11月26日(木)、先週に引き続き衆議院憲法審査会が開催され(2週連続して開催されたのは、昨年11月以来のことでした)、傍聴してきました。今回は、時間軸に沿ってレポートしたいと思います。
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前日夜にずれ込んだ開催の告知

先週、今国会初の審査会が開催された時点でこの日の開催も合意されていたはずですが、最終的な日程の決定は前日、25日の夕方にずれ込みました。
野党側の筆頭幹事である山花郁夫氏(立憲)のホームページによれば、それは、
「議題としては、国民投票法をめぐる諸問題ということで、前回の討議の続きということだったんですけれども、実は先週末から与党提出の7項目案について質疑採決をという提案がありましたので、このセットまで随分と時間がかかりました。最終的には法案の質疑だけ短い時間行うけれども、採決は行わないという形で決着がついたものです。」
という事情があったからです。

私は、ネットで①衆議院憲法審査会の「今後の開会予定」、②衆議院の「委員会開会情報(衆議院公報)」、③衆議院インターネット審議中継の「明日の中継予定」の項目を30分ごとにチェックしていましたが、20時になってようやく③に翌日10時の開催が告知されました。
①と②には21時になっても情報が更新されず、それ以降はバカバカしくなってチェックするのをやめてしまいました。
次の定例日、12月3日(木)の開催をめぐっても、また同じことが繰り返されるのではないでしょうか。「もういい加減にしてくれ!」と、声を大にして言いたいと思います。
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10人以上の自民党委員が遅刻、開会が遅れる

この日も傍聴前の検温などの手続きに時間がかかり、私たちが委員室に入れたのは10時2分頃でしたが、審議はまだ始まっておらず、立憲民主党の委員たちが盛んにヤジを飛ばしていました。
『東京新聞』の記事を転載させていただくと、そのわけはこういうことでした。

「26日の衆院憲法審査会は、自民党議員の遅刻者が相次いで開会が遅れた。野党側から「やる気がないのか」「与党の姿勢が問われる」などと批判の声が上がった。
憲法審は50人で構成され、自民会派への割り当ては30人。開会時間の午前10時を過ぎても自民の10人ほどが姿を見せなかった。半数以上が出席し、審査会を開くのに必要な「定足数」は満たしていたが、細田博之会長はしばらく開始を見合わせ、予定より6分遅れで審議を始めた。」

30人もいるんだから自分1人ぐらいサボっても大丈夫だろうと思った委員が多かったのでしょうか。
なお、この日から傍聴席の数が事実上半減しました。コロナ対策のため、1つずつ間隔を空けて着席するように促されたためですが、おかげで多くの方が立ち見を余儀なくされました(私もずっと立ち通しでした)。何もしないよりはいいのかもしれませんが、もともと傍聴席、記者席は前後左右の間隔が小さいですし、後方のスペースも狭くて立ち見の傍聴者と動き回るカメラマンで「密」になっていましたので、感染防止の効果には疑問を抱かざるを得ません(写真参照)。
「不急不要の審査会を開くな!」と書いておきます。
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(出典:『時事ドットコムニュース』11月27日配信)

自公、維新、国民の委員が口を揃えて憲法審の毎週開催を主張

この日の審査会では、まず「日本国憲法及び憲法改正国民投票法を巡る諸問題」についての自由討議が60分ほどかけて行われ、続いて「日本国憲法の改正手続に関する法律(改憲手続法、いわゆる国民投票法)の一部を改正する法律案」の審議が始まりました。こちらの所要時間は30数分でした。
前半の自由討議のテーマは前回の11月19日と同様でしたが(通常国会の5月28日も同じでした)、この日は憲法審査会の審議のあり方について言及する委員が多かったことが気になりました。

まず、発言した委員10人のうち7人、自民4人、公明、維新、国民各1人の全員が、憲法審査会を定例日(木曜日)に毎週開催すべきだと主張しました。
これに対して、辻元清美氏(立憲)は、「一般の委員会では法案の審査が終わってしまえばそれ以上の質疑を求めても与党は拒否し、定例日が決められていても委員会は開かれない」と指摘していましたが、とくに自民党の委員には、野党が憲法53条に基づいて国会の召集を要求しても内閣がそれを無視してきたこと、今国会でも答弁に不安のある菅義偉首相をできるだけ審議の場に立たせないように画策し会期を延長せず逃げ切ろうとしていること等を棚に上げて何を言っているんだ、「恥を知れ!」と言っておきたいと思います。

また、國重徹氏(公明)は現在の審査会は議論が拡散して「放談会」になってしまっているので、「会長、幹事会の下に特別の検討委員会を設けて論点の整理、深掘りを行い、それを審査会にフィードバックして議論をまとめていく仕組みを検討すべきだ」と提案しました。
そんなことをされたら憲法をめぐる議論が密室で秘密裏に進められることになってしまいます。思いついたことをそのまま口に出しただけなのかもしれませんが、この発言こそ「放談」そのものではないでしょうか。
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そして、いつものことですが、「放談」というより「暴言」を吐いたのが馬場伸幸氏(維新)です。氏は「閉会中でも(審査会を開いて)議論しようではないか」と呼びかけ、「ここ数年を振り返れば、多額の税金が費やされる海外調査には児童が修学旅行を楽しむように喜々として向かうのに、審査会の扉は固く閉ざされてきた。国民投票法の改正には一部野党が壁になり、ご法度である政局と絡めたりして子どものように駄々をこねてきた」などと言ってのけたのです。

ちなみに、海外調査には維新の足立康史氏も参加したことがあったはずですし、「そもそも国民主権を掲げる憲法が一度も国民投票を経ていないのは大いなる矛盾です」などという没論理の与太話を持ち出すのはいい加減にやめてもらいたいものです(絶対にやめないでしょうけれど)。

改憲手続法(国民投票法)改正案が審議入り、維新が採決を求めるも不発に

まだ発言を希望していた委員が何人か残されていましたが、開会から1時間ほどが経過した後、審査会は次の議題、改憲手続法(国民投票法)改正案の審議に入りました。2018年6月に提出されて以来7回にわたり継続審議となっていた改正案が、ようやく審議入りしたことになります。

議員立法の提案者である中谷元、船田元、逢沢一郎(以上自民)、井上一徳(国民、改正案提出時は希望の党)、北側一雄(公明)の各氏が答弁者として会長席の向かい側に着席し、審議が始まりました。なお、通常なら行われるはずの「趣旨説明」は、18年の通常国会で実施済ということで省略されました(当時趣旨説明を行ったのは細田博之会長でした)。
審議の内容については、以下、『毎日新聞』の記事を転載させていただきます。

憲法審が国民投票法改正案を初の実質審査 通常国会での成立に向け衆院採決が焦点に
衆院憲法審査会は26日、憲法改正国民投票法改正案の審査を行った。法案提出から約2年半が経過する中で、実質審議を行うのは初めて。日本維新の会が採決を求める動議を提出したが採決には至らず、12月5日の会期末までの成立は困難となった。与党側は来年の通常国会での成立を確実にするため、衆院での採決の可能性を探っている。

「(改正案の内容の)趣旨説明を聴取してから2年半、(憲法審の)幹事懇談会のメンバーが採決に合意してから1年半。本日質疑できることを歓迎したい」。質疑のトップバッターとなった自民党の新藤義孝・与党筆頭幹事は、待ち望んだ審議の進展への喜びをかみしめるように語った。

改正案は、国民投票法の成立後に改正された公職選挙法に内容をそろえるもので、駅や商業施設への共通投票所の設置、洋上投票の対象拡大など7項目。2018年6月に自民、公明の与党と維新などが共同提出し、同7月には趣旨説明が行われた。だが、野党が「安倍政権下での改憲に反対」との姿勢から慎重な対応を続け、7回にわたって継続審議となり、「8国会」をまたぐ法案となっている。

質疑では新藤氏のほか、公明の大口善徳氏も改正案の速やかな採決を主張。自民、公明、維新の答弁者がこれに同調した。一方、立憲民主党の奥野総一郎氏は、CM規制やインターネット広告規制、外国人寄付禁止などの課題を取り上げ、「7項目だけでなく抜本改正が必要」と指摘。改正案との並行審議を求めた。

審査の際には、維新の馬場伸幸氏は質疑の「終局」と採決を求める動議を提出。採決すれば人数で圧倒する与党と維新の賛成で可決される。しかし、事前調整のない突然の行動だったため、新藤氏と立憲の山花郁夫・野党筆頭幹事が議場内で話し合い、与野党が日程を協議する憲法審の「幹事会」で取り扱いを検討することで引き取った。

その後の協議では、与党側が、採決に反対する立憲などの野党に配慮。動議の扱いの結論を出さなかった。ただ、早期採決を求めてきた与党側にとって動議の扱いを間違えれば自己矛盾が生じることになる。自民党内からは「あのまま採決してしまえば良かったのに」(閣僚経験者)との声も漏れた。

与党内では、来年の通常国会に向けて少しでも状況を進展させるため、審査会の質疑を終局させる案や委員会採決まで行う案、衆院を通過させて参院で継続審議とする案などが浮上している。【遠藤修平、飼手勇介、水脇友輔】
* 引用、ここまで

ここでも、馬場伸幸氏(維新)が思いがけないパフォーマンスに打って出たわけですが、このことについて何かコメントしているのではないかと思い、氏のホームページとツイッターを確認してみました(12月1日15時現在)。期待?に反して何も見つからなかったのですが、ツイッターでこんな告知を見つけて仰天しました(下図参照)。
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と言うのも、櫻井よしこ氏が共同代表を務める『美しい日本の憲法をつくる国民の会』のイベントに、馬場氏や衛藤征士郎氏(自民党憲法改正推進本部長)、古屋圭司氏(自民、日本会議国会議員懇談会長)はともかく、濱地雅一氏(公明)や山尾志桜里氏(国民)までもが参加するようだからです。

残念ながら改憲手続法(国民投票法)改正案の成立が近づいています。そして改憲勢力は勢力の拡大に努めています。私たちも気を引き締めて闘っていきましょう。(銀)