12月6日(水)13時から、参議院の憲法審査会が開かれました。
今国会初、というより今年初めて、昨年11月16日以来の開催でした。
というのも、先の通常国会では、審査会を開こうとするたびに、今村復興相(当時)の失言、安倍首相の唐突な改憲メッセージ、共謀罪の審議打ち切り等の問題が続発し、結局1回も開催されなかったからです。

今回のテーマは「憲法に対する考え方について」で、委員を出している7会派の代表が7分ずつ意見を述べた後、自由討議が行われましたが、テーマも議事の進め方も昨年11月16日の審査会と全く同じで、何のために開催したのかと思いました。おそらく、(改憲派としては)今年1回も開かないというわけにはいかないし、限られた会期の中ではせいぜい1回しか開けないしという条件の下で、「私たちも一生懸命やっていますよ」とアピールするために、無理を押してでも開催したのでしょう。
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ただ、委員の出席率はきわめて高く、開会時から45人の全委員が席に着いていて、その後もずっと40人以上が在席していました。なお、会派別の委員数は、自民24,民進9、公明5、共産3、維新2、希望の会(ややこしいのですが、参院での社民と自由の統一会派の名称であり、先に「希望」を名乗ったのはこちらの方です)、希望1となっており、改憲勢力は自民と維新、希望で27(45のちょうど6割)、公明を含めると32(7割超)となっています。

傍聴者は、傍聴席がほぼ満杯となる50人以上が詰めかけていて(うち20人ほどは山梨県からいらっしゃった市民運動団体の方々でした)、私たち百万人署名運動は4人で傍聴してきました。
メディアは記者が10人ほど、カメラマンが5~6人、議場にはテレビカメラ3台(閉会時にはTBSの1社だけになりました)が入っていました。

さて、審議の内容ですが、この日、自由討論も含めて最も多くの発言者が言及したのが合区の問題でした。まず、この論点について、簡にして要を得た『時事ドットコム』の記事を転載させていただきます。
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参院憲法審、合区解消で自民孤立=公明が異論、野党は無視

 参院憲法審査会は6日、約1年ぶりに実質的な議論を行った。来年の通常国会で憲法改正案提出を目指す自民党は、改憲を通じた参院選挙区の合区解消を訴えた。しかし、公明党が異論を唱えたほか、野党はほとんど無視し、自民党の孤立状態が浮き彫りとなった。

 自民党の磯崎仁彦氏ら7人は意見陳述で、「過疎地域の声を国政に届ける代表者の減少が続けば、過疎に拍車が掛かる」などとして合区解消を主張。磯崎氏は「人口減少社会の新たな国民代表原理を探ることは憲法の緊要な課題だ。通常国会での活発な審査を望む」と述べた。

 自民党は、合区解消を改憲の重要項目の一つに据え、各都道府県から参院議員を選出できるよう憲法に明記することを目指している。これに対し、公明党の西田実仁氏は「参院議員が全国民の代表であることに疑義を生じかねない」と懸念を示した。

 民進党の白真勲氏は参院の議員定数増による格差是正を提案した。ただ、改憲に前向きな日本維新の会を含め、野党各党は自民党の合区解消案について論評を避けた。
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いかがでしょうか。
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そもそも、国会議員の数が減ると過疎が進むというのは順番が逆で、人口が流出・減少したために国会議員の定数が削減され、合区を余儀なくされるに至ったというのが正確な因果関係です。
このような傾向を押しとどめることに失敗しつづけてきたのが高度経済成長期以来の地域振興政策の歴史であり、それを主として担ってきたのは自民党にほかなりません。
安倍首相が少子高齢化を「国難」と言い立てて解散を強行したのと同じく、不合理で無責任極まる主張だと思います。

そしてそれ以上に腹立たしいのは、「過疎地域の声を国政に届ける」という言い草です。沖縄県の基地問題、特に辺野古新基地をめぐって安倍政権が何をしてきたのか? 国政選挙で明確に示されてきた切実な「地域の声」を平然と無視しながら、よくも臆面もなくこんな発言ができたものです。
 
次いで発言の多かったのは9条自衛隊明記への賛否で、以下、この問題を中心に各会派代表の意見が簡潔に整理されている『東京新聞TOKYO Web』の記事(わかりやすい表も添えられています)を転載させていただきます。
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自衛隊明記の改憲 希望が自民に同調

 参院憲法審査会は6日、約1年ぶりとなる実質的な審議を行った。自民党が、自衛隊の存在を明記する改憲の必要性を強調すると、希望の党が同調し、日本維新の会も理解を示した。これに対して民進党と共産党、さらに自由、社民両党の会派「希望の会」は懸念を示し、公明党は見解を示さず、各党の立場が分かれた。(中根政人)

 実質審議は昨年11月以来。各会派代表による意見表明で、自民の磯崎仁彦氏は「一部に根強く残る自衛隊違憲論を払しょくするため」自衛隊を憲法に明記するとして、具体的な条文を検討していると説明した。

 希望の松沢成文氏は「国家防衛に対する規定の欠如が、現憲法の最大の欠陥」と指摘した上で「(自衛隊を)しっかり書き込むことこそ憲法体系としてふさわしい」と応じた。同党は改憲論議を始めたところで、玉木雄一郎代表は自衛隊明記の改憲を疑問視している。

 維新は、意見表明で浅田均氏が安全保障より身近な問題を改憲項目とするよう求める一方、自由討論では東徹氏が「われわれも自衛隊の明記について必要性を理解している」と話した。

 これに対して民進の白真勲氏は、歴代政権が違憲としてきた集団的自衛権の行使を安倍政権が容認したことに触れ「(自衛隊を明記する改憲は)集団的自衛権の合憲化だ」と批判。共産の仁比聡平氏も「自衛隊の活動を制約する9条の意味を失わせる」と反発した。

 希望の会の福島瑞穂氏(社民)は「戦争をしない国から世界で戦争をする国へ(日本を)180度変えてしまう」と訴えた。

 一方、公明の伊藤孝江氏は、自民党が参院選挙区の「合区」を解消する改憲を目指していることを念頭に、「慎重な議論が望まれる」との姿勢を示した。
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希望の党の正体

ところで、この稿の最初の方で私は希望の党を改憲勢力と記しましたが、それは上掲の『東京新聞』の記事でも紹介されている松沢成文氏の主張を聞いたからです。氏のブログにこの日の発言の全文が掲載されていますので、少し詳しく紹介したいと思います。

松沢氏は「希望の党を代表して意見を申し述べます」と述べた後、まず、希望の党の「結党の理念の一つ」は「9条を含めて憲法改正については前向きに議論をしていく」ことだと明言しました。

そして、「私たちは、立憲主義を…権力の制限規範として捉えるだけではなく」、「立法府、行政府あるいは裁判所に…権限を与えて、その権限の下に統治をしていくという権力授権規範という見方もある」し、「加えて、目標規範…この国がどういう国にしていくべきかという国民のコンセンサスを得た目標を憲法にしっかり書き込んでいく」という面もあり、「このように、立憲主義というのは、権力の制限規範、権力の授権規範、そして国家目標規範、この3つをしっかりと組み合わせて議論をしていくべきものだというふうに考えております」と、(ものすごくうさんくさい感じがするけれども、うっかりしていると説得されてしまいそうな)独自の憲法論を開陳した上で、「私たち希望の党は、現憲法の最大の欠陥というのは国家の防衛と国家緊急事態に対するしっかりとした規定が欠如している、これは独立国家の憲法としては私は大きな欠陥だというふうに思っております」と明言しました。
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そして、国家緊急事態、安全保障、地方分権、知る権利について持論を述べ、「憲法の議論がここまで進んできたからには、是非とも今後の憲法審査会においては、各党が今の憲法に対する意見を述べるだけではなくて、どの条項を具体的に変えていく、それを国民投票に付すべきか、具体的な改正条項についてしっかりと議論をし、コンセンサスを得ていく、そのような審議を積み重ねていっていただきたいというふうに考えております」と発言を締めくくりました。

全体としてこうした意見が「私たち希望の党」のものなのか「私」個人のものなのか判然としませんが、警戒すべき発言には違いありません。

相変わらずの押しつけ論と草の根の改憲運動

この日は、久しぶりに憲法審査会に復帰した山谷えり子氏(自民)の「憲法は占領下でGHQが1週間でまとめて受け入れを迫ったものだ」、幹事でもある西田昌司氏(自民)の「(憲法制定過程等の)根本に立ち戻った議論をすべきだ」といったおなじみの発言もありました。
こういう議論が飛び出すのは、まだ自民党内に一丸となって改憲の発議に突き進む体制ができあがっていない表れかもしれません。

ただし、山谷氏は、現在までに国会に憲法改正の早期実現を求める意見書が36都府県議会で決議されていることも紹介していました。これら決議の広がりは日本会議が主導してきた草の根的な改憲運動の成果であり、関連団体である「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が呼びかけている「1000万人賛同者」運動等とあわせて、その動向を注視していかなければなりません。

さて、15時を少し回ると、福島みずほ氏(社民、希望の会)が発言を求めて名札を立てていたのに、柳本卓治会長(自民)はそれを無視して閉会を宣言してしまいました。(予定時間を過ぎたことに気をとられて気づかなかっただけなのかもしれませんが)なんだか今後の審議の行方を暗示するような(つまり、安倍政権の下では改憲案の審議も議決も強引に進められるのではないかという)いやな感じのする出来事でした。

ともあれ、今臨時国会での憲法審査会は、この後12月7日(木)に衆議院で、8日(金)には参議院で、それぞれ請願を処理するための形式的な審議が行われて、終幕となりました。(G)