5月23日(月)、文科省の出した校庭利用の暫定目安の年間20ミリシーベルト(校庭での毎時3.8マイクロシーベルト)の撤回を求め、福島から小さいお子さんを持つ親たち70名が上京し、直接高木文科大臣に訴えようと文部科学省へ。支援者も500人以上が駆けつけ文科省を包囲しました。文科省東館前に座り込んでの2時間以上の交渉に、高木文科大臣はじめ副大臣、政務官らが現れることはありませんでした。
 交渉の場で、渡辺科学技術学術政策局次長が「今回の措置はあくまで暫定のもので夏休み後に見直す方針。モニタリングにより、新しい方針をたてる。」と言ったことに対し、福島の親たちは「モニタリングということは、私たちをモルモット扱いにしているのか。いま現在も、子どもたちは被ばくしつづけている。夏休み後までは待てない。」と抗議。「いますぐ20ミリシーベルトを撤回してほしい。1ミリシーベルトを目指すという文科省の方針を、文書で、福島県に通知してほしい。」等と要請しました。

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 目に見えない放射能、福島原発から日々刻々放射能が放出され続けている恐怖、福島のお母さんたちの叫びと連帯して闘いましょう。
 「百万人署名運動・全国通信」5月号で「内部被曝の恐ろしさ」についての記事を掲載しました。関連して下記に紹介しておきます。(S)

『内部被曝の恐ろしさ』
松井英介さん(岐阜環境医学研究所長 医師)にインタビュー

■人類史上最大級の原発事故
 4月12日、経済産業省原子力安全・保安院は福島第一原子力発電所の事故の激しさを国際評価尺度のレベル5からレベル7に変えました。1986年のチェルノブイリ事故(旧ソ連)と同じレベルです。福島原発は現在進行形で「収拾」が見えないわけですから「死の灰」の量は圧倒的に多く、原発の事故としては人類史上最大級です。
 枝野官房長官、原子力安全・保安院、東京電力、テレビに出てくる大学教授たちは放射線が人体にどのように影響をおよぼすかということについては「ただちに健康に影響はない。心配ない」と、それしか言いません。彼らの言っている影響があるという状態は急性障害のことでしょう。身体の外から放射線が当たることを「外部被曝」と言います。それに対して放射線に汚染された空気を吸ったり、汚染されたものを食べたり飲んだりして、身体の内部が被曝することを「内部被曝」と言います。内部被曝は長期間くりかえし影響を受け、ただちにはあらわれません。
 福島原発の場合では、外部被曝、急性障害は現場で困難な作業にあたっている労働者たちにはすでに出ていると思います。たとえば、ずさんな防具で高濃度の水に浸かって被曝した3人の労働者たちには急性障害、皮膚障害は出たと思います。でもその時、同じように働いていた人は3人程度であるはずはなく、何百人もいたわけです。その人たちは下請け、孫請けでしょう。ハローワークで紹介されたり、外国人もいたり、ホームレスの人がいるとも言われています。原発ジプシーと言われている人もいます。不安定な雇用形態の現場労働者たちの急性障害については発表されていませんけれど、内部被曝も受けて大変な状態にあるだろうと思います。過酷な原発労働がそういう非正規雇用といったひどい労働条件にあることも大問題だと思います。

■ゆっくり遺伝子が攻撃される
 内部被曝は長期にゆっくりと出てくる晩発障害です。お母さんが吸い込んだ小さな放射性物質が胎盤を通り越してお腹の赤ちゃんに影響する。あるいは父親、母親の精子、卵子が傷ついて、その子どもが先天障害を受けることです。人間は50センチくらいで3キログラム位の身体で生まれてきますが、その間に脳神経や臓器が形成される。その発達段階の過程で障害を受けると、サリドマイド、ベトナム戦争で枯葉剤に使われたダイオキシン、水俣病の有機水銀で明らかなように、それぞれの発生部位で障害が出てきます。また、知的障害も出てきます。内部被曝についてのそうした認識が大事です。発達段階にある個体・人間は特別に大事にされなければなりません。乳幼児、子どもと妊産婦を避難させることは政府がきちっと決めて優先的に実行すべきなのですがなされてはいません。もちろん、胎児や子どもばかりではなく大人にもがんなどが発症します。
 ヨウ素131は半減期(毒性が半分になる期間)が8日間ですが、喉にある甲状腺に集中し放射線を出し続けます。甲状腺は重要なホルモン臓器です。甲状腺がんは数年から20年という時間軸の中で発症します。白血病は広島・長崎でも10年という比較的早い時期に出てきています。イラク、アフガニスタンでの劣化ウラン弾(ウラン238)の小さな粒を吸い込んだ子どもたちには白血病や重い障害が多発しています。その他にも空気と一緒に入ってきて肺に沈着し、そこからリンパ流にのって全身に運ばれる場合もあります。
 体内に入ってきた放射性物質はアルファ線、ベーター線、ガンマ線を出します。アルファ線というのが一番エネルギーが大きい、ヘリウムの原子核です。ウランやプルトニウムはアルファ線を出して染色体を傷つけ細胞を破壊します。アルファ線は身体の中では38マイクロメータしか飛ばないのですが、その微粒子は1グラムの中に何億とある細胞に密着して四方八方に放射線を出すのです。プルトニウム239の半減期は2万4000年です。ウラン238(半減期は45億年)の粒が身体に入ったとき、5ミクロン(1000分の5ミリ)くらいの粒だと17時間に1回アルファ線を出します。
 ベーター線というのは電子線とも言い、原子核の周りを回っている電子で、粒としては非常に小さいのです。セシウム137はカリウムに似ていて半減期は30年で筋肉に集まり体内にはいると全身に散らばって繰り返しベーター線をだし続けます。ストロンチウム90はカルシウムと非常に似ていて骨に沈着して骨髄に影響を与えます。これが内部被曝です。ゆっくりゆっくり遺伝子が攻撃にさらされる。そこが内部被曝の一番の問題です。

■生態系の連鎖と濃縮
 3月19日に東京の金町浄水場からヨウ素131が検出され、関東一円からも検出され、赤ちゃんや乳幼児に水道水を飲ませないようにと指示が出ました。3月20日以降、福島県産の牛乳から、各県のほうれん草や各種野菜類から、4月15日には茨城県沖のコウナゴからヨウ素131が検出され出荷停止になりました。福島原発2号機付近の海水のヨウ素131は基準の14万倍です。高レベル汚染水の貯蔵のために、捨てた1万トンの低汚染水のヨウ素131は基準の100倍で低レベルではありません。海の水はいっぱいあるので薄まるなんて言うのはとんでもない。コウナゴはプランクトンを取り込んで生き、そのコウナゴを少し大きな魚が食べ、さらに大きな魚が食べ、水鳥が魚を食べる。その水鳥の産む卵は最初の海水の汚染数値の5000倍になるのです。濃縮です。水の汚染でも空気の汚染でも一緒です。生態系の連鎖・濃縮は重要なキーワードです。政府・東電が黙って突然汚染水を捨てたことに対して福島や茨城の漁民、近隣諸国はじめ、世界各国が怒っていますが当然です。

■プルトニウム保有の目的
 原子力発電ではウラン235を燃料棒に使いますが、このウラン235(半減期7億年)はウラン鉱山から掘り出されたときは0.7%しかなく、99.3%はウラン238で燃料には使えないのです。それで0.7%のウラン235を4%に濃縮して燃料にします。濃縮方法は秘密で日本はオーストラリアなどからウラン鉱を買って、それをアメリカで濃縮してもらって使っています。濃縮過程で大量の0.7%以下の劣化ウランが廃棄物として出てきて劣化ウラン弾にされます。他方、広島型原爆のウラン235の純度は100%に近いということです。
 ウラン235は原子炉で運転すると、核分裂でプルトニウム239が生み出されて廃棄物の中にたまっていきます。プルトニウムは自然界には存在しない元素です。廃棄物をイギリスの、現在はフランスの再処理工場に送ってプルトニウムを分離してもらい、それを青森県の六ケ所村に運び込んで、ものすごい量ためているわけです。プルトニウムは核兵器の原料になります。その大量保有は核拡散条約(NPT)に抵触することにもなるので、プルトニウムとウランを混合した燃料(MOX燃料)を原発で使うプルサーマルというシステムを編み出しました。福島原発3号機は昨年、そのMOX燃料を使って動かすことに切り替わりました。
 日本がなぜ原子力発電をして、プルトニウムを保持するのかと言えば、核兵器の原料がほしいからです。他国も同じです。経済発展はいいことだ、新自由主義だ、核の平和利用だなどと宣伝されてきました。原子力と核は同じものなのに使い分けて、だまくらかしてきました。
 もともと「原子力の平和利用」は、核戦略の一環でした。1955年頃アメリカのビキニ環礁の核実験が、第五福竜丸の被曝で全世界に明らかになりました。日本ではまだヒロシマ、ナガサキの被害が鮮明なときでしたので核兵器反対・戦争反対の大運動となって全世界的に広がり、それを抑え込むためにアメリカによって持ち込まれたのです。

■原発のない社会を
 核も原子力も人間の力では制御できません。大変なことが本当に起こったのです。だからレベル6だとかレベル7だとか言う前に、どれだけの放射性物質が大気、水、土、環境中に出たのかということを明らかにしないといけない。なにしろ桁(けた)外れなのですから。そして、原子力を操作するといったテクノロジーのレベルではなく、社会全体のシステム、原爆をつくり、原発をつくり、電気を消費し、原発ジプシー労働者をつくり、そうやって支えさせられてきた新自由主義、資本主義のシステムの根幹の問題点を今回の原発事故は明らかにしました。そのことをみんなうすうす感じている。いま原発問題に取り組んでいかなければならないと思います。原子力発電に多額の税金がつぎこまれているわけです。鉄の五角形という政官財報学による支配構造を変えることです。何よりも自分のあり方について認識し直して、どう立ち向かうのかということが問われていると思います。そうやって大行動に立ち上がるとき、はじめてこの閉塞的状況を変えることができるのではないでしょうか。(4月12日、文責:事務局)

<追加> ICRPの歴史と基準値
 厚労省は、去る3月14日に施行された省令で、今回事故を起こした原発の現場作業に携わる方がたの被曝線量上限を、今までの年間100mSvから250mSvに引き上げました。この根拠とされたのが、ICRP (国際放射線防護委員会)1990年勧告の限度500mSvです。しかも、志願して現場での救命活動にあたる人びとに対しては、被曝線量を「限界なし」とするよう、事故直後に検討していたことを、4月20日付東京新聞が一面トップで報じました。このことは 彼らは当初から今回の事故が極めて深刻なものであることを認識していたこと、それを隠していたことを推測させます。
 文科省は、福島、郡山、伊達三市の幼・保育園、小中学校などで、屋外の放射線測定値が3.8μSv/h以上になる場合、校庭での活動を一日一時間以内に制限するよう通知しました。これはICRPの暫定基準値・年間20mSvまでの目安によるとしています。この暫定基準値そのものにも重大な問題がありますが、子どもにはより厳しい基準値の設定が必要なのに、そうはしていないところが問題です。
 ICRPの基準値そのものを厳しく見直さないといけないのですが、現場作業者や汚染地域の子どもたちの基準値がそのときの状況に合わせて甘く変えられることが問題です。とくに子どもをおとなから区別し、子どもにはより厳しい基準値を決めなければいけません。