裁判員制度の廃止をめざして闘ってきた弁護士・市民が中心になって呼びかけた5.18集会に参加した仲間からの報告です。
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5月18日(金)、弁護士会館で「こうやってつぶそう 改憲と戦争」と題した集会が行われ、270名が参加しました。主催は憲法と人権の日弁連をめざす会と裁判員制度はいらない!大運動です。
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様々な発言やアピールがありましたが、ここでは永田浩三さん(武蔵大学教授)の講演「改憲とメディア~何が変えられようとしているのか~」について報告します。
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永田さんのお話は、5月15日に亡くなった岸井成格さんのエピソードから始まりました。中でも興味深かったのは、佐藤栄作元総理(岸信介の弟、安倍晋三の大叔父)の退陣記者会見(1972年6月17日)で、「新聞記者の諸君とは話をしない」との発言に反発して内閣記者会のメンバーが会場から引き上げた際、最初に「それでは出ましょう」と声を上げたのが、当時毎日新聞の若手記者だった岸井氏だったことです。
*興味のある方は、そのときの動画をご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=N0jxKeJ0Sks

岸井さんはTBS「ニュース23」のアンカーとして、特定秘密保護法や安保法制、共謀罪等に反対する論陣を張っていました(写真左から3人目が岸井さん)。
岸井
そして「安保法案は憲法違反であり、メディアとしても廃案に向けて声をずっと上げつづけるべきだ」と番組で発言したときには、これを放送法4条(政治的に公平であること、事実をまげないこと等が規定されています)違反だとして、安倍の別働隊と言われる「放送法遵守を求める視聴者の会」なる団体による意見広告が読売新聞と産経新聞に掲載されました(下図)。
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ところが今、安倍首相はこの放送法の縛りをなくすことを画策しているそうです。永田さんによれば、アメリカでは1987年に放送の「公正原則」が撤廃されましたが、とくに2001年の9.11事件以降、FOXニュースが愛国心一色の放送を展開するなどメディアをめぐる状況が悪化し、トランプ政権下での「フェイクと憎悪」の蔓延に至っています。

永田さんがNHKディレクターとして「ETV2001番組改編事件」に巻き込まれたとき、官房副長官だった安倍晋三は、放送前日にNHKの報道総局長を「勘ぐれ、お前」と恫喝したそうですが、「勘ぐれ」は「忖度しろ」と同義です。安倍は権力の頂点たる首相の座に着いた今も、少しも自制することなくメディアに圧力をかけ続けています。

最後に、永田さんのお話から印象に残った「いい話」をいくつか紹介したいと思います。
まず、NHK番組改編事件をめぐる裁判の中で、ある弁護士が「世の中は永田さんを見捨てませんから」とささやいてくれたことがあったそうです。永田さんにはこれがたいへん励みになり、今、官房長官会見で菅義偉を厳しく追及している東京新聞の望月衣塑子記者にその言葉を伝えたということです。

また、永田さんは「ドキュメンタリーは声を上げられない人とともにある」と考えて仕事をしてきた、そして「必ず資料はどこかに眠っている。本当のことを話してくれる人がいる」と信じているそうです。この間の森友・加計問題の推移からも、永田さんの信念の正しさを感じ取ることができると思いました。

そして、「朝日新聞」が3月2日に「森友文書、書き換えの疑い」のスクープを放って以来、「毎日新聞」、「東京新聞」がこれに続き、遅ればせながらNHKも加わって、メディアがスクラムを組んで政権とせめぎ合う状況がようやく生まれているということです。

永田さんの講演は、「安倍のメディア戦略をどう終わりにできるか」が私たちの課題であるとの指摘で締めくくられました。今こそ百万人署名運動の原則である「小異を残して大同につく」を実践すべきときです。ともに闘っていきましょう。(東京北部連絡会・銀)