菅首相が「ポストコロナの新しい社会」として打ち出している「国全体のデジタル化」を実現するための法律「デジタル改革関連法案」が3月9日から審議入りし、いま衆議院の内閣委員会で審議されています。

まず、コロナ禍の中で、しかも、菅政権のデタラメな政治のもとでの労働者民衆の窮状は放っておいて、逆にこれを機に、呻吟する庶民の個人情報をもっと儲けに利用できないか、国家管理強化に利用できないかと策動するなど、許されないことです。いま、総務省幹部の接待問題が次々と明るみに出されていますが、歴代自民党・菅政権の腐敗の極みであり、こんな政権にデジタル庁など持たせたら人間社会がますます破壊されてしまいます。何としても廃案へ!職場・地域から声をあげていきましょう。

とは言え、まだまだこの問題について広く知らされていません。そうした中で、この法案の危険性を訴えている「共通番号いらないネット」や「共謀罪NO!実行委員会」が呼びかけた「NO!デジタル庁~デジタル監視法案反対する市民集会」が3月14日に文京シビックセンターで開かれ、参加してきました。

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海渡雄一さん(デジタル監視法案に反対する法律家ネットワーク)、小倉利丸さん(盗聴法に反対する市民連絡会)、内田聖子さん(アジア太平洋資料センター)、原田富弘さん(共通番号いらないネット)、角田富夫さん(共謀罪NO!実行委員会)、衛藤浩司さん(全労連幹事、デジタル改革関連法案反対連絡会)の6人からの問題提起を受け、質疑応答で3時間強の集会でした。

そこでつかみ取ったこの法案の問題点を、いくつかあげてみようと思います。
①まず、この法案は膨大な量(下記の6法案)のもので、それを一括で審議し、問題点が国民に明らかにならないうちに採択してしまおうとしていることです。
・デジタル社会形成基本法案
・デジタル庁設置法案
・デジタル社会形成関係整備法案(約60本の法を一括改悪)
・公的給付支給預貯金口座登録法案
・個人番号利用預貯金口座管理法案
・地方公共団体情報システム標準化法案

②「個人情報保護」の考え方を破壊しようとしています。
憲法13条で保障されている「個人の尊厳」に基づいて、これまで「個人情報は保護されるべきもの」として扱われ、行政機関・自治体・民間でそれぞれの「個人情報保護法」よって管理されていますが、この「保護」という基本的な考え方が大きく取り払われようとしています。

具体的には、いま私たちの個人情報は、イ.省庁等が持つものは「行政機関個人情報保護法」、ロ.独立行政法人の持つものは「独立行政法人等個人情報保護法」、ハ.民間の持つものは「個人情報保護法」、の下に置かれていますが、この3つを統合してしまおう、その際、イ、ロを廃止して、ハの個人情報保護法に全部を統合してしまおうとしています。

ここで何が問題かというと、行政機関などの個人情報保護法のほうが個人情報の定義の範囲が広く、民間の個人情報保護法は狭くまた本人同意も曖昧ということがあるからです。狭い方に統合していくということは「保護」される個人情報が削られ、企業や国による「利活用」が格段に容易になってしまうことになります。

(当日の資料より)
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③マイナンバー制度の位置づけが変わり、より危険なものになっていく。
民間レベルに統合された個人情報データーベースを基礎に、政府はこれらを一つの番号に紐づけしていくとしています。そのために「マイナンバー」を使うのです。

現在のマイナンバー制度は「税と社会保障などの効率性を高めるために」とつくられ自治体が管理していますが、それがまったく違うものに変身しようとしています。私たちは、これまでもマイナンバー制度の狙いは「国民総背番号制」だと批判してきましたが、一挙にそこへ進んでいきます。

一人の人間の個人情報が一つの番号でまとめられ管理されるということは、個の尊厳を踏みにじり、人間が国や企業に支配・隷属されることになります。人間が人間らしくのびのびと生きられる社会とは真逆の社会です。

④地方自治の破壊へと進む危険性
この法案の中で、総理大臣を長とするデジタル庁の新たな設置がされようとしています。マイナンバー制度の管理もここに移ります。内閣直結のデジタル庁がすべての個人情報を管理できることになり、政権自身が強大な権限を持つことになります。

本来は憲法で保障された地方自治のもと、自治体ごとにシステムが異なって当然なのに、この法案で事実上、自治体は戦前のように国の出先機関と化してしまう危険性があります。
戦前は内務省の内務官僚が都道府県の知事に就任し、その下で自治体が国の出先機関となり、地方自治体は国の命令どおりに動き、住民を監視して戦争に動員していったのです。

(当日の資料より)
地方自治
このような、社会のあり方の重要な変更を企むとんでもない法案を、「ショックドクトリン」(惨事便乗型資本主義)的なやりかたで、このコロナ下で短い審議時間で法律化してしまうなど、絶対に許してはなりません。

まずは、周りの人に「デジタル庁はいらない!」「個人情報を守ろう!」と訴え、デジタル監視法案は廃案へ!の声をつくっていきましょう。(S)