4月11日(木)、衆議院で今国会4回目の憲法審査会が開催されました。今回のテーマは「第6章 司法」で、いつものように、衆議院法制局からの説明、各会派の代表者からの意見表明、自由討議の順に審議が行われました。この日も朝9時から3時間の会議が予定されていましたが、開始が5分ほど遅れ、11時15分頃に終了しましたので、審議時間は2時間10分ほどでした。

毎回出席者は多いとは言えませんが今回はとくに少なく、25人(定足数の過半数ぎりぎり)から35人の間で推移しました。うち自民党(委員31人)は15人から20人ほどで相変わらず空席が目立ちましたが、維新の会(委員6人)、公明党(委員3人)も欠席者が過半となる時間帯があり、委員1人の生活の党も離席していた時間の方が長かったと思います。この日の午前中は他にいくつもの委員会が開かれていましたので、とくに少数政党の委員は出席が難しかったのかもしれません。もしそうであったとすれば、審査会の開催を見送るべきだったのではないでしょうか。
一般の傍聴者もふだんより少なく25人ほど、百万人署名運動は3人で傍聴してきました。

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自民、維新が「軍法会議」の設置に言及
各会派の意見表明では、自民党の大塚拓氏が、第6章に関する自民党のスタンスをひととおり説明した後、機密保護の必要性等から国防軍に「軍事審判所」を置くことを主張しました。このことは同党改憲草案の第9条の2、第5項(第6章ではなく第2章)に記されていて、同じ改憲草案の第76条第2項(こちらは第6章)で「特別裁判所は、設置することができない」としていること(日本国憲法の規定とほぼ同じ)と明らかに矛盾しています。同党はそれを隠ぺいするためか「審判所」という言葉でごまかしていますが、軍事審判所イコール特別裁判所としての「軍法会議」にほかなりません。

なお、維新の会の新原秀人氏も、党内の議論で、軍事規律違反事件等の専門性のある事件を処理するために「軍事裁判所」を設置することを検討していると言明しました。氏はこの発言の際にこのことが現行憲法の規定に抵触することを説明しており、明確に「裁判所」という用語を使っていますので、その点は自民党よりずいぶんまともな態度だったと言えるでしょう。

しかしいずれにせよ、戦前の歴史を見ると軍法会議には身内に甘い判決が下されやすいこと等の様々な問題がありますし、そもそも軍法会議は軍隊があってはじめて成り立つものなのですから、「とめよう戦争への道!」を掲げる私たちの立場からは到底認められるものではありません。ところが、この日の審査会では、軍法会議についてこれ以上の議論はありませんでした。

司法の「対米従属」をめぐって-砂川事件、法曹養成、TPP
もうひとつ、各会派の意見表明で注目すべきだと感じたのは、公明党の濵地雅一氏と共産党の笠井亮氏が指摘した砂川事件時の田中耕太郎最高裁長官の言動(1959年)をめぐる問題です。濵地氏は「砂川事件について、当時の最高裁長官が上告審の見通しを米国側に伝達したという報道があったが、事実とすれば司法権の役割を逸脱し、国民の裁判所に対する信頼を失墜する行為である」と述べ、笠井氏はさらに観点を広げて「司法権の独立や違憲審査権が、米国への従属的関係の下で侵害されてきた」ことが問題だとしたうえで、事実関係をより詳細に紹介していました。
この件についても議論はほとんど広がりませんでしたが、自由討議の中で武正公一氏(民主)が、この問題はきわめて遺憾だとしたうえで、外交文書の30年公開ルールに基づいて国内の文書についても公開を進めてほしいということを「政府に申し上げたい」と述べたことは、重要な指摘だと思いました。

また、武正氏は、上記に加えて対米従属に関するもうひとつ注目すべき問題に言及しました。それは、アメリカの年次改革要望書に端を発して行われてきた年間3000人の法曹人員を養成するという計画が失敗に終わり、多くのロースクール卒業生の進路に悪影響を与えたこと等を、国会としても厳しく検証すべきだと述べたことです。

さらに、篠原孝氏(民主)は、TPPのISDS条項について「一私企業が国家を訴えることができ、その裁判が世銀傘下の国際仲裁センターで行われるというのは、憲法76条違反だと思っている」と発言しましたが、これも(「時すでに遅し」という感はありますが)重要な問題提起だったと思います。

またも自民党委員の八つ当たり発言
今回も、一票の格差問題をめぐって自民党委員の八つ当たり発言が飛び出し、うんざりさせられました。とくに自由討議での中谷元氏の「憲法81条によって裁判所に違憲立法審査権が与えられているが、その憲法自身が選挙制度については法律に委ねているのだから、法律で定める選挙制度が憲法に適合するか否かの判断は第一義的に国会に委ねられるものと考えるべきだ」という珍妙な立論には開いた口がふさがりませんでした。
こんな人物が幹事を、そして天皇主義者の保利耕輔氏(前回の衆院憲法審査会に関するブログをお読みください)が会長を務めているのですから、自民党の委員たちの憲法認識のお寒いレベルは推して知るべしと言うべきかもしれません。

注目すべき参議院予算委員会での議論
この日の憲法審査会で多くの意見があったのは、実は上記のような問題ではなく、憲法判断を専門に行う憲法裁判所設置の是非、形骸化している最高裁判所裁判官の国民審査を改善する方向性、裁判官の身分保障や待遇のあり方(弾劾裁判、報酬等)等のテーマでしたが、ここでご紹介するに値するような内容のものはなく、今回も討議は低調なまま終わったと言わざるを得ません。

その理由は、委員たちの資質にあるだけでなく、そもそも委員間のやり取りを認めない議事の進め方にもあると思います。そのことは、今回の自由討議の冒頭での保利会長の「議員間の質問については、現行憲法についての各党の意見表明をする場なので、発言の確認のための質問は結構だと思うが、攻撃的な質問にならないようご留意をたまわりたい」という発言に表されています。

そこで今回は、4月7日の「天声人語」にも紹介されていた小西洋之氏(民主党)の参議院予算委員会での質疑(今年3月29日)を、このほどその会議録が公開されましたので、下記のアドレスにアクセスして是非お読みいただきたいと思います(会議録の中ほどからが、小西委員の憲法をめぐる質疑になります)。憲法審査会とは異なり予算委員会では丁々発止のやり取りが行われますので、時としてこのような中身の濃い質疑も可能になるのだと思います。(G)
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/183/0014/main.html

なお、動画でご覧になりたい方は、下記にアクセスしてください。1時間20分すぎからが小西委員の憲法をめぐる質疑です。
http://www.webtv.sangiin.go.jp/generator/meta_generator_wmv.php?sin=1895&mode=LIBRARY&un=9bbe501335c48646975f9157b96aae42&ch=n

次回の衆議院・憲法審査会の予定
 とき:4月18日(木)午前9時開始、約3時間ほど
 ところ:国会内衆議院・委員会室
 内容:日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件
(日本国憲法の各条章のうち、第七章「財政」の論点)
  *法制局説明、各派意見表明、自由討議

 ▲傍聴希望者は、17日(水)昼までに百万人署名運動事務局までご連絡ください。(T/F03-5211-5415)