10月8日、市東孝雄さん(三里塚芝山連合空港反対同盟)がNAA(成田空港会社)と千葉県を相手取って闘う農地裁判の第3回控訴審が東京高等裁判所で行われました。

反対同盟はこの日、6月25日の第2回控訴審以降集めた4237筆の署名を東京高裁第19民事部へ提出しました。

反対同盟農民と支援は、毎月1回、空港周辺地域を回って、予定されている第3滑走路問題について訴え、「反対同盟ニュース」を配り、「農地取り上げ反対」署名への協力を依頼しています。また、反改憲・反原発を闘う人々にも署名を訴えに出かけています。そうした中で集めた貴重な署名、提出した署名合計は1万7391筆となりました。

裁判では、裁判長の交代(貝阿彌裁判長→小林昭彦裁判長)による更新手続きとして、市東孝雄さんと弁護団の意見陳述が行われました。市東さんは20分にわたり農業を続ける思いを語り、NAAらの違法・不当性を訴えました。

他方、被控訴人のNAAと千葉県側はこの日、前回の法廷で市東さん側が提出した求釈明書に対してダンマリ、いっさい応じようとしませんでした。これに対し、小林裁判長は「事実に関するところで認否、反論をおこなうように」と、12月1日までに書面での提出を命じました。
市東孝雄さん、弁護団の奮闘が切り開いた大きな勝利です。

次回裁判は3月4日となりました。

裁判の前に、正午から東京高裁を包囲する霞ヶ関デモがありました。日比谷公園霞門を出て右折、高等検察庁・公安調査庁・最高検察庁前を通って内堀通りへ、「桜田門」を左折して、法務省前、高裁前へ。さらに直進しテントひろばのある交差点を左折して日比谷公園西幸門まで、昼休みの官庁街をアピールして歩きました。

   闘いへの檄を発する三里塚芝山空港反対同盟事務局長の北原鉱治さん(92歳)

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   反対同盟先頭にデモに出発

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10月12日には三里塚現地での全国集会があります。会場の反対同盟員の畑はわかりにくいですが、成田駅からマイクロバスも出ますので、初めての方もぜひご参加ください。 


市東さんの農地を守ろう!第3滑走路計画粉砕!10.12三里塚全国集会
とき◆10月12日(日)正午~集会、集会後デモ
ところ◆成田市東峰 反対同盟員所有畑
【行き方】
①JR成田駅前から午前11時20分発のマイクロバスあり、片道500円往復900円。
②コミュニティバスは成田市役所前発11時44分があり。バス停「東峰」下車、200円。
③成田駅からタクシーで東峰十字路まで約2500円。
主催◆三里塚芝山連合空港反対同盟(tel.0476-35-0087)



【三里塚、農地裁判の現状について】

突然の農地明け渡し要求

市東孝雄(しとう・たかお)さんは千葉県成田市で、親子3代、約100年にわたって農地を耕しつづけてきた農民です。父・東市(とういち)さんが1987年から有機完全無農薬の野菜づくりを始め、その後東市さんが亡くなられたため、1999年から家に戻り受け継ぎました。今では年間50種類以上の野菜を栽培しています。

市東さんの畑はおじいさんが開墾したものですから、戦後の農地改革の時に、市東さんが所有者になっているはずの農地でした。しかし、父・東市さんの復員が遅れるなどの事情で、登記手続きが適切に行われず、いわゆる「残存小作地」(農地改革で自作地に転換されなかった農地)として、残された農地でした。実質的には市東さんの所有地なのです。

ところが空港公団(NAAの前身)は、「小作地として残された」ことに目をつけ、市東さんに内緒で名義上の地主から農地を買収し、しかもその事実を隠し続け、15年たった2003年になって、初めて土地の登記をして、市東さんに農地を明け渡せと迫りました。

48年前に閣議決定された国策成田空港建設は農民たちの大反対闘争の中、土地収用法による農地強奪によって建設が強行されました。しかし、農地死守!で闘い抜く反対同盟農民の闘いによって完成が阻まれています。現在、土地収用法の期限はすでに切れ、空港用地は任意買収によるしかありません。

不当な数々の攻撃の中、市東さんの家や畑は空港の中に取り囲まれてしまいました。(下写真)

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この明け渡しを断った市東さんに対しNAAは、農業と農民を守る趣旨の農地法を悪用して市東さんの農地を奪い取ろうと、2008年に裁判を起こしたのです。

デタラメなNAA

裁判が始まると、「明け渡せ」とする場所が違っていたり、NAAが出した唯一の証拠が偽造だったり、とんでもないデタラメが明らかになりました。何より農地と農民を守るべき農地法に違反した違法の数々が法廷の場で明らかにされました。

しかし、「国策裁判」を行う千葉地裁・多見谷(たみや)寿郎裁判長は、昨年7月29日、NAA勝訴の不当判決を下したのです。

反対同盟は直ちに控訴。千葉から東京に舞台を移し、東京高裁で控訴審が闘われています。

この農地取り上げ以外にも、市東さんを追い出し反対同盟の闘いをつぶすために、NAAは数々の暴挙を行っています。

これはひとり市東さんや反対同盟だけの問題ではありません。
食と命を育む農業の価値こそが再認識されている時に、「農地法による農地の取り上げ」――こんなことを許すことはできません。

TPP(環太平洋経済連携協定)や減反政策の廃止などの農業・農民切り捨てに抵抗する日本の農民みんなにかかわる問題です。

また、軍事空港反対・農地死守を掲げ48年間たたかい続ける三里塚闘争は、改憲・戦争反対や反動政権による国策と闘うすべての人々に、多くの教訓を示している反戦の砦です。