裁判員制度はいよいよ幕引きの秋(とき)!と、10月20日(水)の夜、東京・弁護士会館2階講堂で「憲法と人権の日弁連をめざす会」主催の集会が開かれました。会場いっぱいの470人が参加、講演者と参加者が一体となって「裁判員制度を絶対につぶすぞ!」とエネルギーを充填する集会となりました。
 メイン講演は京都大学名誉教授の池田浩士さん。前段で池田さんは素人相手に100条もある裁判員法はおかしいといくつか問題点をあげました。「一番異様だと思ったのは、被告のことを棚に上げて裁判員への配慮ばかりしていること。被告人の権利が今まで以上に守られるという条項はない。なぜ、裁判員をお客様にしなければならないのか」と。
 そして、もしもこんな法律ができたら?!と、裁判員法の第1条「裁判員が裁判官と共に刑事訴訟手続に関与することが司法に対する国民の理解と増進とその信頼の向上に資することにかんがみ」の「裁判員」を、「操縦士」や「自衛隊」に変えて例を挙げました。
▲「操縦員が操縦士と共に旅客機運行に関与することが航空企業に対する国民の理解と増進とその信頼の向上に資することにかんがみ」
▲「自衛員が自衛隊員と共に戦争行為に関与することが国防に対する国民の理解と増進とその信頼の向上に資することにかんがみ」
確かに、こわいですね。

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 この日の演題は「ファシズムは市民参加で!ボランティアから裁判員まで」だったのですが、池田さんは「これは間違っていた!」。“市民の司法参加”と打ち出されているが、裁判員法を読みなおしてみたら“市民”という言葉はなく、すべて“国民”だったと。国が期待しているのは国民で、この制度を通じて国民に形成させられていき、国民と非国民とにわけられ、非国民を差別し排除することになるのではないかと述べました。
 そして「あのヒトラーも、同じようなことをやった」と、ドイツのナチ党が推進した「ボランティア労働=労働奉仕」について詳しく述べました。ナチズムというと恐怖政治を思い浮かべるけれども、ヒトラーは国民の意志に従って国家を運営していた。ナチ党は失業者をボランティア労働に組織し、わずかな報酬で困っている労働者の味方として活動、国民の大きな支持を得ていった。ナチ党は政権をとってから、このボランティア労働を軍用道路建設や軍需産業に投入、ボランティア労働を義務化していった。そして、戦争を始めた、と。
 続けて、しかし「冬季救援事業」という究極のボランティア活動などが“国民”の主体的共同性となり、悪名高い「人種差別法」も“国民”の賛成を得て作られた。相互監視と異分子撲滅の社会が実現され、労働力不足に転じた時、強制連行と強制収容所での使い捨てが必然になったと。池田さんは「すばらし自発性がナチによって収奪されていった。裁判員制度も国家や権力に収奪される危険と向き合っている」と指摘しました。

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 集会には、高橋伴明監督からビデオメッセージが寄せられました。ビデオの中で高橋さんは、映画「BOX 袴田事件 命とは」を製作するにあたって、袴田事件が冤罪であることと裁判員制度への危惧がリンクしていたと話しました。そして、裁判員制度の問題点として、「市民感覚」というのは市民感情であり、マスコミにも作られるし、プロの裁判官の指導・誘導、あるいは被害者側の発言を聞いても作られる。その感情によって誤った方向に答えが導き出される危険性は大いにあると述べました。

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 さらに、鈴木達夫弁護士から「証拠改ざん問題と裁判員制度」について特別報告がありました。鈴木さんは、最高検の「裁判員裁判における検察の基本方針」の内容を批判し、裁判員制度導入で検察の体質が大きく変えられたと指摘しました。
 集会には各地で反対運動をしている市民も多数参加。千葉・茨城・愛知・岐阜の代表がプラカードや横断幕を持って元気な報告をしました。今年、裁判員通知が来たが封も開けていないという男性がその「通知」を持って登壇、「一緒にやりましょう!」と拒否行動を呼びかけました。

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 最後のアピールは、憲法と人権の日弁連をめざす会代表の高山俊吉さん。高山弁護士は、裁判員制度が開始されて1年5ヶ月、裁判員裁判が大破綻している現状を述べました。依然として圧倒的国民から背を向けられており、事実上の拒否者がどんどん出ている。2000件の起訴事件の内、判決が出されたのはまだ900件くらいで裁判がまともに進んでいない。裁判が始まらない被告人の人権は踏みにじられたままである。その上、10月から死刑求刑が予想される裁判員裁判があちこちで始まり「あなたは人を殺せる」かという局面が始まる。検察の証拠改ざん問題で、最高裁・法務省は裁判員制度への反発が一層強まるのではないか戦々恐々としている…。でもマスコミはこの状況をまったく伝えないと。
 そして、改ざん・隠ぺいをやってきた人たち、それを許してきた人たちが裁判員制度を推進している。特捜解体や検事総長が辞めたら終わりとさせてはならない。国がなぜこの裁判員制度こだわっているのかをつかもう。学習して、この状況の中でもっと前に出よう!見える闘いで、一人の拒否をみんなの拒否へ、みんなの拒否で制度の廃止へ!ここは怯まない闘いを腹をくくってやろう!と檄を発しました。
 知れば知るほど問題だらけの裁判員制度ですが、この日の池田さんのお話を聞いて、やっぱり廃止しかない!と思いを強くしました。(S)

発言者に、「もう時間です」のペーパーを届けに向かわんとするインコさん
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