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カテゴリ: 戦争

3月16日(木)10時12分から11時40分すぎまで、今国会3回目の衆議院憲法審査会が開催されました。前回よりさらに開会時間が遅れましたが、事情はわかりません。この日の審査会も「日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正をめぐる諸問題」について各会派の代表が1人7分ずつの持ち時間で発言した後、会長に指名された委員が5分以内で意見を述べるという形で進められました。

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冒頭に新藤義孝氏(自民)が「今週は国民投票法についても討議を行いたい」、最後に階猛氏(立民)が「国民投票法など憲法改正手続に関する議論が今週、来週の2週にわたり行われることになった」と述べ、改憲手続法がテーマの1つとされたことが明らかにされましたが、階氏が苦言を呈したように、「発言者の中には、国民投票法について全く言及がないかほとんど言及がない」委員がいて、実際には今回も緊急事態条項をめぐる議論が中心になっていました。

そうした実態を、まず、毎回転載させていただいている『東京新聞』のウェブサイトに掲載された記事=見出しに注目してください=で確認したいと思います。

緊急事態条項めぐり議論 改憲勢力の中でも見解に差 衆院憲法審【詳報あり】
『東京新聞TOKYO Web』2023年3月17日

衆院憲法審査会は16日、今国会3回目の討議を行った。緊急事態時に国会議員任期の延長などを可能とする改憲を巡り、自民党が衆参両院の過半数の賛成で「緊急事態」と認定する案を訴えたのに対し、公明党や日本維新の会などは3分の2以上の多数の賛成にする必要があると主張し、改憲勢力の中でも見解が分かれた。

自民党の新藤義孝氏は、緊急事態の国会承認の要件について「選挙によって示された民意を尊重する観点で判断するべきだ」と述べ、予算案や法案と同様に過半数を支持すると表明。一方、公明と維新、国民民主党、無所属議員でつくる会派「有志の会」は「原則や現状を変更して特別な状態を作り出すときには、3分の2以上の議決を必要とするのが適切」(国民の玉木雄一郎代表)などと指摘した。

立憲民主党や共産党は、安倍政権下で首相官邸側の働き掛けによって放送法の新解釈が示されたとされる問題に言及。改憲案の国会発議後にテレビ局への不当な政治介入が行われ、国民投票の結果がゆがめられる恐れがあると強調した。
立民の近藤昭一氏は、テレビCMやインターネット広告の量的な規制がない現状では、資金力によって世論が誘導されかねないと懸念を表明。「公平公正な投票環境が確保されない限り、改憲発議はできない」として、国民投票法改正に向けた議論を優先させることを求めた。(佐藤裕介)

◆詳報
16日の衆院憲法審査会での発言の要旨は次の通り。
【各会派代表の意見】
新藤義孝氏(自民)
緊急事態認定の国会承認の要件について、過半数議決なのか、3分の2以上の特別多数議決とするか、本質的な議論が必要だ。多数政党によるお手盛りを避けるということではなく、選挙によって示された民意、すなわち、議会制民主主義を尊重するという観点で判断するべきだ。過半数議決は3分の2議決に比べ軽い判断とは言えないと思う。
近藤昭一氏(立憲民主)
2021年、国民投票法が改正された際、施行後3年をめどに有料広告規制、資金規制、ネット規制などの検討と必要な法制上の措置を講ずるという付則が加えられた。グローバル化、ネット化など大きな変化があり、外国政府の干渉の恐れもある。現行の国民投票法では公平公正な投票が確保されるという憲法上の要請が満たされなくなる。
三木圭恵氏(維新)
私たちは(緊急事態時の)議員任期が内閣と国会により不当に延長されることを避けるため、司法の関与が必要とした。延々と選挙が行われず、民主主義が遠のくことは避けなければならない。例えば、政権与党が3分の2以上を占め、選挙を行わない場合が想定できるが、司法の介入がなければ、このような事態を脱することはできない。
吉田宣弘氏(公明)
わが党は(任期延長の)判断に必要な情報は内閣にあり、裁判所が迅速に判断できるか疑問だとし、決議に(3分の2以上の)特別多数を必要とすることや、任期延長の期間に上限を設けることで乱用を防止できると指摘している。最終的には(緊急事態解除後の国政選挙で)国民の判断が示されるので、司法が介在する必要はないと考える。
玉木雄一郎氏(国民民主)
緊急事態条項について残された論点を意見集約し、具体的な条文作りに入ることを提案したい。選挙困難事案の国会承認は、憲法に規定された(衆院議員)4年、(参院議員)6年の任期の特例を認める以上、原則や現状を変更して特別な状態を作り出すときに当たるので、3分の2以上の議決を必要とするのが適切ではないか。
赤嶺政賢氏(共産)
政権の中枢が政権に批判的な放送番組に圧力をかけていたことは極めて重大だ。日中戦争から太平洋戦争へと突き進む中で、政府は放送に対する統制を強め、戦争を進めるための番組を放送させた。この教訓から、憲法は表現の自由を保障し、そのもとで作られたのが放送法だ。政府が放送番組を評価し、介入することなど到底認められない。
北神圭朗氏(有志の会)
ネットでは玉石混交の情報が氾濫する。憲法改正という重大な判断にあたって、国民の自律的な意思が阻害されないよう、ファクトチェック機関との連携も重要だ。国民投票広報協議会も各政党の主張をインターネットに大量に流すことができるようにするべきだ。対処法は「玉」を圧倒的に流し込み、可能な限り「石」を埋没させることだ。

【各委員の発言】
小林鷹之氏(自民)
政府広報室が今月公表した世論調査によれば、自衛隊に対し、9割を超える人が肯定的に回答している。防衛は国家権力発動の最たるものだからこそ、憲法上明文の規定があるべきだ。
道下大樹氏(立民)
15年に高市早苗総務相が示した、「政治的公平」を放送事業者の番組全体ではなく、1つの番組で判断できるとの解釈が、番組内容に対する圧力、忖度の温床となり、国民投票の結果をゆがめる危険がある。
岩谷良平氏(維新)
憲法に規定されている除名は、議員の身分を例外的に任期前に失わせる議決について、慎重を期す必要性などから、特別多数とされている。任期を延長する場合にも特別多数とすることが、除名と均衡が取れる。
北側一雄氏(公明)
誤った情報、デマ、フェイク情報等は社会の混乱を招くが、情報の発信そのものを規制するのは容易ではない。情報統制になり、国民の知る権利や表現の自由を侵害する。
細野豪志氏(自民)
今後、コロナを上回る強毒化した感染症、国家有事の可能性を考えると、(緊急事態時の議員任期延長は)緊急性の高い課題だ。一方、間違っても国会議員の保身と取られないようにする細心の注意が必要だ。
階猛氏(立民)われわれは、国民投票広報協議会が憲法改正案に関する説明会を開催できるようにし、ネット等利用して憲法改正案の広報ができるようにする改正案をまとめた。
* 引用、ここまで。

緊急事態条項の議論は、前回新藤氏(自民)が提示した論点(下に再掲します)をめぐって、改憲勢力の各会派が「わが党の案はこうだ。私たちはこう考えている」、「この点は一致しているが、ここはまだ違いがあり、さらに議論が必要だ」などと述べる形で進みました。
発言の内容について上掲の記事に付け加えるべき重要な事項はなかったと思いますが、私としては「改憲勢力の中でも見解に差」ということより、新藤氏の敷いた道筋に沿って一致点を見出し改憲の条文案をできるだけ早くとりまとめようとする議論が着々と進んでいることの方が気になりました。
新藤の表
 

吉田宣弘氏(公明)の異様な発言

議論の本筋からは離れますが、緊急事態条項に関する会派代表としての意見表明の中で吉田宣弘氏(公明)が次のように述べたことに、私は大きな違和感を覚えました。
「緊急事態条項の論点について、このたび新藤筆頭(幹事)から論点整理を行っていただいたことに感謝と敬意を表します。」
「日本維新の会、国民民主党、有志の会による条文案を策定する積極的なお取組みには、深く敬意を表するところです。」
「お取組み」だなんて(ふつう「取組み」に「お」をつけますか?)、おべんちゃら(ではなく本心かもしれませんが)にも程があると思います。
1-国会前
(この日は国会や首相官邸前に機動隊の車が何台も並んでいました。韓国のユン大統領が来日し官邸で岸田首相との会談があるからなのでしょうが、とても異様な光景でした。)

一方、改憲手続法(国民投票法)をめぐる議論については、『毎日新聞』のウェブサイトから簡にして要を得た記事を転載させていただきます。

憲法改正の国民投票CM規制、与野党の溝埋まらず 衆院憲法審
『毎日新聞 』2023年3月16日

衆院憲法審査会は16日、自由討議を行い、憲法改正の国民投票に関するCMなどの規制について議論した。自民、公明両党が表現の自由を重視する立場から法規制に慎重な姿勢を示したのに対し、立憲民主党は法規制の必要性を主張して、溝は埋まらなかった。

現行の国民投票法は、投票の14日前から投票・棄権を呼びかけるテレビ・ラジオの有料広告を禁じているが、それ以外の期間の規制はなく、インターネット広告も規制対象外だ。

立憲は、政党による意見表明のためのテレビCMやインターネット有料広告を禁止するなどとした独自の改正案をまとめている。立憲の近藤昭一氏は「現行法はテレビやネット広告の量的規制がなく、資金力によって世論が誘導されかねないという根本的な欠陥を持っている」と主張し、階猛氏も「我々が提案する改正案などを踏まえ、議論を進めるべきだ」と述べた。

これに対し、自民の小林鷹之氏は「立憲案では、表現の自由や国民投票運動の自由の過度な制約となるおそれがないか。憲法改正内容を最もよく知る立場にある政党に規制をかけることは国民に対する情報提供の観点から問題はないのか」などと疑問を投げかけた。

公明の北側一雄副代表も「あえて法規制をすれば、国民の知る権利や表現の自由を侵害し、大事な必要な情報まで排除される危険もあるのではないか」とただした上で、改憲案の内容を広報するために国会に設置される広報協議会の役割強化や、政党の自主規制のルール化が必要だとした。

与党とともに法規制に慎重な日本維新の会はCM規制に言及せず、国民民主党の玉木雄一郎代表はSNS(ネット交流サービス)関係者の参考人質疑を要求した。共産党の赤嶺政賢氏は「(立憲と)共通の問題意識は持っている」としつつ、放送法の「政治的公平」に関する行政文書を巡る審議を求めた。【安部志帆子】
* 引用、ここまで。

要するにテレビやネットをめぐる問題について、自民、公明は効果的な規制は難しいので「言論の自由」を盾にとって民放やネット事業者の自主規制論で済ませようとし(公明党の北側一雄氏は今回「広報協議会」の役割強化や政党側の自主規制のルール化の必要性を強調しましたが、これは自主規制論の対象を国会や政党にすり替えようとするものだと思います)、維新の会はほとんど関心を持っていないということです。議論はするけれども深入りすることは避け、早期に改憲手続法の改定を実現して発議や国民投票が可能だと主張できる状況を整えたいということでしょう。

放送法の解釈変更問題も浮上

このほか、『東京新聞』の記事にもあるように、赤嶺政賢氏(共産)と道下大樹氏(立民)が、憲法に関わる重要な問題として安倍政権時の放送法の解釈変更に言及し、「重大なことは、岸田首相が安倍政権下の政治的圧力で変更された解釈を踏襲していることだ」(赤嶺氏)、「当審査会に総務大臣、NHK会長など放送事業者、有識者を招致し、参考人質疑を行うよう会長にお願いする」(道下氏)などと主張しました。

前回までの審査会では、憲法に基づく野党の要求を無視した内閣の国会召集の回避、国会での議論をスルーしたままでの安保3文書の改定と岸田内閣の軍拡路線、そして同性婚の問題等も憲法に関わる重要なテーマとして提起されましたが、いずれも言いっ放しになっているのが実態です。

石破茂氏(自民)、憤然として退席

最後に一つ、傍聴していなければわからなかった場面を報告しておきましょう。
審査会後半の自由討論では、まず発言を希望する委員が名札を立てて会長の指名を待つことになっています。たいていは事前に発言者がほぼ決まっているようなのですが、この日は名札を立てた委員のうち石破茂氏(自民)だけが最後まで指名されず、発言の機会を与えられませんでした。
おそらくは時間切れのためだろうと思われますが、新藤氏が石破氏の席まで近づいて今回は発言できないことを説明したところ、閉会の直前でしたが石破氏は憤懣やるかたない様子で一足先に席を立って議場から去っていきました。(以上、あくまでも私の推測です。)

この日の傍聴者は30人弱で前回よりさらに少なくなりましたが、記者は7~8人ほどで前回並みした。
委員の出席状況は相変わらずで、自民以外は時々席を外す委員はいるものの全員が出席、自民は時間が経過するとともに欠席者が増え、途中からは常に5人以上、10人近くになることもありました。

今国会での衆院憲法審の開催は3回目ですが、緊急事態条項の議論がじわじわと進んでいます。定例日はまだ12回残されており、前回報告したように維新、国民、有志の会が具体的な条文案づくりを始めていますので、今後一挙に発議に向けた動きが具体化する可能性があります。

新藤議員の「緊急事態条項」の論点整理の資料にもあるように、緊急事態(戦争、大災害、内乱、感染症)の認定は内閣が行います。今のところ憲法審で改憲勢力間でほぼ合意しているのは議員任期の延長にとどまっていますが、自民党などは内閣に政令づくりや財政処分の権限を与える規定を設けることを狙っています。そうなってしまえば、戦争や内乱時に首相が緊急事態を宣言したら憲法の基本的人権を無効化する「緊急政令」が次々と発せられ、反戦運動は暴力的に抑え込まれ、政府に反抗する者には重罰が課せられ、戦争動員を強制される等々、悪夢のような事態が現実化するおそれがあります。これがどんなに恐ろしいことであるか、私たちは今、真剣に考え抜かなければなりません。

また、今回9条についても議論すべきだと発言したのは小林鷹之氏(自民)くらいでしたが、もちろんこちらも警戒を怠ることはできません。改憲手続法の議論についても、中途半端ではあっても改定されれば改憲勢力は発議、国民投票の条件は整ったと主張するでしょうから、注視していく必要があります。
毎回同じことを書いていますが、改憲をめぐる情勢がたいへん厳しい中、私たちは今できることをやっていくしかありません。ともに頑張りましょう!(銀)



3月9日(木)10時5分から11時40分すぎまで、今国会2回目の衆議院憲法審査会が開催されました(開会時間が少し遅れたのは幹事会が長引いたためと思われますが、その理由はわかりません)。

この日の審査会も、前回に引き続きテーマを特定の問題に絞ることなく、「日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正をめぐる諸問題」について各会派の代表が1人7分ずつの持ち時間で発言した後、会長に指名された委員が5分以内で意見を述べるという形で進められました。
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今回の報告でも、まず、発言者の意見が簡潔に紹介されている『東京新聞』のウェブサイトに掲載された記事を転載させていただきます。また、今回は『NHK NEWS WEB』にも有志の会を除く各会派代表者の発言の要旨が「衆院憲法審査会 緊急事態の認定の在り方などについて各党主張」と題して掲載されていましたので、あわせてご紹介します(『東京新聞』の記事の間に▽で挿入)。

緊急事態条項めぐり議論 「条文案作成」に維新・国民民主など着手 衆院憲法審【詳報あり】
『東京新聞TOKYO Web』2023年3月9日

衆院憲法審査会は9日、今国会2回目の自由討議を行い、与野党が憲法への緊急事態条項の新設を巡って意見を交わした。自民党は論点整理の議論の加速を訴え、改憲を目指す3会派は条文案作成を主張。立憲民主党や共産党といったリベラル系の野党は改憲しなくても現行憲法下で有事に対応できると反論した。

自民党の新藤義孝氏は緊急事態時の任期延長について「上限を1年とし、再延長も可能とするのが合理的だ」と提案。内閣に国会が議決していない予算の執行と法律の制定を認めることなど八つの論点の資料を配布し、議論するよう各党に促した。

公明党の北側一雄氏は、2011年3月の東日本大震災を受けて地方選挙が延期されたことに触れて「巨大地震が起こった時は被災地だけでなく、全国的に国政選挙などできない」として、任期を延ばす規定の必要性を訴えた。

日本維新の会と国民民主党、無所属議員でつくる「有志の会」は、月内に緊急事態条項の条文案をとりまとめる方向で実務者協議を始めたと説明。国民の玉木雄一郎氏は、審査会の議論加速に「寄与したい」と意欲を示した。

一方、立憲民主党の奥野総一郎氏は、衆院が解散されていても参院で緊急集会を開催できると指摘した上で「非常時でも国会をまず動かすべきだ。緊急事態条項を設けるまでもなく、現在の制度でかなりのことができる」と主張。

共産党の赤嶺政賢氏は「『緊急事態』と称して政府に権力を集中させ、国民の権利制限を強化しようとしている」と批判した。(佐藤裕介)

詳報
9日の衆院憲法審査会での発言の要旨は次の通り。 
【各会派代表の意見】
新藤義孝氏(自民)
大規模自然災害など四事態、その他これらに匹敵する事態、五つの事態の発生により適正な選挙実施が困難な状況に陥ったときに議員任期の延長が必要になること、選挙困難の認定は内閣が行い国会の事前承認を必要とすることは、自民、公明、維新、国民、有志の会の5会派で一致している。任期延長期間の上限を1年とし、再延長も可能とすることが合理的ではないか。
▽ 自民党の新藤政務調査会長代行は、緊急事態の対応を憲法に規定すべきだとしたうえで「緊急事態の認定と国会議員の任期延長の判断は、内閣と国会が責任を持って行い、裁判所に委ねるべきではない。国会機能が維持できない場合に備え、内閣が緊急に立法措置や財政支出をできる制度の整備も必要だ」と述べました。

奥野総一郎氏(立憲民主)
非常時でもウクライナのように国会をまず動かすべきだ。緊急事態条項を設けるまでもなく、現在の制度でかなりのことができる。拙速な議論を進めることは反対だ。国民投票法の付則に、インターネット等の適正な利用の確保をはかるための方策やCM規制など国民投票の公平公正を確保するための検討を加え、必要な法制上の措置を講じると規定している。
▽ 立憲民主党の奥野総一郎氏は「非常時でも、ウクライナのように国会は動かすべきで、憲法に緊急事態条項を設けなくても、現在の制度でかなりのことができる。参議院の緊急集会や裁判所の関与の在り方などの議論も必要で、拙速に進めるべきではない」と述べ、慎重な姿勢を示しました。

岩谷良平氏(維新)
国会の事前承認の際の議決要件について、維新、公明、国民、有志は「出席議員の3分の2以上の賛成」で一致。自民は「議論が必要」だ。裁判所の関与については、維新は憲法裁判所、国民と有志は最高裁判所による事後統制を考えている。公明は裁判所の関与は「疑問あり」、自民党は「不要」だ。細部について詰めの議論を行い、考え方を集約していくべきだ。
▽ 日本維新の会の岩谷良平氏は「議員任期の延長は、詰めの議論を行って、考え方を集約していくべきだ。緊急事態で立法府や行政府によって特例的な権限が乱用されないよう、憲法裁判所による事後統制が必要だ」と述べました。

浜地雅一氏(公明)
東日本大震災の影響を受けた地域において、臨時特例法で地方議会選挙の期日を延長し、議員の任期も延長した。仮に国政選挙が予定されていれば、国会議員の任期延長の問題に直面していた。また、コロナ以上の感染症がまん延した場合、国政選挙の実施が困難となることはあり得るとの危機意識のもとに、この問題を議論している。一定の結論を出すのは今だ。
▽ 公明党の濱地雅一氏は「参議院の緊急集会は、通常国会や臨時国会のような機能を有していない。緊急事態には、二院制の原則のもと、フルサイズの国会機能を行使する必要があり、今こそ、議員任期の延長に一定の結論を出さなければならない」と述べました。

玉木雄一郎氏(国民民主)
維新、有志とともに緊急事態条項の条文案をまとめるための実務者協議をスタートさせた。今月中には成案を得て、条文案を審査会に示し、議論の加速化に寄与していきたい。
「選挙実施困難」要件の具体的な中身について、70日間、あるいは、80日間以上の長期にわたって衆院の開会が見込めない場合には、議員任期の特例延長を認めるべきと考える。
▽ 国民民主党の玉木代表は「議員任期の延長は、議員のお手盛りを防止するため、一定の司法の関与を盛り込むべきだ。緊急事態条項の具体的な条文案づくりに入るべきで、今月中にも、日本維新の会などと案をまとめ、審査会に示したい」と述べました。

赤嶺政賢氏(共産)
東日本大震災やコロナ感染症の拡大においても、緊急事態条項がなかったから対応できなかったという問題は起きていない。緊急事態と称して政府に権力を集中させ、国民の権利制限の強化をしようとしている。国会の権能を奪い、基本的人権を抑圧する憲法停止条項だ。一方で、国会議員の身分だけは延長する規定を盛り込もうなど、保身のための議論も甚だしい。
▽ 共産党の赤嶺政賢氏は「東日本大震災や新型コロナの拡大でも、緊急事態条項がなかったから対応できなかったという問題は起きていない。極端な事例を出して議論すれば間違う危険性が高く、改憲議論自体が問題だ」と述べました。

北神圭朗氏(有志の会)
「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」という憲法9条2項の文言は変わらないまま、解釈だけで集団的自衛権、反撃能力も認められることになった。条文としての統制力はないようなもの。9条の統制力の形骸化を止めるためにも、2項を削除し、必要最小限度の実力については法律や政策で柔軟に対応することが望ましい。

【各委員の発言】
船田元氏(自民)国民投票運動は基本的に自由で、法的な規制はなるべく避けるべきだ。ネット特有のゆがみを是正するには、情報の総量を増やし、言論の自由市場で淘汰していくしかない。
城井崇氏(立民)憲法53条の臨時国会の召集義務について、政府の対応に問題がある。召集期限の明確化が必要だ。野党4党は、要求から20日以内の臨時国会召集を規定する議員立法を提案している。
小野泰輔氏(維新)緊急事態において、緊急政令を発出するような場合、最高裁が判断する枠組みの中で機能するのかという問題がある。憲法裁判所でこそ、政府の判断が適切かどうかきっちり判断できる。
務台俊介氏(自民)最近の世論調査でも6割以上が憲法改正の必要性を認識している。社会環境や安全保障環境の変化に対応した憲法議論の必要性について、多くの国民がその意識を高めている。
篠原孝氏(立民)岸田首相は「安保政策の大転換」と言うが、平和な時代にすら国会に諮ることなく政府で決めた。緊急事態になったら、国会は全く無視されて、今以上に行政が突っ走るのではないか。
北側一雄氏(公明)東日本大震災から12年たつ。そのときに国会がどういう対応をしたのか検証し、(国会議員の)任期延長の問題についてもさらに詰めた議論をしていきたい。
* 引用、ここまで(太字は引用者)。

毎週定例日開催論の欠陥が露呈

上掲の記事で、城井崇氏(立憲民主党)が憲法53条に規定されている臨時国会の召集義務に政府が対応しない事例が相次いでいると指摘したことが紹介されていますが、これに対して、小野泰輔氏(日本維新の会)は「それをおっしゃるのなら予算委員会の開催中も憲法審査会の開催に応じるべきだ」と発言しました。牽強付会もいいところです。

ところで、この日衆議院では憲法審査会と同時刻に安全保障委員会が開かれていました。安保委は9時から12時過ぎまで行われていましたので、憲法審と完全に重なっていたわけです。このため、憲法審では下記のような事態が起こりました。

立憲民主党の新垣邦男氏は、開会後短時間だけ顔を見せ、すぐに代理の阿部知子氏と交代しました。新垣氏は、その後安保委で10時31分から28分間質疑に立っていました(「衆議院インターネット審議中継」による/以下、同じ)。
日本維新の会の三木圭恵氏は最初から代理を立てて欠席、安保委で11時21分から21分間質疑を行いました。三木氏は安保委の理事を務めています。
公明党の浜地雅一氏は憲法審で10時29分から9分間意見を述べ、しばらくすると代理を立てずに席を外しました。浜地氏は安保委の理事を務めていますので、おそらくそちらに回ったものと思われます。
共産党の赤嶺政賢氏は憲法審で10時48分から8分間意見を述べるとすぐに代理を立てずに退席、その後安保委で12時2分から20分間質疑に立ちました。

つまり、憲法審と安保委が同時刻に開催されたため、両者の委員を兼ねる何人かが憲法審の審議に(安保委の審議にも)参加できない時間帯が生じたわけです。それでも憲法審は毎週定例日に必ず開催すべきなのでしょうか。全委員が出席できるように日程を調整し、それができないときは開催を見送るのが当然だと思います。

新藤筆頭理事(自民)、緊急政令・緊急財政処分の議論を主張

下の図は、新藤義孝氏(自民)がこの日の発言のために配布した資料です。これまでの議論を整理したものということですが、「論点」の1つとして抜け目なく「緊急政令・緊急財政処分」が組み込まれています。岩谷良平氏(維新)も、この論点について「引き続き議論を前に進めていくべき」だと言及していました。玉木雄一郎氏(国民)は、維新、有志の会とともに緊急事態条項の条文案をまとめ、「今月中に成案を得て審査会に示したい」と述べていましたが、そこに緊急政令等が含まれるのか否か、注視していく必要があります。

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奥野氏(立民)まで9条の議論を呼びかけ

この日、いちばん驚いたのは奥野総一郎氏(立憲民主党)の以下のような発言でした。奥野氏は、「今回、反撃能力の保有を認めたことにより専守防衛の中身も変わってしまい、9条2項の空文化、削除に等しい効果が生まれると思う」と指摘したうえで、「憲法審査会で9条が許容する必要最小限度の実力の新たな歯止めについて議論し結論を出したらどうか。参考人質疑、集中討議を求める」と述べ、さらには「石破先生が詳しいのでご意見をうかがえれば」とまで言ったのです。上掲の記事を含めて大手メディアでは(私がザッと調べた範囲では)奥野氏の意見表明のこの部分は報じられていませんが、まさに驚天動地の内容ではないでしょうか。

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9条については、北神圭朗氏(有志の会)も「憲法の統制力の形骸化に歯止めをかけ、防衛政策の論議を現実に即したものにし、自衛隊違憲論を払拭するという3つの理由から、2項の削減を主張する」と述べました。
自民、維新がこれに便乗し、緊急事態条項とあわせて9条改憲を早い時期に憲法審の議論の俎上に載せようとしてくる恐れがあるかもしれません。

赤嶺氏(共産)の発言に傍聴席から拍手が

最後に、赤嶺政賢氏(共産)の発言を紹介しておきましょう。赤嶺氏は上掲の記事にあるように緊急事態条項の議論を非難した後、岸田政権が進めている軍拡政策についても批判を加えました。
以下、『しんぶん赤旗』のウェブサイトから引用します(「軍拡反対の声 受け止めよ 衆院憲法審 赤嶺議員が主張」と題した記事の一部です)。

「赤嶺氏は、岸田政権が、政府が存立危機事態と認定すれば、集団的自衛権を行使して相手国領土へのミサイル攻撃まで可能だとしたことは「憲法上絶対に許されない海外での武力行使そのものだ」と厳しく批判。国民から軍拡反対の声が上がっているとし、「この声を正面から受け止めるべきだ」と述べ、徹底した外交努力こそ憲法は求めていると主張しました。」
赤嶺氏の前に意見を述べた新藤、奥野、岩谷、浜地、玉木の各氏の発言にうんざりしていたのでしょう(私もそうでした)、傍聴席の数人から思わず(傍聴席では禁じられているのですが)拍手が起こりました。

この日の傍聴者は30人強、記者は5~8人ほどで、今国会初の開催であった前回より少なかったです。TVカメラも入っていませんでした。
委員の出席状況は、上述のとおりいつもと違って途中から公明、共産の各1名が退席しました。自民党はいつになく欠席者が少なく、1~3人程度の時間帯が長かったです。

今国会で憲法審の定例日はまだ13回も残されています。今回報告したとおり、今後、緊急事態条項の議論が緊急政令・緊急財政処分に進んだり、9条の改憲が取り上げられたりする可能性があります。改憲をめぐる情勢はたいへん厳しいですが、今できることをやっていくしかありません。ともに頑張りましょう!(銀)


自民の尻を叩く維新、国民

3月2日(木)10時から11時30分すぎまで、今国会初の衆議院憲法審査会が開催されました。
日本維新の会の小野泰輔氏は、冒頭の発言で「立民が来年度予算案の審議中は他の委員会は開かないという慣例を盾に審査会の開催にブレーキをかけ、2週間も空費した」と非難しました。

小野氏は、「憲法改正を党是に掲げている自民党は、本気であることを行動で示すべきだ」、「岸田総理は来年9月末の自民党総裁任期中の改憲実現を明言しているのだから、遅くとも来年7月末までに発議しなければならない。国民投票をいつ実施するのか、ゴールから逆算してスケジュールを設定することを求める」とまで言い募っていました。なぜ自民党総裁の任期と改憲のスケジュールをリンクさせなければいけないのか、安倍元首相もそうでしたが、本当に不思議な論理だと思います。

国民民主党の玉木雄一郎氏も「今国会の初会合が3月にずれ込んだことは残念だ」と述べていて、この2会派が改憲に向けて自民を後押ししている構図がますます明確になってきました。

この日の審査会は、今国会初の開催であったためでしょう、テーマを特定の問題に絞ることなく、「日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正をめぐる諸問題」について、各会派の代表が1人7分ずつの持ち時間で発言した後、会長に指名された委員が5分以内で意見を述べるという形で進められました。
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この日の議論の概要

ここで、この日の発言者の意見が簡潔に紹介されている『東京新聞』のウェブサイトに掲載された記事を転載させていただきます。

改憲勢力、緊急事態条項の具体化主張 立民は国民投票の法整備を優先 今国会初の衆院憲法審【詳報あり】
『東京新聞TOKYO Web』2023年3月2日

衆院憲法審査会は2日、今国会で初めての討議を行った。自民党や日本維新の会などの改憲勢力は緊急事態条項の新設を巡り、意見集約に向けた議論の加速や、条文案の策定などを主張。立憲民主党は「時期尚早だ」と反発し、国民投票の公正性を確保する法整備を優先すべきだと強調した。

自民の新藤義孝氏は、大規模自然災害や戦争などの際、憲法が定める衆参両院議員の任期延長を認める規定を設けることについて、一部の野党を除いて「おおむね意見集約された」との認識を表明。具体的な延長幅や国会の関与のあり方などに関する議論を深めることに期待感を示した。

公明党の北側一雄氏は「この国会で一定の合意形成が図られるべきだ」と同調。維新と国民民主党、無所属議員でつくる「有志の会」は、改憲原案のたたき台となる条文案の作成に着手するよう求めた。

これに対し、立民の階猛氏は緊急事態に該当する災害などで議員が欠けることも想定されると指摘し、「選挙を急ぐべき場合もある。任期の延長ありきで拙速に議論を進めるべきではない」と反論。インターネット上にあふれる偽情報を放置すれば、国会が発議した改憲案に対する国民の判断にも影響を与えかねないとして、国民投票法の改正を訴えた。

共産党の赤嶺政賢氏は憲法審開催に反対し、政府が取り組む防衛力強化にも触れながら「今、必要なのは改憲の議論ではなく、憲法9条に基づく徹底した外交努力だ」と述べた。

今国会初の討議を終え、新藤氏は改憲について「既に時機は到来している」と記者団に語ったが、国会発議を目指す時期は明示しなかった。安倍晋三元首相が2020年の改憲施行を打ち出した後、野党が期限を区切った改憲論議に強く反対した経緯があるため、踏み込んだ発言を避けたとみられる。(佐藤裕介)

◆衆院憲法審査会詳報
2日の衆院憲法審査会での発言の要旨は次の通り。
【各会派代表の意見】
新藤義孝氏(自民)
憲法改正の論議について残った論点をさらに具体的に深掘りするとともに、国民投票法改正の議論を進めていかなければならない。国民投票法は審査会に付託された案について早急に成立を図るべきだ。投票環境の向上を図るもので、内容は各会派とも異論がないと考える。
階猛氏(立憲民主)
議員任期の延長は参院に配慮した慎重な議論を行う必要がある。参院の緊急集会は独自の権限だ。一定の場合に衆院議員の任期延長を認めるのであれば、緊急集会が開催される可能性が狭まる。実質的に参院の権限を弱めることになる議論を衆院だけで進めることは問題だ。
小野泰輔氏(維新)
防衛力の抜本的強化と憲法改正は表裏一体の関係にある。戦後日本の平和を守ってきたのは9条ではなく、自衛隊の存在と日米安保条約に基づく抑止力だ。自衛隊を憲法上明確に位置付け、抑止のための防衛力を着実かつ迅速に整備することが不可欠。教育の無償化、統治機構改革、憲法裁判所の設置、緊急事態条項の創設の4項目も意見集約を急ぐべきだ。
北側一雄氏(公明)
緊急事態における国会議員の任期延長、国民投票法とCM規制のあり方は論点がほぼ出尽くしている。この国会で一定の合意形成が図られるべきだ。国会議員の任期延長は、参院の権能を弱めるわけではない。緊急集会の役割、位置付け、適用範囲を明確にするということだ。
玉木雄一郎氏(国民民主)
緊急事態条項、議論がかなり積み上がってきた議員任期の延長規定を議論し、残された論点について意見を集約した上で、具体的な憲法改正の条文案作りに入るべきだ。憲法54条2項の参院の緊急集会を解散時だけでなく、任期満了時も内閣が開催を求めることができるかなど、解釈を審査会で確定することを提案したい。
赤嶺政賢氏(共産)
国民の多くは、改憲を重要課題と考えておらず、憲法審査会は動かすべきではない。岸田政権が進めている大軍拡は憲法を破壊するもので、平和国家から軍事国家へ作り替えようとしている。今、必要なのは、改憲のための議論ではなく、憲法9条に基づく徹底した外交努力だ。
北神圭朗氏(有志の会)
緊急事態条項について審議を重ね、法制局から論点整理もされた。議員の任期延長の議論が煮詰まってきている。今後はそれぞれ条文案を持ち寄って具体案を取りまとめる方向で審議を進めていただきたい。憲法の趣旨にのっとって国会機能を確保するために任期の延長制度を創設すべきだ。
【各委員の発言】
新藤氏 
参院の緊急集会は二院制の例外的な制度であり、衆院としても、しっかりと対処しなければならない。参議院側との連携も取っていきたい。
吉田晴美氏(立民)
そもそも平時に国会は機能しているのか。憲法53条に基づく臨時会召集要求を内閣が放置する憲法違反が常態化し、時の政権が自分たちに都合良く衆院解散権を行使している。平時における臨時会召集期限の法制化、衆院解散権の制限事項の検討をすべきだ。
柴山昌彦氏(自民)
憲法には防衛、自衛隊に関する規定が欠落しており、緊急事態条項とともに、早急に是正を要する問題と言わざるを得ない。自衛隊を憲法に明記することで、内閣および国会による統制を明記できる。
三木圭恵氏(維新)
衆参の合同の審査会も開けると思うので、衆参で足並みをそろえてきっちりと議論していかなければならない。何度も何度も同じような話を審査会でするのは時間の無駄だ。煮詰めてきた任期延長について結論を出していただくようお願い申し上げる。
国重徹氏(公明)
同性婚を巡る議論に注目が集まっているが、多くの学説は、憲法24条1項は同性婚を許容していると解釈している。立法府として、同性婚の議論をより深めていくことが重要だ。人権や多様性の尊重といった価値観を世界に発信していくためにも、G7広島サミットに向けて、性的少数者への理解増進法を成立させることに力を入れるべきだ。
* 引用、ここまで(太字は引用者)。

この記事にあるように、この日の審査会では、立民、共産を除く5会派の代表が、緊急事態条項、特に緊急事態時の国会議員の任期延長について、「論点はほぼ出尽くしているので、今国会で一定の合意形成が図られるべきであり、改正条項案の表現ぶりも念頭に議論を進めていくべきだ」(公明党、北側一雄氏の発言)などと主張しました。維新と国民は、それぞれ『緊急事態条項について』と題した資料を提出しましたが、その内容は酷似していました。

一方、立憲民主党の階猛氏は、「議員任期の延長について、早急に改正条文を起草すべきとの意見があるが、時期尚早だ」として、その理由(上掲の記事に簡潔にまとめられています)を述べた後、『国民投票法改正(国民投票の公平・公正の確保)について』と題した資料に基づき、立民の国民投票法改正案のポイントを説明しました。

改憲手続法(国民投票法)については自民(新藤氏)、公明(北側氏)も言及していましたので、今国会の憲法審査会でも、「憲法改正の本体議論」(新藤氏による表現)の合間に討議のテーマとして取り上げられると思いますが、検討が進んで法改正が行われれば改憲発議、国民投票のハードルが1つ除去されることになります。

なお、上記の各配布資料は、衆議院憲法審査会のホームページで「会議日誌・会議資料」、「第211回国会」とクリックしていくと見ることができます。

9条改憲の主張を強める自民、維新

9条を改定して自衛権、自衛隊を明記すべきだとの主張はこれまでの憲法審でも何度も行われてきましたが、今回の憲法審ではその内容がますますエスカレートしてきている印象を受けました。

上掲の記事でも維新の小野氏、自民の柴山昌彦氏の発言が紹介されていますが、山下貴司氏(自民)も「自衛力に関する規範について憲法学が迷走する一方、これを憲法上明らかにすべきとの方向性については与野党幹部を含めて同じである以上、この点についても議論すべきだ」と早口でまくし立てていました。柴山氏の主張は「ロシアのウクライナ侵攻、中国や北朝鮮の弾道ミサイル発射」から始まるお決まりのパターン、山下氏の言う「野党幹部」とは立民の枝野幸男氏、岡田克也氏で、両氏の10年近く前の論文やインタビューを持ちだして「方向性は同じ」だと決めつけていました。後半の意見表明で指名された自民党の委員2人がそろって持ち時間5分すべてを9条改憲の議論に費やしたわけで、大いに警戒すべきだと思います。

最後にようやくまともな議論が

緊急事態条項と9条、改憲手続法(国民投票法)以外のテーマとしては、吉田はるみ氏(立民)と國重徹氏(公明)が同性婚の問題を取り上げていました。
また、赤嶺政賢氏(共産)と新垣邦男氏(社民)が、昨年末に行われた安保3文書の閣議決定など岸田政権の軍拡政策を手厳しく批判しました。以下、この日の憲法審の最後に発言した新垣氏の主張を紹介して、今回の傍聴報告を締めくくりたいと思います。

「岸田総理は今回の安保3文書の改定を戦後政策の大転換と繰り返し発信しているが、事前に国会で説明することなく、臨時国会の閉会後に閣議決定し、通常国会を待たずにアメリカのバイデン大統領と約束し既成事実化してしまった。国のあり方を最終的に決める権力は主権者である国民にあり、岸田政権の今回のやり方はとうてい認められない。
本憲法審査会ではむやみに改憲論議に突き進むのではなく、まず立ち止まって立憲主義に根差した政治、憲法の理念が息づく政治が実践されているのかをじっくり議論すべきではないか。今急ぐべきは、緊急事態における国会機能の維持よりも平時における国会機能の回復だ。民主主義、立憲主義に基づく正当な手続きを踏まず、重大な政策決定を繰り返す政府の国会対応こそ今すぐ是正すべきだ。」

この日の傍聴者は40人強、記者は10人ほどで、今国会初の開催であったためか三脚付きのTVカメラが3台入っており、大きなレンズを付けたカメラマンも7、8人いました。
委員の出席状況はいつもと同様で、自民党以外は全員が出席(短時間席を外す委員はいましたが)、自民党ははじめほぼ全員が着席していて今日はいつもと違うなと思いましたが、途中からは5人前後が欠席で、常態に戻っていました。

今国会の会期は6月21日まで、憲法審の定例日は来週以降14回も残されており、正直今からげんなりしていますが、今後も傍聴を続けていきたいと思います。なお、この憲法審査会に対し、国会前で"戦争のための改憲反対!憲法審査会を開くな!"と市民有志などの抗議行動が行われています。この声をさらに大きく広げていきましょう。(銀)


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ウクライナ戦争1年の2月24日(金)、「改憲・戦争阻止!大行進」の呼びかけで国会抗議行動と署名提出が行われました。署名は「軍事費2倍化に反対する署名」で、4156筆分が岸田首相宛に内閣府前で渡されました。
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衆議院第二議員会館前には約80名が集まりました。国会見学の小学生が大型バスで次々と訪れ、反戦集会だとわかると手を振ってこたえてくれました。
続いて、首相官邸向かい側の歩道に移動して抗議行動。ウクライナ戦争への日本の参戦を許さない、大軍拡国会粉砕と声をあげました。
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洞口杉並区議もかけつけてアピール。右翼の妨害をはねのけて集まった署名だと話しました。
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代表10名ほどが内閣府前に移動して署名提出行動。請願課の鈴木氏が受け取りました。
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前日の23日は、「改憲・戦争阻止!大行進」の全国反戦集会でした。
KENさんが動画を撮ってくれましたので、ご覧ください。20230223-1

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右翼が街宣車を10何台ももってきて大音量で妨害しましたが、全然負けずに反戦を訴えるデモをやりきりました。(K)

2月15日の夜、午後8時、真っ暗な天神峰に突如数百の機動隊が突進してきた。スクラムを組み迎え撃つ三里塚反対同盟農民と支援者たち。親子三代100年にわたって耕し続けてきた市東孝雄さんに執行官からの説明は何もないまま、機動隊は市東さんを押し倒した。
言語道断!こんな非道は許されない!
(三里塚芝山連合空港反対同盟のホームページより)


しかし、反対同盟と支援は、この機動隊の暴力に負けず、スクラムを組んで肉弾で何度も何度も押し返し、畑への突入を体を張って阻止し続けました。闘いのシンボルであるやぐらには2人の学生が登り、離れの屋根にも4人の支援が登って、やぐら・看板の破壊、作業場の破壊、ビニールハウスの破壊、農地破壊を絶対に許さないと深夜~翌朝まで死力を尽くして闘いぬきました。周りでは仲間の命を守ろうと機動隊の暴力を声の限りに弾劾し抜きました。本当に感動的な闘いでした。
下記は、支援者がつくったテレビニュースを中心にした闘いの報告です。


「軍事空港粉砕、農地死守、実力闘争、一切の話し合い拒否」の原則を貫く三里塚闘争は、今なお日本の反戦運動の最先頭にある闘いだと思います。国策である戦争に反対する闘いは、この57年に及ぶ三里塚闘争に貫かれる大衆的な実力闘争の思想が必ず求められます。映像を見てもはっきりしているように、巨大な国家権力に屈服するのではなく、自らの尊厳をかけて闘いの場に立ち、最後まで反対し抜く、団結を固めて闘いぬくということだと思います。そのことによって国家権力によって「つぶされる」ことなく、闘いの展望を切り開くことができるのです。
だから、今回の不当な強制執行に対し、これを断乎迎え撃ち、全力で闘いぬいた反対同盟と支援は、「勝利した」と総括できたのです。
三里塚のような闘いが日本全土で闘われるようになることが、戦争を止める道だと思います。また、だから岸田政権・国家権力は、今開かれている大軍拡の戦争国会と一体で三里塚闘争の圧殺に踏み込んできたのです。
市東孝雄さんはいつも、「労働者・学生と共に、沖縄・福島と連帯して闘う」と言われています。戦争が始まる前に、全国で三里塚のように闘っていきましょう!

市東孝雄さんは強制執行の翌日、休む間もなく産直野菜の出荷のため、長ネギや小松菜の収穫をしに南台の畑(市東さんが耕しているもう一か所の畑)に向かわれたそうです。家のすぐ隣の畑、ビニールハウスが重機で破壊されたくやしさはいかばかりかと胸が痛いですが、もくもくと農作業を続ける市東さんらの姿に深い深い国家権力への怒りと熱い闘魂を感じます。(S)
三里塚2
三里塚4
三里塚6

(三里塚反対同盟の声明)
三里塚7
三里塚8


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