とめよう戦争への道!百万人署名運動

署名運動をとおして、改憲・戦争への道を許さない闘いを全国的に広げていきます。

カテゴリ: 憲法

毎月第1月曜日の午後6時30分~約1時間行われている防衛省前行動(主催;辺野古への基地建設を許さない実行委員会)が、今年は1月4日(木)から開始されました。この抗議活動は今年で20年目となります。約100人が参加し、昨年末の国の辺野古・代執行(県知事に代わり国土交通相が防衛省が出した設計変更申請を承認してしまった!)への抗議・弾劾の声を上げました。
01041
01042
01044
毎回、沖縄現地からの電話アピールがありますが、今回は辺野古ゲート前で座り込む沖縄平和市民連絡会の上間芳子さんから。上間さんは「代執行裁判も含め辺野古裁判では県が訴えている大浦湾の軟弱地盤問題などの内容審議に全く入らず判決を出している。これでは裁判所の役割を果たしていない!」と訴え、「裁判で負けたわけではない、国に反対の声を上げ続けていく」と新年の決意を表明されました。

続いて、2団体から防衛大臣らあての抗議申し入れ書が読みあげられ、受け取りに出てきた総務課の職員に手渡されました。
01045

前代未聞の国の地方自治を圧殺する「代執行」がこんな形で執行されるのを目の当たりにし、私は「こんな法律がいつできたんだ!」とびっくりしました。昨12月29日付け琉球新報には「代執行は極めて例外的な措置として地方自治法に定められている」とあり、またびっくり。まさか地方自治を否定するようなことが戦後憲法下の地方自治法に書かれてるわけがないだろうと。しかし、そのあとの記事「2000年の地方分権改革以降に設けられた制度だが、実行は一度もなかった。」まで読んで、納得しました。具体的に何年に改悪されたかわからないのですが、きっと沖縄県民の辺野古新基地建設反対の民意を背景にした県知事の姿勢を覆すために最終手段としてこっそり書き込まれていたんだと思います。許せない!

国策である戦争を阻むために戦後憲法に書き込まれた地方自治。これを踏みにじって平然としている岸田政権は本気で戦争に舵を切っています。
防衛省は1月12日にも辺野古・大浦湾側の埋め立て工事に着手する見込みだと報道されています。全国から反対の声をあげましょう!(S)



12月7日(木)10時から、今臨時国会5回目の衆議院憲法審査会が開かれました。
この日が今国会3度目にして最後の実質審議の機会となったからでしょうか、「総括的な自由討議」が行われ、予定時間を少し超過して11時40分前に散会となりました。

今回の審議会について、大手メディアは、自民党が来年1月に始まる通常国会で緊急事態条項の条文案を起草するための作業部会を設置することを提案し、改憲勢力の各会派が同調したことを報じています。

yurusuna
下に『毎日新聞』のウェブサイトに掲載された記事を転載させていただきますが、ほかにも、たとえば『NHK NEWS WEB』は「国会議員の任期延長 自民 憲法改正条文案の起草機関を提案」、『時事ドットコムニュース』は「自民、条文起草へ機関設置提案 衆院憲法審、緊急事態条項を想定」という見出しの記事を掲載しています(いずれも12月7日付)。

自民、緊急条項案起草の作業部会設置を提案 衆院憲法審
『毎日新聞』2023年12月7日

衆院憲法審査会は7日、自由討議を行った。選挙の実施が困難な時に特例的に衆院議員の任期を延長する「緊急事態条項」を巡り、創設のための条文案を起草する作業部会を来年の通常国会で設置するよう自民党が提案。公明、日本維新の会、国民民主の3党などは賛同した。立憲民主党は反対したが、CMやインターネット広告の規制などで課題が残る国民投票法の見直しについては作業部会の設置に応じると表明した。
今国会中の衆院憲法審は会期延長がなければ今回が最後。与党筆頭幹事の中谷元氏(自民)は、議員任期延長について、昨年の臨時国会と先の通常国会で計2回の論点整理が行われたことを踏まえ「そろそろ次のステージに入っていく必要がある」と主張し、来年の通常国会での条文案起草作業への移行を提案した。
一方、野党筆頭幹事の中川正春氏(立憲)は、大災害や未知の感染症の世界的大流行などの緊急事態には法律で対応可能と指摘。「緊急事態条項は現時点で憲法に明記する必要はない」と主張した。国民投票法の見直しについては「作業部会などの設置も含めて、前に進めることができる」とした。【木下訓明】
* 引用、ここまで。

この記事で紹介されている中谷氏の発言の詳細は、
「この臨時国会での討議の締めくくりに当たり、これまでの議論の到達点を確認する」、「議論が大きく進んだのは緊急事態条項、特に議員任期の延長をはじめとする国会機能の維持についてであり、昨年以来2度の論点整理が行われ、自民、公明、維新、国民、有志の5会派においてはほとんどの論点について認識が一致している」。
「ここから誰の目にも明らかになったのは、そろそろ次のステージに入っていく必要があるということだ」、「そこで与党筆頭幹事として、この際少し具体的な提案をさせていただきたい」、「まず、来年の通常国会に、議員任期延長や解散禁止などを含めた緊急事態における国会機能維持の改憲について、具体的な条文を検討する機関を設け、起草作業のステージに入ることを提案する
というものでした。
yjimage

自民党の発言者全員が自衛隊明記を主張

これを文字どおり受け取れば、自民党が改憲の発議、国民投票の実現に向けていよいよ本腰を入れようとしていることを示したものにほかならず、今後の動向に最大限の注意を払っていく必要があると思います。
また、私はもう1点、この日発言の機会を得た自民党の委員3人が、そろって自衛隊明記の改憲を主張したことにも警戒を呼びかけたいと思います。

まず、中谷氏は「議論の到達点」の1つとして、「自衛隊明記についてはほぼ合意が形成されている。条文化を見すえた場合、残る論点はその記述の仕方といったテクニカルな点だけと言っても過言ではない」と、耳を疑う誤った(「と言っても過言ではない」という言葉を投げ返したいところです)認識を開陳しました。現に、玉木雄一郎氏(国民)は「中谷氏からほぼ合意ができている旨の話があったが、私は単なる明記案では中途半端だと考えるので反対だ」と明言しています。
yjimage

次いで下村博文氏も、「我が国に迫り来るさまざまな脅威から国の主権と国民の生命と財産を守り抜くために、自衛隊明記と緊急事態条項創設の2点を軸とする改憲の実現に向け、速やかに具体的な条文案の策定と国会発議が行えるよう提案する」などと述べました。ただ、発言の力点は緊急事態条項の方にあったようで、「想定外の事態に迅速に対応するため、個別法ではなく憲法を直接の根拠として内閣が緊急政令、緊急財政処分を行える規定を設けるべきだ」、「東日本大震災のときは71の関連法、159の政令を成立させているが、それだけ復旧・復興が遅れてしまったということでもある」、「そもそも憲法に緊急事態条項がないのは政治の不作為ではないかと思う」など言いたい放題でした。

極めつけは山田賢司氏の発言でした。氏は「憲法では表現の自由を保障し検閲を禁じているが、GHQによって1949年まで検閲が行われていたほか、プレスコードは占領終了まで維持された。明確な憲法違反だが違憲訴訟が提起された例は見当たらなかった」、「憲法が保障する国民の人権を守るためには国家の主権と独立を守らなければならないということを、あらためて国民の皆様にも理解していただきたい」などと述べた後、「外国との関係では国際法や国際人道法があるが、それで国民の命が守られるかと言えば、(そうでないことは)ウクライナや中東の情勢を見れば明らかで、国際法を守らない者の武力攻撃から守るためには実力が必要だ」、「防災用語に自助、共助、公助という言葉があるが、防災訓練の現場では発災直後には公助は期待できないので自助、共助で命を守ってくださいと呼びかけている。これは武力侵略を受けた場合にも当てはまり、国連を含む国際機関の関与はきわめて限定的であるので、自分の国は自分で守る、そして同盟国・同志国と協力して守ることが必要だ」などと続けました。
突っ込みどころだらけのトンデモ論ですが、とくに前半のくだりに対しては、「表現の自由と自衛隊と何の関係があるのか。軍事組織は表現の自由など国民の人権を制約しようとするものではないか」、「アメリカに対して当たり前の要求もできない対米関係の現状をどう考えているのか。自衛隊を明記したって解決しないぞ」と言ってやりたいと思いました。

怒りカット4.png


議員任期延長改憲の行方は?

議員任期の延長問題については、「立憲民主党はワーキングチームを設置し、一応の結論を得た」として、奥野総一郎氏(立民)から報告がありました。「一応の結論」と言うとおりややわかりにくい内容でしたが、氏は「緊急集会はその制定経緯から国家的な緊急事態を想定した制度であることが明らかであり、戦前の国家による権力乱用の反省に基づき、徹底した国会中心主義の観点から創設されたきわめて優れた仕組みである」、「議員任期の延長制度は、議員が選挙を経ておらず民主的な正当性に疑義がある中で、衆議院として暫定的でなく正式な決定を行うものであり、戦時中に戦争遂行体制の整備を口実に任期が延長された歴史的事実を見ても悪用のおそれがあり問題がある」などと説明しました。

これについて、北側一雄氏(公明)は「70日を超えて長期間緊急集会の開催で国会の機能を認めていこうというなら、二院制の問題にも衆参同時活動の原則にも反するものであり、それは憲法を改正しないとできないはずだ」と反論し、「来年は是非(立憲民主党の)改憲案を示してほしい」、「来年は是非(緊急事態)条項案のたたき台を基に議論していくことが必要だ」と「来年は是非」を連発していました。

これに関連して、中川正春氏(立民)は「緊急事態条項について、現時点で私たちは憲法に明記する必要はないと考えている。この課題について合意は見えていないと判断している」と明言し、「今の時点で意見を集約できそうな課題は国民投票法に関連した見直し作業で、特にネット社会の進展などによって当初の国民投票のあり方では公平・公正な国民投票が実施できない、見直しが必要だという方向性は合意、あるいは確認できている。その原案作成のための作業部会などの設置も含めて前に進めることはできると思う」と主張しました。
yjimage

来年の通常国会で改憲条文案作成のための作業部会が設置されるとすれば、そのテーマは緊急事態条項になる公算が大きいと思われます。立民・共産がどこまで抵抗できるのか、議員任期の延長に加えて緊急政令・緊急財政処分まで取り上げられるのか、私たちの見えないところで改憲条文案づくりが進むことになります。自衛隊・自衛権明記、緊急事態条項新設の改憲を阻止するために、私たちは作業部会などの設置に断固反対しましょう。

怒りカット4.png


来年に向けた動きと言えば、『産経ニュース』に以下の記事が掲載されました。高村氏には2014年から15年の集団的自衛権一部容認の閣議決定、安保法制の制定に際して、北側氏とともに自公間の合意形成を主導した過去があり、すでに2017年に議員を退いている高村氏がしゃしゃり出てくるとすれば、緊急事態時でもないのに議員任期の延長を先取りするような異様な事態だと思います。

改憲実現に課題山積の自民 高村正彦元副総裁が公明と調整へ
『産経ニュース』2023年12月7日

今国会の会期末を13日に控え、衆院憲法審査会は7日が最後の実質審議となった。岸田文雄首相(自民党総裁)が来年秋までの総裁任期中の憲法改正に意欲を示す中、改憲を党是に掲げる自民が本気度を示せるかが問われている。
「来年の通常国会からは具体的に(憲法改正の)条文化を巡り議論を重ねていく段階に来た」。衆院憲法審の与党筆頭幹事を務める中谷元氏(自民)は7日、記者団にこう述べた。
自民や公明党、日本維新の会、国民民主党など改憲勢力は先の通常国会で、緊急事態条項新設などの必要性で足並みをそろえた。
ただ、臨時国会は改憲案作りが具体化しないまま終了する見通しで、改憲を期待する他党や保守陣営では自民に対し、不信感が芽生えつつある。維新や国民民主などは自民の本気度が見えない場合、改憲の可否を問う国民投票に向けたスケジュール設定や定例日以外の憲法審の開催、閉会中審査などを求める書面を突き付ける構えだ。
一方で、自民の危機感も強まっている。党憲法改正実現本部(古屋圭司本部長)は6日、全ての所属国会議員らに対し、「憲法改正研修会」の開催を促す書面を通達。各選挙区支部などでのきめ細やかな開催や、改憲に関する活動への協力などを要請した。改憲機運を盛り上げる狙いだ。
友党との連携強化にも動き出した。緊急事態条項を巡り、自民は緊急時の国会議員の任期延長に加え、内閣が法律に代わって制定する緊急政令も可能にすべきだとの立場。大正12年の関東大震災に際し、当時の政府が明治憲法の緊急勅令を駆使して苦境を乗り切ったことを重視。任期延長だけでは「国会議員によるお手盛り改憲」と批判されかねないことへの警戒もある。
ただ、公明は緊急政令の導入に慎重だ。「支持母体の創価学会の池田大作名誉会長が死去して以降、山口那津男代表の護憲姿勢が強まっている節がある」(自民幹部)との懸念もある。このため自民は同本部最高顧問を務める高村正彦元副総裁に調整を委ねる方針。安全保障法制をまとめる際に公明との折衝を担った手腕に党内の期待は高い。
自民は裏金問題、維新は大阪・関西万博を巡る批判、国民民主は前原誠司氏らの離党と改憲勢力はいずれも逆風に直面している。態勢を立て直し、憲法改正というゴールに向けて結束を維持できるのかも焦点となる。(内藤慎二)
* 引用、ここまで。

上掲の記事の最後に指摘されているように、いま改憲勢力の各会派は深刻な「逆風に直面」しており、特に岸田文雄首相はこのところの憲法審で維新、国民が自民の尻をたたく根拠としてきた「自民党総裁任期中の改憲」どころかいつまで首相・総裁の座にいられるかもわからない状況に追い込まれているわけですが、そうしたときであるからこそ、岸田氏あるいは彼の後任者は人々の関心をそらそうとして改憲に突き進もうとするかもしれません。
政治情勢の推移を注意深くフォローしながら、私たちは何があっても粘り強く改憲・戦争反対の旗を掲げ続けていきましょう。

この日の傍聴者は45人ほどだったと思います。記者は最初2人いましたが、途中から1人になってしまいました。
この日も自民党の委員の欠席が目立ち、3~7人が席を外していました。今回が今国会最後の憲法審となりますので記しておきますが、自民党と日本維新の会の委員には審議に臨む態度がなっていない者が目立ちます。この日特にひどかったのは細野豪志氏(自民)で、隣席の古屋圭司氏(なんと自民党憲法改正実現本部の本部長だというのだからあきれます)と長々と私語を交わしたり、スマホに見入っていたりしました。(銀)

12月6日(水)13時から、今臨時国会2回目の参議院憲法審査会が開催されました。

今回はテーマを限定することなく「憲法に対する考え方」について意見交換を行うということで、まず各会派1人ずつ5分以内での発言、続いて発言を希望する委員の3分以内での発言がありました。制限時間が厳しく管理されていたこともあって、14時50分過ぎに閉会するまで27名(定数45のちょうど6割)が意見表明の機会を得て、玉石混淆の(私見では「石」の方がだいぶ多い)持論を展開しました。
今回の傍聴記では、会派ごとに発言者の意見を紹介していきたいと思います。
yurusuna

自衛隊明記、緊急事態条項の必要性を全面展開した自民党

まず、12名が発言した自民党ですが、会派代表として発言した山本順三氏は、合区問題について「憲法審で議論を深めていくことが重要だ」が、「まずは参議院改革協議会での議論の進展を見てはどうかと考えている」と述べました。松下新平氏も同様の発言を行っており、党として当面は憲法審で合区問題は取り上げないという方針を固めたのかもしれません(「しれません」と書いたのは、加藤明良氏が「合区制度に対する反対や懸念を解消するためには、憲法上都道府県を参議院の選挙区とし定数を明記する必要がある」という見解を披露したからです)。

緊急事態条項、自衛隊明記については、多くの委員が右派色、もっと言えば極右色を丸出しにした発言を重ねました。
例えば片山さつき氏は、「緊急集会を含む緊急事態対応について、論点ごとに各会派が条文案を含む具体的な考えを提示し合い、議論を進めて国民に条文案を示すという憲法審の責務を果たすべきだ」と述べた上で、「それをせずに緊急事態対応の議論をいったん止めるということなら、自衛隊の明記を課題として取り上げて改憲原案を審査するという憲法審の設置趣旨に則った活動を行うべきだ」と主張し、「国の最大の責務は国民の生命と財産、領土や主権を守り抜くことにあることからすれば、最も根幹的な国防規定について議論し憲法にどう反映させていくかを考えることに最優先で取り組むべきだ」、「現在の国際社会は、憲法が規定する“諸国民の公正と信義を信頼して、われらの安全と生存を保持”できる状況とはなっていない」などと言い募りました。

片山氏のほかにも、衛藤晟一、山谷えり子、山田宏、青山繁晴などの「論客」が次々に同様の発言を重ねました。ここでいちいちあげつらうことは控えますが、大いに驚かされた発言を2つだけ紹介しておきます。
1人目は山田宏氏。「自衛隊は軍隊ではないとされているため、生命の危険を伴う職務でありながら、自衛官には軍人用の恩給がなく一般の公務員としての年金のみ。他国の軍人には現役のときも功績や職務への精励に対して何度も叙勲の機会があるのに自衛官は退職後1度だけで、しかも全員が対象にはなっていない」。
もう1人は青山繁晴氏。「2002年の日朝首脳会談で、当時の金正日総書記は初めて拉致の事実を認めた。それは、憲法9条の“国の交戦権は、これを認めない”という条文によって、相手が国であれば、日本は領土を奪われても国民を拉致されても何もできないからだ」。
自民党の委員たちの発言を総括すると、すべての委員が緊急事態条項の創設、自衛隊の明記のいずれか、あるいは両方の必要性に言及しましたが、どちらかと言えば後者に力点を置く委員が多かったように思います。

緊急事態条項を否定、緊急集会の活用を主張した立憲民主党、社民党

共同会派「立憲民主・社民」の委員は8名が発言し、多くが緊急事態条項の必要性を否定し、緊急集会の意義と役割を指摘しました。
例えば福島みずほ氏は、「主権者である国民から選ばれた国会でしか立法はできず、内閣が法律と同じ効力を持つ政令を作って基本的人権を制限することもできるとなれば、立憲主義の否定である」、「(議員任期の延長は)国会議員居すわり改憲であり、国民が選挙で政治を変えたいと思っても選挙をさせない民主主義の否定である」、
熊谷裕人氏は、「衆議院議員の任期延長は選挙を経ていないことから民主的な正当性に疑義があり、そのための改憲は必要でなく、緊急集会をしっかりと活用すべきだ」、「改憲の発議や内閣不信任決議案は緊急集会の権能の外にあるが、総理及び多数の国務大臣を欠き選挙を延期せざるを得ない非常事態下では総理の指名も理論上あり得ると考えている」、
小西洋之氏は、「緊急集会を70日に限定する、あるいは平時の制度だとする見解には法令解釈すらなく、(それを主張するなら)まずは緊急集会の立法事実や根本的な趣旨に照らしてなぜそういう解釈が成り立つのかを説明していただければならない」と述べていました。

また、辻元清美氏は、「2021年の国民投票法改正の議論のとき、発議者は附則4条の趣旨として法改正なくして改憲発議はできないと答弁していることをあらためて確認したい」と指摘した上で、「AIによるフェイクなどの深刻度はさらに増しており、国民投票が偽情報でねじ曲げられるような状況は、改憲への立場に関係なく放置できない問題であり、広報協議会のあり方についても議論が求められている」と提起しました。

議員延期延長改憲に同調せずさらなる議論を訴えた参院公明党

以上のほか、この日の審査会では公明党2名、日本維新の会2名、国民民主党1名、共産党1名、れいわ1名が発言しました。

中でも注目すべきは、緊急集会と議員任期の延長についての塩田博昭氏(公明)の発言でした。氏は、衆院憲法審での議論、憲法制定時の帝国議会における金森大臣の答弁、今年の通常国会の参院憲法審での参考人の意見を整理・紹介した上で、「権力分立と国民主権の観点から、緊急集会と議員任期の延長のいずれが優れているとは言い切れず、それぞれの優れた点や問題点を細やかに洗い出す必要がある」、「今後の本審査会において、緊急集会の権限と活動期限、議員延期の延長等についてさらなる議論がなされることを希望する」と述べたのです。
これはこれまでの参院憲法審での公明党の立場を踏襲したものではありますが、11月30日の衆院憲法審で北側一雄氏が「任期延長の改憲をめぐり、立民に“全く必要性がないと言うのであれば、ちょっと違う段階に入っていかざるを得ない”と通告。“(自民党や日本維新の会、国民民主党など)賛成会派だけで条項案についても検討していくステージに入っていかざるを得ない。その時期が近づいてきている”とも語った」(12月1日付『産経ニュース』)だけに、あらためて衆参公明党の不一致があらわになった形です。

なお、この日れいわ新選組を代表して発言したのは大島九州男氏でした。これは、山本太郎氏が同時刻に開催されていた東日本大震災復興特別委員会に出席していたからですが、私を含めてがっかりした傍聴者は多かったと思います(大島氏はれいわの主張を堂々と展開し、立派に代役を務めていたことを付言しておきます)。

さて、12月6日付の『産経ニュース』が「参院憲法審、今国会も反省生かせず2回で閉幕へ」という見出しで報じたように、改憲勢力にとってはほとんど進展のないまま今臨時国会の参院憲法審は終わりました(有料会員記事であるため冒頭部分しか読めませんが、『産経』の記者は「もともと衆院憲法審に比べて改憲論議のペースが「周回遅れ」と不安視されていた。過去の反省を生かせず、汚名返上とはならなかった」と書いています)。特に、衆参公明党の足並みの乱れが解消されていないことは、彼らにとって頭の痛い問題でしょう。
9rogo

しかし、もちろん安心することはできません。憲法審査会の外では、まるで憲法9条など存在しないかのように対中国戦争の訓練や準備が着々と進められています。国が実際に戦争をするために、改憲勢力は自衛隊・自衛権の明記や緊急政令・緊急財政処分を含む緊急事態条項の創設をますます焦点化してくるでしょう。戦争反対と明文改憲反対は一体の闘いです。引き続き粘り強く改憲・戦争反対の声を上げていきましょう。

今回も、ときどき短時間席を外す者はいましたが、委員の出席率は高かったです。傍聴者は30人強、記者は1~4人が記者席に着いていました。
(銀)

11月30日(木)10時から、今国会4度目の衆議院憲法審査会が開かれました。11月2日の1回目は幹事の選任のみ、9日の2回目は海外視察の報告だけで終わり、16日の3回目には自由討議が行われましたが、先週は休日でしたので、今回が2度目の実質的な審議となりました。

改憲勢力にとっては遅々とした進行に憤懣やるかたないというところかもしれませんが、今国会でも毎週定例日の開催が当然のように強行されており、前週の21日には幹事懇談会が開かれ、「憲法改正の発議後に国会に設ける“国民投票広報協議会”の規定案を、衆院法制局が提示した」(『時事ドットコムニュース』)と報じられました。私たちは、発議、国民投票に向けた準備が少しずつではあっても着実に進められていることを認識しておかなければならないと思います。
yurusuna
この日のテーマは、事前に審査会のホームページで「広報協議会を含め、国民投票法を中心として」と告知されていました。いつものようにまず各会派1名ずつの発言、その後に他の委員の意見表明という形で議事が進められ、前回に続いて予定時間を10分ほどオーバーして11時40分頃散会となりました。

岸田に異を唱える形になった船田元氏の発言

この日、自民党を代表して最初に発言に立ったのは、中谷元氏ではなく船田元氏でした。今年の通常国会までは与党側の筆頭幹事だった新藤義孝氏がそれまでの議論の経過を「私なりに」整理してその後の審議の方向を強引に設定しようとするのが通例になっていましたので、ちょっと驚きました。
発言の内容も、岸田文雄首相の自民党総裁任期中の改憲というスケジュールを事実上否定するもので、これにもびっくりしました。
yjimage

具体的に紹介すると、まず、改憲案の発議、国民投票について、「緊急事態をめぐるテーマでは議員任期の延長を中心として議論が煮詰まってきており、今後は他の1、2のテーマに絞って議論を集約していければいいと思っている」。それは、「発議の際には複数のテーマそれぞれに賛否を聞ける仕組みになっており、せっかくの改正手続きであるので、できれば複数のテーマで発議することを念頭に入れたい」からだと述べました。こんなことが来年9月までにできるわけがありません。

また、改憲手続法については、「憲法改正国民投票運動をめぐる諸問題はなお合意が得られていない」として、テレビCM、外国人の寄付、ネットでの広告や意見表明、フェイクニュースなどのファクトチェック等の論点を列挙し、「これらのシステムを検討する際は、今年10月14日にオーストラリアで実施された改憲投票の状況を参考にすることが有意義であり、適切な時期にヒアリングを行うか事務局に調査させてはどうかと思っている」と述べました。こうした作業も来年9月にはとうてい間に合いません。

立憲民主党の連係プレー

2人目の発言者、階猛氏(立民)は、岸田首相の改憲をめぐる国会答弁を、「期限については自民党総裁の立場を持ち出して積極的に答弁しながら、内容については首相の立場を持ち出して答弁を避けるご都合主義だ」と手厳しく批判し(ただし、この後国民民主・玉木雄一郎氏との質疑で中谷元氏が述べたように、「改憲の内容については各党が議論して決めるのがルール」であり、岸田首相が非難されるべきは改憲のスケジュールについて国会の場で発言することであって、内容について答弁しないことではありません)、今年5月に行われた『朝日新聞』の世論調査では、憲法に関して国会が何を優先して議論するべきかという設問に対して、「7項目の複数回答で、最多は“憲法改正のための国民投票のあり方”の46%、次いで“デジタル時代における人権保障のあり方”が44%、“敵基地攻撃能力の保有”が43%で、“緊急事態時の国会議員の任期延長”は18%に過ぎなかった」と、改憲勢力にとっては不都合な事実を指摘しました。
その上で、立憲民主党の委員たちは階氏と審査会後半に発言した奥野総一郎氏、中谷一馬氏の3人が役割分担して、党内に設けたワーキングチームにおける上位2項目の検討内容を紹介していました。
下に奥野氏の提出資料を貼り付けておきます。

ネット規制.png
 

一方、日本維新の会、国民民主党の委員たちは、この日も岸田首相の「自民党総裁任期中の改憲」を盾にとった発言を繰り返し、閉会中審査の実施や改憲条文案作成のための作業部会の設置を主張していました。
以下、『産経新聞』のウェブサイトの記事を転載させていただきます。

「閉会中審査」検討へ 改憲勢力が必要性共有
『産経ニュース』2023年11月30日

与野党は30日の衆院憲法審査会で、改憲に関して国民の判断材料の提供を担う「国民投票広報協議会」の制度設計などについて議論した。改憲政党の日本維新の会や国民民主党は自民党に対し、審議のスピードアップを要求。閉会中審査の実施などを検討することで足並みをそろえた。

「今国会が予定通り(12月13日に)閉じたとしても閉会中審査を行うべきではないか。ゴールに向けて今国会と来年の通常国会では定例日にこだわらず、開催日程をできる限り増やして討議を加速させるべきではないか」。維新の青柳仁士氏は30日の憲法審で、岸田文雄首相が自民総裁任期中の改憲実現を目指すとしていることに触れた上で、こう訴えた。

国民民主の玉木雄一郎代表も「正直、絶望的な徒労感を感じている。(緊急時に国会議員の任期延長を可能にする)憲法改正の条文を作る作業部会の設置をお願いしたい」と強調した。

両氏の主張には、改憲論議が足踏みする中、自民が十分に指導力を発揮していないとの不満が込められている。最近は改憲を期待する保守陣営の失望感も表面化。自民の石破茂元幹事長は憲法審で「(自民に対し)『やるやる詐欺』などの発言が出ている。私どもとして内心、じくじたるものはある」と語った。

与党筆頭幹事を務める中谷元氏(自民)は憲法審終了後、閉会中審査や定例日以外の開催などに関して、記者団に「幹事会で提案したい」と前向きに応じる構えを示した。改憲政党が必要性を共有している議員任期延長の改憲案の条文化については、「そんなに時間はかからない」と述べた。
ただ、改憲に慎重な立憲民主党は「定例日に議論すべきだ」(重鎮)としており、野党第一党の抵抗が障壁となる可能性がある。
(内藤慎二、永井大輔)
* 引用、ここまで。

上掲の記事にある維新、国民の委員の発言はこのところ何度も繰り返されている「想定内」のものでしたが、公明党の北側一雄氏の以下の発言は「想定外」と言っても過言ではないような内容でした。ここでも『産経新聞』のウェブサイトの記事を転載させていただきますが、見出しにある「最後通告」という穏やかでない表現はけっして誇張されたものとは言い切れないと感じました。
yjimage

公明が立民に最後通告? 賛成会派だけで改憲案作り示唆
『産経ニュース』2023年12月1 日

公明党が立憲民主党に“最後通告”? 30日の衆院憲法審査会で、緊急時の国会議員の任期延長を可能にする憲法改正の必要性を訴えてきた公明の北側一雄氏が、立民が不要論を打ち出した場合、賛成する会派だけで改憲条項案づくりの検討に入る考えを示した。

公明の憲法調査会長を務める北側氏は任期延長の改憲をめぐり、立民に「全く必要性がないと言うのであれば、ちょっと違う段階に入っていかざるを得ない」と通告。「(自民党や日本維新の会、国民民主党など)賛成会派だけで条項案についても検討していくステージに入っていかざるを得ない。その時期が近づいてきている」とも語った。
これに対して立民の中川正春憲法調査会長は憲法審終了後、記者団に「憲法審の中が分断されるような議論をやったら、国民の議論も分断される」と不快感を示した。
* 引用、ここまで。

北側氏の発言の内容が参議院を含めた公明党の総意であるのかどうかはわかりませんが、氏は「広報協議会の規程は衆参両院で検討していく必要があるので、早急に衆参両院で協議できる場を設定してほしい」とも述べており、早期の改憲実現に前のめりな立場をはっきりと表明していました。公明党の憲法論議のキーパーソンであるだけに、大いに警戒すべきであると思います。

オスプレイの墜落事故に関する三者三様の発言

この日の前日、11月29日に米軍横田基地所属のオスプレイが屋久島沖に墜落する重大な事故があり、3人の委員がこれに言及しました。

まず、赤嶺政賢氏(共産)は、「これ以上、オスプレイの飛行を容認することはできない。米軍のオスプレイは直ちに撤収させるべきであり、自衛隊も導入を中止すべきだ。憲法の上に日米安保がある実態を変えることが政治の最優先課題だ」と、至極当然の意見を表明しました。

一方、鬼木誠氏(自民)はとんでもないことを言ってのけました。「心からお見舞いとお悔やみを申し上げる。自衛隊の事故ではないが、同盟国アメリカが国内で起こした事故ということで心を痛めている」まではまだしも、「自衛隊員は命をかけて国民を守っている。訓練でさえ命がけという中で業務に励んでいる。その自衛隊の存在が憲法の下では非常に不安定であることをあらためて問題に感じている」と議論を飛躍させ、さらには「なぜ衆参3分の2の勢力があっても改憲が前に進まないのかと国民の中にフラストレーションがたまっている。先週は野党から“やるやる詐欺”だと言われたが、一番悔しい思いをしているのは我々自民党だ」と述べたのです。

同じ自民党でも石破茂氏の発言はトーンを異にするものでした。氏は「私は共産党とは全く考え方が違うが、憲法と日米安保と防衛2法(自衛隊法と防衛省設置法でしょうか?)の関係はきちんと詰めておくべきものだと思っている。私が防衛庁長官をやっていた2004年、沖縄国際大学に米軍のヘリが墜落したとき、日本の警察は全く入れなかった。地位協定の改正も含めて早急に議論しなければ独立主権国家たり得ないと思っている」と述べました。本当にそう考えているなら自民党内でさっさと議論を提起しろよ、あの事故から来年でもう20年になるんだぞと言いたいところではありますが・・・

この日の傍聴者は前回と同じく40人弱くらいでした。記者は2、3人いて、1人もいない時間が長かった前回よりはましでしたが、誰が発言者の意見にうなずいているかとかヤジを飛ばしたかとか、あるいは誰が私語を交わしているかとか居眠りしているかとかしょっちゅう席を立っているかとか、傍聴しないとわからないこともあるので残念に思います。
この日も自民党の委員の欠席が目立ちましたが、5人を超えることはほぼなく、いつもより少なめでした。
(銀)

報告が遅れて申し訳ありませんが、11月16日(木)10時から、衆議院憲法審査会が開かれました。今国会3度目の開催でしたが、11月2日は幹事の選任のみで1分弱で散会、9日は海外視察の報告だけで40分あまりで終了しましたので、今回が初の実質的な審議となりました。自由討議が行われ、予定時間を10分ほどオーバーして11時40分頃散会となりましたが、後述のようにその内容が「実質」を伴うものであったかどうかは大いに疑問です。
yurusuna
議事は、通例に従ってまず各会派1名ずつが大会派順に発言し、その後他の委員が意見を述べたり質疑を行ったりという形で進められました。
以下、各会派1巡目の発言の要旨をまとめた『NHK』のウェブサイトの記事を転載させていただきます。なお、(NHKの記事ではいつもそうなのですが)有志の会の北神圭朗氏の発言は掲載されていません。有志の会が政党ではないからかもしれませんが、衆院で活動している会派には違いないのですから、NHKは他の委員と同様に扱うべきではないでしょうか。
なお、この日、北神氏は国民投票時の偽情報対策の重要性を指摘し、「国民投票広報協議会などが監視や調査を行い、プラットフォーム事業者などに削除やアクセス遮断を命じる制度を導入することも検討に値すると思う」などと述べていました。

衆院憲法審査会自由討議 緊急事態条項などめぐり各党が主張
『NHK NEWS WEB』2023年11月16日

衆議院憲法審査会は、今の国会では初めてとなる自由討議を行い、大規模災害など緊急事態での対応を憲法に規定するかどうかや、憲法9条を改正して自衛隊を明記するかどうかをめぐり各党が主張を展開しました。
この中で自民党の中谷・元防衛大臣は「緊急時の国会機能維持は重要で、議員任期の延長をはじめとした議論を詰めるべきだ。また憲法に自衛隊を明記し、平和のために用いるという憲法を頂点とする法体系を完成させなければならない」と述べました。

立憲民主党の中川憲法調査会長は「緊急事態条項や自衛隊を憲法に明記する必要はない。衆議院の解散権の乱用の問題は、憲法69条の内閣不信任を前提とした解散に限る憲法改正も視野に入れて検討する必要がある」と述べました。

日本維新の会の岩谷良平氏は「日本維新の会などがまとめた緊急事態条項の条文案をたたき台に早急に改正条文を確定すべきだ。スケジュールが厳しければ開催日を増やし集中討議を行うべきだ」と述べました。

公明党の北側副代表は「大事なことは緊急時に立法府が必要な措置をとれるための条文が憲法に存在していることで、できるかぎり速やかに結論を出さなければならない」と述べました。
国民民主党の玉木代表は「岸田総理大臣が総裁任期中に憲法改正をしたいのなら、議員任期の延長規定の創設に絞って成案づくりを進めるしかないのではないか」と述べました。
共産党の赤嶺政賢氏は「憲法の原点は先の戦争によって犠牲者を出したことの痛苦の反省であり、9条は絶対に戦争をしないことを求めている」と述べました。
* 引用、ここまで。

続いてもう1本、この日の審査会について報じた『時事通信』のウェブサイトの記事を転載させていただきます。

維国、今国会中の改憲案主張 自民との違い強調―衆院憲法審
『時事ドットコムニュース』2023年11月17日

衆院憲法審査会は16日、今国会初の自由討議を行った。岸田文雄首相が所信表明演説で「条文案の具体化」を求めたことを踏まえ、憲法改正に前向きな日本維新の会と国民民主党が今国会中に改憲案を作成すべきだと主張。首相の掛け声と裏腹に論議加速に慎重な自民党との違いを強調し、保守層の取り込みを図る狙いとみられる。

憲法改正に関し、首相は先月30日の衆院予算委員会で「目の前の(自民党総裁)任期中に改正できるよう最大限努力する」と明言した。
維新の岩谷良平氏は、首相発言を実現するには12月13日までの今国会中に改憲原案をまとめる必要があると指摘。「憲法審の開催日を増やし、集中討議を行うべきだ」と述べた。
国民民主の玉木雄一郎代表も「自民党に熱意と本気度が感じられない」と批判。「議論するテーマを明確にすべきだ」として、緊急事態条項の創設に絞って条文案を作るよう求めた。

これに対し、自民の中谷元氏は「できる限り幅広い会派による合意形成が得られるよう努めたい」と述べた。同党には、野党第1党の賛同を得ずに強引に国会発議すれば、国民投票で否決される可能性があるとの懸念が根強く存在する。中谷氏は首相が目指す改憲の期限についても「総裁の身分を持っているうちにという意味で、再選の可能性もある」とし、必ずしも来年9月とは限らないとの認識を示した。
一方、立憲民主党の中川正春氏は「審査会の議論が国民的議論になっているかと言えば、程遠い現実がある」とくぎを刺した。
* 引用、ここまで。

聞くに堪えなかった岸田の「自民党総裁任期中改憲」の解釈をめぐる議論

『時事通信』の記事で紹介されている岩谷氏(維新)、玉木氏(国民)の主張と中谷氏(自民)の応答ですが、岸田首相の「自民党総裁任期中の改憲」発言をめぐっては、今年の通常国会最後の6月15日の憲法審でも三木圭恵氏(維新)と上川陽子氏(自民:このときは憲法審査会の幹事を務めていましたが、その後外相に就任し現在は憲法審から抜けています)との間で、同様のやり取りがありました。三木氏は、つい先日、11月22日の衆院予算委員会でもこの話題を持ち出し、岸田首相から「私の総裁任期は来年9月までという区切りがある。その目の前の任期において最大限努力すると申し上げている」という答弁を引き出していました。

本当にくだらない議論で(自民党総裁の任期と改憲のスケジュールとは何の関係もないはずです)、安倍晋三元首相のついに実現されなかった「任期中の改憲」という無責任な放言を岩盤保守層の支持をつなぎとめるために繰り返している岸田首相も、上掲の記事で的確に指摘されているように「自民党との違いを強調し、保守層の取り込みを図る狙い」が見え見えの維新、国民両党の委員も、自らの低次元の発言を恥ずかしいと思わないのでしょうか。

筆頭幹事であるがために、自民党を代表して「総裁の身分を持っているうちにという意味で、再選の可能性もある」などといかにも苦しい言い訳をせざるを得なかった中谷氏(自民)が(少しだけですが)気の毒に思えるほどでした。氏は「国民投票によって国民に分断を生んではならないし、政権に対する信任投票にすり替わりがちでもあるので、私としては審査会において各党がしっかりと議論できるよう努力していきたい」とも述べていましたので、今後、前任の新藤義孝氏(現在は経済再生担当相を務めており憲法審のメンバーではありません)のような強引な運営を行わないかどうか、注視していきたいと思います。
憲法審査会

議員任期延長論と緊急政令必要論の矛盾

この日の審査会では、「地獄行こう」(自国維公)あるいは「悪政4党連合」(共産党が11月14日に採択した『党大会決議案』で打ち出した言葉で、この日玉木氏から「不毛なレッテル貼り」だと苦言を呈されていましたが、私も(共産党らしいと言えばそれまでですが)センスの悪いネーミングだと思います)の多くの委員が緊急事態時の国会議員の任期延長の必要性に言及し、さらに緊急政令の規定も設けるべきだと主張する者もいました。

これに対して、階猛委員(立民)は「任期を延長して国会がフルスペックで機能するようにしても、最後は政府が独断で緊急政令を出せるということであれば矛盾だと思う」と指摘しましたが、自民党の委員だけでなく、玉木氏も「議員任期を延長しオンライン審議を可能にしても、規定できない何かがあったときに国家の機能に隙間を作ってはならないということで、緊急政令の規定を設けてはどうかと提案している」と述べていました。「規定できない何か」って何なんでしょうか。6月7日の参院憲法審で山本太郎氏(れいわ)が皮肉っていましたが、火星人の襲来かアルマゲドンなんでしょうか。

ガザ情勢に言及したのは赤嶺政賢氏(共産)だけ

最後にもう1点、強調しておきたいのは、ロシアのウクライナ侵攻の後には改憲勢力の委員たちがこぞって緊急事態条項の必要性と結びつけてこれに言及していたのに、今回のイスラエルのガザ侵攻について発言したのは赤嶺政賢氏(共産)1人たけだったことです。
確かに改憲派のアメリカべったりの立ち位置からはイスラエルへの非難を包含する文脈で議論を展開することは難しいのでしょうが、ハマスの「テロ」との両成敗的な主張さえ聞かれませんでした。改憲勢力のご都合主義が典型的に現れた事例だと思います。
赤嶺氏は、これもただ1人でしたが、辺野古新基地建設の代執行をめぐる問題も取り上げました。以下、赤嶺氏の主張を紹介した『しんぶん赤旗』の記事を転載させていただきます。

憲法に基づく外交こそ 赤嶺氏 ガザ危機で政府に要求 衆院憲法審
『しんぶん赤旗』2023年11月17日

衆院憲法審査会は16日、自由討議を行いました。日本共産党の赤嶺政賢議員は、深刻な人道危機が起きているイスラエル・ガザ紛争について、日本政府には「日本国憲法の平和主義に基づく外交が強く求められる」と主張しました。
赤嶺氏は、イスラエルの大規模な無差別攻撃により、ガザがジェノサイドの重大な危機に陥っている中で、国際社会による停戦に向けた緊急の働きかけが必要だと指摘。米国に追従し、イスラエルの軍事攻撃の即時中止を正面から求めない日本政府の姿勢を厳しく批判し、「イスラエルとパレスチナの問題は、武力で平和は絶対につくれないことを示している。憲法9条を持つ日本政府こそ、積極的な役割を果たすべきだ」と主張しました。

また、政府が沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設強行のために、玉城デニー知事の権限を奪う「代執行」訴訟を提起したのは「憲法に基づく地方自治を真っ向から否定する暴挙だ」と批判しました。
政府は沖縄県の民意を一顧だにせず、行政不服審査法を乱用し基地建設を強行してきたと指摘。最高裁も政府を追認する不当判決を出したと批判。「憲法が保障する民主主義も地方自治も無視し、新基地建設を強行することは絶対に認められない」と強調しました。
* 引用、ここまで。

この日の傍聴者は40人弱くらいでしたが、驚いたのは開会時に記者席に誰もいなかったことです。その後も入退場を繰り返す記者が1人いただけで、記者がゼロという時間が長かったように思います。
この日も自民党の委員の欠席が目立ち、終始5~7人程度が席を外していました。公明党の委員も早い時間から1人が退場し最後まで戻りませんでした。
(銀)


↑このページのトップヘ