3月17日(木)、今国会5回目の衆議院憲法審査会が、予定時刻の10時より少し遅れて始まり、11時30分過ぎまで行われました。前々週まで4回続けて開催されていましたが、1回休んだだけで再開されたことになります。
傍聴者は40人ほど、記者やカメラマンは15人くらいで、自民党に2、3人の欠席者はありましたが、今回も委員の出席率は高かったです。
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後半の自由討議の中で、公明党の國重徹氏が、憲法審の運営を取り仕切っている「両筆頭」(自民党の新藤義孝氏と立憲民主党の奥野総一郎氏)への「お願い」として、「開催の有無についてできるだけ早めに決めていただきたい」と述べていて、審査会の委員、それも与党のメンバーもそう感じているのかと思いましたが、今回は傍聴希望者をないがしろにするとんでもない出来事がありました。

というのは、衆議院憲法審査会のホームページの「今後の開会予定」に、当日の朝になっても「開会予定の審査会はありません」と書かれていたのです。傍聴を終えて帰宅後に確認しても、まだ「開会予定の審査会はありません」となっていました。
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実際は「衆議院インターネット審議中継」のサイトで「明日の中継予定」を確認したり、紹介議員になってくださる議員の事務所に問い合わせるなどしているので実害はないのですが、本当に許しがたいことであり、責任者(責任の所在がどこにあるのかわかりませんが)に猛省を促したいと思います。

今回は自由討議が行われ、今後憲法審査会で検討すべきテーマ等について意見が交わされました。
まず、その概要について、『東京新聞』のウェブサイトに掲載された記事を転載させていただきます。

自民「議員の任期延長できる改憲が最優先」、立民は反論「国民投票のCM規制議論を」 衆院憲法審
『東京新聞TOKYO Web』2022年3月17日

衆院憲法審査会が17日開かれ、各会派の自由討議を行った。自民党は党改憲案4項目に掲げる緊急事態条項創設に関し、国会議員の任期延長を可能にする改憲を急ぐべきだと主張。立憲民主党は改憲ありきだと反論し、国民投票の際のCM規制を巡る議論を優先するよう求めた。

自民の新藤義孝氏は、新型コロナウイルス感染拡大などの緊急時に選挙ができない場合を念頭に「憲法を改正しないと任期延長できない。最優先で具体的な議論を行うべきだ」と強調。内閣が国民の権利を制限する緊急政令の制定についても「憲法に規定しておくことが必要だ」と述べた。

日本維新の会、公明、国民民主の3党は緊急事態条項に関する審議の実施には同調したが、公明の国重徹氏は「オンライン審議が実現した場合、緊急政令の制定の必要性は低くなる」と語った。

立民の奥野総一郎氏は緊急事態条項について「改憲ありきでなく、丁寧な議論を行うべきだ」と指摘。外国政府の干渉が投票結果に影響することを防ぐためにも、テレビやインターネット広告を規制する必要があるとした上で「法制上の措置が講じられないと、改憲の発議はできない。今国会中に論点整理まで進めるべきだ」と訴えた。

憲法審の開催は2週間ぶり。自民はこれに先立つ幹事会で、24日の憲法審開催と緊急事態に関する集中討議を求めた。(佐藤裕介)
* 引用、ここまで。

この日の議論では、多くの委員がロシアのウクライナ侵攻に言及しました。緊急事態条項の必要性の議論に結び付けようとする者、ウクライナのゼレンスキー大統領の国会演説を実現すべきだと主張する者(立民の奥野氏もそのように発言したことには、驚きはしませんでしたががっかりしました)が目立ちましたが、新垣邦男氏(社民)は「今回の侵攻に便乗して核共有や敵基地攻撃能力保有の議論がにわかに盛り上がっている」ことを批判し、「国会や憲法審は、9条改正の議論ではなく、憲法の理念である武力の行使をやめるよう粘り強く求めていくことに力点を置くべきだ」と指摘しました。

また、北側一雄氏(公明)は持ち時間の大半をウクライナ憲法の緊急事態条項の内容と今回の適用状況の紹介に費やしたうえで、緊急事態への対応のあり方については、「各国の憲法に規定された緊急事態条項の内容やわが国の危機管理法制の全体像等を把握しながら議論を進めることを提案する」と述べました。

一方、憲法審査会を動かすべきでないという立場の共産党の赤嶺政賢氏は、「憲法と国会の問題でいま問われているのは、コロナのまん延で最も国会での審議が求められたときに、憲法53条に基づく野党の臨時国会召集要求を無視し、国会を開かなかった政府と与党の姿勢だと指摘。『野党の国会開会要求を無視しながら、緊急時の国会機能を維持するため、憲法を変える必要があるなど、なぜ言えるのか。あまりにも無責任だ』と厳しく批判しました」(3月18日の『しんぶん赤旗』ウェブサイトから転載)。

また、足立康史氏(維新)と奥野総一郎氏(立民)の間で、国民投票(改憲手続法)の附則4条で「3年を目途に、必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする」と規定されているCM規制等の課題について、これが処理されなければ国民投票は実施できないのか否かについてやりとりがありました。
新藤義孝氏(自民)は「まさに憲法審らしい討議があった」と述べ、改憲手続法附則4条の検討事項が終わらなくても「法令上、憲法改正の発議を妨げるものではない」との結論が出ていると発言しましたが、自民党も賛成して成立した附則4条のテーマをいつまでも放置し続ければかなりの批判を招くことは免れないのではないでしょうか。

オンライン国会とか国会議員の任期延長とか、改憲派にとってそれほど重要とは考えられないテーマから議論を進めようとする一方で、立憲民主党が積極的に取り組もうと提起しているCM規制等の問題に乗ろうとしないのはなぜなのか。7月の参院選まではできるだけ波風を立てずにおいて、いわゆる「黄金の3年間」を確実に迎えた後に改憲への動きを一気に加速しようと考えているのでしょうか。私に改憲勢力の戦略(と言えるほどのものがあるのかどうかもわかりませんが)を推し量る義理はありませんが、大いに気になるところです。

自民党は3月13日の党大会で「参院選への総力結集」と「憲法改正実現への取組み強化」を確認しました。都道府県連ごとに憲法改正実現本部を設置して各地で対話集会を開催するとしています。
また、これを受けて、17日には国会内で、自民党の有志議員による「憲法改正推進国会議員連盟」の設立総会が開かれました。会長は自民党の憲法改正推進本部長を務めた衛藤征士郎・元防衛庁長官で、約60人が参加、「改憲への機運を高めたいとしている」とのこと。


3月23日には参議院でも憲法審査会が開催されることが決まっており、憂鬱この上ない気分ですが、今後も改憲をめぐる情勢をしっかり追いかけていきたいと思います。改憲反対派こそ、この過程を全力で「戦争反対!9条改憲反対!」の気運を高めていきましょう!(銀)