6月12日(火)、テレビニュースで迷彩服の自衛隊員が板橋区内を武装行進している様子が映し出され、びっくりした。な、何だ?これは! 顔にも迷彩色が塗ってあり、ヘルメットをかぶり小銃をかついで黙々と歩いている。まるで戦場から帰ってきた兵士のようだ。何のためにこんなことが?

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新聞報道等によれば、
①この武装行進は、陸上自衛隊の精鋭部隊レンジャー隊員養成訓練の一環で、東京新聞によれば約2週間にわたり富士山麓の樹海でおこなってきた過酷な訓練の仕上げの行動とのこと。
②12日午前8時半過ぎに、板橋区の荒川河川敷に静岡県の東富士演習場から隊員17人がトラックで到着。当初、大型ヘリで降り立つ計画だったが悪天候のためトラックに変更された。
③9時に、6グループに分かれて陸自練馬駐屯地(練馬区)までの約7㎞を歩き始めた。レンジャー隊員に安全管理の担当者も同行して6~7人が縦一列になり、小学校前をはじめ市街地を約2時間、てくてくと歩いた。
④こうしたレンジャー隊員養成訓練で、武装して都内の市街地を行進するのは、1970年から42年ぶり。
⑤今回訓練するのは23区を警備区とする部隊で、陸自は「災害派遣に備えるためにも、市街地の行動に習熟する必要がある」と説明している。

       6月12日付朝日新聞夕刊
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       6月13日東京新聞朝刊
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私は、こうした自衛隊の動きについて大きな危惧と疑問を感じる。
「23区を警備」すると言うけれど、治安出動のことか?中東で軍隊が民衆に銃を向け発砲する場面と重なり恐怖を覚える。また「災害派遣に備えるため」というのも大ウソではないか。それは「レンジャー」とはどんな任務を負うのか調べてみるとはっきりしてくる。インターネットで検索すると、「軍隊が戦争を遂行する場合に主力部隊とは独立して少数精鋭のチームで敵陣へ深く侵入し重要拠点(補給所、橋など)への破壊工作などを行います。」(自衛隊採用ガイド http://jieitaisaiyou.web.fc2.com/ranger.html)とあった。また「実録レンジャー訓練」 http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=-b96_J0r770というビデオを見てみた。その実態は、戦地への殴り込み部隊、過酷な状況の中でも生き残り、一人でも「敵」を殺せる兵士養成の訓練だった。

こうした侵略戦争訓練と、いわゆる災害救助訓練とは全く別ものだ。確かに自衛隊も「災害救助」をすることもあるが、その活動も含めてやはり自衛隊として軍事行動をしているということを忘れてはならないと思う。
6月10日、同じ陸自は、戦闘が続いている南スーダンへ施設部隊150人を派遣した。「道路や橋を直すため」と言うが、これも自衛隊の戦争訓練だ。しかも石油の利権をかけた侵略行為そのもの。こうしたPKO派兵を政府防衛省は「国際平和協力のため」と言って強行しているが、絶対にごまかされてはいけない。

12日の自衛隊レンジャーの行進を支持する人々の中に、「日の丸」を振って「憲法9条改正しろ!」と叫んでいた人々もいたそうだが、今、国会の中でも、憲法審査会をはじめさまざまな委員会でこうした声が強まっている。4月27日に発表された自民党の「日本国憲法改正草案」では、第9条に「国防軍を保持する」と追加された。その国防軍は「国際的に協調して行われる活動」を行うことができるとされている。また「戦争放棄」という題目を「安全保障」に替えている。戦争をする軍隊を持たないと決めた憲法を変えて、自衛隊を戦争ができる本格的な軍隊にしようというのだ。今回の42年ぶりというレンジャー武装行進も、こうした9条改憲の動きと一体の自衛隊の突出、戦争への踏み込みと言える。

私たちは、原発再稼動に突進する野田政権や財界が、実はこうした戦争と改憲策動を激化させていることにも強く警戒していかなくてはならない。職場や学園、地域で討論を深め、こうした攻撃を跳ね返す労働者民衆の団結と共闘を強めていこう。(Se)