12月17日(木)阿佐ヶ谷市民講座で斎藤貴男さん(ジャーナリスト)の講演を聞いた。レジュメは、「マイナンバーの現状、三兆円市場、マイナンバー漏えい問題、大企業のビジネスチャンス、軽減税率との関係、ワンワード化の意味、超監視社会へ」だった。話の内容は豊富だった。印象的なことを少しあげたい。(T)
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①政府は、マイナンバーは一人一人の全個人情報を透明化すると言って、そこに「意義」があるとしているが、あと2年の間にワンカード化のスケジュールがあり、これが危険である。一つのところに流れたデータは必ずよそのところにも流れていく。今の段階ではまだ行政のレベルだが、民間も一体化していく。
●例えば死亡届が出されても今まではデータが年金課の方に流れず不正受給があったり、消えた年金問題が起こったりした。そういうのをマイナンバーで防ぐという。しかし、そんなことをしなくても、死亡届を受けた区役所の職員が年金課に知らせればいいだけの話ではないか。不便だとか、制度のせいにしているが違う。便利ではなく、とても危険になるのだ。
ワンカード化というのは、一つの手続きですべての手続きが完結するということで国民総背番号制と同じ。一億人からのすべての情報がほしい。使えるということではない。1億人の中で気に食わないヤツの情報を取り出したい。そのためにはとりあえず1億人からの情報を集めて、ここっていうとき調べればいい。わかるようにしたいということなのだ。
●今年になって、マイナンバー改正法が成立した。マイナンバー法は安倍政権になって改めて出されて、2013年に成立した。2015年施行で、3年をめどにその後検討するという付則がついていた。ところが、3年どころか施行もされてないうちに改正され、預金口座にマイナンバーを付番することにされてしまった。一人の人がたくさんの預金口座を持っていたら、それらにマイナンバーを付けておくと税務署はマイナンバーをみればその人がどういう預金を持っているか全部わかる。脱税を防ぐんだというけれども、それだけじゃなくていろいろに使われる。
竹中元総務大臣は国民総背番号制大賛成と言っていたが、実際彼は毎年1月1日にアメリカに住民票を移して住民税を免れていた。そのことは週刊誌に取り上げられ国会でも追及されたが、なんのオトガメもなかった。脱税を問題にするなら、まず政治家全部を調べてみればいい。しかし、そういうことはやらない。

②監視社会はいけない。しかし、どんどんひどくなっている。
前国会で衆議院の方では可決されてしまったが、盗聴法の改悪が狙われている。これまでは警察は裁判所の令状を持ってNTTまで行かなければ盗聴はできなかったが、これからは警察所内でやっていいというものだ。一応、暴力団がらみの犯罪ならとなっているけれど、「暴力団」とつけば盗聴自由を合法化してよいとするのは大問題だ。
また、町を歩けば監視カメラがたくさんある。いま顔認証システムという認識システムとの連動の実験が進められている。これは写真データベースを用意しておいて、監視カメラでそこを通る人の顔を写す。そうすると瞬時に顔データーペースト照合して、判読・判定する。人間の顔というのは変装しても変わらないところが20数ケ所あるそうだ。例えば、目と目の間の間隔は変わらないとか。これらの研究はNECとかオムロンとかがやっている。
第一次安倍政権の時、「イノベーション戦略会議25(2025年)」という有識者会議を内閣の中につくって、どのような技術革新をめざすかを出させた。そのときの技術革新の目標項目に「2010年代に日本中に防犯カメラをつける。これに顔認識をつける。音声認識ををつける。しぐさ認識をつける」というのがあった。それに携帯電話のGPSを合わせれば、いつ、誰が、どこで、誰と一緒にいたかも警察は把握できる。しかし、そういう社会が幸せな社会と言えるのか。カメラ会社はビジネスチャンスだとなる。
監視カメラ
③警察の新捜査手法として盗聴法改悪や司法取引の導入が狙われているが、前国会に法案として出て来る前に、警察の中につくられた研究会が打ち出した「捜査手法の高度化」の中に、暴力団捜査の中で警察官が暴力団組員や関係者の家に無断で入って、会話の盗聴や映像の隠し撮りをしてもいいということを認めろとか、さらに、全国民のDNAを登録させろという内容があった。今後なにかのタイミングで出てくるだろう。
こういう話はこわもて的に攻めてくるより柔らかい、面白い感じで出てくる。例えば、今年の暮れに東京ドームで行われる「嵐」のコンサートに顔認識技術が使われる。チケットを買うとき、顔写真の提出が求められるのだ。何のためか、写真を出させて、当日実際に本人がきているかどうか入り口でチェックするのかどうかわからない。こうしたことは、去年の暮、埼玉スーパーアリーナで行われた「ももいろクローバーZ」のコンサートでも行われていた。アイドルを守るためにと主催者は言い、ファンはそれを支持する。

④マイナンバーカードは事実上国家公務員には義務化されることになるが、民間の場合は強制されないと国は今は言っている。しかし、現実には、拒否した者を会社は「反社会的分子」だとするかもしれないし、不利益を被ることになるかもしれない。
でも私は認めない。住基ネットに反対して弓削達さん(元フェリス女学院大学学長)は、「私は弓削達(ゆげ・とおる)であって、番号ではない」と言われた。私もそう思うし、自分のやりたいようにやり、言いたいことを言って生きていきたい。