に出ては、万博がいいんだ、カジノはいいんだというふうに宣伝してまわっているので、やはりこういった権力者側というか、与党側がいかに広告という枠を離れても、メディアの宣伝においていかに有利かっていうことを思い知らされているのが大阪ですので、その現実を見ずに、テレビのCM規制をすれば足りるんだ、これに対してネット広告のバランスが欠くんだという議論は、現実を捉えていないだろうと私は考えます。

そして住民投票という意味で見なければいけないのは、都構想ですね。大阪都構想。 2015年と2020年に2回行われまして、両方僅差で反対が多数になりまして、都構想は否決されているんですけれども。まさに公選法が適用されない、ある意味何でもありの住民投票だったわけで。いかにウソの数字を使って与党側行政側が、行政とマスコミの力でその数字や宣伝物を垂れ流して票を動かしていくのか。

これは非常に危険であるという事例として、この審査会でもやるならそういった検証をするべきだと考えます。橋下徹さんという都構想を考えた人で、2015年の都構想、住民投票の実施者である方が、憲法の国民投票の参考になるであろう、実験みたいなものだというところまでおっしゃっているので、ここに確信(「核心」の変換ミスだと思います)があると考えます。

都構想で維新の会が、こんなチラシを書いているんですよ。
大阪都構想実現で、住民サービスぐんとアップ。財政効率化で1兆1000億円。この数字の内訳は国が公表している、全国一律の1%の経済成長をシミュレーションに入れた結果で、ほとんどがその成分。都構想をやらなくても、全国でも同じように伸びる数字を都構想によってこうなるんだという宣伝チラシをまきまくって。こういった間違った数字であっても、与党側、強い側、流したときに、大きな宣伝になるのだということを事例として検証するべきだと考えます。 
* 引用、ここまで。

なお、大阪都構想の住民投票をめぐっては、津村啓介氏(立民)も、「2015年の第1回の住民投票時に、運動期間中の放送CMの量について賛成派が反対派の4倍であったと指摘され、すでにこの時点で国民投票法制定時の民放連の自主規制の表明には大きな疑義が生じていた」と述べていました。

共産・赤嶺氏:民意の反映という根本において現行法に重大な不備が

次に、赤嶺政賢氏(共産)の意見も是非紹介しておきたいと思います。氏は、「現行の国民投票法の不備について、私たちは3つの点を指摘してきた」として、「第1に最低投票率の規定がないこと。第2に公務員や教員の国民投票運動を不当に制限していること」を挙げた後、次のように述べました。
「第3に、改憲案に対する広告や意見表明の仕組みが公平・公正なものになっていないことです。
資金力の大きい者がテレビなど有料広告の大部分を買い占め、憲法が金で買われるおそれが繰り返し指摘されています。現行法には、それに対する実効性のある措置がありません。」

そして、「国会に作る広報協議会も、委員の大多数は改憲に賛成した会派に割り当てられる」とし、「現行の国民投票法は重大な問題を抱えた欠陥法だ」と断じました。

国民投票広報協議会は、衆参両院から10人ずつ、計20人で構成され、その委員は会派ごとの所属議員数の比率で割り当てられますから、改憲案の発議に賛成した会派が3分の2以上を占めることになります。いくら客観的・中立的に広報を行う、賛成・反対の意見を公正かつ平等に扱うといっても、その運営が改憲派寄りになることは避けられません。
広報協議会

赤嶺氏は「このような重大な問題のある広報協議会を具体化する規定作りは認められない」と主張しましたが、山下貴史(自民)からはこの日も次のような発言がありました。
「広報協議会の具体的な活動内容について制度設計の詰めを早期に行うべきだ。すでに2023年11月の幹事懇談会で法制局、憲法審査会事務局から広報協議会、同事務局に関する規定の条文案が示されている。」

自公も持て余し気味の維新の暴走

ところで、前回の傍聴記で報告したように、3月27日の衆院憲法審で、維新の青柳仁士氏が、緊急事態条項に関して条文の起草委員会を早期に立ち上げること、各党の考える条文案を審査会に提出することの2点の意思決定を採決で行うことを提案し、改憲派の各会派に賛否を質したところ、国民の浅野哲氏と有志の会の北神圭朗氏はその場で異論はないと述べましたが、自民の船田元氏は異論はないが(会長と与野党の筆頭幹事の)三者協議で議論して対応する、公明の濱地雅一氏は党内で検討して回答すると答えました。

そしてこの日、阿部圭史氏(維新)が自公の委員に「改めて見解を伺う」と迫りましたが、その回答は次のようなものでした。
まず船田氏は「我々も方向性はそれでいきたいという気持ちは強く持っている。ただ、起草委員会を作る、あるいは条文案を提示することの採決は2分の1でいいが、(改憲案の発議には)3分の2という大きなハードルもあるので、そこは慎重に判断していきたい」と、そして濱地氏は「私は環境整備が大事だと思っている。今現在すぐそういったものを採決することについては若干ネガティブであると表明したい」と答えました。自民も公明も、与党が過半数割れし、改憲勢力が3分の2を失った情勢を無視して、まさに「壊れたテープレコーダー」のように「採決」を「採決」をと声高に繰り返す維新の暴走ぶりにうんざりしている様子がうかがえました。

このやり取り以上に私が注目すべきだと感じたのは、濱地氏が上記の発言に続いて、「先ほど山下さんからもあったが、改憲派もそうではない会派も広報協議会の規程・細則は国民投票の環境整備として共通のテーマなので、まずはそこから一つ一つ詰めていくべきではないか」と(実際にはもっと持って回った言い方でしたが)述べたことです。
私たちが考えている以上に、広報協議会の規定の整備など国民投票に向けた実務的な準備が水面下で着々と進められているのかもしれません。今後の動向を注意深くチェックしていきたいと思います。

最後にもう一つ、これも前回の傍聴記で報告した3月27日の衆院憲法審での藤原規眞委員(立民)の発言をめぐる応酬をお知らせしておきたいと思います。
まずは『産経』の記事を転載させていただきます。

党派超えた苦言も「引くつもりはない」裏方批判の立民新人 憲法審で「学説の捏造」発言
『産経新聞』2025年4月3日

立憲民主党の藤原規真衆院議員は3日、衆院憲法審査会で衆院法制局の作成資料を「学説の捏造」と言及した自身の発言に党派を超えて批判されている現状について、X(旧ツイッター)で「引くつもりはない」と書き込んだ。

藤原氏は3月27日の憲法審で、法制局の資料について「こまぎれ、ばらばらに学説が分類されている。学説の捏造といわれても仕方がない。改憲派の先生方を容易にミスリードし得るものだ」と発言した。

これに対し、与野党は4月3日の憲法審で藤原氏の発言を問題視した。与党筆頭幹事を務める船田元氏(自民党)は「礼を失する発言で許容しがたい」と非難し、枝野幸男会長(立憲民主党)は「事務方を非難するのは筋が違う」と警告。野党筆頭幹事の武正公一氏(立民)も「不適切だ」と苦言を呈した。

ただ、藤原氏に引く構えはない。
Xで「学説の捏造」発言について「立法事実を巡る重要カ所を省き、議員の発言を憲法学説かのように記載し、憲法学者が唱えていない説を紹介。その資料を端的に評価申し上げた」と持論を展開した。
藤原氏は弁護士で昨年10月の衆院選で初当選した。
* 引用、ここまで。

上掲の記事にあるように、この日の審査会では藤原氏の発言に対する非難ばかりが目立ちましたが、私は下に転載させていただく小西洋之氏(立民、参議院憲法審査会委員)が『X』に投稿した見解が正鵠を射ていると思います。

この自民の船田議員の発言こそ問題です。3/27の立憲の藤原議員の問題提起は、衆院法制局の提出資料が、①緊急集会の立法事実の根幹(三ページの文量)を省いていたり、②学説でもないものをそのように記載したり、③憲法学者が唱えてもない説を記載したりと明らかにおかしい内容になっていることを指摘したものです。
このうち①、②については、私の指摘を受けて衆院法制局は二年前の資料から修正して3/27に補訂版を提出しています。

衆院法制局が作成していた資料が、改憲派に有利な内容として本来の法令解釈の在り方等を逸脱したものではなかったのか、そして衆院改憲派の緊急集会に関する暴論を支えていたのではないかについて、事実に基づく検証を行う必要があります。
(なお、衆院の暴論は昨日の参院憲法審で自民の佐藤筆頭幹事の意見によって全否定されました)
それを行うことなく、藤原議員を一方的に批判することは「憲法問題の調査審議」を国会法上の法的任務とする憲法審査会にあるまじき暴挙です。

なお、同様の問題提起は私も昨日の参院憲法審で(事前に与党責任者の同意も得て)行っています。
* 引用、ここまで。

小西氏のいう「二年前の資料」が憲法審査会に提出されたのは2023年5月11日でした。当時の憲法審査会長は森英介氏(自民)、与党側筆頭幹事は新藤義孝氏(自民)で、新藤氏は強引としか表現しようのないやり方で憲法審の審議を取り仕切っており、それを北側一雄氏(公明)、馬場伸幸氏(維新)、玉木雄一郎氏(国民)といった改憲派の面々が支持していました。このとき衆議院の法制局や憲法審査会事務局の職員が資料の作成に当たって新藤氏などの意向を忖度した、あるいは何らかの指示を受けていたことは十分にあり得るのではないかと思います。もちろん証拠はありませんし、下衆の勘繰りであればいいのですが、可能であれば小西氏が言うようにしっかりと検証してもらいたいものです。

ここまで書いてきたように、今回の憲法審査会では、今後の憲法審の進み方、すなわち広報協議会の規定の整備など国民投票の環境整備が議論の中心になっていくのかどうか、あるいは事務方の作成する資料の中立性に対する疑問など、放送CM、ネットCMというテーマとは直接関係のないところで注目すべき内容が目立ったように思います。

現状では選挙困難事態における議員任期延長などの改憲が進展する可能性は極めて小さいと思いますが、毎週定例日の開催が続く限り、それなら当面は広報協議会の規定を整備するための議論をまとめようというように、何らかの「成果」を出そうという気運が高まっていくことは避けられないでしょう。会長を務める枝野幸男氏の議事の進め方を見ていると、なおさら強くそうした危惧を抱かざるを得ません。
改憲に向かう議論に反対することはもちろん、憲法審の開催のペースを落とさせる、できれば開催させない運動を作り広げていくためにどうすればいいのか、考えていきたいと思います。

この日の傍聴者は35人くらい、記者は5~6人でした。
また、最近の審査会では自民党も含めて欠席者が少なかったのですが、今回は会議の前半、自民も立民も4~5人が欠席していました。自民は少し前に戻った感じで、立民はこれまでなかったことでしたが、途中から両党とも欠席者は2~3人となりました。公明党もずっと1人が欠席していました。(銀)


4月2日(水)13時から14時30分少し前まで、今通常国会で初めての参議院憲法審査会が開催されました。
テーマは「憲法に対する考え方」とされ、まず各会派1人ずつ7分以内での意見表明、続いて発言を希望する委員から3分以内での発言がありました。
yurusuna
この日の審議について報じた大手メディアの記事でそろって取り上げられたのは、最初に意見を表明した佐藤正久幹事(自民)の発言でした。以下、『毎日新聞』の記事を転載させていただきます。

参院憲法審 憲法審、自民衆参ちぐはぐ 「緊急集会」権限巡り
『毎日新聞』2025年4月3日

参院憲法審査会は2日、今国会初の自由討議を実施した。自民党の佐藤正久氏は緊急時に国会の機能を担う「参院の緊急集会」について、衆院憲法審での自民の主張を次々に打ち消す異例の意見表明を展開。自民内で衆参での「ちぐはぐさ」を浮き彫りにした。

衆院憲法審では3月27日、選挙実施が困難になった場合の参院の緊急集会をテーマに議論した。自民の船田元氏は緊急集会で対応できる期間は憲法上、衆院の解散総選挙が「40日以内」、特別国会の召集が「30日以内」と規定されるため「最大でも70日程度と解釈するのが素直な考え方だ」と主張した。

ところが、2日の参院憲法審で佐藤氏は、緊急集会が対応できる期間について「70日間に厳格に限定するものではない」と述べ、船田氏の見解を否定した。緊急集会の権限を巡っても、船田氏は「一定の限界がある」としていたが、佐藤氏は「限定的、制約的に整理する必要はない」と主張。船田氏は、首相の指名▽条約の承認▽当初予算の議決――を挙げて「要件を満たす場合が少ない」としていたが、佐藤氏は「原則として権能は全てに及ぶ」と打ち消しを図った。

衆院側は緊急事態時に衆院議員が任期満了を迎えて不在となることを避けるため、議員任期延長を図る憲法改正を目指す。一方、参院側は自らの権限を抑制することへの否定的な意見が根強い。2日の参院憲法審では、立憲民主党の小西洋之氏が佐藤氏に対し「良識の府の参院の矜持あふれる意見表明に敬意を表する」と野党側から「エール」を送った。【小田中大】
* 引用、ここまで。

佐藤正久氏自身の公式ブログから、発言の内容を詳しく紹介すると、下記のとおりです。

「参議院の緊急集会」についての意見

1.活動期間
憲法54条1項および2項の趣旨から、参議院の緊急集会の活動期間が70日を大きく超えることは憲法の想定外とする意見がある。
しかし、この日数を厳格に適用すると、衆議院議員の不在が数カ月間解消されない場合などには70日間を超えた途端に立法府は事態への対応が不可能になる。参議院の緊急集会が対応できない事態を絶対に生じさせてはならない。ゆえに、緊急集会の活動期間を画一的に定めるべきではなく、この70日という数字は活動期間を厳格に限定するものではないと考える。なお、この認識は自民党の衆参両院で確認した認識である。
また、選挙困難事態の広範性・長期性用件は、緊急集会の活動期間と切り離して考える必要がある。とくに長期性用件として70日を示す向きがあるが、緊急集会の活動期間が70日であるという理由ならば上記の認識とは相容れない。長期性の要件としては、発災等の日から「6月」あるいは「3月」、もしくは「相当長期にわたり」といった定め方が適切と考える。広範性の要件については、国民主権の重大な例外となることを十分考慮して、相当の国難事態と捉え得るものなのか、精緻な分析と検討が必要である。
さらに、大規模災害発生時の選挙制度との関係についても、具体的ケースにあてはめながら、精緻な分析と検討をする必要がある。

2.権能
緊急集会は「国会の代行機関」であり、その権能は原則として「国会の権能の全て」に及ぶと考える。
そのうえで、権限行使の範囲については、緊急集会が「国に緊急の必要性があるとき」(憲法54条2項但書)に集会を求められるものであり、この緊急性の要件を満たすかどうかで判断されるべきと考える。従って、緊急の必要性がある場合は、緊急集会の権限行使の範囲を限定的・制約的に整理する必要はないと考える。
衆議院の憲法審査会では、「総理大臣の指名、条約締結の承認および本予算については、一般的に緊急性の要件を満たす場合は少ない」旨の発言があったと伺っているが、これらについても、「国会の代行機関である緊急集会の権限は、原則として国会の権能の全てに及ぶ」としたうえで、「緊急性の必要性に応じ、権限行使の範囲が変わる」趣旨であると受け止めている。

3.衆議院議員の任期満了時
衆議院議員の任期満了による衆議院不在の場合にも緊急集会で対応し得ることは憲法解釈上可能だが、憲法に明記する方が望ましいと考える。

4.ワーキング・チーム
以上の参議院の緊急集会についての意見は、自民党憲法改正実現本部の下のワーキング・チームで衆参の実務担当者が意見をすり合わせ、集中的かつ真摯に議論して取りまとめたものを踏まえた意見である。
本審査会でも、参議院の緊急集会の位置付けや権能、大規模災害発生時の選挙制度の在り方をテーマとして更に議論を深め、参議院としての考え方をまとめていくべきと考える。
* 引用、ここまで。

私は、佐藤氏の表明した上記の意見の中で、参議院の緊急集会の活動期間や権能についての見解以上に重要なのは、この意見は自民党憲法改正実現本部の下のワーキング・チームで衆参の実務担当者が行った議論の取りまとめを踏まえたものだと明言したことだと思います。こうした取りまとめが昨年8月に行われていたことはすでに知られていました(他ならぬ自民党憲法改正実現本部のホームページにそれを伝える8月7日付の記事が掲載されています)が、衆院憲法審の与党側筆頭幹事の船田元氏(自民)はつい先日、3月27日の衆院憲法審でもあいまいな言辞を弄していました。

また、昨年の通常国会では、公明党の衆参両院の見解の齟齬が明らかになり、3月13日の衆院憲法審で濱地雅一氏が党内の不一致を認めざるを得なかったことは、このブログの3月24日付の記事で報告したとおりです。

というわけで、選挙困難事態の可能性と参議院の緊急集会の限界性をからめた議員任期延長の改憲論は、特に参院の憲法審では支持の広がりを見通せない状況ですが、そんな中、この日の審議について報じた『産経新聞』の記事で、「改憲政党である日本維新の会の片山大介氏が定例日以外の開催を要求。同じく維新の柴田巧氏は自民に“憲法改正が党是ならば困難があっても実現に向けてもっと努力すべきだ”と注文をつけた」と記されているように、維新の委員たちだけは声高に改憲を叫び続けています。

ただ、私はより警戒すべきは臼井正一氏(自民)の「憲法改正の発議が困難な今こそ、憲法改正の手続法である国民投票法の見直しについて、静謐な環境下で集中的に議論すべきだ」という呼びかけの方ではないかと思いました。現に衆議院の憲法審査会は今後も毎週定例日開催が続く可能性が高く、臼井氏の言う集中的な議論が進展するおそれがあるかもしれません。

なお、佐藤正久氏はもっぱら参議院の緊急集会について述べていましたが、この日発言の機会を得た自民党の委員たちは分担して合区の解消、自衛隊の明記、教育の充実を取り上げ、遺漏なく自民党の改憲4項目に言及していたことを指摘しておきたいと思います。

憲法審査会の目的の一つは法律や制度の憲法適合性の点検と議論

次に、福島みずほ氏(社民)の発言を氏の公式サイトから転載させていただきます。

第一に、参議院の緊急集会を極めて限定し、緊急事態条項の憲法改正が必要だとする言説は間違っています。
参議院の緊急集会を無視あるいは限定し、緊急事態条項、その中でも国会議員の在任期間の延長が語られる場合があることに強い危惧を感じています。参議院軽視です。

緊急集会は、憲法54条2項は1項を受けた規定であるといういわゆる連関構造を理由に、70日に限るという発言をしている人がいますが、それは違います。54条1項の趣旨は現政権の居座り防止にあります。また、54条2項には緊急集会の活動期間を直接に限定する文言はありません。

戦前、緊急勅令や戒厳令などにより基本的人権が制限された反省に鑑み、緊急事態条項を置かず、国会中心の緊急集会を憲法に規定した意味は極めて大きいです。日本国憲法は、その制定時から緊急事態条項を拒否したと言わなければなりません。

国会議員の任期を自由に延長し居座りを許すことは、議院内閣制を取っている我が国において、政府を変えられないということを意味します。緊急事態条項、国会議員の任期延長の本質は民主主義の破壊であり、国会の停止です。
昨年12月、韓国で大統領が戒厳令を宣告しました。この戒厳令を解除できるのは国会の決議だけでした。戒厳令の敵は国会であり、民主主義です。だからこそ、軍隊が国会を包囲し、かつ国会に突入を図り乱入したのです。

民主主義が機能しなくなるよう、民主主義の破壊を国会議員の在任期間の延長や緊急事態宣言、戒厳令で行ってはなりません。韓国の戒厳令の宣告を見て、だからこそ日本にも緊急事態条項が必要だという発言もありましたが、全く正反対の論理です。
緊急事態条項、国会議員の任期期間の延長に強く反対をします。

第二に、憲法審査会の目的の大きな一つである法律や制度が憲法適合性を持っているかどうかの点検と議論こそ必要です。

2025年3月25日、大阪高等裁判所は、同性婚を認めないことは憲法14条、憲法24条2項に反し、違憲であるとの判決を出しました。5つの高等裁判所で憲法違反であると断ぜられたのです。また、性別変更については、最高裁で違憲判決が出ています。国会がこれを受け止めて立法作業をすること、憲法を生かしていくことが必要です。

現行憲法を守らずに、憲法を踏みにじりながらその憲法を変えようとすることの暴挙について、強く抗議をしたいと思います。
憲法改正を言う前に、まず憲法を守れ、憲法を生かせということは、憲法尊重擁護義務を持つ国会議員に課せられています。
まず、違憲と言われたことを受け止め、同性婚や性別変更の法律についての憲法適合性について議論していこうではありませんか。
※本議事録は未定稿です。
* 引用、ここまで。

福島氏は発言の前半で参議院の緊急集会の意義を強調しながら緊急事態条項は不要だと主張し、後半では高裁レベルで違憲判決が相次いでいる同性婚の禁止等を例示して、法律や制度が憲法に適合しているか否かを点検し議論することが憲法審査会の大きな目的の一つであると述べました。わずか3分の持ち時間の中で、簡潔かつ的確に整理された発言で、感心しました。
同性婚の問題については、立憲民主党の辻元清美氏、打越さく良氏、公明党の谷合正明氏、平木大作氏、共産党の仁比聡平氏も指摘していました。

そして最後に、同様の観点から生活保護の給付引き下げ等の問題を指摘した山本太郎氏(れいわ)の発言を、氏のホームページから転載させていただきます。山本氏の持ち時間は7分でしたので、具体例も含め説得力に富んだ内容でした。自民党で生活保護バッシングを主導してきた片山さつき氏はこれをどんな表情で聞いていたのか、傍聴席から遠すぎて確認できないのが残念でした。

山本太郎氏「今ある憲法を守れ、話はそれからだ」

今ある憲法も守らない者が、憲法改正を謳うなど、笑止千万、寝言は寝てから言え。
まずは、今ある憲法を守れ、話はそれからだ、これが、れいわ新選組のスタンスです。

衆議院 憲法審査会は開催しているのだから、参議院も、など、論外。
憲法改正に向けての回数稼ぎ、改憲の下地作りに、与しない。これこそ良識の府、参議院の独自性。

憲法審査会の役割を、参議院ホームページで見ると、2つある。
第一の役割として、「日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制についての広範かつ総合的な調査」とされている。
どうしても参議院で本審査会を開くなら、最優先は、調査。
現行の憲法と密接に関連する法制度が、憲法の趣旨に沿って運用されているのか、憲法の趣旨に即して、どのような法改正が必要になるのかを議論し、政府に突きつけることが本会の存在意義である。
なぜなら、憲法の趣旨とは180度違う、棄民とも言える国家運営が行われ続けているのが日本国なのだから。

先進国で唯一、30年も経済不況が続くも、国を切り売り、民を切り捨て、今や国民の6人に1人が貧困。
この物価高で、ミルクを薄めて子どもに飲ませている、親のご飯を抜いて子どもに食べさせている、など、いつの時代の話しですかという状況に、国民を置いているのがこの国の政治。
貧困家庭にとどまらず、国民全体でも6割が生活が苦しいという状態で、中間層も追い込まれている。
備蓄米放出でも値段は下がらず、有識者いわく5月には、5kg3500円くらいと予測されるが、それでは半年前の水準にも戻っていない。農水大臣は3000円ほどなら値頃感と、どこまで言っても間抜けな発言は止まらない。

先に通った予算では消費税の減税さえも行わず、新たな給付金もなし。
一方、自分達への給付金、企業献金だけは四の五の言いながら死守。裏金の反省など遥か彼方、もう終わったことと、30年の不況とコストプッシュ・インフレに苦しむ庶民を置き去りに、政治だけが次に進もうとしている。

国民の生存権にも興味もなく、全体の奉仕者である公務員としての役割も放棄。
憲法25条、15条にも違反する品位のない泥棒議員たちが、国民をぶん殴り続け、国を没落させ続ける場所が、国会というお喋り小屋。
ここに、良識の府を代表して、しっかりと水を差せるのが、参議院の憲法審査会という存在ではないだろうか。

例えば、経済的に追い詰められた国民にとって、最後の命の砦が生活保護。
98%以上が適正受給である生活保護を、不正受給だらけだと、事実に基づかない話を流布。
自民党は、生きるか死ぬか、ギリギリの状態にある人でも、保護の利用をためらう恥の概念を埋め込んだ。
何とか生活できる程度しか出されないお金を、さらに引き下げると公約。実際に2013年から実行したのが、自民と公明。
その頃の当事者の声。
入浴の回数を月1回にした。食事を削った。おかずをあきらめ、ご飯に醤油をかけて食べている。真冬に灯油が買えず肺炎になった。交際費が捻出できず、一切外出しない、などなど。この後も数度に渡り引き下げは行われ続けた。
この非人道的引き下げを、憲法25条違反などで訴える「いのちのとりで裁判」では、受給者側の訴えを認める高裁判決が続く。
今年1月、福岡高裁は、生活保護費の減額決定を取り消し、「厚労省の判断は生活保護法に反し、違法」と述べた。3月には、大阪高裁が、京都市の受給者32人の減額決定を取り消し。札幌高裁では、国の判断の過程には、憲法の趣旨や目的に反する誤りがあり違法と、引き下げを取り消し。
全国で29箇所での裁判は、これまで地裁で19勝11敗。高裁では6勝4敗。
当時、生活保護引き下げの際、理由として掲げられたのは、デフレ調整だった。
しかし、それらは、生活保護利用世帯には影響を与えない、テレビやパソコンなどの高額商品の価格の落ち込みを、引き下げの理由に反映した、むちゃくちゃな話しであった。
本来、このような問題こそ、本審査会で取り上げ、最高裁判決を待たず、会として決議を出し、憲法に即した生活保護費の支給を、政府に求めるべき案件。

一方、この30年で、確かに国民の購買力は鈍化。それを加速させたのは、いかなる経済政策だったのか。
物を作っても国内で売れないのは、需要が減っていったから。
なぜ、需要が減ったか。資本側の利益を増やすため、安くてクビを切りやすい非正規労働者を増やした。結果、国民の購買力を減らした。
そして購買力の無い国内市場に見切りをつけ、多くの企業が海外に出て行くように仕向けた。そして国内での需要を激減させ、失われた20年、30年の起点となったのが、97年消費税5%への引き上げ。ここから消費税を上げるたび、個人消費の落ち込みがリーマンショックを上回るという、社会実験を何度も繰り返し、その代償を国民の命と生活苦で支払わせる鬼畜ぶり。

社会保障の大切な財源だから減税はしないと言い、過去最高益の大企業には負担を増やさない、という徹底ぶり。とっくに壊れた国を健全な国だと国民を騙し、必要な施策も打たず、物価高を上回る賃上げを実現する、と新たなウソで国民を騙す。そろそろいい加減にしてもらっていいですか?
この国で、どうやって人間の尊厳を守れるって言うんですか。
この国で、どうやって個人として尊重されると言うんですか。

参議院 憲法審査会 事務局に確認。衆参・憲法審査会が2007年に設置されてから、憲法13条や憲法25条に特化したテーマ設定で、調査が行われた回数はゼロ回。
やりましょうよ。調査を。
国民生活を底上げして失われた30年を取り戻し、ジャパン・アズ・ナンバーワンを、日本を再興するための、最後の砦がこの憲法審査会だと私は考えています。
やりましょう、こういった調査を徹底的に。
以上です。
* 引用、ここまで。

参議院の憲法審査会では欠席する委員はほとんどいません。今回も、短時間席を外す者はいましたが、全員が出席していました。
傍聴者は25人ほどで衆院より少なめでしたが、記者は最初6~7人いて、衆院より少し多かったと思います。(銀)


3月27日、今通常国会2回目の衆議院憲法審査会が開催されました。この日は、「参議院の緊急集会の射程」をテーマとして自由討議が行われ、衆議院法制局の橘幸信局長から同テーマをめぐるこれまでの議論の概要について説明を受けた後、委員からの意見の表明や委員間、委員と法制局との質疑応答がありました。
この「射程」という言葉について、毎回のように顔を合わせる傍聴者のお一人が立腹されていました。本来銃弾・砲弾やミサイルの到達距離を表す用語を憲法審に持ち出すなどあまりにも無神経だというのです。私もそのとおりだと思い、違和感を抱かなかったことを反省しました。
yurusuna
以下、当日の論議のポイントが整理されている『NHK』のウェブサイトに掲載された記事を転載させていただきます。

衆議院憲法審査会 大規模災害などでの国会機能維持で議論
『NHK NEWS WEB』2025年3月27日
衆議院憲法審査会が開かれ、大規模災害などの緊急事態の際に、参議院の緊急集会で国会機能を維持する期間について自民党が最大70日程度と主張したのに対し、立憲民主党は期間を限定すべきではないという考えを示しました。
衆議院憲法審査会では、憲法改正のテーマの1つとして、緊急事態における国会機能の維持をめぐって議論が続けられていて、27日は参議院の緊急集会をテーマに意見が交わされました。
参議院の緊急集会は、衆議院の解散後、緊急の場合に内閣が求めることができると憲法に規定されていますが、その期間については具体的に定められていません。
自民党の船田元氏は衆議院の解散後40日以内に総選挙を実施し、総選挙から30日以内に特別国会を召集すると憲法に規定されていることを根拠に、緊急集会の活動期間はこれらを合わせた最大70日程度と解釈するのが妥当だと主張しました。
そのうえで「国会機能を維持するための制度設計を積極的に議論し、共通認識を形成するべきだ」と述べました。
日本維新の会、国民民主党、公明党なども同様の考えを示しました。
これに対し、立憲民主党の武正公一氏は「緊急集会は参議院のみに与えられた独自の機能だ」として、期間を限定すべきではないという考えを示しました。
そのうえで、国会議員の任期を延長するための憲法改正の議論には慎重な立場を示しました。
れいわ新選組と共産党は、憲法改正は必要ないという認識を示しました。
審査会は、次回は4月3日に、国民投票におけるテレビCMのあり方などをテーマに開催される予定です。
* 引用、ここまで。

任期延長、緊急集会をめぐる改憲議論の行方は?

上掲の『NHK』の記事の武正氏が「憲法改正の議論に慎重な立場を示しました」という一文は、氏が発言の最後に「今後、衆議院憲法審査会で任期延長の改憲について議論することが妥当なのかどうか、各党各会派で参議院側ともよく議論していただくことを求める」と述べたこと、つまり参院側を差し置いて緊急集会や任期延長の改憲の議論を進めるべきではないと暗に主張したことを記したものです。
また、同じ記事で続いて「れいわ新選組と共産党は、憲法改正は必要ないという認識を示しました」と書かれているように、大石あきこ氏(れいわ)は「議論を打ち切るべきだ」、赤嶺政賢氏(共産)は「議論は許されない」と明確に述べています。

一方、いわゆる改憲勢力の側では、この日も維新の会の委員たちの発言が前のめりで悪目立ちしていました。例えば、会議の終盤になって、青柳仁士氏は「わが党は以前、国民民主党、有志の会と緊急事態条項の条文案を作成した。自民党、公明党とも方向性に大きな乖離はないので、条文起草委員会を早期に立ち上げることを憲法審で採決して決定してほしい。それができないなら、各党の考える条文案を憲法審に出すべきで、その意思決定も採決でかまわないと思う」と述べ、改憲勢力の各会派に見解を尋ねました。

これに対して、浅野哲氏(国民)、北神圭朗氏(有志)は「異論はない」と即答しましたが、船田元氏(自民)は「異論はないが、三者協議(三者とは審査会長と与野党の筆頭幹事を指すと思われます)できちんと議論して対応したい」、濱地雅一氏(公明)は「党内で検討しお答えしたい」と、ともに慎重な口ぶりでした。
同じような低水準の与太話を何度も聞かされてきた一傍聴者としては、もういい加減このテーマでの憲法審の開催はやめてほしいと切に願うところです。

衆議院法制局は中立公正か?

というわけで、この日もこれまでと同様の議論が繰り返されましたが、新たな論点が全く提起されなかったわけではありません。
それは藤原規眞氏(立民)が衆議院法制局が作成した資料『衆憲資第102号 「参議院の緊急集会」に関する資料』の公平性、客観性に疑義を呈し、「改憲派の先生方の主張は資料102号のミスリードによるものではないか」と主張したことです。

この日はこの資料『衆憲資料102号』の「補訂版」が配布されましたが、藤原氏によれば一昨年に作成されたオリジナル版には補訂版に掲載されている「緊急集会の重要な立法事実を示すGHQとの交渉記録」が欠落しているとのことでした。
また、下図の「帝国議会での審議(金森大臣答弁のポイント)」の中の「・印の3つ目と4つ目」もオリジナル版にはありませんでした。
緊急集会資料
また、オリジナル版では議員の主張が憲法学者の見解であるかのように扱われ、緊急集会は平時の制度に過ぎないとの記載があったが、なぜか補訂版ではその部分が削除されているとのことです。
なお、このことについては、参院憲法審の幹事である小西洋之氏(立民)が『X』に以下の文章をポストしています。

小西ひろゆき(参議院議員)Mar 27
本日の衆院憲法審での藤原議員の指摘は極めて重大なものです。任期延長改憲は「参院緊急集会が平時の制度で、70日間限定」との主張を根拠としています。しかし、この主張は、災害等の有事対処という憲法制定時の緊急集会の立法事実に真っ向から反します。ところが、衆院法制局が二年前に憲法審に提出した資料では、この立法事実が記載された日本政府とGHQとの協議記録に関する箇所が意図的に削られていたのです。
これに対して、私が異を唱え、その結果、本日の衆院憲法審に提出された衆院法制局の「補訂版」資料で、合計三ページにもわたる「緊急集会の立法事実」が初めて記載されました。
しかし、今回の「補訂版」でも「70日間限定」については、改憲派の主張に有利になるような憲法学者の基本書の「曲解」としか言いようがない記述が残っています。 極めて深刻な問題です。
* 引用、ここまで。

また、藤原氏は、法制局の資料では緊急集会が規定されている憲法54条についての学説が細切れ、バラバラにされていると指摘し、「学説のねつ造」と言われても仕方がないとまで述べています。
これについては『産経新聞』が下に掲げるように藤原氏を揶揄するかのような記事を出していますが、枝野氏が責任を持っていると言い張っても資料の中立・客観・公正性が担保されるわけではないことは言うまでもなく、枝野氏のこの発言には違和感しかありません。

衆院憲法審の枝野会長「私の責任で提出している」 資料酷評の立民新人議員にきっぱり
『産経新聞』2025年3月27日
立憲民主党の新人、藤原規真衆院議員が27日の衆院憲法審査会で、衆院法制局がまとめた資料について「学説の捏造」などと言及したところ、枝野幸男会長(立民)から「私の責任で中立客観公正なものとして提出している」と指摘される場面があった。
藤原氏は憲法審で資料に関して、「こまぎれ、ばらばらに学説が分類されている。もはや『学説の捏造』といわれても仕方がない」と強調。その上で「不偏不党の法制局の資料を疑うのは本意ではない。しかし、その内容は改憲派の先生方を容易にミスリードし得るものだ」と述べた。
これに対し、枝野氏は法制局による説明や資料について「私の責任で中立客観公正なものとして提出している。一切の責任は私にある」と答えた。
* 引用、ここまで。

当日藤原氏が『X』に投じた文章も紹介しておきます。改憲勢力の面々が「新説奇説を弄する」というのはまさに言い得て妙で、この日も多くの珍説が飛び交っていました。いちいち紹介はしませんが(その価値はないと思います)、一例として柴山昌彦氏(自民)の発言を挙げておきましょう。
それは、「今、自民党は少数会派で内閣を組織していて、衆参両院で熟議を尽くすべき事態だが、緊急事態が発生した場合には与党が多数の参議院の緊急集会で望む政策をどんどん行うことが恒久化してしまうことをどう考えるか」というものです。馬鹿馬鹿しいにもほどがあると言うしかありません。

藤原のりまさ(衆議院議員・弁護士)愛知10区Mar 27
任期延長改憲を目論む4党1会派は参議院の緊急集会(54条2項)をことさらに過小評価し、そのための新説奇説を弄する。
不偏不党たるべき衆議院法制局の資料に忖度の跡が窺えたので指摘した。
「学説の捏造」「ミスリード」
口を極めると顔が歪む。枝野審査会長の視線が痛かった。
* 引用、ここまで。

この日の傍聴者は40人足らずで、記者は5人ほどでした。
また、今回はいつもより自民党の欠席者が少なく1~2人の時間帯が長かったです。立民も同様にだいたい1~2人が欠席していました。

次の定例日である4月3日にはテーマがガラッと変わって「憲法改正国民投票法を巡る諸問題(放送CM・ネットCM)」について議論することが決まっています。その前日、2日には参院でも「憲法に対する考え方について」というざっくりしたテーマから憲法審が始動します。

こんなことが会期末まで続くのかと考えるとやりきれない気持ちになりますが、こういう形で「緊急事態条項の新設」、更には9条改憲の論議が進んでいることを広く訴えていくために、気を取り直して傍聴に通いたいと思います。改憲派を凌駕する意気込みで改憲・戦争絶対阻止の闘いに取り組んでいきましょう。(銀)



3月13日、今通常国会初の衆議院憲法審査会が開催されました。この日は、「選挙困難事態の立法事実」をテーマとして自由討議が行われ、衆議院法制局の橘幸信局長から同テーマをめぐるこれまでの議論の概要について報告を受けた後、委員からの発言がありました。

yurusuna
橘局長の報告は、次に掲げる「資料1 緊急事態条項(国会機能維持)の論点(イメージ)」と題するペーパーの説明から始まりましたが、橘氏によると、今回のテーマは「国会機能維持」の論点の一つである「議員任期特例[緊急時]」の論点のうちの「①選挙困難事態の立法事実」であるとの位置づけで、次回の憲法審では「②参議院の緊急集会の射程」について議論することが合意されています。こうした進め方は、選挙困難事態における議員任期延長の是非といった最終的な制度設計のレベルで議論を闘わせる前に、制度設計の前提となる論点を「因数分解」(これは枝野幸男審査会長の言葉だそうです)して抽出し、それらを一つずつ取り上げて共通認識が得られるか否かを詰めていくことが建設的かつ効率的な議論に資するのではないかという考え方に基づくものであるということです。

緊急事態条項の論点図.png

3月14日の『朝日新聞』には「衆院憲法審 前のめりな枝野氏」という見出しの記事が掲載され、「枝野氏は昨年末の講演会で、『よく変わるなら(憲法を)変えたほうがいい』と発言。周囲にも『護憲派との印象を払拭したい』と話し、改憲に積極的な姿勢を示す」と書かれています。枝野氏の考える「変えたほうがいい」憲法の条項や内容が何なのかわかりませんが、今後の審査会の動向を警戒・注視していきたいと思います。

橘氏の報告の後、各会派1人ずつ7分の持ち時間での意見表明があり、続いて何人かの委員からの発言がありました。

以下、当日の論議のポイントが簡潔に整理されている『毎日新聞』と『NHK』のウェブサイトに掲載された記事を転載させていただきます。

衆院憲法審 緊急事態の議員任期延長巡り「選挙困難事態」を討議
『毎日新聞』2025年3月13日
衆院憲法審査会は13日、今国会初となる審査会を開き、自由討議を実施した。昨年の通常国会で、自民、公明、日本維新の会など4党1会派が条文化の作業に入るよう求めていた緊急事態での国会議員の任期延長を巡って、立憲民主党の枝野幸男審査会長はさらなる熟議が必要と議事を整理。改めて自然災害などの発生で選挙の実施が困難になる「選挙困難事態」は起こりうるのかについて各党が意見を交わした。
自民の船田元氏は東日本大震災と同規模の地震が、衆院選投開票日の約1カ月半前に発生した場合には、定数465人のうち69人の衆院議員が選出されない事態が想定されるとのシミュレーションに言及し、「被災地域選出の議員がいない状態。いわば地域が偏った状態で選出された衆議院が誕生することになってしまう」と指摘。緊急事態での議員任期延長の必要性を訴えた。
一方、立憲の山花郁夫氏は同シミュレーションについて「8割強の人が選出できるケースで任期延長を行うことは、8割強の有権者の選挙権を行使しうる機会を制限する」と述べ、憲法改正に反対した。れいわ新選組と共産党も反対意見を述べた。
改憲を求める4党1会派は、昨年の通常国会で、緊急事態での議員任期を延長する条項の条文化を提案し、緊急事態の範囲などについて論点整理を示していた。議論が進展しないことに対して、維新の馬場伸幸氏は「本審査会での実質討議は、この3年間で計49回行われたが、議論の大半が緊急事態条項についてされた。論点は出尽くしている。壊れたテープレコーダーのごとく、議論を繰り返す意義は見いだせない」と述べ、4党1会派の条文案を基に改正原案の作成に入るべきだと訴えた。
自民の船田氏は審査会後、記者団に「なんとか今国会で条文起草までいきたいが、今日の議論でそれぞれの見解の相違を確認した。相違をどこまで詰められるかだ」と語った。【小田中大、飼手勇介】

衆議院憲法審査会 選挙の実施困難な事態想定し与野党が討議
『NHK NEWS WEB』2025年3月13日
衆議院憲法審査会は、今の国会で初めての討議が行われました。自民党が、大規模災害などで選挙ができなくなる事態を想定し憲法を改正して国会議員の任期を延長できるようにすべきだと訴えたのに対し、立憲民主党は、投票を繰り延べることで対応できると主張しました。
衆議院憲法審査会では、これまで、憲法改正のテーマの一つとして、緊急事態に国会の機能を維持させることをめぐって議論が続けられていて、今の国会で初めて開かれた13日の審査会では、選挙の実施が困難な事態について与野党が意見を交わしました。
自民党の船田元氏は東日本大震災を例に挙げ「選挙の実施が困難な事態に当たり、衆議院に被災地選出の議員がいない状況が生まれる。憲法を改正して議員任期を延長する制度を創設すべきだ」と主張しました。
日本維新の会、国民民主党、公明党も議員任期の延長に前向きな考えを示しました。
これに対し、立憲民主党の山花郁夫氏は「仮に東日本大震災の際に衆議院選挙を実施しても全体の8割強を選出できたと試算されている。一部で困難だからといって、多くの地域の選挙権を制限するのはバランスを失しており、今の法律に基づいて投票を繰り延べることで対応したほうがよい」と述べました。
れいわ新選組と共産党も憲法改正の必要はないという認識を示しました。
衆議院憲法審査会は今後、おおむね週1回のペースでテーマごとに議論を進めていくことで与野党が合意しています。
枝野審査会長「従来より議論かみ合った」
衆議院憲法審査会の枝野審査会長は記者団に対し「テーマを絞り込んで、できるだけ各党の意見を集約して発言や質疑をしてもらうことで、従来と比べて議論がかみ合う度合いが大きく高まったのではないか。各党派の考え方の一致点と一致していない点を、きちんと整理していきたい」と述べました。
* 引用、ここまで。

3.13憲法審査会
(道の左側手前の建物1階が衆議院面会所で、ここから入り荷物検査などを受けて憲法審査会室へ行く。右側手前が首相官邸)

学者をディスった船田元委員(自民)

今回も、この日気になった発言をいくつか紹介したいと思います。
まず、与党筆頭幹事である船田元氏の発言から。氏の主張の要点は上掲の『毎日』と『NHK』の記事でも紹介されていますが、氏は選挙困難事態においても予定どおり選挙を実施し、それができない地域では繰延べ投票を実施した場合、それは適正な選挙とは言えないとし、「このことは机上で論理を組み立てる学者ではなく、実際に選挙を戦い、民意に支えられた我々だからこそわかることだ」と述べました。これまでも衆院憲法審では参考人として招かれ議員任期延長に否定的な見解を展開した長谷部恭男氏らに対して、玉木雄一郎氏(国民)や北側一雄氏(公明)が論理的に破綻している(私の個人的な考えです)反論をまくし立てたり、山下貴司氏(自民)に至っては「私は議員になる前、憲法担当の司法試験考査委員として様々な憲法学者の学説に触れる機会があったが、その経験に照らしても、立法府の一員として長谷部参考人の見解を正解とするわけにはいかない」と耳を疑う無礼な発言をすることがありましたが、冷静沈着な印象がある船田氏まで学者をディスるとはと、本当に驚きました。

なお、北側氏はすでに政界を引退し、不倫で党の役職停止処分を受けた玉木氏は処分解除後も今のところ憲法審には復帰していません(今後も姿を見せないことを切に願います)が、山下氏は引き続き幹事に納まっています。

壊れたテープレコーダーはあなた方だ!:れいわ・大石委員の痛烈な批判

『毎日』の記事にある「壊れたテープレコーダーのごとく、議論を繰り返す意義は見いだせない」という馬場伸幸幹事(維新)の発言を聞いて、私は「壊れたテープレコーダーはお前だろう」と思いましたが、それを指摘してくれたのが大石あきこ氏(れいわ)でした。また、大石氏は議員任期延長の改憲の議論を打ち切るよう、明確に要求しました。とても説得力のある意見だと思いましたので、以下、党派を代表しての氏の発言の内容を紹介します(『X』に投稿された記事です)。

れいわ新選組の大石あきこです。この数年の憲法審を拝見しました。改憲派の条文草案も拝見しました。その結果として、2つの結論を導きました。1つは、選挙困難事態の立法事実は一切ないこと。2つ目は、改憲派の方々の改憲草案は、内閣と衆議院の居座りを許すゾンビ改憲草案であり、現憲法の立法事実である内閣と衆議院の居座りを許して米開戦に至ったという過去の歴史の再発防止の設計をつぶす違憲提案です。しかも、無自覚ではなく、意図的につぶすという流れで、危険極まりないものです。 したがって、この議論をしっかりと打ち切る必要があり、枝野会長にはこれ以上の議題としないことを強く求めます。

衆議院法制局の説明資料では、選挙困難事態の定義は2つからなると。
1つ目、選挙の一体性については改憲の立法事実とは言えません。前提として、私も皆さんも衆議院議員、国民に選定され、罷免される存在です。選定と罷免は国民固有の権利であると、憲法15条は言っています。
任期延長はこの国民の権利を奪うものです。それに足る理屈は存在しません。例えば、近畿で災害が起きて、それが選挙権行使が事実上不可能であったときでも、九州エリアの方々は選挙ができるならば、日本全国で衆議院の任期延長しましょうは許されないよ、ということです。当たり前です。
任期延長という受益があるからこそ、衆議院議員の居座りが起きる。それを排除する規定を現憲法は設けており、現憲法はさすがなんです。

選挙困難事態の定義の2つ目です。
憲法54条1項で、参議院の緊急集会が70日間しか開催できないという論が存在するかのように、衆議院の憲法審で話されていますけれども、主張しているのはごくごくわずかな方々です。衆議院の憲法審の改憲派と、参議院憲法審の維新の方々と、日本に数えるほどしかいない安保法制の集団的自衛権が合憲と言っている大石先生だけです。名前が同じ大石で恐縮なんですけど、主張は逆のようでした。
憲法学者の長谷部先生は、54条1項の解散から総選挙までの40日と、選挙後の特別国会招集までの30日は、内閣の居座りを排除するための規定で、緊急集会の開催権限とは関係がないとおっしゃっています。 太平洋戦争の末期には南海トラフの震災もありました。そうした議論をもとにつくられた54条第2項の参議院の緊急集会が、大災害を想定していないはずもないし、70日しか開催できないわけではなく、論理は既に破綻しています。

あくまで災害時・緊急時なのですから、あえてフルスペックではなく、小さめの制度につくって、一刻も早く衆議院選挙をやる復元力を確保した設計になっていますし、このようなことももう議論済みですね。 改憲派が言うような想定外の抜け穴は存在しないんです。したがって、改憲派の任期延長案はデメリットはあるんですけど、メリットがないんですよ。
壊れたテープレコーダーがとか維新の馬場さんおっしゃっていたけど、あなた方です。論理的に結論は出ていますので、今こそ打ち切るときです。
何事も議論はいいことだとざっくり毎週やられても、これは国民にとって迷惑でして、毎週毎週こんな論外の会議開かれては困ります。
ほかに、国民経済を救うためのこと、または災害時でも選挙が実施され選挙権が行使できるための委員会を開いたりしなければいけない。
改めて、会長には毎週開催はせず、任期延長改憲の議論は打ち止めを求めます。
* 引用、ここまで。

馬場氏と大石氏は、後半の自由討論の中でも激突しました。
会派代表としての発言で、馬場氏は「日本を取り巻く安全保障環境を踏まえれば、今日のウクライナは明日の日本という観測が戯れ言でないことは明らかであり、選挙困難事態に立法事実はないという立憲民主党の主張は妄想に過ぎない」などと主張しましたが、自由討論でも発言の機会を得た大石氏は、馬場氏と北神圭朗氏(有志)に対して「原発が危険だということにも言及しているなら論理的一貫性があるかもしれないが、(原発について)どう考えるのか」と質問したのです。2人ともまともに回答することができませんでした。

党内の不一致を認めた公明・濱地委員

最後に、今回のテーマをめぐる今後の憲法審での議論にいちばん影響を与えそうだと感じたやり取りを紹介しておきます。それは、柴田勝之氏(立民)の公明党の委員に対する質問とそれに対する濱地雅一氏の回答です。

柴田氏は、改憲派の委員たちが緊急時の国会議員の任期延長が必要な根拠として主張している選挙困難事態の立法事実について、参議院の憲法審査会で公明党の委員たちが繰り返し否定的な意見を述べていることを指摘して衆院憲法審における公明党の委員の発言(柴田氏は名前を挙げませんでしたが、とりわけ北側氏が熱心でした)との矛盾を突き、「衆議院の委員がおっしゃっていることが公明党の見解なのか」と質問しました。

これに対して濱地氏は明確な回答ができず、「それについては検討していくというのがわが党の見解です」と述べるのが精一杯で、枝野会長から「それが党の見解ですね」と念押しされて「そうです」と答えざるを得ませんでした。参院憲法審で選挙困難事態の立法事実について疑問を呈していたのが、当時憲法審の幹事で今は党の幹事長に就いている西田実仁氏であることからも、公明党が短期間でこのテーマでの改憲推進で党内の議論を集約することは極めて難しく、今のところ選挙困難事態の議員任期延長の改憲の議論がすぐに進展する情勢にはないと思います。

この日の傍聴者は約40人で、今通常国会初の憲法審だったわりには少なめだなと感じました。記者は5人ほど、カメラマンは10人弱(いつものように時間の経過とともにだんだん減っていきました)で、テレビカメラは入っていませんでした。
今回も自民党の委員の欠席が目立ち、初めは2~3人だったのが徐々に増えて最後は5~7人くらいになりました。他の会派は、ときどき席を外す委員はいましたが全員が出席していました。

この日の審査会で、武正公一野党筆頭幹事(立民)が、幹事懇談会で今後の衆院憲法審について今回は選挙困難事態、次回が参議院の緊急集会、その後2回が国民投票法の改正案、さらにその後解散権、臨時国会というテーマを決めていることを明らかにしました。おそらく毎週定例日の開催が続くものと思われますが、内閣の支持率の低迷もあって国会は波乱含みで都議選、参院選が控えており、そう遠くない時期に衆院の解散・総選挙もあるかもしれません。国際情勢も予断を許さない状況で、今後、改憲をめぐる動向は大きく揺れ動く可能性があります。気を緩めることなく、引き続き改憲・戦争絶対阻止の闘いに取り組んでいきましょう。(銀)



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