◆参院で「大震災と国家緊急権」をテーマとした憲法審査会◆
5月16日(水)午後1時すぎから、参議院で今国会5回目の憲法審査会が開催され、百万人署名運動では、西川事務局長をはじめ5名で傍聴してきました。今回は「東日本大震災と憲法」についての審議の3回目で、上智大学法科大学院教授・高見 勝利氏、駒澤大学名誉教授・西 修氏の2名が参考人として招かれ、それぞれ約20分の意見聴取の後、質疑が行われました。

画像

高見氏は、テーマを「大震災と国家緊急権」に絞って、学究らしく緻密な議論を展開しました。すなわち、災害に関する緊急事態は現行憲法でも想定されていること、今回「災害緊急事態」が布告されなかったのは災害対策基本法上の要件(国会が閉会中又は衆議院が解散中)に該当しなかったからであったこと、安全保障会議を招集しなかったのも設置法に規定されている「(治安・防衛上の)重大緊急事態」が発生していなかったからで理の当然であったことなどを説明し、自民党改憲草案の「緊急事態条項」の規定についてもそのままの内容では無制限な人権制限が可能になってしまうこと等の問題点を指摘しました。

ただし、氏の議論は災害と国家緊急権との関係に限定されていたため、戦争や内乱と国家緊急権についての考え方を知ることはできませんでした。

もう一人の参考人である西氏は、産経新聞の「正論」にしばしば寄稿している改憲論者です。氏の議論は「大震災と国家緊急権」に限定することなく多岐に及ぶもので、例えば各国の憲法と比較すると日本国憲法は長期にわたって一度も改正されたことのない特殊な憲法であると主張したり、多くの国の憲法では国家緊急事態条項が規定されていることを紹介したり、さらには自衛権保持の観点から憲法草案に反対した大昔の日本共産党・野坂参三氏の国会での発言を持ち出すことまでして改憲の必要性を述べていましたが、全体的に雑ぱくで論理性に欠ける議論だと思いました。

また、高見氏と違って安全保障会議を招集すべきであったと主張しましたが、その根拠に挙げたのはそうすれば自衛隊のモラルの向上や対外的なアナウンスメントという点で有効だったということで、これも説得力のない議論だと感じました。

委員との質疑では、西田昌司氏(自民党、審査会幹事)が現行憲法はその制定過程から見てそもそも無効ではないかと発言したり、丸山和也氏(自民党、何と弁護士!)がもし非常事態条項があったら北方領土や竹島の現状はそれに該当するのではないかと質問したり、西氏もビックリするような「トンデモ論」が飛び出しました。

なお、この日はこんな腹立たしい出来事がありました。どんなことかと言うと、審査会が開かれた委員会室は冷房が効きすぎていたので、仲間の一人が衛視に「寒いので、冷房の温度をもっと上げて欲しい」と申し出たところ、「対応できない。議員が言ってくれば別ですが…」と言われました。傍聴者の人権が無視されている!と、終了後に参議院議員面会所の窓口に抗議しました。その際、「いったい何度に設定されているのか」と糾したところ、参院では空調が25℃(!)に設定されていることが判明したのです。電力需給の逼迫が喧伝され、冷房は控えめに、設定は28℃にというキャンペーンが展開されているご時世に、何と浮世離れした話でしょうか。(G)

*参議院憲法審査会インターネット審議中継
下記のホームページを開き、カレンダーで16日をクリックし、「憲法審査会」を選ぶ
http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php

*次回の憲法審査会は、
衆議院が、5月24日(木)午前9時から、「日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件」(日本国憲法の各条章のうち、第一章の論点)をテーマとして、
参議院が、5月30日(水)午後1時から、「東日本大震災と憲法」(参考人質疑の概要報告及び討議)をテーマとして開催される予定です。

*傍聴を希望される方は、前日の午後2時までに百万人署名運動事務所までご連絡ください。
電話/ファックス 03-5211-5415
メール  million@mqc.biglobe.ne.jp