栃木から報告です。* * * * * * *
 栃木県で初の裁判員裁判が行われようとしていた12月1日、栃木県連絡会は宇都宮地裁前で「つぶせ!裁判員制度」のビラまきを断乎やりました。裁判は午後からでしたが、朝9時までに裁判員候補者が地裁に入る、ということなので私たちは早朝から決起しました。
 この日、裁判所前には私たち百万人署名運動以外の団体や政党の姿はありませんでした。そもそも共産党も含め全会一致で成立した裁判員制度ですから当然と言えば当然ですが、他の「市民運動」団体も来てなくて文字通り私たちだけ。そのせいか、マスコミの注目は圧倒的でした。「ストップ!裁判員制度」の横断幕はシャッターの嵐に包まれ、記者が3人ぐらいインタビューにきました。裁判員候補者60名くらいが地裁に来るという話しを小耳にはさみましたが、ビラまきをしている側からの実感では、ほとんど来てなかったという感じでした。

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 しばらくして、ビラまきをしている所の脇に年輩の女性の軍団がどんどん集まってきました。聞くと、傍聴券をもらうためのアルバイトとのこと。彼女たちは何の裁判かもわからないということでした。「重大で国民に関心のある事件」というのが裁判所の理屈ですが、マスコミでもほとんど報道されてこなかったのだから当然です。事件の重大性ではなく、裁判員制度への動員こそがまず結論としてある、ということが改めてはっきりしました。しかもその動員が崩壊している中で、マスコミ報道が必死になって空騒ぎしているというのが印象です。事実、傍聴そのものに来る人はまばらです。新聞では連日、裁判員裁判の宣伝をしているにもかかわらずです。興味がないということではなく、みんな反対なのです。裁判員制度に迷惑しているのです。本能的に嫌悪感があるのです。だから来ないのです。いいことです。足利事件の初公判の時は、宇都宮地裁に1000人集まりましたが、これは権力犯罪への怒りの結集です。翌日の新聞報道によれば、ある候補者は「知識もないし、やりたくはない。召集令状と同じで4日も時間を取られるのも迷惑」(女性・56歳)とコメントしています。
 この日の裁判の傍聴もしました。傍聴席はほとんどが黒スーツ姿のマスコミで占められていて薄気味悪いぐらいでした。リードするのは裁判官と検察官。検察官は、殺人事件の持つおどろおどろしさを強調するための演出として、殺害状況についての陳述では、声の抑揚をつけて語るなどして、「ショー」としての裁判に徹していました。「分かりやすい裁判」ということの背後にある膨大な事実の抹消です。埋もれた事実は何なのか。このことがハッキリされない限り、裁判とは言えません。事実審理の崩壊。こんなことを許しておいては、第2、第3の「足利事件」は不可避です。裁判員制度は絶対粉砕あるのみ!です。(栃木県連絡会 M)