10月16日(木)10時から、今臨時国会で初めて衆議院の憲法審査会が開催されました。
この日の議題は、「幹事の補欠選任」、「委員派遣承認申請の件」、「日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制の件(衆議院欧州各国憲法及び国民投票制度調査議員団の調査の概要)」の3件でした。

傍聴の権利をないがしろにする広報の遅れ

審議内容の報告に入る前に、まず、この日の開催が審査会のホームページに掲載されたのがなんと前日15日の17時ころであったことを怒りを込めて記載しておきます。
多くの人が気付かなかったでしょうし、運よく目にしたとしても夕方に「明日の朝10時に来てね」と言われて「はい、行きます」と答えられる人がはたしてどのくらいいるでしょうか。

いったい国民の国会傍聴の権利をなんだと思っているのかということです。この日の開催は14日(火)に開かれた幹事懇談会で決定されていました(武正公一氏〈民主、審査会の会長代理〉のブログによる)ので、遅くても15日の朝には広報できたはずだし、そうすべきだったと思います。

このような事情のためか、この日の傍聴者は私たち百万人署名運動の3人だけでした。言うまでもなく、こんなことは審査会の発足以来初めてでした。

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憲法審査会の会派別構成

最初の議題、「幹事の補欠選任」では、委員の異動によって欠員となっていた幹事3名を保利耕輔会長(自民)が指名しました。

それにしても、幹事10名(会長を含む)中7名、その他の委員40名中24名、合わせて50名のうち実に31名が自民党で、公明党の3名を加えると「与党」が34名。
他に「準与党」とも言うべき維新の党が5名、次世代の党2名、みんなの党1名で、かなり心もとないところはあるけれども「野党」と言えそうな民主党が6名、生活の党が1名、そして共産党が1名で社民党は委員を出せていないのですから、今後の憲法審査会の運営がどのように進められていくのかは容易に想像することができます。

これに関連して、10月8日の朝日新聞朝刊に掲載された「自民、改憲へ三つの論点提案」という記事を引用しておきます。
「衆院憲法審査会(会長・保利耕輔元自治相)は7日、国会内で幹事懇談会を開いた。自民党は『環境権』『緊急事態条項』『財政健全化規定』の三つの論点について、今国会での審議を提案。憲法改正に向けた議論に入ることを狙ったものだ。民主党など野党4党は持ち帰って検討することになった。共産党は提案に反対した。」

なぜ今公聴会開催が必要なのか?

次の議題、「委員派遣承認申請の件」は、11月17日(月)に岩手県盛岡市で地方公聴会を開催するので憲法審査会の委員を派遣したいという内容でしたが、何の議論もなくいきなり起立採決され、共産党を除く圧倒的多数で承認されました。

このことについては、上記の開催告知とは対照的に早速審査会のホームページに「日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査のため、今般、広く国民の皆様から『改正国民投票法の施行を受けて、これからの憲法審査会に望むこと』をテーマに意見を聴取する地方公聴会を」「開催することになりました」、意見陳述者は「6名程度」で「青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県及び福島県に在住する方から一般公募を行」って「選定します」という「お知らせ」が掲載されています。

しかし、対象を東北6県のわずか6名程度に絞って「広く国民の皆様から」「意見を聴取」したことになるのか、そもそもなぜ今地方公聴会を開く必要があるのか、とうてい腑に落ちることではありません。

欧州調査の成果とは?

3つ目の議題は、国会閉会中の7月に衆院憲法審査会のメンバー7名がギリシャ、ポルトガル、スペインを訪問し、各国の憲法や国民投票制度について実施した「欧州調査」をめぐるものでした。

まず団長を務めた保利氏が簡単な報告を行い、次に副団長の武正氏が調査結果をやや詳細に説明し、さらに調査に参加した船田元氏、中谷元氏(ともに自民)、馬場伸幸氏(維新)、斉藤鉄夫氏(公明)、笠井亮氏(共産)がそれぞれ感想を述べ、最後に委員間で自由討議を行うという順に審議が進められました。

傍聴者には保利氏と武正氏の報告内容を記載したA4版6ページの資料が配布され、委員の机上には分厚い報告書が置かれていましたが、私が最初に思ったのはこの調査にいったい幾らかかったのだろうということでした(人数はわかりませんが、調査には衆議院憲法審査会事務局、法制局と国会図書館の職員が同行しており、報告書は彼らがまとめたのだと思います)。

武正氏の説明などを聴いていると調査の内容、結果はそれなりに興味深いものだと感じましたが、大方の委員の発言は自分に都合のいい部分だけを強調したり、ひどいものになると自らの主張に沿うように捻じ曲げて解釈したりというもので、やはりこの欧州調査は税金の無駄遣いだったのではないかとの感をぬぐえませんでした。

憲法審査会が始まる前に、傍聴できない総務委員会の様子を議員面会所のテレビでチェックする西川重則さん

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保利会長の2つの発言

というわけで、この日の審議ではあえてこのブログの読者の方々にお知らせしたいという発言はあまりありませんでしたが(そのことを反映してか、今回はマスコミの報道もほとんどなかったようです)、そんな中で私がオヤッと感じた保利会長の2つの発言をご紹介しておきたいと思います。

そのひとつは、自由討議の中で西野弘一氏(次世代)が「わが国ではGHQの強い影響力の下に仕方なく今の憲法を作ったので、ポルトガルにならって、早く国民の手による自主憲法を制定しなければならない。改正国民投票法もできたので、早急に憲法の中身を議論できるような審議会にしていただけたらなと思った」という主旨の意見を述べた後、保利氏が「ありがとうございました。よくわかりました」と発言したことです。

会長は淡々と議事を進行すべきであって、保利氏もいつもはそのように振る舞っているので、委員の表明した意見に賛意を示すというのは異例のことだったと思います。ちなみに衆議院の「インターネット審議中継」でこのときの様子を確認すると、隣の席に座っている船田氏と顔を見合わせてにっこりしていることが見て取れます。

もうひとつは、散会を宣言した後に、「申し上げておきたいと思いますが、与党の方の空席が目立っておりますので、この次やりますときはできるだけの方にご出席をいただきますように与党の方で確保していただきたいと思います。よろしくお願いいたします」と述べたことです。これまで笠井氏の苦言を受けて同様の発言をしたことはありましたが、自らこれを言い出したのは初めてのことでした。

事実、この日の出席状況は惨憺たるありさまで、2つ目の議題の委員派遣承認の採決のときには40名ほどの委員が席に着いていましたが(定員は50名)、その後は退席する委員が相次いで定足数(25名)をかろうじて上回るという状態になり、一時的ではありましたが定足数を下回ることもありました。ただし、保利氏が与党と言っているのは正確ではなく、公明党の委員(3名)はほとんどの時間帯にわたって全員が出席していましたので、責任を負うべきはもっぱら自民党であることをはっきりさせておきたいと思います。(G)