6月25日(木)10時から、今国会11回目の衆議院憲法審査会が開催され、「合区・地方公共団体に対する集中的な討議」が行われました。
このテーマを衆院憲法審で「集中的な討議」の対象として取り上げるのは初めてでしたが、「合区」のいわば当事者である参院の憲法審ではこれまで何度も議論されてきた課題ですので、後半に発言した委員を含めて、新しい論点が提起されるようなことはありませんでした。
通例にしたがい、最初に各会派の代表1人が7分以内で、続いて発言を希望する委員が5分以内で見解を表明しました。発言者は前半7名、後半6名の計13名でした。

まず、前半の各会派代表の意見を簡潔に報じた『NHK』の記事を転載させていただきます。
衆院憲法審査会 参院「合区」などテーマに集中的な討議
『NHK ONE』2026年6月25日(https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015159601000)
憲法改正をめぐり、衆議院憲法審査会で参議院の選挙区で導入されている「合区」などをテーマに集中的な討議が行われました。
この中で、自民党の新藤義孝元経済再生担当大臣は「投票価値の平等のみを徹底すれば、地域の民意や実情を把握しきれなくなるおそれがある。参議院選挙では広域的な自治体から少なくとも1人の議員を選ぶことを規定すべきだ」と述べました。
中道改革連合の国重徹氏は「『合区』解消に向けて直ちに憲法改正の議論をすべきでない。まずはあるべき選挙制度について議論を重ね、法律改正で対応できるか、憲法改正が必要か検討すべきだ」と述べました。
日本維新の会の馬場伸幸前代表は「改憲の優先項目として『合区』解消を声高に叫ぶ前に、参議院選挙の大ブロック制導入など、選挙制度の抜本的な改革を急ぎ、実現させることが立法府の責任だ」と述べました。
国民民主党の飯泉嘉門氏は「『合区』は投票率の低下などを招いている。再来年7月の参議院選挙を見据え、来年7月までに憲法改正を成し遂げなければ『合区』が広がりかねない」と述べました。
参政党の和田政宗国会対策委員長は「『合区』解消のための憲法改正に賛意を示す。参議院を主に地域代表で組織される良識の府と位置づけ『1票の格差』は問題視しない改正が考えられる」と述べました。
チームみらいの古川あおい政務調査会長は「都道府県単位での代表のあり方を憲法に書き込むことには慎重な検討が必要だ。定数見直しや比例代表の活用も含め議論し尽くすことが先ではないか」と述べました。
共産党の畑野君枝氏は「『合区』解消のために改憲を主張するなど言語道断だ。民意が正確に反映されるよう比例代表中心の選挙制度へ抜本的な改革が必要だ」と述べました。
* 引用、ここまで。
またしても「日本国憲法の未完成部分」論法を繰り出した自民・新藤氏
この日、自民党の新藤筆頭幹事は、日本国憲法の「第8章 地方自治」について、こんなことを主張しました。
「1票の価値の平等については憲法14条に規定があるが、地域の民意を適正に反映するエリアの設定については憲法の規定がない。そこで私たちは憲法の地方自治の章にその根拠を位置づけるべきだと考えている。参院選については、憲法に明記された広域的な自治体(としての都道府県)から少なくとも1人の議員を選ぶことを規定して合区を解消すべきだということが、自民党の憲法改正案の考え方だ。
憲法制定から80年が経ち、少子高齢化、人口減少の進展とともに地方の過疎化、都市部への人口集中という格差が生まれている状況で、日本の地方自治を持続可能なものにするためにも、未完の憲法第8章を完成させることは極めて重要ではないか。」
これを聞いて、私はほとほとあきれました。新藤氏は、緊急事態条項創設、そして自衛隊明記の改憲を訴える際にも「憲法の未完成部分」を完成させなければならないと述べています。自民党の日本国憲法改正草案(2012年)に無いものを「未完成部分」などと言いなして居直っているありように怒りが沸きますが、この論法を持ち出したのはこれで3度目。新藤氏はなんでもかんでも「未完成」と言えば通用すると考えているのでしょうか。
「地方自治」に踏み込む
なお、この8章改憲問題については、自民党の上川陽子氏がさらに踏み込んだ発言をしました。
「地方自治が置かれている現状を踏まえれば、次の時代を形作っていくためには、国の形について、地方自治の法体系全体を憲法典と憲法附属法規や一連の基本法などの総体から成る生きた憲法、いわゆるリビングコンスティチューションとして捉え、憲法自体については、地方自治の章の規律密度をもう少し上げるとともに、地方自治法を始めとして、時代の変化に向き合うための法制度の見直しや新規制定も必要となるのではないか。地方自治の問題についても本審査会で更に議論を進めていく必要がある。」
戦争遂行には中央集権国家体制が必要なことから大日本帝国憲法には地方自治の規定がありませんでした。戦後、国の戦争に地方の役場が住民の戦争動員に果たした役割などをとらえ返し、中央と地方との権力分立による「地方自治」という考え方が憲法に明記されました。そして、住民自治、団体自治として確立されたのです。
ところが2012年の自民党改憲草案では、「国及び地方自治体は、法律の定める役割分担を踏まえ、協力しなければならない」との条文が加えられています。自民党が作成した『日本国憲法改正草案Q&A』では「東日本大震災の教訓に基づき」これを定めたとしていますが、明らかに地方自治の役割を狭めて地方自治体を国に従わせる根拠となる条文として打ち出されたものであり、今回の「合区解消」を口実にした8章改憲も絶対に許してはならないと思います。
「火事場泥棒」との暴言を吐いた維新・馬場氏
もう1つの与党、維新の馬場氏は、今回もこんなとんでもない暴言を吐いていました。
「1票の格差をめぐって司法が違憲判断を下すたびに右往左往し、議員定数を増やしてしのぐという対症療法的な手法に頼り続けることは、立法府の怠慢、不作為にほかならない。国会が1票の格差の解消にかこつけて身を太らすようでは火事場泥棒同然だ。」
参議院の議員定数は当初250人で、沖縄県が復帰する前に252人となり、その後242人まで減少した後、現在は248人となっていて、議員定数は敗戦後80年間ほぼ安定して推移していますし、現状は過去最多ではありませんから、そもそも馬場氏の認識は不正確です。
「火事場泥棒」というのもはなはだ不穏当な言葉遣いです。参院憲法審で、同じく維新の松沢弘文氏は奥田ふみよ氏の「恥を知れ」という発言を激しく非難していましたが、松沢氏には代表まで務めたことのある馬場氏も是非いさめてほしいものだと思います。
「火事場泥棒」というのもはなはだ不穏当な言葉遣いです。参院憲法審で、同じく維新の松沢弘文氏は奥田ふみよ氏の「恥を知れ」という発言を激しく非難していましたが、松沢氏には代表まで務めたことのある馬場氏も是非いさめてほしいものだと思います。
また、馬場氏は「重大かつ火急な憲法改正テーマである緊急事態条項創設と9条改正を脇に置いて、補欠候補と言える合区の解消で道草を食うようなことを我が党は了としない」とも述べていましたが、合区解消を重視している会派からすれば、「道草を食う」というのもずいぶんな失礼な言い草だったのではないでしょうか。他の会派を巻き込みながら改憲発議への駒を進めようとしている自民党の方針にも不満をあらわにした発言からは、突撃型の維新のあせりを感じました。
合区問題をめぐる自民党のご都合主義への批判
共産党の畑野氏は、合区の問題の経緯を述べて、自民党の「ご都合主義」を批判しました。
「自分勝手な都合により合区制度を強行してきた責任を棚に上げ、合区の解消のために改憲を主張するなど、言語道断です。改憲の理由として、地方の声が反映されないことをしきりに強調しますが、実際に自民党が推し進めようとしているのは衆議院の定数を削減し、地方など少数の意見を切り捨てることです。」
「都道府県を参議院選挙の選挙区の単位とすることをやめ、比例代表を中心とした制度への抜本的な改革こそ必要です。」
また、中道の西村智奈美氏も次のように述べていました。
「合区について、例えば全体の定数を増やすなど何らかの措置を講じていくことは必要と考えるが、全て国民は法の下に平等とする憲法第14条を乗り越えて1票の格差を広げることには賛成できない。
衆議院で比例の定数を大幅に削減して民意、特に少数政党を支持する国民の声を届きにくくする論外の案を提案している自民党に、参議院の合区解消の議論を提起する資格はないと申し上げたい。」
附帯決議の重要性を指摘した中道・西村氏
さらに、西村氏の発言の中に下記のようなくだりがありました。
「先週の憲法審査会で国民投票法改正案が採決された。あくまで手続法なので苦渋の思いで賛成したが、私個人は憲法改正議論をほかの重要な政策に優先して進めようという気持ちは全くない。特に9条を改正する必要がないという立場は全く変わらないし、今回の改正が成立しても国民投票をすぐにでも行えるということでは全くないということを改めて申し上げたいと思う。
どうしても改憲を発議したいのであれば、附則第4条に明確に示され、今回その趣旨を確認するためにあらためて附帯決議で記された措置をきちんと講じることが当然の法的前提だ。
どうしても改憲を発議したいのであれば、附則第4条に明確に示され、今回その趣旨を確認するためにあらためて附帯決議で記された措置をきちんと講じることが当然の法的前提だ。
さらに、法的観点のみならずインターネットが選挙に及ぼす影響を心配する国民の実感、例えば兵庫県知事選挙、現在国会で追及が続いている高市総理の秘書が他党候補などの誹謗中傷動画の作成に関与していたとされる疑惑などを見れば、必要な法的措置を講じた上でなければ日本の未来を左右する憲法改正の国民投票をとうてい行うべきではないと考える国民は改憲に消極的な方々に限らないと考える。」
私はこの発言、特に国民投票法改正案に「苦渋の思い」で賛成したと述べたことに強い印象を受けました。会派を代表して発言した國重氏をはじめ中道の他のメンバーがどのような思いで憲法審に臨んでいるのかわかりませんし、正直中道に多くは期待できないと感じていますが、それでも改憲勢力の敷いたレールに安易に乗ることなく、「ダメなものはダメ」と自身の信念に従って行動してほしいものと思います。
新藤氏は発言の最後に「次回の審査会でも合区と地方自治に関してさらなる集中的な討議を行ってはどうかと考えている」と述べていましたが、ここにきてなぜ簡単に改憲案がまとまるとはとても考えられない合区問題に焦点を当てようとしているのでしょうか。今後に向けて参院側を懐柔するための布石を打っておこうともくろんでいるのかもしれませんが、どうにも読み切れません。
「次回」に当たる7月2日の定例日に憲法審は開かれませんでしたが、会期延長論も出てきており、今後の展開を注視していきたいと思います。
「次回」に当たる7月2日の定例日に憲法審は開かれませんでしたが、会期延長論も出てきており、今後の展開を注視していきたいと思います。
この日の傍聴者は合区がテーマだったためか前回より減って50人弱でしたが、途中おそらく誰か審査会委員の後援会の方々だったのでしょうか、10人以上のグループが入ってきて短時間傍聴していました。記者は4人ほどで、TVカメラはありませんでした。(銀)






