とめよう戦争への道!百万人署名運動

署名運動をとおして、改憲・戦争への道を許さない闘いを全国的に広げていきます。

2014年11月

星野文昭さんは現在68歳。今から43年前の1971年11月14日の沖縄協定批准阻止闘争に参加し、その時の機動隊員死亡の「実行犯」にでっち上げられて75年に不当逮捕されました。現在無期懲役囚として徳島刑務所に在監していますが、一貫して無実を訴え続け再審開始を要求しています。

全国に27の救援会がつくられ、「すべての証拠を開示せよ!再審を開始せよ!」と、星野文昭さんが刑務所内で書いた絵画の展覧会や100万人の署名をを求め運動を展開しています。

11月29日、四谷区民ホールで開かれた全国集会には会場満席の470人が参加しました。

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集会では冒頭、獄中の星野文昭さんからのメッセージが、お連れ合いの暁子さんから読み上げられました。
一部を紹介します。

「私への無期・40年投獄は、70年安保・沖縄闘争によって、労働者人民の闘いを抑圧するスターリン主義・体制内のクビキをのりこえ、青年・学生を先頭に戦争も搾取もない社会をめざし、圧倒的に自己解放的に闘いを発展させはじめ、体制を根底から揺るがしはじめたこと、そして今の命より金儲けの社会を労働者人民の団結した力で人間本来の社会に変える闘いとして発展させていることを圧殺しようとするものです。

それは、無期という重圧と社会生活・闘いとの分断によって、闘い生きることそのものを奪う、それも獄中・家族のみならず全ての労働者人民から奪おうとする究極の弾圧なのです。

だから、これを打ち破り、生き、勝利していくためには、本物の闘いが問われるのです。

それは、苛酷さに耐え忍ぶというものでも、無理をして自己犠牲的に「信念」を貫くといったものではなくて、自らと暁子、全ての仲間・労働者人民の持つ力を100パーセント信頼し、それを解き放って勝利していくものです。

不屈に闘うということは、そのように闘うということなのです。」

この星野さんの再審闘争をたたかう弁護団4名が登壇し、一人ひとり裁判の現状を報告しました。弁護団長の鈴木達夫さんは「全ての証拠開示はあたりまえのこと。無実を明らかにする証拠は警察庁の中にある。」「安倍政権のだましの手口を打ち砕こう。労働者が主人公の社会を建設しよう。」と訴え、今回の衆議院選(8区杉並)に出馬する決意を述べられました。

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集会の途中で、暁子さんの詩に丸尾めぐみさんが作曲された「ソリダリティ~団結」の英語版をアートジャーナリストの杉浦映子さんがピアノ伴奏で熱唱しました。

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各地の連絡会の報告では、岩手で日本キリスト教団の有志の方たちが絵画展を開くために力を合わせ、そこから支援の輪が広がっているお話や、島根での初めての絵画展に向けた労組回りで一つの労組から800名近い署名が寄せられたお話など、星野文昭さんの獄中40年の闘いが人々の心を大きく動かしている様子が伝わりました。

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また、この星野文昭さんを取り戻すことを労働運動の重要な課題と位置づけている全国労組交流センター代表の辻川慎一さん(動労水戸副委員長)は、「労働者、農民、中小企業等々、生きられないという事態に急速に入っている。福島では13万人に強制帰還が襲いかかろうとしている。こういう人たちを団結させることが問われている。私たちは、労働組合を復権して全てを闘い抜いていく。そして、星野文昭さんの絵画展でつながっていこう。」と訴えました。

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たくさんの人々が星野さんと共にたたかう決意を述べられました。最後に、お連れ合いの暁子さんと従兄弟の星野誉夫さんが登壇し、全証拠を開示させ文昭さんが70歳になるまでに何としても取り戻したいと訴えました。

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星野文昭さんの再審闘争については、星野文昭さんを取り戻そう全国再審連絡会議のホームページ
→http://fhoshino.u.cnet-ta.ne.jp/をご参照下さい。

「全証拠開示・再審開始を求める100万人署名」にご協力を!
























解散の2日前、11月19日(水)の9時30分から、衆議院憲法審査会が行われました。定例日(木曜日の午後)ではない水曜日午前中の開催でした。この日の議題は17日(月)に盛岡市で開かれた地方公聴会の報告のみで、配布されたA4版3ページの『派遣報告』を武正公一氏(民主)が読み上げただけで、10分もかからずに散会となりました。

開会時には空席が目立ちましたが、すぐに出席者は40人以上となり、散会時にはほぼ全員、47人が着席していました(定数は50人)。記者は3人で他にカメラマンが2人、傍聴者は私たち百万人署名運動の2人だけでした。

この日の開催は、いつも傍聴券の手配でお世話になっている議員の秘書さんから18日の夕方に教えていただきました。衆議院憲法審査会のホームページには18日に「今後の開会予定を更新しました」と記載されていますが、私がチェックした21時すぎにはまだ告知されていませんでした。もし連絡がなければ傍聴できないところでした。いつもながら国会の広報のあり方にはほんとうに腹が立ちます。

この日の審査会では、散会後に保利耕輔会長(自民)の短い挨拶がありました。氏は次回の総選挙には立候補しないことを明らかにし、委員の面々に対してこれまでの審査会での協力に謝意を表するとともに今後も憲法改正に向けて着実に検討を進めてほしい旨を述べて、大きな拍手を受けていました(この発言を『衆議院インターネット審議中継』の『ビデオライブラリ』から起こして正確にご紹介したいと考えていたのですが、残念ながら散会後の音声がカットされていました。後日公表される『会議録』にも記載されないと思います)。

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さて、17日の盛岡地方公聴会ですが、さすがに盛岡まで傍聴に行く時間はとれなかったので(と言うより、交通費の負担が大きすぎるので)、私は『衆議院インターネット審議中継』で視聴するつもりでした。ところが、公聴会の模様は中継されなかったのです。
会場の都合などで同時中継が難しかったとしても『ビデオライブラリ』に録画をアップしてほしかったのですが、それもありません。つまり、私たちが公聴会の様子を映像で確認する手段はないということです。解散総選挙にはおよそ700億円の国費が投入されると報じられていますが、大した費用が掛かるとは思えない録画とその公開くらいは行ってしかるべきだったのではないでしょうか。

報道もあまりなかったのですが、私がチェックした中ではいちばん詳しかった『NHK NEWSWEB』の記事を掲げておきます(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141117/k10013264431000.html)。

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衆院憲法審査会 初の地方公聴会(11月17日16時19分)

衆議院憲法審査会は憲法改正を巡る国民の意見を幅広く聞くため、初めての地方公聴会を盛岡市で開き、憲法改正に向けた審査を急ぐべきだという意見が出る一方、拙速に進めるべきではないという慎重な意見も出されました。

衆議院憲法審査会が盛岡市で初めて開いた公聴会では「これからの憲法審査会に望むこと」をテーマに、大学教授や弁護士ら5人が意見を陳述しました。

このうち東北大学大学院教授の糠塚康江氏は先の国会で成立した改正国民投票法に関連して、「国民投票の投票率が極めて低い場合、ごく少数の賛成で憲法改正が実現し、正当性に疑義が生じる。国民投票の成立に一定の投票率を満たすことを条件とする『最低投票率』制度を設けるべきではないか」と述べました。

岩手弁護士会所属の弁護士、小笠原基也氏は「被災地で暮らしている多くの人たちは、いまだに仕事もなく家を建てる場所もない。なぜ国民の生活が尊重される世の中ができないのかをきちんと見たうえで、憲法改正の必要があるかどうか、地に足の着いた審議をしてほしい」と述べました。

宮城県議会議員の相沢光哉氏は「衆参両院に憲法審査会が設置されてすでに7年が経過しており、機は熟し切っている。いまの憲法はGHQ=連合国軍総司令部の占領下に制定されたもので、独立国にふさわしい自主憲法の制定に向けて憲法審査を急ぐべきだ」と述べました。

岩手県生活協同組合連合会会長理事の加藤善正氏は「憲法改正は主権者である国民から声が上がって初めて国会で議論を始めるのが立憲主義の建て前だ。政治不信が広がっているなか、憲法改正を主張する国民の声は少数であり、あまり拙速に進めるべきではない」と述べました。

日本大学名誉教授の小林宏晨氏は、集団的自衛権の行使容認に関連して、「集団的自衛権は主権国家の固有の権利だ。安倍内閣による閣議決定で行使が容認されたことは方向付けとして非常によく、この方向付けを継続して、積極的に平和に関与してほしい」と述べました。

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なお、もっと詳しくお知りになりたい方は、上述の『派遣報告』が衆議院憲法審査会のホームページにアップされていますので、そちらをご覧ください(http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kenpou.nsf/html/kenpou/187-11-19.htm)。

こうして今国会の憲法審査会は幕を閉じたわけですが、与党、そして野党の半分くらいを含む改憲勢力が絶対多数を占める中で、7.1閣議決定の内容や手続きについて突っ込んだ議論が行われることなく、明文改憲に向けた準備が着々と進められている状況にあります。
総選挙の結果がどうなろうと、私たちは憲法改悪絶対阻止の声を上げ続け、国民の過半数の共感、支持を取り付けなければなりません。厳しい情勢ですが、ともに闘っていきましょう。(G)












12月10日の秘密保護法施行を前にして、11月18日(火)の昼12時~13時まで、国会正門前で、秘密保護法の廃止を!と抗議行動がありました。主催は「秘密保護法」廃止へ!実行委員会。約150名ほどが集まり、「戦争準備の‘秘密法’反対!」「監視・管理社会と一体の‘秘密法’反対!」「警察国家反対!」と声をあげました。

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ちょうど、国会正門前から、国会見学の小学生たちが大勢出てくるところでした。学校の先生が、こうした抗議行動についても説明してくれるといいのになあと思いました。

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リレーアピールが続きました。
実行委員会呼びかけ人の白石孝さんは、昨年5月に成立した「マイナンバー法」にふれ、「国民に番号をつけて管理している国は世界でもまれ、盗聴法や共謀罪などとセットで、権力による市民管理社会をめざしている」と警鐘乱打しました。
新聞労連の方は、秘密保護法施行によって、「取材対象者が情報を流さないようになる」と危惧していました。

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このあと、全体は首相官邸前へ移動し、「秘密保護法」準備室への抗議行動を行いました。
12月10日に向け準備作業をしている「準備室」は、首相官邸前の内閣官房の建物の中にあります。

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実行委員会で事前に要請の申し込みをしたそうですが、担当官は「忙しい」という理由で対応しませんでした。まったくふざけた態度です。「秘密保護法」施行中止を求める要請書を読み上げ、警備員に届けるよう託しました。

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「特定秘密保護法」の強行採決から1年、法の廃止をめざして行動してきた実行委員会は、12月6日(土)に、あくまで廃止を求めて集会とデモを呼びかけています(午後1時30分~日比谷野外音楽堂)。


この日(11/18)、国会正門前とは反対側の参議院・議員会館前では、「テロ指定・資産凍結法」制定阻止!の緊急行動が闘われていました。参議院の内閣委員会で、この法案が審議されることになっていたからです。この間、共謀罪に反対し、反「テロ」3法の危険性を訴えてきた「破防法・組対法に反対する共同行動」らの呼びかけによるものです。

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法文では「公衆等脅迫目的の犯罪行為を行い、または助ける恐れのある者」を「テロリスト」と規定しているのですが、実際には警察庁が勝手にテロリスト指定をするということなのです。破防法顔負けの人権侵害、憲法違反の悪法です。
しかし、審議らしい審議もなく、マスコミ報道もされず、アッというまに衆議院で可決されてしまいました。この日の委員会でも、山本太郎議員が「テロ」とは何かと突っ込んでくれたのですが、採決では共産党も賛成で可決してしまいました。

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外への戦争は、内への治安弾圧・分断攻撃と一体です。そういう意味では、すでに戦争は始まっている!と言っても過言ではないと思います。
職場・学園・地域で、自分たちの知る権利や表現の自由、思想信条の自由を断乎行使して、仲間とつながり、戦争絶対反対を貫いていきましょう。(S)








11月12日(水)13時すぎから参議院憲法審査会が開かれました。今国会3度目の開催で、実質的な審議は2回目となります。この日のテーマは「憲法と参議院」でした。

冒頭、柳本卓治会長(自民)が「『憲法とは何か』について、来る19日午後1時に参考人の出席を求め、その意見を聴取したい」と述べ、了承されました。

このテーマ設定には耳を疑いましたが(誰を呼ぶのか知りませんが参考人から「憲法とは何か」を講義してもらいあらためて勉強しようというのでしょうか? もっとも審査会での議論の水準を見るとその必要性は大いにあるとも言えそうですが・・・)、衆議院の解散風が吹き荒れる中、14日にはホームページで「取りやめ」が告知されました。

この日の傍聴者は19日の開催を聞かされて帰ったわけですから、もしかすると中止を知らずにお出かけになり、無駄足を踏む方がいらっしゃるかもしれません。人騒がせにも程があると言わなければなりません。

この日は最初40人近くが出席していましたが、少しずつ欠席者が増え、終盤には30人前後となりました(定数は45人)。傍聴者は20名ほどで、私たち百万人署名運動は5人で傍聴しました。

記者は2~3人しかおらず報道も乏しかったようで、私がネットで確認できたのは下記の『産経ニュース』だけでした(http://www.sankei.com/politics/news/141112/plt1411120034-n1.html)。

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自民、民主は参院存続前提で発言、みんな、維新は一院制主張 参院憲法審

参院憲法審査会が12日開かれ、各党議員が参院のあり方について意見を述べた。自民、民主両党は参院存続の前提で発言し、みんな、維新の両党は一院制を主張した。

自民党の愛知治郎氏は「参院に独自の機能を付与することが適当だ。具体的分野は議員立法の推進、特定法律案と条約の先議だ」と述べた。民主党の小西洋之氏は「民主党は『予算は衆院、決算と行政監視は参院』という見解を示している」と説明した。

みんなの党の松沢成文氏は「道州制が進み小さな中央政府になった場合は一院制を目指すべきだ」とし、維新の党の清水貴之氏も「維新が提案している議員定数大幅削減を進めれば一院制に行き着く」と訴えた。

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参院審査会でも改憲具体化の主張が

『産経』の記事では取り上げられていませんが、11月6日の衆議院憲法審査会に続いて、この日の参議院審査会でも複数の委員から改憲論議の進展を求める意見が表明されました。

中でも江口克彦氏(次世代)の発言は、「参議院憲法審査会において緊急事態をテーマに取り上げ、再来年の参議院通常選挙の際に、緊急事態条項を追加する憲法改正案についての国民投票を実施できる日程で憲法改正原案を取りまとめるべきだ」というきわめて具体的なものでした。

改憲勢力の間で改憲のテーマやスケジュールについての議論が集約されつつあることは明らかであり、私たちはこれに対抗して憲法改悪阻止の運動の一層の拡大・強化に取り組んでいかなければならないと思います。

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自衛隊創設時の参議院決議

さて、この日の審査会は予定されていた審議時間(「所要2時間を目途」とされていました)を余して14時35分ごろ散会となりました。

参議院のあり方、役割についてはこれまで再三議論されてきており、「参議院において女性議員の増加に向けてどのような取組みができるか議論する必要がある」との大沼みずほ氏(自民)の発言のほかには皆さんにあえてお知らせしたい目新しい論点もありませんでしたので、今回のブログ記事は、60年前の参議院本会議(1954年6月2日)での議事の内容を紹介して終えたいと思います。

それは、この日の審議の中で小西洋之氏(民主)が「参議院の『良識の府』としての憲法問題への当たり方の一つの実践例」として挙げた自衛隊創設時の参議院の決議に係る鶴見祐輔氏による趣旨説明です。小西氏は発言時間の制約から一部を紹介しただけでしたが、ここでは国立国会図書館の『会議録検索システム』から全文を引用します。

昨今の国会審議のありようから見ると、かつてこのような議論がなされ決議が成立したことが信じられないような気がします。少し長くなりますが、ぜひご一読ください。(G)

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私は、只今議題となつた自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議案について、その趣旨説明をいたさんとするものであります。先ず決議案文を朗読いたします。

○ 自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議

本院は、自衛隊の創設に際し、現行憲法の条章と、わが国民の熾烈なる平和愛好精神に照し、海外出動はこれを行わないことを、茲に更めて確認する。
右決議する。(拍手)

この趣旨は、すでに3月8日、日米相互防衛協定調印の際、岡崎外務大臣とアリソン米国大使との挨拶のうちに述べられていることでありますが、我我は国民の名において、本院により改めてこれを確認せんと欲するものであります。

只今本院を通過成立をいたしました防衛2法案は、委員長の報告によりましても、誠に重要なる内容を有するものであります。先般成立いたしましたMSA協定と相待つて、戦後日本に新らしき方向転換を示唆するがごとき要素を含んでおるのであります。

自衛隊法により生まれんとする3部隊、殊に陸上自衛隊は、その名称の如何に呼ばれましようとも、その数量と装備、武器に至つては、満州事件前の我が国の陸軍に次第に近似するがごとき実力を備えんといたしております。

又、その任務については、同法第3条におきまして、「直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛す」となし、その方法としては、第88条におきまして、「必要な武力を行使する」と明記してあります。而もこの自衛隊の数量は、米国駐留軍の漸減に応じ漸増せんとするのでありますから、戦力という文字の解釈如何にかかわらず、常識的用語としての軍隊の内容に近づきつつあることは、否みがたいのであります。

故に今日の程度においても、すでに憲法第9条の明文に違反するとの議論が生じております。いわんやこれが更に数量的に増加せられ、又その使用の範囲が拡大せられるといたしますならば、我が国が再び、戦前のごとき武装国家となる危険すら全然ないとは申せないのであります。

故に自衛隊出発の初めに当り、その内容と使途を慎重に検討して、我々が過去において犯したるごとき過ちを繰返さないようにすることは国民に対し、我々の担う厳粛なる義務であると思うのであります。

その第一は、自衛隊を飽くまでも厳重なる憲法の枠の中に置くことであります。即ち世界に特異なる憲法を有する日本の自衛権は、世界の他の国々と異なる自衛力しか持てないということであります。

その第二は、すべての法律と制度とは、その基礎をなす国民思想と国民感情によつて支えられて初めて有効であります。そして今日の日本国民感情の特色は、熾烈なる平和愛好精神であります。従来好戦国民として世界から非難をこうむつておる日本国民は、今や世界においても稀なる平和愛好国民となつておるのであります。それは日本国民が、最近9年間に実に深刻な経験をいたしたからであります。

その一つは敗戦であります。これがどのように日本国民の思想に影響を与えたかは申述べる必要はありません。この悲痛な幻滅が戦争に対する日本国民の考え方を激変させたのであります。

併し、日本の国民思想に深刻な影響を与えたいま一つの事実は、戦争後における勝利者と敗北者との関係であります。
敗戦後の日本国民は、深い反省をいたしました。そうして謙虚な気持で新らしい出発をしようと思つていた。併し我々の期待を裏切るような出来事が国の中においても、海の外においても起つたのであります。我々が戦前に抱いたと同じような考えが、再び世界に拾頭せんとすることを我々は眺めたのであります。そして我々は無条件にそういう道ずれにはなりたくないと思うようになつたのであります。

この二つの深刻な幻滅の結果として、日本民族の尊き体験として学びとりましたことは、戦争は何ものをも解決しないということであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)

殊に原爆と水爆との時代において、戦争は時代錯誤であるということであります。(「そうだ、その通り」と呼ぶ者あり拍手)

この惨禍をこうむつた唯一の国民として日本はこれを世界に向つて高唱する資格を持つておるのであります。然るに戦後9年にして、世界は再び大戦争の危険にさらされんとしておる。殊に東洋においてその危険が横わつておるのであります。

そのときに日本に、自衛隊が誕生したのであります。

故に我々はこの自衛隊の意義を明白に規正しておくことが特に必要であると思うのであります。

思うに自衛隊は現在の世界情勢に対応するための時的な応急手段であります。若し国際情勢が今日のごとく二大陣営に分れて緊迫していなかつたならば、この程度の自衛隊をも必要としなかつた筈であります。

7年前我々は、平和を愛好する諸国民の公正と信義に信頼して、みずから進んで戦争を放棄したのであります。故に今日創設せられんとする自衛隊は、飽くまでも日本の国内秩序を守るためのものであつて、日本の平和を守ることによつて東洋の平和維持に貢献し、かくしてより高度なる人類的大社会的組織の完成を期待しつつ一つの過渡的役割を果さんとするものであります。

それは決して国際戦争に使用さるべき性質のものではありません。

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  60年後の国会の‘いま’の傍聴に向かう西川事務局長ら(11/12)

この日本国民の平和に対する希求は外国の指導に原因するものでもなく、又一時の流行でもありません。あの戦後の深刻なる幻滅に刺激せられて、国民の中に起つた一つの精神革命の結果であります。

この9年間に我々は過去の国家至上主義の思想から解放されて、人間尊重の考え方に転向したのであります。殊にそれは若き世代と婦人との間に力強く成熟しつつある思想であります。この個人を尊ぶという考え方は、民主主義の基底であり、それは世界平和の思想に連なるものであり、この国民感情が憲法第9条の明文と相待つて、自衛隊の行動を制約すると思うのであります。

然るにこの自衛隊という文字の解釈について、政府の答弁は区区であつて、必ずしも一致しておりません。この間、果して思想の統一があるか、疑いなきを得ないのであります。

その最も顕著なるものは、海外出動可否の点であります。何ものが自衛戦争であり、何ものが侵略戦争であつたかということは、結局水掛論であつて、歴史上判明いたしません。

故に我が国のごとき憲法を有する国におきましては、これを厳格に具体的に一定しておく必要が痛切であると思うのであります。

自衛とは、我が国が不当に侵略された場合に行う正当防衛行為であつて、それは我が国土を守るという具体的な場合に限るべきものであります。幸い我が国は島国でありますから、国土の意味は、誠に明瞭であります。

故に我が国の場合には、自衛とは海外に出動しないということでなければなりません。

如何なる場合においても、一度この限界を越えると、際限もなく遠い外国に出動することになることは、先般の太平洋戦争の経験で明白であります。

それは窮窟であつても、不便であつても、憲法第9条の存する限り、この制限は破つてはならないのであります。

外国においては、過去の日本の影像が深く滲み込んでいるために、今日の日本の戦闘力を過大評価して、これを恐るる向きもあり、又反対に、これを利用せんとする向きも絶無であるとは申せないと思うのであります。

さような場合に、条約並びに憲法の明文が拡張解釈されることは、誠に危険なことであります。

故にその危険を一掃する上からいつても、海外に出動せずということを、国民の総意として表明しておくことは、日本国民を守り、日本の民主主義を守るゆえんであると思うのであります。

何とぞ満場の御賛同によつて、本決議案の可決せられんことを願う次第であります。(拍手)

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11月6日(木)、衆議院憲法審査会が行われました。今国会2度目の開催となります。衆院の審査会は10時に開会されるのが通例ですが、この日は本会議があり、秋の園遊会があった関係でその開始時間が正午とされたため、審査会の開会も前倒しされて9時30分となったようです。

無理やりの審議日程

それはともかく、この日午前の衆議院では他にも安全保障委員会(これはわずか数分で終わったようですが)、倫理選挙特別委員会、消費者問題特別委員会、震災復興特別委員会、原子力問題調査特別委員会が開かれており、今国会では(もともと会期が短めであることに加えて、小渕・松島両氏の大臣退任等によって国会の運営が混乱しているためでしょうか、)かなり強引に審議日程が設定されていることがわかります。

笠井亮氏(共産)が「私はこれから原子力問題調査特別委員会で質問に立つために退席せざるを得ない」、「この審査会が(他の委員会等と)重複する日程で設定されるということはすべきでないと改めて強調したい」と抗議したのもむべなるかなと思いました。

この日の委員の出席状況は、最初は30人前後、その後35人以上に増加するもすぐに減少に転じて25人そこそこになり、終盤にかけてまた増加して30人を超えるという様子でした。定員は50名ですから、(この日に限ったことではありませんが)空席が目立ちました。

また、委員の入れ替えによって女性の委員が維新の党の三木圭恵氏1人だけになってしまいました。この日三木氏は開会後しばらくしてから(園遊会に参加するためでしょうか)振袖姿で現れたものの短時間で退席してしまいましたので、ほとんどの時間は男性だけが居並んでいるという状態でした。

「女性の活躍」を掲げる政権の与党が、34人(自民31、公明3)も委員を出していながら女性がゼロというのは異常なことではないでしょうか(ちなみに、衆議院議員480人中女性は39人、自民党は293人中23人、公明党は31人中3人となっています)。

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改憲論が大勢、会長まで悪乗り

この日の議題は「今後の憲法審査会で議論すべきこと」でした。まず、「各会派の代表者からの意見表明」(各会派10分以内)が行われ、その後「委員からの発言」がありましたが、ほとんどの発言者が「今後の憲法審査会で議論すべきこと」は改憲の具体的な内容であるという前提で持論を開陳していました。とくに共産党の笠井氏が中座してからは改憲論が溢れかえり、最後には保利耕輔会長(自民)が次のように述べて、11時30分に散会となりました。

* * * * *
各党内でご議論をいただいて、党内の考え方をできるだけまとめていただいて、そして、党としてはこうだということを今後もご披瀝いただきたいと思いますし、また、それを詰めていったところは最終的には条文案である、法律案であるというふうに考えますので、それを意識してご議論をいただきたいなと思っております。

条文があって初めてここの審査会では議論が具体的に進んでまいりますので、それをぜひご記憶いただいて、ご努力をいただきたいなと思っております。
* * * * *

私は、これは審査会を中立的に運営すべき会長の役割を逸脱したとんでもない発言だと感じましたが、いかがでしょうか。

審査会の今後の方向性を示した船田氏の発言

上記の保利氏の発言の前には、船田元氏(自民、幹事)が、この日の審議を総括して、次のように発言しました。

* * * * *
憲法改正に向けて、我々は評論家であってはいけないと思っています。やはり、一つ一つの項目あるいは条項について、変えるべき、変えないべき、変えるならどう変えていくかということについて、立法権者として見識をしっかり持って、そして分析もしっかりして、一歩でも前に進めていくという態度が大変重要であるということを、きょうの議論を聞きまして改めて認識をいたしました。(中略)

今後、どのように議論をしていくかということについては、来週以降、幹事会あるいは幹事懇で、きょうの議論をしっかりと踏まえて、テーマの絞り込みをやっていくということになりますが、(中略)きょう、多くの皆さんの共通する課題あるいは話題として出ましたのは、確かに、緊急事態、それから環境権を含めたいわゆる新しい権利、もちろん、権利の中には、権利と義務の関係をどう見るのかという非常に大きな命題もありますけれども、そういった新しい権利のこと、それから国会のあり方、これは、一院制の問題も含めた衆参の役割分担など、あるいは選挙制度に関わることも当然議論としては相当出たと思っております。

それから96条、これは私も申し上げましたが、いろいろと議論が分かれるものもありますが、やはりこれも視野に入れておくということは大事なことであろうと思います。

9条について、あるいは集団的自衛権のことについて、先般行われた閣議決定について、これの言及も各党の皆さんからあったわけでございますが、この点については、これはなかなか難しい問題、各党の間での認識あるいは考え方の違いというのがまだまだ相当あるというふうに感じた次第でございます。

同じ方向を向いているかなと思うのは、緊急事態、あるいは環境権を含めた新しい人権ということでありますので、そういったところがまずテーマとしてはふさわしいのかなと思っておりますが、今申し上げた他の項目についても、これはやはり幹事会でもよくよく議論をして、テーマにするときには冷静、客観的に取り組んでいく必要がある、このように思っております。

きょうの議論は大変有意義であり、憲法改正に向けて具体的な第一歩を踏み出せたかな、あるいは出せるかなというところまで来たと思いますので、今後、審査会あるいは幹事会での議論を、きょうの議論をしっかりと踏まえてやっていきたいと思いますので、各党の皆様のご理解またご協力を心からお願いしたいと思います。
* * * * *

保利氏と船田氏の発言を併せ考えると(自民党の審査会幹事である古屋圭司氏、保岡興治氏も船田氏と同様の発言を行っていました)、憲法審査会は、緊急事態条項や環境権等を手始めにして、各党が条文案を作成し、それを突き合わせることで改憲の議論を実質的に進展させようという段階に来ているということだと思います。

改憲の具体化に突き進もうとしている審査会の暴走を阻止していくためには、まず、この危機的な状況を周知徹底して、改憲反対の運動を高揚させていかなければなりません。

しかし、この日の傍聴者は15人ほど(うち百万人署名運動は3人)でけっして多くはなく、記者も3~4人しかいませんでした。報道も少なかったようで、私がチェックしている範囲では、改憲勢力の機関紙とも言うべき産経新聞が次項のように報じただけでした。

衆院憲法審査会「緊急事態条項」新設必要性で一致

*『産経ニュース』(http://www.sankei.com/politics/news/141106/plt1411060033-n1.html)より

* * * * *
衆院憲法審査会が6日開かれ、共産党を除く与野党7党が大規模災害や感染症拡大などの緊急事態に対処するための規定を憲法に盛り込む必要性に言及した。現行憲法にない「緊急事態条項」を審査会の議題に取り上げることも提案され、改憲の優先テーマに浮上する可能性が強まった。大地震やエボラ出血熱の脅威に直面する中、「万が一」に備える政治の責任をようやく各党が共有したといえそうだ。

6月に改憲手続きを確定させる改正国民投票法が成立した後、各党が大災害や武力攻撃の発生時に首相権限を強化する緊急事態条項の必要性で一致したのは初めて。この日の審査会では、維新の党の伊東信久氏が「感染症のパンデミック(世界大流行)や有事の際に国民を守る緊急事態条項を検討することが喫緊の課題だ」と強調。次世代の党の西野弘一氏も「憲法には緊急事態の行政機構のあり方が規定されていない。昨今の国際情勢や伝染病の流行などに対応していく上で心許ない」と同調した。

ほかにも「非常事態でも国民主権などが侵されることなく、憲法秩序が維持される仕組みを明確にしておくべきだ」(民主党の武正公一氏)との指摘が相次ぎ、公明党も賛同した。自民党の船田元氏は「憲法改正に向け具体的な第一歩を踏み出せたかな、というところまで来た」と語った。

今後は緊急事態条項を議題にするかどうかを協議するが、6日の審査会で異論は出なかった。各党間の調整を経て緊急事態条項を盛り込んだ改憲原案が衆参両院の3分の2以上の賛成で発議されれば、国民投票で賛否が問われることになる。ただ、緊急時にどこまで行政の権限を強化し、国民の行動を制限するかに関しては各党で意見の隔たりがあり、調整が難航する可能性もある。
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この記事でも紹介されていますが、維新の党と次世代の党は、エボラ出血熱の流行に早速便乗して、緊急事態条項の必要性の論拠の一つとして挙げていました。少しでも頭を使えば、首相への権限の集中等と感染症対策の充実とはまったく無関係であることがわかるはずですが、改憲に向けて利用できそうな要素はなりふり構わず何でも採り上げようという彼らの姿勢には、私たちとしても学ぶべき点があるのかもしれません。

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色づき始めた国会前の銀杏(11/6朝)

7.1閣議決定を批判したのは民主、共産と生活だけ

さて、この日の審議の中で7月1日の閣議決定を批判したのは、民主党、共産党、生活の党の委員だけでした(社民党は委員を出していません)。ここでは、鈴木克昌氏(生活)の発言を紹介しておきたいと思います。

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ここで、9条に関して申し上げなければならないことがあります。それは、集団的自衛権の一部行使容認を主な内容とする本年7月1日の閣議決定であります。

安倍政権は、戦後一貫した集団的自衛権に関する憲法解釈を、いとも簡単に、一内閣の権限のみで変更しようとしております。9条の解釈は、戦後から現在までの長い間にわたる国会審議において国会と政府の共同作業によって練り上げられてきたものであり、十分な国会審議を経ることもなく、一方的な閣議決定によって軽々に変更が許されるものではありません。

この閣議決定については、立憲主義に関わる問題であり、看過できないため、憲法審査会の場で議論する必要があることを幹事会の場においても主張いたしました。今後の憲法審査会で議論すべき案件に相ふさわしいと考えるものであります。
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しごくもっともな意見だと思いますが、これが審査会でまともに採り上げられないであろうことは、上述の保利氏、船田氏等の発言から明らかです。

異論を抱える民主党

上記の鈴木氏の発言のすぐ後、民主党の長島昭久氏がとんでもない意見を表明しました。氏は、まず「7月1日の閣議決定を憲法審査会で議論すべきだというご議論に私は全く賛成」だと述べたうえで、次のように続けたのです。

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というのは、あの閣議決定というのはひじょうに良くできておりまして、(中略)わが国の平和主義を考える上での有益な素材がたくさん詰まった内容になっているというふうに私は感じておりまして、単に自民党と公明党の代表者の議論だけではなくて、野党も含めた活発な議論を、ぜひこの場でやっていただきたいというふうに思っています。(中略)

この際、ぜひ、憲法付属法としての安全保障基本法のようなものについて、与野党の間でこの場で議論を深めていくことは大変有益ではないかというふうに思っておりますので、ご提案申し上げたいと思います。(中略)

例えば、アメリカと一緒にアフガニスタン爆撃をしたイギリスのように、あるいはNATOと一緒にコソボ爆撃をしたドイツのように、他国の領土、領空、領海の中に入って、そこで武力を行使するといったような、そういう意味での集団的自衛権をあの9条から導き出すことはなかなか難しいというふうに思っております。

とはいえ、現実の国際情勢の変化あるいは軍事技術の進歩などを勘案しながら不断に憲法解釈というのは変更されてきたし、今後も変更は認められるべきだというふうに、現実に合わせる形で、国民の生命財産を守るために憲法をどう解釈するかということ、この点について、やはり憲法解釈というのは不断に見直されてしかるべきだというふうに思っています。

その点で、(中略)立法府が立法府として憲法解釈をきちっと明確化するという意味で、安全保障基本法の議論をぜひこの場で深めていくことを改めてご提案申し上げたいというふうに思っています。
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立憲主義に背反するという観点から7.1閣議決定を問題視し、審査会での議論を呼びかけた鈴木氏の発言を、ここまで捻じ曲げて恥じない長島氏の言い草にあっけにとられたのは、私だけではなかったと思います。

この後、中谷元氏(自民)が「ただいまの発言につきまして、私も賛成でございます」と続き、保利会長が「ただ今の件は、幹事会で後に議論をさせていただきたいと思います」と締めくくりました。

民主党の国会議員の「幅の広さ」には今さら驚きませんが、それにしても立憲主義と相容れない7.1閣議決定のプロセスを不問に付して解釈改憲の必要性を主張し安全保障基本法の議論を提案するというところまで行くと、何をか言わんやということにならざるを得ません。

このほか、次世代の党、維新の党、みんなの党の委員からもトンデモ論が披歴され、公明党の委員は環境権等にとどまらず憲法全般にわたる「加憲」の検討課題を列挙していました。

このような状況を見ると、今、国会内で改憲への動きにブレーキが掛かることは到底期待できません。私たちが院外で声を上げ続けるしかないのです。微力ながら、その一端に加わっていきたいと思います。ともに闘いましょう。(G)










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