3月22日(火)16時30分から、都庁前で、根津さんの分限解雇を許さない、10・23通達撤回の都庁前アクション・アンサンブル・アンコール集会が開かれ、その後要請行動が行われた。集会の前、同じ場所で16時から、都教委包囲ネットが石原都知事の「津波は天罰」発言糾弾をマイクで訴えながらビラ撒きをした。この日は、震災被害者への救援物資持ち込みで、都庁前の人通りは多く、ビラの受け取りはとてもよかった。
 アンコール集会で根津さんは次のように発言した。
 「私の勤務する『あきるの学園』の小中等部の卒業式は3月24日だった。『計画停電』で24日はJR五日市線が運休で、学校は臨時休業となり、卒業式も中止。卒業式は高等部と合同で23日にやることになった。体育館が広くないので、在校生は出ないことになり、私は卒業式とは関係なくなった。最後の卒業式でも不起立を貫き、子どもに対しては教育ですが、処分をし続けてきた都教委に対してはどんなに不起立しても免職にはできないという実績をつくりたいと思ってきた。その機会は失われてしまったが、明日23日は教室で子どもたちとの最後の別れをしたい。
 ところが今日22日、校長は新たな職務命令書を職員の机の上に置いていった。それには以下の4つの命令が記されていた。
1、当日、教職員は全員勤務し、別紙『第14回 あきるの学園卒業証書授与式 実施要項』による役割分担に従い、職務を適正に遂行すること。
2、学習指導要領に基づき、適正に児童・生徒を指導すること。
3、式典に参加しない学部、学年の教員は、各教室において、児童・生徒の指導に専念すること。
4、式典の実施に際して妨害行為・発言をしないこと。
 3は付け加えられたもの。だったら、毎日毎日職務命令を出して、あれせよ、これせよ、あれするなと出せとと言いたい。これはもうマンガです。
 今日は根津を分権免職するな、解雇するなという要請ではなくて、そのことも含めて、今年も新たに不起立をした人がいるので、その人たちに対して処分するな!10・23通達を撤回せよという要請をしていきたい。
 それから震災と原発の大事故の現実を前に、権力側の「安全神話」が崩れた今、国の言うことを鵜呑みにすることは、国に加担することであり、犯罪的なことだということを私たちは思い知らされた。原発について私たちは知らなかったでは許されない。私たちはもう黙っていることは許されない。教員が現実を見極め、真実真理を追究し、子どもたちとどうしたらいいかを一緒に考えること、間違った教育行政の指示には、発言し行動することが求められていると思う。命の重みに差別がある今の政治を変え、子どもたちの未来に責任を持っていこう。」
 根津さんの発言の後、根津さんとともにたたかってきた多摩教組、新宿教組、町田教組から発言があった。さらに北村小夜さんと高嶋伸欣さんから東京都の教育行政や石原「津波は天罰」発言に対する糾弾発言があり、その後、第二庁舎10階会議室で都教委への要請行動をおこなった。

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 要請行動は、いつものように教育情報課の課長と係長が窓口になって「取り次ぎ」をする形で行われた。処分を出す人事課等々が決して直接出て来ることのない許せないシステムだ。他の道府県の教育委員会にはないやり方で、要請の度に抗議の的になっている。しかも、いつも「伝えます」、「後日回答する」と言うのみで、責任の所在が明らかでない。やっと「回答」が届いたと思ったら、「回答しないのが回答」などというのもあった。この日も要請する前に、「この間何度も要請しているが一回もまともな回答がない」という点が糺された。しかし、教育情報課からの明確な回答は得られなかった。それで、再回答を求めることも含めての要請が、多摩教組、町田教組、新宿教組、都障労組を始め、12の団体・個人から行われた。

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 高嶋伸欣さん(琉球大学名誉教授)は要請書で、石原都知事の「津波は天罰」発言はナチスの地政学につらなるものであり、「日の丸・君が代」の思想、アジア侵略の思想そのものであることを明らかにした。そして、こうした思想の持ち主である石原都知事の人事権の行使によって指名・選任された東京都教育委員各位は、石原氏と相通じる思想を持って「日の丸・君が代」に関する教育行政行為をこれまでに執行させてきたのではないかとの疑いを持たざるを得ないとし、「要請書に回答を求める」と要求した。(T)

●高嶋さんの要請書

東京都教育委員会
 委員長 木村 孟  殿
 教育長 大原 正行 殿  
 教育委員     各位
                
2011年3月22日
琉球大学名誉教授 高 嶋 伸 欣(東京都杉並区在住)

                    要 請 書

 私は先の3月9日付要請書において、貴委員会が、2010年度卒業式を含め、東京都立諸学校での教育活動について、「日の丸・君が代(国旗・国歌)」の取り扱い及び位置づけに関した校長職などによる個別職務命令書等の伝達など、指示している件に関し、それらが改定学校教育法第21条の規定に抵触し、さらには「旭川学力テスト事件」の最高裁判所大法廷判決(1976年5月21日)が例示した憲法違反に相当する職務執行行為であると指摘し、そうした違憲・違法行為の即刻中止とこれまでの指示等の撤回、及びこの間に誇りと権利を侵害された人々への謝罪、名誉回復と損害の補償をすみやかに実施されるべきであると要請しました。
 その後、本日までの2週間の内に、上記の要請をさらにくり返すべき事態が判明しましたので、ここに改めて下記の理由を掲げ、前回同様に一連の指示等の撤回と関係者への謝罪などを要請します。

〈 理由 〉
1.3月14日石原慎太郎都知事は今回の東北関東大震災(東日本大震災)について「津波は天罰だと思う」旨の発言をしたと報道され、一旦は、撤回はしないとしたものの、翌日には被害者の心情を傷つける不適切な発言だったとして謝罪し、撤回しました。しかし、この発言は、こうした理由で撤回すれば済むものではありません。単に関係者の心情を傷つけたという程度の問題ではないからです。第1に権力の座、行政組織の長の座にある者が、日頃の私的見解の裏付けとして、大災害がまるで望ましく好ましい機会であるかの如く、もてはやすのは、厳にいましめられるべきことのはずです。
 このような人物が人事権を行使してきた東京都教育委員会は、当然のことながら、こうした不当な言動か
らは、これまで自立した存在でありえたのかという疑問が浮上します。この点で結論を先に指摘するならば
貴委員会のこれまでの「日の丸・君が代」関連の行政において、今回の石原発言と軌を一にしているとみな
されてもやむをえません。

2.その結論の端緒は、まず日本は台風、地震、津波等による自然災害の世界的中心であると強調し、それらの災害を教訓とすることで世界に類例のない優秀な精神文化を修得したのだから、アジアの盟主となるのは当然だとする政治心理学の非科学的で人権思想のない差別的な論理によって、日本軍のアジア侵略を正当化した事実が存在していることです。
  大災害が日本社会を精神的に鍛え直すのだとして、大災害を日本人の精神及び思想の改変の好機とする認識で、このアジア侵略正当化の論理と石原知事発言は、同根のものです。ちなみに、この日本の地政学はナチの侵略正当化のために用いられたドイツ地政学を模倣して当時の日本陸軍の一部学者が日本流に組み替えたものです。その組み替え部分の一つが、この「災害進化論」です。現在のドイツではこうしたナチスの論理を展開することは、社会的に許されていません。にもかかわらず、日本では首都東京の知事が公然と発言し、批判されても撤回と謝罪だけで済まそうとしているわけです。

3.次いで、ドイツの地政学とは別に日本の地政学者が独自に追加したのが、「日の丸」は世界最優秀の旗というこじつけです。日本地政学会会長でもあった小牧實繁氏の著書『日本地政学』(大日本雄弁会講談社1942年)には、日本が世界の中心であるとの理由の一つとして「日の丸」が国旗であることを強調しています。そこでは、「アメリカがかつて日本から、日出づるところの国の象徴日章旗を購わんとしてその意を果たさず結局夜の国の象徴星条旗の制度をもって満足しなければならなかった」などといつわりの説明をした上で、「日出づるところの国」日本は「人類最高の文化の正統的伝統者」である「現人神にまします万世一系の天皇」のありがたくもかしこい威厳が「日本より西の方ヨーロッパにおよんだことを示すものにほかならない」と権威づけています。

4.戦時中に「日の丸」を歪曲美化した地政学の論理は、戦後も日本の地理学界で検証、総括などされることなく、「災害進化論」などと共に生き延びています。戦時中に東京文理科大学(後の東京教育大学、現在の筑波大学)で地理学を専攻した後に海兵学校の教官となった清水けい馨八郎氏は、戦後に国立千葉大学で定年まで地理学の講義を担当し、「災害進化論」どころか「災害待望論」までも主張していたことが、その講義内容をまとめた数々の著作で明らかです。
  「日の丸」についても、清水氏は次のように述べています。「外国の多くの国旗には農業生産力に直接関係のない星や月をかたどったものが多い。アメリカもソ連も中国もイスラエルもチリも星の国旗である。太陽と星とでは、明暗がまるで対照的である。国家の理想に常に太陽を意識する国と夜の星を意識する国とでは、歴史、文化、社会の成り立ちが根本的に違うとみてよいのではなかろうか」と(『ニッポン再発見』日刊工業新聞社1981年)

5.ことばは思想です。小説家でもある石原都知事が今回発した暴言は、状況判断によって表面的な撤回と謝罪をしただけであって思想の転換、改心をした気配はまるでありません。こうした思想の持ち主による人事権の行使によって指名・選任された東京都教育委員各位は、石原氏と相通じる思想を持って「日の丸・君が代」に関する教育行政行為をこれまでに執行させてきたのではないかとの疑いを、私たちは持たざるをえません。

6.法律論以前のこととして、反社会的、反人道的な石原都知事の思想とは明らかに異なっているということを、教育委員各位が明確に示したいとされるのであるならば、上記1~5のように「日の丸」がそぞろ侵略の論理として悪用され、今もその論理が生き延びていることを、学校教育の場で教師が児童生徒に語るに、何の規制もない教育行政を執行させるべきです。

7.しかし、これまで12年間の石原都政下では、これと逆行する教育行政が続けられてきました。その不当性が奇しくも今回の石原知事発言で上記の通り明白になったのですから、今度こそ東京都教育委員会は、一連の「日の丸・君が代」などに関する指示等をすみやかに撤回し、是正策を講じるべきです。 
    
以上 要請します。